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確定申告書提出前にチェック!よくある間違い17

監修者 : 齋藤一生(税理士)

「確定申告」。それは、毎年しているはずなのに何かと抜けてしまったり、間違ってしまったりする作業。いざ申告書を提出するその前に、準備段階から提出後までで特に間違えやすい17個のポイントをもう一度チェックしましょう。税理士事務所センチュリーパートナーズの齋藤一生先生監修です。

「あれ、あの領収書は…?」よくあるミスに注意

確定申告の準備段階は意外と抜け漏れが発生しやすいもの。今一度、忘れがちな点を確認しましょう。

1.財布やカバンのなかに領収書が放置されていないか

普段から整理している人は、このチェックは必要ありませんが、どうしても乱雑になりがちなのが領収書です。あとから高額の経費だった領収書が出てきた……とならないように、財布のなかやカバンのポケットに紛れていないか、念のため確認しましょう。その際は日付が確定申告の対象年のものかどうかも併せてチェックすること。常日頃から、領収書を1カ所にまとめておく習慣をつけておくと紛失を防げますし、探す手間が軽減されますよ。

2.事業用の通帳はほかにないか

事業用の通帳で出入金を確認しながら、帳簿をつけて、確定申告書を作成していきますが、ほかの通帳で経費の引き落としが行われていたり、事業の収入が入金されていたりはしないでしょうか。例えば、普段あまり使っていないクレジットカードで経費の支払いをした場合などは見逃しがちです。ほかの通帳から事業にかかわる出入金がなかったかどうか、今一度、確認しましょう。もしあれば、きちんと帳簿に記入すること。

3.クレジットカードの明細書はすべてそろっているか

クレジットカードで経費を支払うこともあるでしょう。明細書はダウンロードして手に入れることが一般的ですが、その際は必ず事業に用いたクレジットの枚数分の明細書を用意しましょう。複数のクレジットカードで事業用の支払いをしているとどうしても申告ミスが起こりやすいので、事業用のクレジットカードは1~2枚程度に絞るとよいかもしれません。

4.マイナンバーの資料は手元にあるか

確定申告書にはマイナンバーを記載する必要があります。マイナンバーカードをしまい込んでしまっている人もいると思いますので、手元にあるかどうかを確認しましょう。税務署に提出する際は、本人確認書類の提示または写しの提出が必要になります(e-Taxで提出する場合、本人確認書類の提示または写しは不要)。

5.ふるさと納税の寄附金受領証明書は手元にあるか

所得控除の対象となるふるさと納税。しかし、年末が〆切ということもあり、駆け込みで行った場合にバタバタして忘れてしまいがちです。また自治体の年度末の3月など、年の前半にふるさと納税をした場合には、返礼品を消費してしまえば、ふるさと納税をしたことさえ忘れている場合もあります。

ふるさと納税をした際は、後日送付される「寄附金受領証明書」が、きちんと保管されているかどうかを確認しましょう。紛失して再度送ってもらうと、それだけ時間のロスになります。早めの確認を心がけましょう。

家事按分、控除、申告漏れの3つを要チェック

確定申告書に記入する項目でよくある抜け漏れポイントは何でしょうか。家事按分や忘れがちな特定の控除にも注意しましょう。

6.家事按分すべき経費を忘れていないか

コロナウイルス感染症の拡大を受けて、自宅で仕事をする時間が増えていると思います。自宅を仕事のスペースとしても使っている場合、家賃や電気代などの「家事関連費」は、必要経費として計上することができます。

ただ、その際には、個人用と仕事用に区別する「按分」が必要です。家賃の場合は「仕事で使用している床面積の割合」、電気代は「使用時間やコンセントの数」、電話代やインターネット料金は「使用時間」、車の減価償却費・ガソリン代などは「走行距離や仕事に使った日数」が按分の目安となります。

ほかの経費に比べて忘れやすかったり、また、面倒になって「次の申告からでいいや……」と諦めたりしやすいのが、家事按分です。取り掛かると案外と手間はかかりませんし、自宅兼事務所の場合は経費として計上できる額は大きくなります。きちんと計上するようにしましょう。

