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「陸前高田の美味しいものを多くの人に知ってもらいたい」農家カフェ フライパン 熊谷克郎さん

東京の飲食店に勤めていた陸前高田市の農家出身の熊谷克郎さんは、東日本大震災を機に地元へUターン。そして2014年7月に、地元産の野菜を使った料理や地ビールを出す農家カフェ フライパンをオープンさせた。陸前高田市の美味しいものをもっと広めたいという熊谷さんに、開店のいきさつや店にかける想いなどを聞いた。

地元の美味しいものを発信する場に

店のコンセプトとして考えたのが、”陸前高田市で美味しいものを作っている、何か面白いことをやっている”のを発信することだった。

「米崎のりんごってすごく美味しいんですよ。この美味しいりんごをどうにかして売りたいという想いがありました。店をオープンする前に友人とりんごビールも作ったんですが、それと少し似ていて、”陸前高田市では美味しいものを作っているんだ!”ということを広めたかったのです」

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“カフェ”という名前にしたのは、地元の人や県外、市外から来るたくさんの人たちの交流の場になってほしいという想いがあったからだ。

「妻は千葉からやって来たのですが、この街は何もないので最初は本当に驚いていました。行くところがないのなら、自分たちでカフェでも作ってしまおうという感じもありましたね。子供もいるんですが、お母さんたちに子連れでもゆっくりしてもらえるような店にしたいとか……。こんな家族の想いが、店を出すことのきっかけの1つだったかもしれませんね」

貴重な「りんごの地ビール」が名物

店の看板メニューは「ハイカラチキンカレー」。本格的なスパイスを使っていて、家庭ではなかなか作れないようなカレーに仕上がっている。辛さも5段階で調節できるようになっている。

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そして、飲み物は何といっても「りんごエール陸前高田」という名物の地ビールだ。
「りんご農家をやっている友人がいたので、そこと協力してりんごを使った地ビールを作ろうと2012年くらいから取り組みを始めました。今年が2シーズン目になります」
このりんごビールは、アルコール発酵する一歩手前でりんごをすり潰し、そこにりんごジュースを入れて一緒に発酵させたもの。生産量が極めて少なく、店頭にはほとんど出回ってない。店で飲めるのもここだけという、とても貴重なビールだ。

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店のオープンは今年(2014年)の7月26日。8月は1,000人ほどの来客があった。しかし、8月は観光シーズンということもあり、参考にはならない数だと熊谷さんは言う。今後はコンスタントに売上を上げるために、新しいメニューを開発したり、SNSで情報を発信したりと、いろいろなアイディアを考えている。「新しい気付きだったり、独自のアンテナを張る感性だったり、先を少し見るような感覚は必要だと思います。やはり常に新しいアイディアを出していくことが、今後の店の経営には欠かせないと考えています」

震災の影響でスタッフ不足に

売上のことは大きな課題だが、それ以上に熊谷さんを悩ませていることがある。それはスタッフの数が不足していることだ。現在は熊谷さんを含めて7人体制で行っているが、仕事を掛け持ちしている人もいるので、すべてのスタッフが終日働けるわけではない。
「20代や30代の働き盛りの若者は、震災直後に働き口を失って、そのまま盛岡や花巻のほうで仕事を見つけて陸前高田を出て行ってしまった人が多いんです」
以前は地元で働きたくても、若い人ができる仕事は少なかった。震災後はそれが逆転してしまったのだ。しかし、このような問題はあるが、熊谷さんは従業員のときに味わえなかった経営者としてのやりがいも感じている。

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「自分の考えで売上を作れるのはいいですね。こういうのを作れば、お客さんが喜ぶなとか、こういうのを求めているのかなとか。日々それを考えながらやっていくのはとても楽しいことです。そして、それが当たったときは特にうれしいですね」

将来は”6次産業”も視野に

熊谷さんは当面のあいだはこの店でかんばっていくというが、将来は実家のりんご農家を継ぎたいと考えている。
「生産するほうにまわりたいなと思っています。りんご以外も作ってみたいです。そして、そこで作った野菜なんかをこの店で出していきたいですね。できれば、この店とうちの農家だけでかなり小規模な”6次産業”をやれたら面白かなと考えています。りんごビールにももっと力を入れていきたいですし」
さらに、農園のほうを任せられるような就農する人も増やしていけたらいいと熊谷さんは言う。
「その中で利益を生み出せる新しいビジネスモデルができるといいですね」

農家カフェ フライパンオーナー 熊谷克郎

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2014年7月に岩手県陸前高田市米崎町にオープン。店舗面積は93㎡とかなり広いが、35席しか設けていないので、店内はゆったりとしておしゃれな雰囲気の作りになっている。子連れの方にも気兼ねなく利用できるように、靴を脱いで過ごせスペースもある。食事のメニューも充実しており、夜はバーとしても楽しめることができる。営業時間は午前10時~午後11時。月曜日定休。農家カフェ フライパンのfacebook

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