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法人税とは?種類や税率、計算方法、所得税との違いをわかりやすく解説

監修者 : 齋藤一生(税理士)

法人や個人が所得を得た場合、税金が課されます。個人の所得には「所得税」、法人の所得には「法人税」が課されます。法人税は、法人税法という法律で詳細が決められており、その税率は法人の種類や規模によって違っています(一部所得によっても変動することがあります)。

ここでは、法人税の種類や税率、税額の計算方法、納付期限、税額の申告と納付のやり方など、法人税の概要を解説します。

法人税とは、法人の所得に課される税金のこと

法人税とは、法人の企業活動から得られる所得に対して課される税金です。法人の所得は、会計上の収益に既定の調整を加えることで算出される「益金」から、会計上の費用に既定の調整を加えることで算出される「損金」を差し引いたものになります。

法人税には大きく分けて、「各事業年度の所得に対する法人税」と「退職年金等積立金に対する法人税(特別法人税)」の2つがあります。

各事業年度の所得に対する法人税

1事業年度の所得に対して税金が課されます。単に「法人税」というと、ほぼこちらを指します。

退職年金等積立金に対する法人税(特別法人税)

企業年金の積立金に対して税金が課されます。確定給付企業年金と確定拠出年金の場合は積立金額の全額に対して、厚生年金基金の場合は国の厚生年金を代行している部分の3.23倍相当額を超えた部分に対して、1.173%の税金が課されます。

なお、特別法人税は、2023年3月31日までは凍結されています。

法人税法の定める法人にはさまざまな種類がある

法人税の課税対象となる法人には、株式会社などの普通法人の他、公益法人、NPO法人、人格のない社団など、さまざまな種類があります。

課税対象となる所得の範囲は、この法人の種類によって下記のように決まっています。

法人の種類 該当するもの 課税対象となる所得の範囲
普通法人 株式会社や有限会社、医療法人など。協同組合等、人格のない社団等、公益法人等、公共法人以外の通常の営利法人全般。 すべての所得
協同組合等 農業などの各種協同組合、信用金庫など、共通の目的のために集まった個人や中小企業の組合。 すべての所得
公益法人等 公益社団法人、公益財団法人、宗教法人、学校法人など。公益を目的とし、営利を目的としない法人。 収益事業から生じた所得
人格のない社団 PTAや同窓会など。多数の人や財産などが同じ目的のもとに集まっている団体で、法人格がなく、代表者または管理人の定めがある団体。 収益事業から生じた所得
公共法人 地方公共団体、日本政策金融公庫など、公共性のある目的を持った法人。 課税対象外

法人税の税率

所得が上がるに伴って税率も高くなる超過累進課税制度がとられている個人事業主の所得税と違い、法人税の税率は法人の種類と規模によって決まっています。ただ、利益の大きさによる部分もあり、資本金1億円以下の普通法人などの場合は課税所得が800万円を超えると税率が高まります。

株式会社や有限会社、合同会社などが含まれる「普通法人」の法人税の税率は、下記のとおりです(開始事業年度が2019年4月1日以後の場合)。

区分 条件 税率
資本金1億円以下の法人など 年800万円以下の部分 15.0%(※)
年800万円超の部分 23.2%
それ以外の法人 23.2%

※適用除外事業者(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等)は19.0%

法人税の計算方法

法人税は、下記の式で計算されます。

法人税額=課税所得(益金-損金)×税率-税額控除

税額控除とは、二重課税の排除や特定の政策推進などを目的に設けられているものです。中小企業者等が機械を購入した際の費用を控除するものや、雇用者の数が増加した場合の特別控除など、さまざまなものがあります。

法人税の申告や納付方法

法人税を申告したり、納付したりする場合は、いくつかの選択肢があります。ここでは、法人税の提出方法や納付期限、納付方法についてご紹介します。

提出方法

法人税の申告は、「e-Taxで提出」「税務署に郵送」「税務署の窓口で提出」の3つがあります。納税地は、法人の本店または主たる事務所の所在地となりますので、対象の所轄税務署宛に提出します。

2016年(平成28年)4月1日から、e-Taxで申告・申請等を行う場合には、別途書面による提出が必要な添付書類(例:法人税申告書に添付する出資関係図)は、イメージデータによる提出が可能となりました。

