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按分とは?自宅兼事務所の事業者が確定申告で使える家事按分の方法を解説

監修者 : 齋藤一生(税理士)

個人事業主は、自宅の一室を仕事場にしたり、自宅の1階を店舗にしているなど、プライベートと事業で兼用するケースも多いもの。事業で使用する分は、経費として計上できます。このようなとき、プライベートと事業を分けるのに役立つのが「按分(あんぶん)」という考え方です。

ここでは、確定申告でよく耳にする家事按分(かじあんぶん)を行うケースや、プライベートと事業を振り分ける際のポイントなどについて解説します。

按分とは割合に応じて分けること

按分の辞書的な意味は、「割合に応じて分けること」であり、日常でも使われる言葉です。

例えば、「学校の部活動に支給する部費は、各部の部員数をもとに按分して割り振られている」といえば、学校が部費として用意している予算が、各部に在籍する生徒の人数に応じて割り振られ、部員の多い部ほど多くの予算を振り分けられることを指します。

確定申告で出てくる家事按分とは?

確定申告や経費計算で按分といえば、主に個人事業主が支出した費用を、プライベートでの利用分と事業での利用分に振り分ける家事按分を意味します。

個人事業主やフリーランスなどが、自宅の一室をオフィスとして使っていたり、車をプライベートと事業両方で使っていたりするような場合、家事按分を行うことで、事業で使った分は経費として計上することができます。

家事按分の対象となる主な費用項目としては、家賃、水道光熱費、通信費、交際費、交通費などが挙げられます。

按分が必要になるのはどんなとき?

確定申告において経費の按分が必要になるのは、どのようなときなのでしょうか。ここでは、個人事業主および、NPO団体や公益法人が按分を行うケースについてご紹介します。

個人事業主が按分を行うケース

個人事業主が按分を行うケースとしては、自宅の一室を仕事部屋として使っているような場合や自家用車を事業用としても使う。1台の携帯電話をプライベートでも仕事でも使用するようなケースがイメージしやすいでしょう。

例えば、自宅で仕事をするフリーランスのライターやデザイナー、エンジニア、自宅の一部を事務所としている士業、自家用車を移動手段としているフリーランスのカメラマンなどが該当します。1階が店舗で2階を自宅として居住している場合なども、事業使用分を按分することができます。

NPO団体や公益法人が按分を行うケース

NPO団体や公益法人の場合、収益事業とそうでない事業にかかった費用を、按分するケースもあります。

NPO団体や公益法人は、収益性を持たない事業は非課税、収益性のある事業は課税対象となるので、両方の事業を行っている場合は、両事業に共通する事業活動・管理業務にかかった費用の按分を行うことになるのです。

家事按分をする際のポイント

家事按分のやり方に明確なルールはありません。個人事業主が家事按分を行う場合は、使用面積や業務時間、日数、使用時間などを基準とするのが一般的です。按分の際の基準は、「絶対にこうでなくてはいけない」ということはありませんし、「これが正解」と言い切れるものもありません。税務署に説明を求められた際に、合理的な説明ができることが重要になります。

なお、家事按分の割合は、実際の仕事の状況と照らし合わせて合理的に按分するものです。例えば、1月から6月は取引先に常駐で働いていたが、7月以降は在宅勤務が多くなったという場合は、家事按分の割合が月ごとに変わるというのもあり得ます。

ここでは、家事按分の対象となる費用について、どのように按分していくのか具体的に見ていきましょう。

家賃

自宅の一室を仕事部屋にしていたり、一画を事務所にしていたりする場合は、使用面積で家事按分を行うのが一般的です。

例えば、家全体の面積が約80平方メートルで、仕事場として使用しているスペースが20平方メートルの場合、家賃のうち25%を事業費として計上するのが妥当といえます。なお、共用部分の廊下も事業で利用していると捉えるのであれば、仕事部屋と私用部屋との比率に応じて廊下部分の面積を事業用としても良いでしょう。

水道光熱費

水道光熱費については、1人暮らしの場合、使用時間によって家事按分を行うのが一般的です。

例えば、1日約8時間仕事をし、8時間睡眠をとっているとします。睡眠中はほぼ電気を使わないとすれば、電気代は約50%を事業費として計上するのが妥当といえます。

なお、家賃と同じで面積按分で計上する方法も合理的ですし、簡単だと言えます。特に家族と暮らしている場合には、家族全員に時間を計測してもらうのは難しいですし、面積按分をおすすめします。

しかし、水道代は、飲食業や理美容業など水を実際に事業で使用する業種ではなければ、水道代を家事按分で費用計上するのは難しいでしょう。なぜなら、事業を行わなくても水は飲みますし、トイレにも行きます。

ただし、自宅の1階は店舗でそこのトイレはお客様専用なので、それにかかる水道代など明確に示すことができれば、家事按分で計上可能かもしれません。判断については、税理士さんなどの専門家に相談することをおすすめします。

通信費

通信費も、使用時間によって家事按分を行うのが一般的です。例えば、プライベート兼事業用で1台のスマートフォンを使っている場合、プライベートでの使用と事業に関する調べもの等で使用する時間は同じぐらいなら、スマートフォン代は約50%を事業費とするのが妥当でしょう。

また、1日8時間インターネット回線を使って仕事をし、プライベートでインターネット回線を使うのは1日2時間程度であれば、回線料金の約80%は事業費として良いと考えられます。

ガソリン代

フリーのカメラマンで、自家用車を撮影現場に行く際の移動手段としても使っているような場合は、走行距離で家事按分を行うのが一般的です。

例えば、月の走行距離が500kmで、現場へ行き来した分が300kmであれば、ガソリン代の約60%は事業費とするのが妥当といえます。

事業費・管理費を按分する際のポイント

NPO法人や公益法人で、収益事業と非収益事業にかかった費用を按分する際も、明確に分けられない費用に関しては、面積比やスタッフが作業に従事する時間比などを基準とするのが一般的です。

例えば、スタッフが両方の事業に従事している場合で、1日8時間の勤務時間中、5時間は収益事業に関する事務を行い、3時間は非収益事業に関する事務を行っているなら、その人件費は5:3で収益事業のための経費とするのが妥当でしょう。

また、オフィス内で収益事業に関するチームが使っているスペースがおよそ20平方メートル、非収益事業に携わるチームが使っているスペースがおよそ30平方メートルなら、家賃の40%は収益事業、60%は非収益事業の経費とするのが妥当といえます。

家事按分を楽にしてくれる会計ソフトを選ぶと作業効率化につながる

個人事業主やフリーランスにとって、確定申告の際の家事按分は、事業のために使った分を経費として計上するための大事な作業です。ひとつずつ最適な基準を考え、計算するのは手間がかかりますが、会計ソフトを使えば割合を指定するだけで自動計算してくれます。

やよいの白色申告 オンライン」や「やよいの青色申告 オンライン」なら、確定申告提出書類の作成手順の中に家事按分が組み込まれていますので、計上し忘れることがありません。経費計算が楽になる会計ソフトを、ぜひご活用ください。

photo:PIXTA

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