一時所得とは?税率の計算方法や概要、該当条件、注意点を紹介

2022/02/07更新

この記事の監修者田中卓也(田中卓也税理士事務所)

懸賞サイトの懸賞や競馬の馬券の払戻金、生命保険の満期金など、偶発的で一時的な所得は「一時所得」といわれます。一時所得は、金額によっては確定申告をし、課税所得に応じた税金を納めなくてはいけません。

ここでは、一時所得の概要と納める税金の計算方法の他、確定申告のやり方について解説します。

一時所得とは「スポットで得られる臨時収入」のこと

一時所得とは、懸賞の賞金品や競馬・競輪の払戻金といったスポットで得られる臨時収入のことです。その定義は「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得」となっており、具体的には下記のようなものが当たります。

一時所得に当たるもの

  • 懸賞や福引の賞金、賞品
  • クイズ番組の懸賞金
  • 競馬や競輪の払戻金
  • 生命保険の解約返戻金や満期金(一時金として 受け取る場合)
  • 長期損害保険の満期返戻金
  • 法人から贈与された金品(業務として受けるものや継続的に受けるものを除く)
  • 遺失物取得者または埋蔵物発見者が受ける報労金

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一時所得に当たる所得の条件とは?

スポットで得られる臨時収入であっても、その他の所得(雑所得)に該当するものもあります。一時所得に当たる4つの条件を、具体的な例と合わせて見ていきましょう。

営利目的の継続的行為から生じたものでない

通常、競輪の車券や競馬の馬券の払戻金は、一時所得に該当します。

ただし、ソフトウエアを使用して定めた独自の条件設定と計算式に基づき馬券を購入するなど、偶然性の影響を減殺し、年間を通じてほぼすべてのレースで馬券を購入して利益を上げている場合は、「営利を目的とする継続行為」とみなされます。この場合の所得区分は一時所得ではなく、雑所得となります。

継続して受け取らない所得である

通常、生命保険の満期保険金の受け取りは、一時所得に該当します。ただし、生命保険の満期保険金を年金形式で受け取った場合は「一時的」とはいえないため、雑所得となります。

労務や労働の対価ではない

例えば、原稿料や講演料は、労務の対価として支払われるものです。そのためスポットでの受け取りであっても一時所得ではなく、雑所得になります。

資産の売却によって得たものではない

不動産や株式を売却して得た利益は「譲渡所得」となり、一時所得ではありません。

懸賞賞品やプレゼントは一時所得になる?

例えば、懸賞に応募して景品が当たった場合など、企業から個人への贈与は一時所得となります。一方で、親からマイホームをもらう場合など、個人から贈与された場合は一時所得ではなく、「贈与税」の対象となります。

なお贈与税の対象となる場合、確定申告をする年の1月1日~12月31日にもらった財産の合計額が110万円以下であれば、税金を納める必要はありません。

一時所得に確定申告は必要?

一時所得が発生したとき、金額によっては確定申告を行い税金を納める必要があります。「確定申告書」にはA・B、2つの用紙の種類がありますが、一時所得の申告はどちらの申告書でも可能です。

なお、確定申告書Aは2022年12月で廃止されます。2023年1月以降に行う2022年分の確定申告分からは確定申告書Bに一本化されます。

確定申告書のフォーマット
国税庁:「確定申告書等の様式・手引き等新規タブで開く」より申告書A,申告書Bを参照

しかし、一時所得の中には、法律の規定により一部非課税のものがあります。

  • 損害保険契約の保険金
  • 満期保険金のうち、支払った保険料総額より少ないもの
  • 相続税や贈与税の対象となるもの
  • 宝くじやサッカーくじの払戻金

上記は法律によって所得税を課されないとされているため、受け取っても確定申告の必要はありません。

ちなみに宝くじを共同購入した場合は、注意が必要です。当選金を代表者1人が受け取って、その後にほかの共同購入者に分配すると「贈与税」の課税対象になります。当選金を受け取るときには、共同購入者全員で受け取りに行き、手続きが必要です。それにより、全員を非課税にすることができます。

一時所得の課税対象金額は?

