スモールビジネス(個人事業主、中小企業、起業家)の
業務や経営にまつわる疑問や課題をみんなで解決していく場
検索
メニュー
閉じる
ホーム 会社設立 個人事業主が法人化(法人成り)をしたほうがいいか考える判断基準

個人事業主が法人化(法人成り)をしたほうがいいか考える判断基準

はじめは個人事業主としてビジネスを始めた起業家が、数年後に法人化を検討する……よくある相談です。取引先の開拓、信用の向上、税金対策など、法人化の動機はさまざま。そのなかでも今回は、税金面にスポットをあてて、個人事業主が法人化するタイミングについて、お伝えします。

POINT
  • 法人化を判断するには、まずは利益を見よう
  • 法人化して税金の計算上有利になるかどうかは利益の使い方次第
  • 法人化は消費税の課税タイミングにも影響する

法人化を判断するためにはどこを見ればいい?

そもそも、税金面で会社と個人の大きな違いは何でしょうか? 会社は法人税、個人は所得税といった税目の違いがあることはご存じの方も多いと思います。この両者のもっとも大きな相違点は、法人税は基本的に税率が同じ、所得税は所得が上がるにしたがって税率も上がっていく仕組みとなっている点です。

どちらも税額は、売上から費用を引いた利益に対して課税されます。具体的な税率や計算方法は以下の通りです。

所得税=利益×税率-控除額
利益 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円
法人税のほか、法人住民税、法人事業税、地方法人特別税を含む=利益×税率

例えば、利益600万円であれば、400万円×21.42%+200万円(400万円超部分の金額)×23.20%

※期末資本金額が、1億円以下の中小法人(資本金の額または、出資金の額が5億円以上の法人の100%子会社を除く)の場合

利益 実効税率
(平成28年度) (平成29年度) (平成30年度)
400万円以下 21.42% 25.99% 25.99%
400万円を超え800万円以下の部分 23.20% 27.57% 27.57%
800万円超の部分 33.80% 33.80% 33.59%

※実効税率とは、最終的に会社が負担すべき税金の率

※上記には、法人税のほか、法人住民税、法人事業税、地方法人特別税を含む

※上記は、平成28年度税制改正 より標準税率を適用しています。

【参考】日本政策金融公庫 平成28年度税制改正のポイント

この両者の額を比較して、どちらが多いかで法人化するかどうかを判断すればよいということです。しかし、会社と個人では利益の出し方についてさまざまな違いがあり、利益に税率を掛けて比較といった単純なものではないのです。

どのくらいの利益水準で法人化すればいい?

会社と個人事業主では、費用に入れられる項目に多くの違いがあります。一般的に会社の方が幅広い費用が認められることが多く、その結果、同じ事業活動でも会社の方が利益が少なくなるというケースがあります。

両者の大きな違いとしては、社会保険制度(個人事業主は国民年金+国民健康保険、会社では厚生年金保険+健康保険)、社長の将来の保障などを目的に法人向け保険を費用として計上できたり、役員報酬の費用算入などがあります。

なかでも役員報酬の費用算入は、会社と個人事業主でもっとも基本的な違いになります。個人事業主では利益はすべて自分の所得になります。一方会社では、一人社長であっても、会社から決まった額の役員報酬、つまり役員に対するお給料の形でお金を受け取ることになります。また、役員報酬は、個人事業主の利益と異なり、給与所得控除という控除が受けられるのも、会社が有利な大きなポイントです。

まったく同じ売上と費用(役員報酬を除く)の場合で、どのように税金が課税されるのか簡単な図にまとめてみました。

170224_houjinnari_02.jpg

このように、課税の対象となる額だけで比較すれば、会社の方が少なくなることが分かります。実際には、社会保険料の負担額の違いなどがありますので、ここまで単純化はできません。しかし、法人向け保険への加入など会社の方が柔軟に費用の計上ができる結果として、税額は会社の方が少なくなったということは考えられます。

だいたい年間で700万円程度の利益が出れば法人化の目安といわれることもあります。700万円くらいあれば役員報酬を年間400万円くらいとったとしても、法人向け保険への加入資金などが残ります。結局のところ利益(この例では700万円)の使い方次第といえますが、法人化の基準としてはあながち間違ってはいない数字かもしれません。

具体的には、顧問税理士に相談したり、簡単にシミュレーションしてもらったりして判断すればよいでしょう。
【参考】
起業のかんたん税金計算シミュレーション

法人化は消費税の課税時期にも影響する

法人化のタイミングとしてもうひとつ検討すべきなのが、消費税です。個人事業主の場合、2年前の売上が1,000万円を超えた段階で、その年から消費税の納税義務が発生します。1、2年目は2年前の売上がないため、消費税の納税義務は基本的にはないということになります。1年目の売上が1,000万円を超えていれば3年目から消費税の納税義務が発生することになります。しかし、3年目から法人化すれば、一度リセットされますので、あらためて会社として2年前の売上で納税義務を判定することになります。

このように法人化によって消費税の課税時期を先送りできることも法人化のメリットとして把握しておきましょう。
なお、以上のほか、個人・法人問わず前年の前半6ヵ月で売上が1,000万円を超えた場合や、法人の場合は期首資本金が1,000万円以上の場合などにおいては消費税の納税義務が発生します。詳しくは顧問税理士や税務署にご相談ください。

photo:Getty Images

c_bnr_fltestablish
閉じる
ページの先頭へ