決算書とは?見方・読み方、作成方法や活用法を解説
監修者 : 田中卓也(田中卓也税理士事務所)

企業や事業を経営していくには、現状を正しく把握することが不可欠です。一会計年度ごとに作成する「決算書」は、所得税や法人税の確定申告の際に必要なだけでなく、経営者や関係者が企業の経営状態を知るためにも非常に重要な資料となります。
決算書とはどのようなもので、決算書を見ることで何がわかるのか、決算書の活用方法について解説します。
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目次
決算書とは?
決算書とは、企業・団体の一会計年度の経営成績や財務状態を表した書類のことです。
一会計年度の区切りは、法人の場合は、4月始まり3月決算とするところが多いですが、その期間は自由に決めることができます。また、期末が月末でなくても構いませんが、1年超えて一事業年度とすることはできません。
一方、個人事業主の場合は、年の中途で開業する場合を除き1月始まり12月決算と決められています。
なお、決算書というのは俗称で、会社法上は「計算書類」、金融商取引法上は「財務諸表」と呼ばれます。いろいろな書類がありますが、中でも「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュ・フロー計算書」の3つが特に重視されており、この3つをまとめて「財務三表」といいます。
決算書の読み方
決算書の中でも特に重要な財務三表。損益計算書、貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書に書かれている内容と、それぞれの読み方について見ていきましょう。
損益計算書
損益計算書は、企業が1年間にどれだけの収益を上げ、費用をいくら使い、結果として最終的な利益がどれだけあったのかを表したものです。これを見れば、企業がどのようにして利益を上げてきたのかがわかります。
損益計算書は、下記の5つの利益に分けて表記されます。
売上総利益(売上高-売上原価)
売上総利益は、1年間に本業である営業活動を通じて得られた収益から、仕入れにかかった費用を差引いたもので、粗利とも呼ばれます。企業が核となる事業で、どれだけ儲けたかを示しています。
営業利益(売上総利益-販売費及び一般管理費)
営業利益は、売上総利益から、人件費や広告代、消耗品費、テナント代など、商品を販売するために必要な仕入れ以外にかかった費用を差引いたものです。
経常利益(営業利益+営業外収益-営業外費用)
経常利益は、営業利益に預金の利息や配当金など本業以外での収益を加え、借入金の利息など本業以外でかかった費用を差引いたものです。経常利益と営業利益の差から、本業以外の儲けがどれぐらいなのかが読み取れます。
税引前当期利益(経常利益+特別利益-特別損失)
税引前当期利益は、経常利益に有価証券や不動産の売却などで思いがけず発生した利益を加え、思いがけず発生した損失を引いたものです。
当期純利益(税引前当期利益-法人税-法人住民税-法人事業税)
当期純利益は、税引前当期利益から税金を差引いたもので、純粋な1年間の利益を表しています。
貸借対照表
貸借対照表は、あるタイミング、決算書では、会計年度の終了日時点で企業が保有する「資産」「負債」「純資産」の状況を表したものです。決算書の貸借対照表を見れば、期末時点での企業の財政状態がわかります。
左側に資産、右側上段に負債、右側下段に純資産を表記する形になっており、左側と右側の合計額は必ず一致します。
貸借対照表は、すべての企業が作成しなければならないほか、個人事業主でも、青色申告で最大65万円の青色申告特別控除(もしくは55万円の青色申告特別控除)を受ける場合は、作成が義務付けられています。
資産
資産は、預金や現金など企業が保有する財産で、返さなくて良いものを指します。
現金、預金、受取手形といった「流動資産」と、不動産や車両など、現金化しにくい「固定資産」、流動資産、固定資産以外の「繰延資産」(企業の設立費用や広告宣伝費など、過去に支出した費用のうち今期のみならず来期以降にも影響があると考えられるもの)の3種類からなっています。
負債
負債は、いずれ返済しなくてはいけない借入金など。返済期日が1年以内の「流動負債」と、返済期日が1年を超える「固定負債」からなります。
純資産
純資産は、資産から負債を引いたもので、返済義務のない純粋な資産です。資本金や過去に蓄積した利益(利益余剰金)からなります。
