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コスプレイヤー、同人作家…副業の確定申告、大丈夫?齋藤一生先生(税理士法人センチュリーパートナーズ代表税理士)インタビュー

働き方改革の影響もあり、本業以外に副業で収入を得る人が増えてきました。

趣味の延長で、年間数万単位というお小遣い程度の収入という人がほとんどのようですが、なかには数百万、数千万円と本業以上の売上を稼ぎ出す人も。ただ、副業ではあっても、収入を得たからには忘れてはならないのが確定申告。どの程度の収入になったら、確定申告しなければならないのか? いざ確定申告するとなったら、まず何から始めたらいいのか? 副業の確定申告に強い、税理士法人センチュリーパートナーズの代表税理士・齋藤一生先生に伺いました。

経費を積みかさねれば申告がいらなくなるケースも

ライター

――と、ちょっと怖い話になりましたが、副業の職種によっては経費が多く、申告しなくてもいいケースがあるそうですね。

齋藤一生先生

齋藤:はい。実際にほとんどの人は、売り上げから経費を引くと利益はかなり少なく、申告しなくていいという結論が出ることが多いのです。例えば最近お問い合わせが増えたコスプレイヤーさんでいうと、結果として相談者の9割くらいが確定申告不要でした。

経費を積みかさねれば申告がいらなくなるケースも

ライター

――9割も! それはどうしてでしょうか?

齋藤一生先生

齋藤:コスプレイヤーさんの売り上げといえば、撮影会、写真集、あとはブログのアフィリエイト等だと思いますが、まだ20~30万円くらいの収入という方が多いですかね。経費もかなりかかりますし、収入から経費を引くと、ほとんど利益はなくなってしまいます。

ライター

――やはり衣装類にお金がかかるということでしょうか?

齋藤一生先生

齋藤:衣装や化粧、かつら等、こだわる方は相当お金をかけているようです。ただ注意すべき点もあります。例えばコスプレイヤーさんの場合を例にして、どんなものが経費にできるのか、いろいろと挙げてみましょうか。

・化粧品や衣装、髪のセット……普段のヘアカット代金は認められませんが、イベントのためにセットをしたなら経費として認められます。衣装や下着も、あくまでも仕事用だとわかるように、クローゼット内で分けておくことが大切。化粧品も普段使うものと、コスプレ用と明確に分けておきましょう。

・パソコン、プリンター代、携帯料金、プロバイダー代……ブログの作成や、画像の編集作業などで使用します。私用と按分する(分ける)ことが大切です。

・交通費や宿泊代……撮影のための移動で使用した交通費であれば経費として認められます。また撮影旅行などの場合のホテル代など。ICカードを2枚持っておいて、私用と業務用で分けるといいでしょう。

・家賃、光熱費……コスプレの衣装を置く分の占有スペースや仕事部屋があったら、家賃や光熱費が経費になります。例えば仕事部屋として50平米中10平米分を使用しているなら、5分の1の家賃や電気代を経費で落とすことができるのです。

・飲食代……仕事関係の人との打合せや、コスプレ関係の忘年会やオフ会などの参加費も経費として認められます。

・車、ガソリン代……車での移動も何回を私用として使って、何回を事業で使ったかをメモしておけば、減価償却費として落とすことができます。ガソリン代の領収書も私用と事業用を分けて、保存しておきましょう。

・その他……スタジオ代、イベントの入場料。税理士に相談した場合の報酬、コスプレをする際に参考にしたファッション雑誌。そしてボールペンなどの消耗品も認められます。

齋藤一生先生

齋藤:このように、すべての経費について、ここからここまで仕事用、私用としっかり分けることがポイントですね。またこれらの経費を証明するためには、領収書またはレシートが必要です。しっかり集めておきましょう。

ライター

――いろいろと経費にできるんですね。では、問い合わせがよくあるけれど、これは認められないという経費はありますか?

