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特例等の期間延長や電子化はじめ納税環境の整備【令和2年度の税制改正での変更点】

例年どおり、2020年3月31日、令和2年度の税制改正は確定しています。

また、企業の申告担当としては、1年の一大イベントでもある決算業務を間違わずにスムーズにすすめるためにどこが変わったのかを確認しておきたいところです。

今回は令和2年度の税制改正での変更点のうち、法人税における変更点(特例等の期間延長、納税環境整備)について解説します。
納付に関する届け出の電子化や納税環境の整備、納税地の変更があった際の振替納税手続きの簡素化などは個人事業主も関係するので確認しておきましょう。

POINT
  • 特例などの期間が2年延長
  • 電子帳簿保存法の緩和や納付に関する届け出の電子化など納税環境の整備
  • 納税地異動があった際の振替納税手続きの簡素化は、令和3年1月1日以後提出から適用

少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の延長

それでは、軽めのテーマから片付けてしまいましょう。

少額減価償却資産の特例とは、中小企業者等(※)が取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合に一事業年度1年当たり300万円まで取得価額の全額を損金に算入することができる特例のことです。

令和2年度の税制改正で、この特例の適用期限が2年延長され、2022年(令和4年)3月31日までとなりました。

ただし、1点注意が必要なのは、令和2年度の税制改正で、この特例の適用対象法人の範囲が縮小されたことです。従来、この特例の対象となる法人は、青色申告法人である中小企業者又は農業協同組合等で、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人に限られていたのですが、令和2年度の税制改正で、

①対象法人から連結法人を除外する
②常時使用する従業員の数を500人以下(現行:1,000人以下)に引き下げる

と変更されました。

とりわけ②の要件では、この特例の恩恵を得られる法人の範囲が狭まっているので、中堅・中小規模の法人にとっては大きな影響が出ます。ご注意ください。

所得税についても同様の取扱いです。中小企業者に該当する個人で青色申告をする方は、少額減価償却資産の特例が適用できます。

交際費等の損金不算入制度の延長

交際費等の額は、原則として、その全額が損金不算入とされていますが、損金不算入額の計算にあたっては、資本金の額又は出資金の額に応じ、一定の特例措置が設けられています。(ただし後述の通り、平成26年度税制改正以降、資本金1億円超の大企業についても、一定金額の損金算入が認められています。)

従来、交際費等の損金不算入額の計算にあたっては、下記(1)及び(2)の区分に応じ、計算されていました。以下は、平成26年4月1日から令和2年3月31日までの間に開始する各事業年度について記載します。

(1)期末の資本金の額又は出資金の額が1億円以下である等の法人(※)
損金不算入額は、次のいずれかの金額となります。
①交際費等のうち、飲食その他これに類する行為のために要する費用(接待飲食費)の50%に相当する金額を超える部分の金額。
②800万円に該当事業年度の月数を乗じ、これを12で除して計算した金額に達するまでの金額を超える部分の金額。

(2)上記(1)以外の法人(※)
損金不算入額は、上記(1)の①の金額となる。
※平成26年度税制改正において、資本金1億円超の大企業についても、交際費のうち接待飲食費については、50%まで損金算入を認めている。
(上記(1)①)

令和2年度の税制改正で、この特例の適用期限が2年延長され、2022年(令和4年)3月31日までとなりました。

ただし、1点注意が必要なのは、令和2年度の税制改正で、上記(1)①の「接待飲食費の50%についての損金算入の取扱い」からその資本金の額等が100億円を超える法人が除外されることになった点です。

資本金の額等が100億円を超える法人でなければ、年800万円の定額控除限度額も特段変更はないし、単純に、交際費等の特例の適用期限が2年延長されたとの理解で問題ありません。

電子帳簿保存法の緩和

以下の説明は、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存(電帳法10条)についてのものです。国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電帳法4条)についてではありません。つまり、いわゆる電子帳簿保存とか書類のスキャナ保存に関する改正ではないので、ご注意ください。

令和2年度の税制改正で、電子取引を行った場合の電磁的記録の保存要件が緩和されました。既存の制度では、電子帳簿保存法に基づき、「電子取引」を行った場合の取引情報については、電磁的記録を保存することが義務付けられています。

従来、電磁的記録の保存方法として、以下の方法が認められていました。

●電子受領した請求書等に受領者側にてタイムスタンプを付与する方法
●改ざん防止等のための事務処理規定を作成して運用する方法

今回の税制改正では、さらなる要件緩和を目的として、2つの方法が追加されています。

●発行者のタイムスタンプが付された電磁的記録を受領した場合において、その電磁的記録を保存する方法
●電磁的記録について訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができるシステム(訂正又は削除を行うことができないシステムを含む。)において、その電磁的記録の授受及び保存を行う方法

元々、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存の制度については、制度創設以来、大きな改正が行われていませんでした。

近年、経済社会のデジタル化等に伴い、クラウドを活用したサービスやキャッシュレス決済が普及していることを踏まえ、電子的に受領した領収書等の国税関係書類の保存について、時代に即した制度の整備を行ったものとなります。

なお、上記の電子帳簿等保存制度の見直しは、2020年10月1日から施行される予定です。

振替納税・ダイレクト納付の利用届け出の電子化

令和2年度の税制改正で、振替納税の通知依頼及びダイレクト納付の利用届出について、e-Taxを利用した電子化を図るとともに、e-Taxによる申請等を行う際には、金融機関における本人確認を踏まえ、申請者の電子署名及び電子証明書の送信が不要となりました。

これは、国税の申告・納付について、e-Taxで申告データを送信した後、続けてダイレクト納付(預貯金口座からの振替)を行うことで、オンラインで簡単に行うことができるようにする。そして、電子申告・納付をよりカンタンにできることを目指したものです。

納税地異動があった際の振替納税手続きの簡素化

振替納税をしている個人事業主が引っ越しなどで、管轄する税務署が変わった場合、再度手続きが必要でした。しかし、令和2年度の税制改正で、手続きが簡略化されました。

振替納税をしている個人事業主が他の税務署管内へ納税地を異動した際に税務署に提出する納税地の異動届出書等に、異動後も従前の金融機関の口座から振替納税を行う旨を記載したときは、振替納税に係る依頼書を改めて提出することが不要になりました。

そのため、異動後に行う申告等について引き続き振替納税が可能になります。納税地の異動届出書等は、異動前の税務署に提出をします。

適用時期は、2021年(令和3年)1月1日以後に提出する納税地の異動届出書等について適用になります。

まとめ

令和2年税制改正での変更点については、正直なところ、単純な期間延長だけでなく適用対象が縮小していたり、納税環境整備に関わることなので、非常に難しいと思われるのではないでしょうか。

電子申告・納税については、最近の新型コロナウイルス感染による外出自粛の要請や三密を避ける点からも、今後より普及してくるのではと予想しています。国税庁ホームページの記載例等を参考にしたりしつつ、ぜひチャレンジしてみてください。

photo:Getty Images

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