7.住宅ローン控除は抜けていないか

個人が住宅ローンなどを利用してマイホームを新築したり、増築した場合に、一定の要件を満たせば、「住宅借入金等特別控除」または「特定増改築等住宅借入金等特別控除」の適用を受けることができます。特に新築してからしばらく経つと、年末残高等証明書を確定申告書に添付するのを忘れがちですので、気をつけましょう。

8.生命保険の控除は抜けていないか

生命保険料、介護医療保険料及び個人年金保険料を支払った場合、所得控除を受けることができます。これを「生命保険料控除」といいます。該当する場合は、確定申告書の生命保険料控除の欄を記入し、証明する書類などを添付、あるいは、提示する必要があります。資料をそろえておきましょう。ただし、5年未満の生命保険などのなかには、控除の対象とならないものもあるので、注意すること。

9.保険満期金は発生していないか

加入していた保険が満期を迎えて、支払いを受けていないかを確認しましょう。保険金の契約者と受取人が同一の場合は、原則的に一時所得となります。一時所得の特別控除は50万円ですから、保険満期金から保険料の総支払額を引いた金額が50万円を超えるならば確定申告が必要です。ちなみに、契約者と受取人が異なる場合は、一時所得ではなく、贈与税の対象となるので、間違えないようにしましょう。

10.医療費控除は抜けていないか

その年の医療費が「10万円(所得金額200万円未満は所得金額の5%)」を超えた場合、医療費控除を受けることができます。1年間で大きな病気をしたり、入院した場合は、必ず確認しましょう。ただし、病気や入院などで加入している保険会社から、保険金などを受け取っている場合は、その金額を差し引いて計算します。

また、歯科医院や眼科などは日常的に通院される方も多く、領収書を保存しておくのも忘れやすいです。また、ドラッグストアで購入した虫刺されの薬や頭痛薬などの市販薬にも、医療費控除や医療費控除の特例であるセルフメディケーション制度の対象薬が含まれる場合があります。レシートは財布やポケットのなかに入れっぱなしだったりしますので、忘れずに取っておきましょう。

なお、医療費控除は、生計を一にする家族の分を支払っている場合は合算できるので、家族に病院やドラッグストアの領収書がないかを確認することも忘れずに。

そのほかにも忘れている所得控除がないかどうか不安な方は、次の所得控除一覧記事でチェックしてみてください。

11.一時所得や副収入の申告は漏れていないか

控除や経費の申告漏れ以上に注意したいのが、所得の申告漏れです。例えば、インターネットのオークションサイトやフリーマーケットアプリなどで、転売での儲けを目的とした取引による副収入がなかったかどうか。

また、競馬などの払戻金も課税対象になるので、高額な払い戻しがあった場合には、課税対象になることがあります。意図的ではなくても、申告が抜けてしまうことがあるので、改めて確認しましょう。

12.非課税の所得を申告していないか

それほど多いケースではありませんが、所得のなかには非課税となるものがあります。「遺族年金や障害年金」「示談金や損害賠償金、慰謝料」「生活保護費」などは、受け取った事情などを考慮して、課税は行われません。

ただし、損害賠償金のなかに各種所得の金額計算上、必要経費に算入される金額を補填するための金額が含まれる場合は、補填金額相当分について、所得の収入金額とされるので注意しましょう。

さらに2020年分で気をつけたいのが、新型コロナウイルス感染症に伴う緊急経済対策として、国民に配られた10万円の「特別定額給付金」です。特別定額給付金も非課税となります。個人の口座に振り込まれた場合は、帳簿につける必要はありません。もし事業用の預金口座に、特別定額給付金が振り込まれた場合は、貸方が「事業主借」という形で仕訳を行い、収益に影響がないようにしましょう。