一時所得に当たる収入でも、受け取ったお金のすべてが一時所得として課税対象になるわけではありません。一時所得となる金額は、下記の式で算出します。

一時所得の金額=総収入額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最大50万円)

収入を得るために支出した金額
収入を得るためにかかった直接的な経費のこと。払戻金を受けたレースの馬券の購入費用や受け取った生命保険金、払い込んだ生命保険料などが該当する。
特別控除額
一時所得には、最大50万円の特別控除が設けられている。「総収入額-収入を得るために支出した金額」が50万円未満の場合はその全額が、50万円以上の場合は50万円が控除される。

例えば、満期の保険金を受け取った場合の一時所得。生命保険料として、これまでに払い込んだ保険料が400万円あり、満期時に480万円を受け取る場合、一時所得は30万円(480万円-400万円-50万円)となります。

納める税金の計算方法

一時所得の確定申告は、給与所得や事業所得など、その他の所得と合算して行います。ただし「一時所得となる金額」の全額が所得に数えられるわけではなく、他の所得と合算されるのは「一時所得となる金額」の2分の1のみです。

つまり、一時所得と給与所得、事業所得といったその他の所得を合わせた全体の所得の計算式は、下記のようになります。

確定申告における総所得の額=一時所得となる金額×1/2+その他の所得金額

この総所得の額から基礎控除、社会保険料控除などの各種控除分を引き、課税される所得金額を算出します。

さらに、課税される所得金額(1,000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額)から納める税額を下記の速算表に則って計算し、そこから住宅ローン控除や政党等寄附金等特別控除などの税額控除分を引いた金額が、 最終的にかかる税金になります。

所得税の速算表

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円~194万9,000円 5% 0円
195万円~329万9,000円 10% 9万7,500円
330万円~694万9,000円 20% 42万7,500円
695万円~899万9,000円 23% 63万6,000円
900万円~1,799万9,000円 33% 153万6,000円
1,800万円~3,999万9,000円 40% 279万6,000円
4,000万円~ 45% 479万6,000円

例えば「課税される所得金額」が700万円の場合、税率は23%、控除額は63万6,000円です。

700万円×23%-63万6,000円=97万4,000円

  • 2023年(平成25年)から2037年(令和19年)までの各年分の確定申告は、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1パーセント)を併せて申告・納付することとなります。

一時所得の確定申告が不要なケース

一時所得がある人すべてが、所得税の確定申告が必要なわけではありません。

1か所のみから給与を受け取っている給与所得者であれば、給与所得・退職所得以外の所得の合計金額が年間20万円以下の方は確定申告の必要はありません。そのため、給与所得者でその他の所得が一時所得のみであり、一時所得の総収入が90万円以下(特別控除後の金額を1/2したあとの金額で一時所得となる金額が20万円以下となる)の方は、確定申告は不要です。

ただし、給与所得者で一時所得となる金額が20万円以下でも、下記の条件に当てはまる人は確定申告が必要です。

  • 年収が2,000万円以上
  • ダブルワークをしている
  • 一時所得以外にも給与以外の所得があり、給与所得以外の所得の合計が20万円を超える

上記以外にも、「医療費が10万円(合計所得金額が200万円未満の場合「所得×5%」)を超えた」「6団体以上にふるさと納税を行っている」「住宅ローン控除の適用を初めて受ける」など、確定申告で適用を受けられる控除がある場合には、確定申告をおすすめします。

なお、このように確定申告をしたほうが有利と判断され、確定申告する場合には、たとえ一時所得の課税対象となる金額が20万円以下の場合でも確定申告の内容に含める必要があります。

確定申告書への記載方法

確定申告書の一時所得に関する事項は、第一表、第二表にそれぞれ記載する箇所があります。

確定申告書A 第一表

※確定申告書Bでは、対応できる所得区分が多くなります。

確定申告書A 第二表

※確定申告書Bでは、総合課税の譲渡所得にも対応しています。

まず、第二表に「収入金額」と収入を得るために支出した「支出金額」を記載し、「差引金額」を計算します。

例えば、生命保険金の受け取りで、一時所得の総収入が200万円、収入を得るために支出した額140万円の場合は、下記のようになります。

所得の種類 種目 給与などの支払者の「名称」及び「法人番号または所在地」等 収入金額 源泉徴収税額
一時 生命保険金 ○○生命
1234567891234
200万円 0円
収入金額 支出金額 差引金額
200万円 140万円 60万円

続いて、第一表の「収入金額等」「所得金額等」の中にある「一時」の欄を記載していきます。収入金額等の一時の欄には、差引金額から特別控除額を引いた金額が、所得金額等の一時の欄には、差引金額から特別控除額を引いた金額に2分の1を掛けた数字が入ります。