齋藤一生先生

齋藤:歯科矯正や整形手術の費用などです。これは、仕事以外の私生活でも役に立ってしまうため、事業に必要な経費としては否認されてしまう可能性があります。以前ある大物タレントが、「カツラはいいけど増毛は整形扱いになるから経費にできない」と言われたケースがありました。

ライター

――ここまではコスプレイヤーさんの経費のお話でしたが、そのほかにこれに類似する職業でよくご相談を受けるものはありますか?

齋藤一生先生

齋藤:芸人さん、占い師さんなどは近いかもしれませんね。現金収入が多く、経費に衣装代が多いという点で類似するのではないでしょうか。特に「電話占い師さん」は去年くらいからお問い合わせが増えています。

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「会社に副業を知られたくない」そんなときの対策は?

ライター

――就業規則上では副業を認める会社が増えてきたとはいえ、本業と関係ない職種の場合はNGなど、やんわり副業を禁止されている会社もまだまだ多いようですね。

齋藤一生先生

齋藤:はい。さらに、副業をしていることが知られたら、会社からの評価が下がるのでは? と心配される方も多くいらっしゃいます。

そんな方には申告の際、利益を「雑所得」としておくことをオススメしています。

雑所得とは、FX取引やECビジネスで得た利益等、趣味の延長で得たような収入を指します。そのため、万が一会社に知られてしまったとき……例えば、カメラが趣味で、ネット上で写真を売ったら思いのほか売り上げが伸びてしまった場合など、「趣味の延長である」と言い訳ができますから。

「会社に副業を知られたくない」そんなときの対策は?

齋藤一生先生

齋藤:ただ、利益が上がって来たら要注意。
雑所得は趣味の延長だから利益が290万円を超えても事業税がかかりませんが、事業所得の場合は売上から経費を引いた利益が290万円を超えると事業税がかかってきます。

え? なおさら雑所得のほうがお得では? と思う方もいるかもしれませんが、利益がたくさん出ていると、あとから都税事務所や県税事務所から「この利益の規模であれば、もう事業所得である!」と指摘され、追徴課税される恐れがあるのです。

例えば、利益が400万円ほど出ているのに雑所得で申告した場合。400万円から290万円の控除を引いて、110万円分に対して事業税を払うようあとから追徴が来てしまいます。なお、事業税から会社に副業の存在が知られることはないでしょう。

ライター

――会社に知られたくない場合、ほかに気をつけておく点はありますか?

齋藤一生先生

齋藤:本業の会社のほうで受け取る源泉徴収票は、コピーを取っておくことです。確定申告の際に提出しますが、所得の証明、引っ越し云々の際にも必要になります。そのたびに何度も会社に原本を請求すると、「何かあるな……」と怪しまれることがあるからです。

あとは所得控除に関して。保険の控除などはできるだけ会社で行う年末調整で行ってしまいましょう。確定申告で行うと、会社に副業の存在を知られる可能性が出てきます。

あとは本当に基本的なことですが、利益が1円でも20万円でも、会計ソフトで帳簿をつけて印刷しておくこと。万が一税務署から話があったときに見せれば説明ができますし、赤字で申告しなかった場合に、無申告と責められることはないからです。

ライター

――これから副業を始める人、最近副業を始めたという方にメッセージをお願いします。

齋藤一生先生

齋藤:いざ副業を始めようとなったら、まずは最初に会計ソフトを買うことですね。そして、売り上げをメモして、経費を引いて、という作業を習慣にしてしまいましょう。そうすれば、あとで売り上げがグンと上がったときに慌てることもありませんからね。

2018年は副業が盛り上がってきていることもあり、税務署は無申告の人を相当狙っているという話もあります。のちのち困らないためにも、確定申告はしっかりするようにしましょう。

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Photo:塙薫子
イラスト:いらすとや

齋藤一生さいとう・いっせい

齋藤一生

東京税理士会渋谷支部所属。1981年、神奈川県厚木市生まれ。明治大学商学部卒。
決算書作成、確定申告から、起業(独立開業・会社設立)、創業融資(制度融資など)、税務調査までサポート。特に副業関連の税務相談を得意とする。
税理士事務所センチュリーパートナーズ

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