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源泉徴収票には何が書いてある?見方や発行のタイミングを解説

監修者 : 田中卓也(田中卓也税理士事務所)

源泉徴収票とは法定調書の1つで、1年間の収入総額や納付する税金、社会保険料などの金額が記載された書類です。従業員を雇用している企業は、必ず源泉徴収票を発行しなければいけません。

ここでは、源泉徴収票の記載内容や発行時期のほか、間違えやすい類似の書類との違いなどについて、わかりやすく解説します。

源泉徴収票とは?

源泉徴収票は、給与所得者や年金受給者などに対して交付される書類です。支給された給与や年金の額、天引きされた税金、社会保険料などが票形式にまとまって記載されています。

源泉徴収票には、「給与所得の源泉徴収票」「退職所得の源泉徴収票」「公的年金等の源泉徴収票」の3種類があります。本記事では、主に給与所得の源泉徴収票について解説していきます。

給与所得の源泉徴収票

給与所得の源泉徴収票は、従業員を雇用している企業や個人事業主が源泉徴収義務者として、従業員に発行する源泉徴収票です。

源泉徴収票に記載される「所得税」は、年間の所得に対して課税される税金です。しかし、1年分の収入にかかる所得税を一括で支払うのは、従業員の負担が大きいでしょう。そのため、あらかじめ従業員の月々の給与から所得税を差し引いて納めています。そして、1年間の給与総額が確定した時点で所得税の過不足の調整を行います。これが年末調整です。

給与所得の源泉徴収票は、年を通じて勤務し、年末まで在籍していた給与所得者には通常、年末調整が終わって所得税額が確定した時点で作成されます。また、作成には、各従業員が記入した「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書」給与所得者の保険料控除申告書」「給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告書」の3点が必要です。

退職所得の源泉徴収票

退職所得があった人に対して、退職金を支払った企業が発行するのが退職所得の源泉徴収票です。退職所得からも所得税が控除されますが、退職所得は給与所得とは合算されない分離課税であり、給与所得の所得税とは別の計算式にもとづいて算出されるため、源泉徴収票も給与所得分とは別に発行します。

なお、退職した年に別の企業に転職した場合は、入社時または年末調整時に前職の源泉徴収票を転職先に提出する必要がありますが、退職所得の源泉徴収票の提出は不要です。また、退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出して所得税計算を行っているのであれば、所得税と住民税が差し引かれるので基本的に確定申告をする必要もありません。

公的年金等の源泉徴収票

公的年金等の源泉徴収票は、公的年金受給者に対して、日本年金機構が発行する書類です。1年間に支払われた年金の額や、源泉徴収された所得税の額、適用される控除、支払った社会保険料の額などが記載されています。

所得税の確定申告が必要な場合は、公的年金等の源泉徴収票の内容の記載が必要になるので保管しておきましょう。

源泉徴収票の記載内容

給与所得の源泉徴収票は、A4サイズ1枚に(受給者交付用)(税務署提出用)と印字されたものが発行されます。(受給者交付用)だけ印刷したい、あるいは(税務署提出用)だけ印刷したいといったように給与計算ソフトにより処理が異なる場合もありますので、どこに何がかかれているのか、記載内容について知っておきましょう。

なお、何年分の源泉徴収票なのかは、上部に記載されています。ここが空欄だといつものものかわかりませんから、必ず記載が必要です。

また、転職者から前職の源泉徴収票の提出を受けた際は、何年分なのかを必ず確認してください(前年分の場合、年末調整に反映させることはできません)。

※国税庁:[手続名]給与所得の源泉徴収票(同合計表)

①種別

「給与・賞与」と記載されます。給与は基本給に残業代や各種手当など含まれる毎月の給料で、賞与はボーナスなどのことです。

②支払金額

該当の1年間(令和3年分であれば、令和3年1月1日~12月31日まで)に支給した給与・賞与の合計額を記載します。1~12月分の給与ではなく、あくまでも該当の1年間に、従業員に対して支給した金額の合計です。

例えば、月末締め翌月10日払いの場合、前年12月分の給与(1月10日払い)から当年11月分の給与(12月10日払い)までが該当します。

③給与所得控除後の金額

支払金額から、給与所得控除の額を差し引いた金額を記載します。給与所得控除とは、給与所得者が所得税計算をする際に差し引ける控除額のことです。給与所得控除の額は、給与収入の額によって変わります。