例えば、先程のケースなら下記のようになります。

収入金額等 一時 10万円
  • 差引金額60万円-特別控除50万円
所得金額等 一時 5万円
  • 10万円×1/2

一時所得を計算するうえでの注意点

一時所得を計算するにあたっては、いくつか注意点があります。確定申告の要不要にも関わりますので、しっかり確認しましょう。

満期保険金は金額などにより、確定申告の要不要が変わる

生命保険の満期保険金や解約返戻金を受け取った場合、それまでに支払った保険料の総額が受け取った保険金や解約返戻金の金額を上回っているなら、一時所得はゼロになります。確定申告の必要はありません。

なお、保険金が満期になっても、満期保険金を受け取らず継続したり、再契約したり、すぐには満期保険金を受け取らず一定期間保険会社に預けておくケースもあります。これらのように再契約あるいは据え置いた場合でも、満期日時点に保険金を一旦受取りになったものと考えるため、確定申告が必要になります。

赤字が出ても、事業所得や給与所得と損益通算はできない

損益通算とは、赤字の所得と他の黒字の所得を相殺することです。損益通算できる所得の種類は、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の4つに限られています。例えば、株式の売買でマイナスが出て譲渡所得が赤字になれば、事業所得の黒字と精算し、赤字の分だけ事業所得の黒字を減らすことができます。

しかし、一時所得は他の所得との間で損益通算ができません。例えば、保険を途中解約して受け取った解約返戻金が、それまでに払い込んだ保険料を下回っていた場合でも、赤字分を給与所得や事業所得の黒字分と相殺することはできず、一時所得はゼロになります。

なお、一時所得は他の所得との間で赤字・黒字の相殺はできませんが、一時所得のうちであれば内部通算が可能です。例えば、1年間のうちに、次のように保険Aの解約返戻金と保険Bの満期保険金を受け取った場合、保険Aについては100万円の赤字、保険Bについては200万円の黒字になります。

  • 保険A:解約返戻金100万円-支払った保険料200万円=-100万円
  • 保険B:満期保険金800万円-支払った保険料600万円=200万円

このケースでは、保険Aの一時所得をゼロとはせず、AとBを通算して下記のように計算します。

一時所得となる金額=(100万円+800万円)-(200万円+600万円)-50万円(特別控除額)=50万円

この例だと、一時所得の金額は50万円になり、この2分の1に当たる25万円が確定申告の対象となります。

生命保険の満期保険料は一時所得とならない場合がある

生命保険の満期保険金や解約返戻金は、一時所得となる場合と贈与税の対象となる場合があるため注意しましょう。

保険料の負担者と保険金の受取人が同じ場合

満期保険金などを一括で受け取った場合は、一時所得として扱われます。年金のように、毎月決まった金額を数年間にわたって受け取る場合は雑所得扱いになり、「その年中に受け取った年金の額-その金額に対応する保険料または掛金の額」が雑所得となります。

保険料の負担者と保険金の受取人が異なる場合

保険料を支払っている本人以外が保険金を受け取った場合、受け取った人は、所得税の確定申告は不要ですが、受け取った金額によっては、贈与税の申告が必要です。

一部、確定申告が必要ない一時所得もある

一時所得がある場合は確定申告を行い、2分の1に相当する金額を他の所得と合計したうえで、総所得に対して納める税金を計算し、納税または還付を受けるのが基本です。

ただし、懸賞金付き預貯金等の懸賞金などや、一時払養老保険、一時払損害保険(保険期間が5年以内であるなど一定の要件を満たすもの)といった金融類似商品は一時所得ではありますが、他の所得と分離して支払いの際に一定の税率で所得税を源泉徴収される「源泉分離課税」の対象となっていますので、これらを受け取った場合の確定申告は不要です。

一時所得があった場合は忘れずに確定申告を

生命保険の満期金や解約返戻金や懸賞の賞金は一時所得となり、一定額を超えると確定申告が必要になります。勤務先で年末調整を行う方も、給与所得および退職所得以外の所得が20万円を超えると確定申告が必要です。

一時所得があった場合は、忘れずに確定申告を行ってください。

photo:PIXTA

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この記事の監修者田中卓也(田中卓也税理士事務所)

税理士、CFP®
1964年東京都生まれ。中央大学商学部卒。
東京都内の税理士事務所にて13年半の勤務を経て独立・開業。
従来の記帳代行・税務相談・税務申告といった分野のみならず、事業計画の作成・サポートなどの経営相談、よくわかるキャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・次号継承対策など、多岐に渡って経営者や個人事業主のサポートに努める。一生活者の視点にたった講演活動や講師、執筆活動にも携わる。

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