節税に役立つ経費対策「少額減価償却資産特例」って?

確定申告の時期が近づいてくると、節税対策として経費を増やすため、駆け込みであれこれ備品や消耗品を購入するという事業主さんもいるでしょう。ただ、そこで注意してほしいのが、購入したものの値段。それによって確定申告における処理は異なってきます。今回は「少額減価償却資産の特例」を活用した節税対策について解説します。
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2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!
目次
- POINT
-
- 消耗品は価額によって取り扱いが異なる。
- 高額な資産も「少額減価償却資産の特例」で、すべて経費にできる
- 「少額減価償却資産の特例」を活用するためには青色申告で
少額減価償却資産特例なら30万円未満の固定資産が一度で経費にできる!
確定申告で事業の経費を申告する際、10万円未満のものは、「消耗品費」として計上できますが、それ以上の額になると、「減価償却資産」として処理することになり、定められた耐用年数に応じて、購入価額を分割して計上することになります。
ただし、10万円以上のものであっても、その購入価額次第で、通常の減価償却とは別に、以下のような処理を選ぶことが可能です。
取得価額が10万円以上20万円未満の場合
こちらは「一括償却資産」と呼ばれ、購入した価額を3年間に分割した均等の償却をすることができます。
取得価額が10万円以上30万円未満の場合
こちらについては、個人事業主や中小企業者は、次の項目で詳しく説明する「少額減価償却資産の特例」が適応されれば、一度に経費にすることが認められています。
高額経費を一括で処理できる「少額減価償却資産の特例」の条件とは?
「少額減価償却資産の特例」は、個人事業主や中小企業者が一定の条件を満たすことによって、通常耐用年数で分割して減価償却すべき資産を、一括で経費として処理できるという特例です。その条件は以下のようになっています。
青色申告をしていること
少額減価償却資産の特例を受けることができるのは、青色申告をしている個人事業主及び中企業者です。なお、白色申告者にはこの特例は認められていません。
取得価額が30万円未満であること
少額減価償却資産の特例の適用は、30万円未満の減価償却資産を購入した場合に限られています。ただし30万円未満のものならすべて認められるわけではなく、年度内で合計300万円までと定められています。
青色申告決算書に必要事項を記載すること
少額減価償却資産の特例を受けるためには、確定申告で少額減価償却資産の取得価額に関する明細書の添付が必要ですが、個人事業主や中小企業者は、青色申告決算書に必要事項を記載して確定申告書に添付及び提出し、取得価額の明細書を別途で保管すれば、適用を受けることができます。
青色申告決算書に記入が必要なのは以下の項目です。
- 少額減価償却資産の取得価額の合計額
- 少額減価償却資産について租税特別措置法第28条の2を適用する旨
- 少額減価償却資産の取得価額の明細を別途保管している旨
なお、「少額減価償却資産の特例」は期間限定で定められた特例です。2020年3月31日期限が、令和2年度税制改正で2022年(令和4年)3月31日まで2年延長が決定しています。
令和2年度税制改正での変更点としては、2020年4月1日以降は、連結法人、常時使用する従業員500人超の中小企業者等(※)が本特例の対象外になりました。(2020/4/3 スモビバ!編集部追記)
(※)中小企業者等とは、中小企業者又は農業協同組合等以外の法人をいい、中小企業者とは、資本金が1億円以下の法人(同一の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を所有されている法人及び2以上の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を所有されている法人を除く。)、及び資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人をいいます。
ここで、経費処理のおさらいとして、パソコンの購入を例にあげてみましょう。パソコンの耐用年数は4年となっています(参考:減価償却資産の耐用年数等に関する省令)。
そのため、
- 7万円で購入した場合……消耗品費として年度内に全額計上
- 15万円で購入した場合……
- 「減価償却資産」として4年間の分割で計上
- 「一括償却資産」として3年の分割で計上
- 「小額減価償却資産の特例」適応で年度内に全額計上
の3つの方法から選択
- 25万円で購入した場合……
- 「減価償却資産」として4年間で分割して計上
- 「小額減価償却資産の特例」で年度内に全額計上
の2つの方法から選択
上記の方法の中で、「少額減価償却資産の特例」は、青色申告者だけが使える特典です。つまり、青色申告をした場合のほうが経費処理方法の選択肢が多く、事業主が利益状況に応じてより効果的な節税対策ができるといえるでしょう。
「少額減価償却資産の特例」を節税に活用するには
個人事業主の所得額は年ごとに変動があるもの。景気がよいときもあれば、悪いときもあります。それだけに、それに応じた税金対策を常に考えていかなくてはいけませんが、「少額減価償却資産の特例」は、場合によっては非常に助かる節税対策となりうるものです。
この特例をきちんと活用したいならば、まず、その条件となる青色申告をしておくとよいでしょう。そして、仕事に必要な備品や消耗品を買うときも10万円以下なら消耗品にできる、30万円未満ならば少額減価償却資産の特例が受けられる……といったことを常に頭に入れておけば、節税対策を考慮した効率のよいやりくりができるようになるはずです。
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