④所得控除の額の合計額

社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除のうち、該当の従業員が利用できる控除額の合計を記載します。

⑤源泉徴収税額

年末調整によって確定した該当年の収入に対して、課税される所得税額を記載します。なお、年末調整をしていない従業員については、源泉徴収した所得税額を記載してください。

⑥(源泉)控除対象配偶者の有無等/配偶者(特別)控除の額

控除の対象となる配偶者がいる場合は該当するする欄に◯を入れ、その控除額を記入します。

配偶者控除・配偶者特別控除の額は、納税者の所得金額と配偶者の収入の額によって異なります。

⑦控除対象扶養親族の数/16歳未満扶養親族の数/障害者の数/非居住者である親族の数

該当する家族がいる場合は、その人数を記入します。

⑧社会保険料等の金額

社会保険料等には、毎月の給与から天引きされている健康保険料や厚生年金保険料などの合計金額を記入します。なお、毎月の給与から天引きされている健康保険料や厚生年金保険料以外にも「給与所得者の保険料控除申告書」に生計を一にする親族が負担することになっている社会保険料を記載してきたのであれば、それも社会保険料控除として控除できます。

独立行政法人中小企業基盤整備機構と締結した共済契約に基づく掛金、確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金、確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金に加入しているのであれば内容としては小規模企業共済掛金控除なのですが、社会保険料控除内に合算されて記入されます。

⑨生命保険料の控除額/地震保険料の控除額/住宅借入金等特別控除の額

生命保険料の控除額、地震保険料の控除額、住宅借入金等特別控除額は、事前に従業員が記入した給与所得者の保険料控除申告書にもとづいて計算した金額を記入します。

⑩備考(税務署提出用のみ)

控除対象扶養親族が書ききれない場合に、マイナンバーを記載します。なお、マイナンバーの前に「摘要」欄の氏名と紐づけられるよう、同一の番号を振ってください。

⑪摘要

摘要は、ほかの欄に記載できなかった内容や項目について書く欄です。

【摘要欄の記載内容例】

  • 前職の給与などを含めて年末調整した場合:前職の給与支払者の住所・名称・退職年月日・前職の給与額・所得税額・社会保険料額を記載します。
  • 控除対象扶養親族を書ききれなかった場合:氏名を記載します(氏名の前に備考欄と紐づける番号をカッコ書きで記載)。
  • 16歳未満の扶養親族を書ききれなかった場合:氏名を記載します(氏名の後に(年少)と記載)。
  • 年末調整をしていない従業員や中途退職者に発行する場合:義務ではありませんが、年末調整が済んでいないことを意味する「年調未済」と書いておくと親切です。

⑫中途入社・退職

年の途中で中途入社した従業員や、退職した従業員に対して源泉徴収票を発行する際に、入社日や退社日を記載します。「就職」または「退職」のうち、該当する方にチェックを入れてください。なお、入社と同じ年のうちに退職した場合は、退職日を記載します。

源泉徴収票に「手取り額」は記載されない

源泉徴収票には、給与の手取り金額や、所得税の算出根拠となる課税所得額の金額は記載されません。手取り金額を算出したい場合は、「支払金額」から「源泉徴収税額」と「社会保険料等の金額」を差し引き、さらに住民税額を引けばわかります。

ただし、給与から差し引かれた住民税額は源泉徴収票には記載されていないため、別途給与明細などを確認する必要があります。

企業が源泉徴収票を発行するタイミング

企業が給与所得の源泉徴収票を発行するタイミングは、大きく3つに分けられます。必要なときに遅滞なく発行できるようにしておきましょう。

年末調整のとき

年末調整を行った際は、全従業員の源泉徴収票の発行が必要です。これは、従業員を雇っている事業者の義務ですから必ず発行し、従業員本人に交付しなければいけません。また、作成した給与所得の源泉徴収票のうち給与等の支払い金額が500万円を超えるなど一定の人は、翌年1月31日までに管轄の税務署へ提出する必要があります。

年末調整は、12月の給与と賞与が確定しないと行えません。そのため、12月の給与時に行うのが一般的です。1月に行うケースもありますが、源泉所得税の納付手続などその後の手続きが慌ただしくなってしまいますから、12月に処理するのがいいでしょう。そのためには、余裕を持って従業員に必要書類の提出を促す必要があります。

