【副業の収入】青色申告をしたほうがよい場合

所得税の確定申告には、白色申告と青色申告の2種類があります。所得税の青色申告承認申請書を提出しない場合には白色申告となりますが、サラリーマンで副業をしている場合に、あえて青色申告にしたほうがよいのはどんなときでしょうか。
今回は、副業で収入がある方の青色申告について解説していきます。
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目次
- POINT
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- 事業所得や不動産所得でないと青色申告はできない
- 青色申告は所得を少なくできるメリットが多い
- 事業が黒字である以上は、青色申告をしたほうがよい
青色申告ができる条件に注意
まずは、青色申告ができる条件について確認しておきましょう。
所得税の対象になる収入は給与所得、事業所得など10種類に分類されます。青色申告ができるのは、その10種類のうち事業所得、不動産所得(アパート経営など)、山林所得(山林を伐採して売るなど)のどれかがある場合に限られています。
とくに事業所得は、その営む事業の内容・状況によっては事業として認められず、雑所得に分類される可能性もありますから注意しましょう。
この事業所得か雑所得かの判断についての明確な条文はないのですが、少なくとも「事業」という言葉には、儲かることを前提として継続して、しかも覚悟をもって行っているというイメージはありますよね。そういう意味では「小遣い稼ぎに」とか、「片手間で」というような言葉を使う程度では事業として認められないと理解しておけばよいと思います。
なお、青色申告で確定申告をするためには、開業年は原則として開業日から2ヵ月以内、すでに事業を行っている場合は青色申告しようとする年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出する必要があります。
【参考記事】
・青色申告ができる条件とできない条件
・事業所得になる副業と雑所得になる副業の違い
青色申告の具体的なメリットは?
事業所得や不動産所得が黒字である場合に、青色申告をしていることで簡単に受けられるメリットがいくつかありますのでご紹介しておきます。
青色申告特別控除
青色申告特別控除は、事業主がしっかりと帳簿をつけることに対しての国からのお礼のようなもので、その帳簿のレベルに応じて最大10万円か65万円を、その年の必要経費として割増しで所得から差し引けるという制度です。
最大10万円の控除については、現金出納帳などの簡易帳簿をつけることでその控除を受けることができます。白色申告でも記帳が義務化された今となっては、経費などの集計表を作る前段階でお小遣い帳をつけるひと手間が増えるだけですから、チャレンジしやすいと思いますよ。
最大65万円の控除については、いわゆる借方・貸方(かりかた・かしかた)の複式簿記の帳簿をつけて、青色申告決算書の貸借対照表(年末の財産一覧のようなもの)を記載して、確定申告の申告期限内(原則としてその年の翌年3月15日まで)に申告することが要件となります。最大10万円の控除に比べてハードルが上がりますが、そのぶん節税効果も大きくなります。簿記の勉強をして頑張れば手書きでも作成はできますが、実務上は会計ソフトを使うのが現実的ですね。なお、不動産所得の場合は事業的規模(貸家なら5棟、アパートなどは10室以上)でないと最大65万円の控除を受けることができませんので注意してください。
【参考記事】
・最大65万円の特別控除も!不動産所得の基本を知ろう
少額減価償却資産の特例
パソコンなど1年を超えて使えるもので10万円以上するものは、通常は減価償却と言って種類ごとに決められた年数で期間配分して経費にするというルールがあります。
しかし、青色申告の場合は、減価償却になるものでも1組が30万円未満のものであれば、この減価償却のルールにかかわらず、年間最大300万円まで全額をその年の経費として前倒しすることができる特例が用意されています。
事業が黒字なら青色申告
そして、どのくらいの収入があったら青色申告した方がよいかという問題です。
青色申告をするとなると、少なからず白色申告より帳簿付けの手間が増えますから、どの程度の副業収入があれば青色申告にしたほうがいいのかは悩むところですね。
サラリーマンの場合は、事業が黒字であれば青色申告にした方がよいです。その理由は2つあります。
まず、事業などの黒字はサラリーマンの給与所得に上乗せで計算されますから、年収が多いほどもともとの所得税率が高い状態で所得税が計算されます。家族構成や下記所得控除でも変わってきますが、年収600万円で独身の場合だと、事業所得の上乗せに対して30%以上の税率で所得税・住民税がかかることになります。
※給与の収入が600万円の場合、税金の対象になる給与所得は426万円になります。下記速算表では20%の税率になり、さらに住民税が一律10%となりますから合計で30%の税率となります。上乗せが大きくなるほど税率もアップします。
※このほか、所得税に対して2.1%の割合で復興特別所得税が上乗せとなります
つぎに、所得税の計算には、社会保険料控除や扶養控除など、所得から差し引くことができる所得控除というものがあります。サラリーマンの場合、おおよそのケースでこの所得控除は給与所得から引ききれてしまいますので、事業所得などは黒字そのままの金額が課税対象になってしまいます。
以上の2点から、青色申告で所得が減らせることは、税金が安くなる効果が大きくなるということがわかるかと思います。
まとめ
いかがでしょうか。兼業であっても、青色申告をすることによるメリットは十分にあります。もちろん、収入の多い少ないによっては、青色申告による節税効果よりも帳簿付けなどの手間が負担に感じてしまうこともあるかもしれません。しかし、兼業でも事業を営んでいく以上は、自分の事業の経営状態をしっかりと把握できるように帳簿付けをすることをお勧めします。
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