キャッシュ・フロー計算書

キャッシュ・フロー計算書は、一定期間における現金の流れ(増減)を表したものです。これを見れば、1年間で現金がいくら、どのような理由で増減したのか、今すぐ使える資金はいくらあるのかがわかります。
キャッシュ・フロー計算書の作成が義務付けられているのは、大企業のみですが、中小企業や個人事業主でもキャッシュ・フロー計算書を作成して、資金の流れを把握することは重要です。
キャッシュ・フロー計算書では、企業の活動を「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つに分けて表記します。
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、本業である事業でどれだけのキャッシュが生み出されているかを表します。プラスが大きいほど業績が良いことを示しています。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資活動によるキャッシュの動きを表します。積極的に設備投資を行っているとマイナスになります。プラスの場合は、投資額以上に、保有する証券や不動産を売却していることを表します。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローは、資金調達や返済などの財務活動によるキャッシュの動きを表します。マイナスは借金を返済していることを、プラスは融資や増資を受けていることを表します。
なお、「弥生会計」の「弥生会計 プロフェッショナル」には、キャッシュ・フロー計算書の作成機能があります。
キャッシュ・フロー計算書の作成は、中小企業の場合、義務ではありませんが、自社の経営状況を客観的に把握するための優れたツールであり、お金の流れを可視化してくれるものです。ぜひ作成してみてください。
決算書からわかること
財務三表の分析は、企業の収益性や成長性、健全性、資金効率性などを判断するのに役立ちます。
例えば、「損益計算書で利益が出ているが、キャッシュ・フロー計算書で現金が増えていない」「売掛金が未回収になっている疑いがある」など、財務三表を組み合わせて読み解くことで、企業の置かれている状況・総合的な経営状態が見えてきます。
ここでは、決算書から読み取れることについて、詳しく見ていきましょう。
企業の収益性
企業の収益性とは、企業がどれぐらい効率良く収益を上げられているかの判断基準です。下記のような指標が手掛かりになります。
総資本経常利益率=経常利益÷総資産(負債+純資産)×100(%)
総資本経常利益率は、投下した資金に対して、どれぐらい利益を上げられたかを表します。
売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100(%)
売上高経常利益率は、企業の収益性を表します。高いほど、通常の経営活動における企業の収益率が高いといえます。
売上高純利益率=売上総利益(粗利)÷売上高×100(%)
売上高純利益率は、企業の主事業そのものの収益性を表します。
企業の成長性
企業の成長性とは、経営拡大の度合いや今後の企業の経営拡大の可能性を示すものです。下記のような指標が手掛かりになります。
売上高増加率=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100(%)
売上高増加率は、企業の本業での売上がどれほど増加したかを表します。
経常利益増加率=(当期経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益×100(%)
経常利益増加率は、日常の経済活動から生じた利益の伸びを表します。
自己資本増加率=(当期純資産-前期純資産)÷前期純資産×100(%)
自己資本増加率は、自己資本を蓄えるペースを表します。増加率が高いと自己資本を蓄えるペースが速いことを意味します。
企業の健全性
企業の健全性とは、その企業の財政が健全で倒産しない企業かどうかを判断する指標です。下記のような指標が手掛かりになります。
流動比率=流動資産÷流動負債×100(%)
流動比率は、短期の負債に対する支払い能力を表します。企業の腕力を指すともいわれ200%以上が理想、120%ぐらいあれば安全といわれています。
自己資本比率=純資産÷純資産(負債+純資産)×100(%)