なお、アルバイトやパート従業員も基本的に年末調整は必要です。2ヵ所以上から給与の支払いを受けている人で、他の給与の支払者に扶養控除等(異動)申告書を提出している人かどうか、あるいはどちらをメインで働いているかなど必ず確認して、こちらをメインで働いているのであれば年末調整を行いましょう。

従業員が退職したとき

従業員が退職した際は、退職から1か月以内に源泉徴収票を発行して本人に交付しなければいけません。

なお、反対に中途入社してきた従業員がいる場合は、入社時に前職の源泉徴収票を受け取ります。発行されていない場合は、取り寄せてもらいましょう。ただし、前職を辞めたのが前年で、今年に入ってから支給された給与や賞与がないのであれば不要です。

従業員から依頼されたとき

家を借りたりローンを組んだりする際に、管理会社や金融機関などから源泉徴収票の提出を求められることがあります。源泉徴収票は毎年、年末調整時に企業から交付されるものですから、保管してあれば問題ありませんが、なくしてしまった場合や、PDFデータで受け取っていたが原本が必要という場合には、勤務先に発行を依頼します。

従業員からの発行依頼があったときは、できるだけ早めに源泉徴収票の発行を行います。しかし、企業が従業員に対して源泉徴収票を交付しなければならないという規定は所得税法226条に明記されているのですが、回数や遡及期間までは明記されていません。つまり、交付の義務はありますが、再発行に応じるかどうかは企業次第ということです。

企業側にもパソコンや給与計算ソフトの破棄・入れ替えなどさまざまな事情が想定されます。したがって、従業員側は、源泉徴収票はもらったらコピーしておく、あるいはスキャンニングやバックアップファイルを残しておくなど、納税者自身で源泉徴収票を保全しておく手続きも必要です。

源泉徴収票の提出先

給与所得の源泉徴収票は、原則「受給者交付用」「税務署提出用」の2枚を作成します。

受給者交付用の源泉徴収票は、該当の年の翌年1月31日(転職者は転職後1か月以内)までに本人に交付し、税務署提出用の源泉徴収票は、該当の年の1月31日までに管轄の税務署に提出します。

ただし、税務署に提出する方については下記の図表にように一定の制限があります。

【受給者の区分と源泉徴収票の提出範囲】

  受給者の区分 提出範囲
年末調整をしたもの (1) 法人(人格のない社団等を含みます。)の役員(取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事、清算人、相談役、顧問等である方)及び現に役員をしていなくても令和3年中に役員であった方 年中の給与等の支払金額が 150万円を超えるもの
(2) 弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、弁理士、海事代理士、建築士等(所得税法第204条第1項第2号に規定する方)※ 年中の給与等の支払金額が 250万円を超えるもの
(3) 上記(1)及び(2)以外の方 年中の給与等の支払金額が 500万円を超えるもの
年末調整をしなかったもの (4) 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した方 イ )令和3年中に退職した方、災害により被害を受けたため、令和3 年中の給与所得に対する源泉所得税及び復興特別所得税の徴収の猶 予又は還付を受けた方 年中の給与等の支払金額が 250万円を超えるものただし、法人の役員の場合には 50万円を超えるもの
ロ )主たる給与等の金額が2,000万円を超えるため、年末調整をしなかった方 全部
(5) 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなかった方(月額表又は日額表の乙欄もしくは丙欄適用者等) 年中の給与等の支払金額が 50万円を超えるもの

※弁護士等に給与等として支払っている場合の提出範囲であり、これらの方に報酬等として支払う場合には、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出対象となります。

※引用:国税庁「令和3年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」より

従業員についてはアルバイトやパート、途中退職者などを含めてすべて交付する必要があります。

受給者交付用と税務署提出用の違い

受給者交付用と税務署提出用の源泉徴収票は、基本的に同じ形式で作成されており、記載内容もほぼ同一です。ただし、税務署提出用にはマイナンバーを記載しますが、受給者交付用の源泉徴収票にはマイナンバーの記載は不要です。


※国税庁:[手続名]給与所得の源泉徴収票(同合計表)

また、源泉徴収票の左下には、カッコ書きで(受給者交付用)(税務署提出用)という但し書きがあります。(受給者交付用)と書かれたものが、従業員に渡す源泉徴収票です。交付する源泉徴収票を間違えないように気を付けましょう。