13.事業所得に雑所得が含まれていないか

会社員が副業を行った場合も、副業の所得が20万円を超えていれば、確定申告が必要です。副業による収入は、事業所得あるいは雑所得として申告します。雑所得の場合は、給与所得との損益通算(赤字の所得を他の所得から差し引くこと)ができません。経費の面でも制約を受けることになりますが、事業とみなさなければ「雑所得」での申告なります。

例を挙げると「原稿料」「モデル料」「転売での儲けを目的としたオークションやフリーマーケットでの利益」「アフィリエイト収入」などは雑所得としてみなされるのが一般的です。事業所得として申告することのないように、気をつけましょう。ただ、売上高が大きくて利益が出ている場合は、事業所得でもよいでしょう。

紙の確定申告書の提出で気を付けること

所得税の確定申告書が完成したら、提出の前に最終確認をしましょう。その際に気をつけるポイントを挙げたいと思います。

14.期限に遅れていないか

所得税の確定申告では、1月1日から12月31日までの所得を、原則として翌年の2月16日から3月15日までに申告しなければなりません。3月15日が土日祝日にあたる場合は翌月曜日が期限になります。

もし期限が過ぎてしまい、期限後申告となると、無申告加算税又は重加算税が課税されてしまう可能性が高いです。提出期限はカレンダーにもしっかりと記載しておきましょう。

15.提出書類に不備はないか

提出書類に不足はないか、逆に提出の必要がないものを添付していないかどうかを確認しましょう。領収書や帳簿の提出は必要ありません。源泉徴収票や支払調書の添付も不要です。

青色申告の場合、税務署に提出が必要となるのは、基本的に「確定申告書B」と「青色申告決算書」の2種類。ただし、帳簿類は原則7年間保管し、いつでも提出できるようにしておきましょう。

提出後も気を緩めず最終チェック!

所得税の確定申告書は提出したら終わりではありません。提出後に確認しておきたい事項を挙げました。

納付税額がある場合、申告書を提出して安心せずに納付を済ませましょう。申告期限ぎりぎりに提出した場合、期限に納付が間に合わないことがあります。早めの準備を心がけましょう。後納ができる振替納税制度の申請をしておくのもよいでしょう。

16.申告書等のデータは正しく送信されたか(e-Tax)

e-Taxによる電子申告を行った場合は、申告等データの送信が完了した直後に、受付日時、受付番号、送信者の利用者識別番号などが通知されます。その後、送信されたデータの受信通知がメッセージボックスに届きます。きちんと送信されたかどうかを確認しましょう。もしエラー情報が表示されていれば、エラーの内容を確認のうえ、修正して再度提出が必要となります。

17.還付が行われているかの確認(還付申告の場合)

還付金が発生した場合は、提出後、約3週間~1ヵ月半の間に口座に振り込まれます。早めに提出した人はそれだけ早く還付金も振り込まれることになります。

e-Taxを利用して還付申告を行った場合、支払予定日等、還付金の処理の状況は、e-Taxにログインすれば確認できます。なお、還付金の処理状況が確認可能となるのは、e-Taxを利用して還付申告を行ってから、2週間程度経過した日からとなります。メールアドレスを登録していれば、処理状況が更新された時にメールがくるため、還付金の処理状況の確認が可能となります。

郵送や直接提出の場合、書類に不備や記載ミスがなく還付が確定すれば、還付する金額と振込日が記載されたハガキが送られてきます。あとは、入金を確認するのみです。

以上、確定申告の確認項目について、「準備」「申告書の作成」「提出前」「提出後」とステップ別に挙げました。

ただし、確定申告の作業は幅広く、抜けてしまいがちな点、間違いやすい点も人それぞれあると思います。自分用のチェックリストを作成して、ブラッシュアップしていくとよいでしょう。

所得税の確定申告の作業は煩雑で気が重いものです。しかし、1年間の事業を振り返るよい機会でもあります。どうせ取り組むのならば、前向きな気持ちでやったほうがいいですからね。漏れやミスのない「美しい確定申告書づくり」を目指しましょう。

photo:Getty Images

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