自己資本比率は、自己資本の割合を表します。高いほど借入金の返済負担少なく、経営が安定していると判断できます。
固定長期適合率=固定資産÷(純資産+固定負債)×100(%)
固定長期適合率は、固定資産を調達した資金のどの程度を、純資産と固定負債でまかなっているかを表します。流動比率と逆相関関係となる場合も多く100%未満だと健全な財政状態、120%超で注意、150%超なら危険と判断されます。
企業の資金効率性
企業の資金効率性とは、企業が調達した資本をどれぐらい効率良く運用できているかを表すものです。下記のような指標が手掛かりになります。
棚卸資産回転日数=棚卸資産÷(年間売上高÷365日)
棚卸資産回転日数は、商品を仕入れてからどのぐらいで販売できているかを表します。増加していれば、棚卸資産の回転数が悪化しているのでキャッシュ・フローが悪化します。
売上債権回転期間=(受取手形+売掛金)÷(年間売上高÷12月)
売上債権回転期間は、売上債権がどのぐらいの期間で回収できているかを表します。債権の一部の回収期間が長期化している場合は貸倒の懸念もあるので注意しなければいけません。
仕入債務回転期間=(支払手形+買掛金)÷(年間仕入高÷12月)
仕入債務回転期間は、商品や材料を仕入れてから、代金が決済されるまでの期間を表します。仕入先等と取引を開始するにあたり、トラブルを避けるためにも事前に決めておいたほうがいいでしょう。
決算書の作成手順
決算書は、日々つけている帳簿をもとにして作成します。おおまかな作成手順は、下記のとおりです。
【決算書を作る流れ】
- 会計年度中のすべての取引を、複式簿記形式(※)で仕訳帳に記帳する
- 売上原価の計算や固定資産の減価償却費の計上などの決算整理仕訳を行う
- 各勘定項目の残高と実際の残高が一致しているか確認し、決算残高を確定させる
- 仕訳帳から勘定項目ごとに総勘定元帳に転記する
- 試算表を作成して、記帳・転記に間違いがないかをチェックする
- 試算表から決算書を作成する
※法人の青色申告、個人事業主の青色申告特別控除65万円控除もしくは青色申告特別控除55万円控除の場合
決算書が必要とされる場面
決算書は、1年間の経営実績や期末時点での財務状態を明らかにするために作成するものですが、それ以外にも必要とされる場面があります。
企業を経営するうえで、決算書が必要とされる場面について説明します。
外部のステークホルダーへ報告
企業に出資している株主や金融機関、投資家は、自分の出資したお金がどのように運用されているのかを知る権利があります。また、金融機関が融資の可否を判断するためには、企業の経営状況がわかる資料が必要です。決算書は、このような場合に企業の状況を報告するツールとなります。
自社の経営を客観的に見直したいとき
決算書は、自社の状況を客観的に把握したり、他社の経営状況を判断したりするのにも非常に役に立ちます。
例えば、損益計算書では業績が好調なように見えても、キャッシュ・フロー計算書上で、現金が少なくなっていたり、貸借対照表上で債務超過していたりすると、倒産のリスクが高まっていることになります。企業を健全に経営していくためには、財務三表を含む決算書を総合的に分析することが重要なのです。
企業や個人事業主が確定申告を行うとき
決算書は企業が確定申告を行うときにも必要です。決算書の一部である損益計算書と貸借対照表については、法人では、確定申告での提出が求められます。個人事業主の場合は、最大65万円(もしくは最大55万円控除)の青色申告特別控除を受ける場合に所得税の確定申告書に青色申告決算書として、損益計算書と貸借対照表を添付します。
決算書作成の手間軽減に会計ソフトの活用を
決算書は、企業の経営実績・財務状況を知るための重要なツールです。株主や投資家、金融機関に企業の状況を報告する上で必要なものであり、経営者が自社の状況を客観的に把握する上でも役立つものです。
決算書は日々記帳している帳簿をもとに作成しますが、たとえ設立したばかりの企業でも、手書きですべての取引を記録して、決算書まで作成するのは膨大な手間がかかります。
そこで、経理初心者の方に導入をおすすめしたいのが「弥生会計 オンライン」。自動仕訳も充実していて、レシートや銀行明細を自動取込・自動仕訳するので、入力と仕訳の手間が省けます。全ての機能が0円から使えて、はじめての会計ソフト選びにもあんしんです。
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