従業員本人が確定申告をする場合の利用方法

従業員本人が、医療費控除や住宅ローン控除の初年の申請など年末調整で行えない申告をする場合に所得税の確定申告をします。その際には、源泉徴収票が必要です。

なぜなら、源泉徴収票が手元にないと、正確な給与所得金額や控除の金額などを確定申告書に記載することができないからです。交付した源泉徴収票は、必ず従業員本人に持ち帰ってもらいましょう。ただし、2019年分から所得税の確定申告書に、源泉徴収票を添付する必要はなくなっています。

また、所得税の確定申告後の源泉徴収票の保管も、義務ではありません。しかし、源泉徴収票は所得税の確定申告以外にも家を借りたりローンを組んだりする際に、管理会社や金融機関などから源泉徴収票の提出を求められることがありますから、安易に処分せず、いざという場合のときにスキャンニングしておくなど、数年分は保管しておいたほうがいいでしょう。

源泉徴収票と似た名称の書類との違い

源泉徴収票には、複数のよく似た書類があります。同時期に発行するものなので、混同しないように気を付けましょう。

給与支払報告書

給与支払報告書は、源泉徴収票とほぼ同一の事柄が記載されている書類で、「弥生給与」など、年末調整対応の給与計算ソフトでは源泉徴収票とともにプリントアウトできます。左側に「給与支払い報告書(個人別明細書)」「(市区町村提出用)」という記載があるのが、給与支払報告書です。

給与支払報告書は、それぞれの従業員が居住している市区町村の市民税課に雇用している事業者が提出します。提出期限は、年末調整をした年の翌年1月31日です。市区町村は、これをもとに住民税や退職者の場合には国民健康保険料などを計算しますから、必ず期限内に提出しましょう。

なお、年末調整をしていない従業員や、退職者の給与支払報告書も提出が必要です(給与支払額30万円未満の場合、義務はありませんが、特別な事情がなければ提出しましょう)。

法定調書

法定調書とは、税務署に提出しなければならない、さまざまな書類の総称です。源泉徴収票も、法定調書のひとつです。

法定調書合計表

法定調書合計表は、法定調書を税務署に提出する際に添付する書類です。複数枚にわたる法定調書の支払い金額等について、項目ごとに合計して記載します。

なお、年末調整に関連して提出が必要なのは、下記の法定調書合計表です(すべて1枚にまとまっています)。

  • 給与所得の源泉徴収票合計表
  • 退職所得の源泉徴収票合計表
  • 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書合計表
  • 不動産の使用料等の支払調書合計表
  • 不動産等の譲受けの対価の支払調書合計表
  • 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書合計表

支払調書

支払調書にはいくつかの種類がありますが、多くの場合は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を指します。これは、源泉徴収義務者である企業や個人事業主が弁護士や税理士、フリーランスのデザイナー、作家などに源泉徴収の必要がある仕事を依頼した際に発行する書類です。該当の1年間に支払った報酬額と源泉徴収税額が記載されています。

なお、支払調書は源泉徴収票とは異なり、報酬を支払った相手に対する発行義務はありません。しかし、税務署には同一人に対するその年の支払金額の合計が5万円を超えるなど一定の場合には提出義務があります。

源泉徴収票はPDFでの交付も可能

源泉徴収票は、給与受給者、税務署、給与受給者の所在する市町村と提出する箇所が複数あるため、かつては3枚または4枚複写の用紙に手書きすることで発行していました。その後、専用用紙などに企業が印字して交付するのが一般的でしたが、2019年4月に確定申告書への原本添付が不要になってからは、PDFでの交付も広く行われています。

従業員は、PDFで発行された源泉徴収票を画面上で見ながら確定申告書に転記したり、自宅で印刷して利用したりすることができるのです。

源泉徴収票の発行は早めに行おう

年末調整が完了したら、1月31日までに必ず源泉徴収票を発行し、従業員に交付するとともに、一定の条件に該当する場合は税務署にも提出しなければいけません。給与支払報告書も1月31日までに各市区町村に送付しなければいけませんから、早めに準備を進める必要があるでしょう。

年末から1月にかけての業務にかかる負担を軽減するためには、源泉徴収票や給与支払報告書などを自動で作成できる給与計算ソフトの利用が効果的です。「弥生給与」や「やよいの給与計算」では、源泉徴収票や給与支払報告書の電子提出にも対応していますので、労務関連の業務効率化にご活用ください。

photo:PIXTA

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