なお、法人税申告書の添付書類のうち、これまでもe-Taxによる送信が可能であった財務諸表や勘定科目内訳明細書などは、法令上、イメージデータによる送信はできませんので注意しましょう。

イメージデータにより送信することができる添付書類の詳細については、国税庁の「イメージデータにより提出可能な添付書類」をご確認ください。

納付期限

法人税は、事業年度終了日の翌日から2か月以内に確定申告を行うことになっています。

事業年度が6か月超の法人は、原則として中間申告も必要で、事業開始日から6か月を経過した日から2か月以内に予定申告・予定納税を行わなくてはいけません。申告・納付期限に遅れた場合は、延滞税などペナルティが課されます。

納付方法

具体的な納付方法としては、e-Taxでのダイレクト納付、インターネットバンキングによる納付、クレジットカード納付、コンビニ納付、振替納税(口座振替)、金融機関の窓口納付があります。

個人事業主が法人成りをする際の注意点

個人事業主の場合、ゆくゆくは会社設立をして、いわゆる「法人成り」をしたいと考えている人も多いのではないでしょうか。個人事業主が法人成りをすると、それまでの所得税の税率によっては、納める税金が少なくなるほか、社会的信用が増すといったメリットがあります。

しかし、単に所得が増えたことで「所得税の税率より法人税の税率の方が安いから」という理由で法人成りをすると、予想外の不利益が発生する場合もあります。特に注意したいのは、下記の2点です。

法人になるための費用がかかる

株式会社を設立するには、法定手続きを行うだけでも、費用がかかります。なお、会社の定款認証費用は、一律5万円でしたが、2022年1月から一部引下げられました。

設立する会社の資本金の額 定款認証手数料
100万円未満 3万円
100万円以上 300万円未満 4万円
300万円以上 5万円

また、法人事業税や法人住民税など、法人税以外に課せられる税金もありますので、納める税額を比較するには、それらも含めて考える必要があります。

法人になることで業務の負担が増える

法人になると、経営者への給与支払いが経費になるなどの良い点もありますが、社会保険の負担が増し、事務的な負担も増えてしまいます。

法人税と間違えやすい税金

法人税と間違えやすい税金としては、所得税と法人事業税、法人住民税が挙げられます。これらの税金は、法人税と何が違うのでしょうか。

所得税との違い

同じ所得に課される税金ですが、法人税は法人が、所得税は個人が対象です。また、所得税は超過累進課税制、法人税はほぼ固定制ですので、税率が異なります。所得の額によっては個人事業主として所得税を納めるより、法人成りをして法人税を納めた方が納める税金が少なくて済むケースがあるのは、超過累進課税制と固定制の違いがあるためです。

例えば、課税所得が年800万円の場合、それぞれにかかる所得税、法人税は下記の金額となります。

所得税(税率23.0%)
800万円×23%-63万6,000円(控除額)=120万4,000円

法人税(税率15.0%)
800万円×15%=120万円

法人事業税や法人住民税との違い

法人税は国に納める税金、法人事業税と法人住民税は地方自治体に納める税金である点が異なります。

法人事業税は、法人の事業活動に対して課されるもので、事務所や事業所が所在する都道府県に納めます。法人住民税は、地域社会の構成員である法人も行政サービスの費用を分担すべきとの趣旨で課されるもので、納付先都道府県および市町村になります。

なお、法人税と法人住民税は損金に算入できませんが、法人事業税については算入可能です。

個人事業主から法人への変更は、法人税以外の要素も考慮しよう

法人税は、法人の所得に課せられる税金であり、超過累進課税制度をとっている所得税と違って、その税額は法人の種類と規模によって決まっています(一部所得によっても変動することがあります)。

株式会社等の普通法人の場合、年800万円を超えない部分については年率15.0%。そのため所得の額によっては、個人事業主として所得税を納めるより、法人成りをして法人税を納めた方が、納める税金が少なくなる場合があります。

ただ、法人税以外にも法人事業税や法人住民税がかかったり、法人になることで事務処理の手間が増えたりもしますので、個人事業主から法人への変更はしっかり考えてから行いましょう。

photo:PIXTA

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