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【年始の挨拶回り】アポは必要?粗品の準備や滞在時間は?気をつけるべきビジネスマナー

2022.05.25

新年に仕事でお世話になった方への挨拶として「年始回り」を検討している人も多いでしょう。
いつまでに訪問するか、粗品はどうするか、アポなしでいいのか、メールでもいいのか……実は意外と知らないビジネスマナーもあります。
年始回りをビジネスチャンスにつなげ、新年から気持ちよく仕事を始められるよう、押さえておきたい年始回りの準備や年賀状、ビジネスマナーについてまとめました。


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そもそも、年始の挨拶回り「年始回り」の意味とは?

日頃、特にお世話になっている方のところへ、手土産(お年賀・年賀品)を持って新年の挨拶に伺うのが「年始回り」です。

本来は、正月に親族が本家に集まって年始の挨拶を交わし、祝い善を囲む行事を指していたため、今でも一般的には実家や親戚宅に伺うケースが多いでしょう。

しかし、江戸時代には、商売をしている家の主人が、手土産を持って出入り先に新年の挨拶に行くことも「お年始」と呼ばれるようになりました。

そのため現在でも、取引先の会社や、仕事でつき合いのある方のお宅へ出向いて挨拶をするのは、特にスモールビジネス(フリーランス、個人事業主、中小企業、起業家)の場合、忘れてはいけない大切なしきたりとされています。

年始の挨拶回りはしたほうがいい?する/しないの基準はある?

「忙しい年始に挨拶に伺って迷惑ではないか?」などと考えていたら、年始回りがなんだか億劫に……なんて人もいるかもしれません。

けれど、やはりビジネスシーンにおいて挨拶はとても重要なもの。年始回りをしっかり行うことで、自分も先方も晴れやかな気持ちで新年をスタートすることができます。

もちろん基本的には電話やメールで済ませるのではなく、お世話になった方のところに直接顔を出して挨拶をするほうがいいでしょう。

年始回りの際は、できれば事前にアポイントを取っておくことをお勧めします。「挨拶のみですぐに失礼いたしますので」と伝えておきましょう。

ただ、年始は多忙な時期であり、先方に空き時間がなかったり、訪問を断られたりするケースもあり得ます。その場合にまで無理に押しかけるのは逆効果です。年賀状での挨拶に切り替えるなど、ぜひ相手の立場を慮った行動を取ってください。

なお、自分が喪中の場合に年始回りを控えることは、決して失礼には当たりません。また、先方のお身内に不幸があって間もなく新年を迎えた場合、年始の挨拶どころではない状況も考えられます。訪問先が喪中の場合も、事前に訪問の可否を確認しておくのがいいでしょう。

年始の挨拶はビジネスチャンス?挨拶だけで終わらない工夫とは?

挨拶は、自分の人間性や気配りが意外によく出るもの。そのため、仕事先への年始回りは、あなたという人間のよさをさりげなくアピールできるビジネスチャンスにもなります。

挨拶だけで終わらない工夫として、仕事の提案を狙っている場合などは、「それでは、次の打ち合わせはいつ頃がよろしいでしょうか?」と、一歩引いた表現で次回のアポイントを決めてもらうと、年始回りを次の仕事につなげられるかもしれません。

また、あなたが持っている仕事上のヒントやアイデアを「ちょっと思いついたことがあったので」と伝えておくだけでも、先方から感謝されるかもしれませんし、向こうはあなたに仕事を頼みやすくもなるでしょう。こまめさはビジネスの武器になります。

挨拶後の帰り際には、「貴重なお時間をいただきありがとうございました」「お会いいただき光栄でした」など感謝の気持ちを述べると、先方も自分を大事に扱ってくれたことをうれしく思うはず。それが新たなビジネスの始まりになる可能性も高いです。

取引先へは「先方の仕事始めから2~3日の間」に訪問

元日は自宅で歳神様を祀る日なので、年始回りには出かけません。お世話になった人のお宅に伺う場合は、本来は1月2日か3日、それが難しい場合は遅くとも7日までに、先方の都合を確かめてから訪問します。

その際は、基本的には早朝や食事時を避けるのがマナーとされています。日中の11~16時頃に、昼食時を避けて訪問するのがいいでしょう。

年始回りでは長居もNGとされているので、玄関で挨拶をするだけでも充分です。できれば先方のお宅に上がることは避けてください。上がるよう勧められた場合も、長居は禁物。20~30分程度で、おいとまする旨を申し出るようにしましょう。

取引先の会社などに伺う場合は、先方の仕事始めの日から2~3日の間、遅くとも1月15日までに、先方の都合のいい時間帯を確かめてから訪問しましょう。

手土産は何を選べばいい?のし書きは必要?

年始回りでは、手土産を持参し、手渡しすることが基本です。

訪問先の人数などにもよりますが、相手の負担にならないよう、2000~3000円程度を目安に、菓子折りや飲み物、果物などの手軽な「消えもの」を選ぶのが主流です。

以下に、食べ物を贈る場合のチェックポイントをまとめました。

①手土産を選ぶ前に訪問先の人数、冷蔵庫の有無、賞味期限の設定を確認

仕事でつき合いのある当人だけに手土産を用意するのではなく、お宅に伺う場合はご家族、会社に伺う場合は関係部署全員に用意するようにしましょう。

特に会社の場合、関係部署に何人くらい人がいるのか把握しておき、数が足りるように手土産を選んでください。

会社によっては、職場に冷蔵庫を置いていないところがあります。冷蔵庫の有無が事前にわからないときは、ケーキなどの生菓子は避け、要冷蔵でないものを選んでください。

また、先方の立場に立って考えると、年始は贈り物が増えるため、賞味期限を確認し、できるだけ日持ちするものを贈るのが喜ばれます。

②仕事中でも手軽に食べられるものを選ぶ

多くの人が忙しく働く会社では、サッと片手で食べられる、小さめのものや軽いものなどが好まれます。

個包装されているものが分けやすいので好まれますが、「死」や「苦」を連想させる4個入りや9個入りのものを贈ると、「縁起が悪い」と気にする方もいるので、念のため気をつけておきましょう。

③間に合わせのお店で買わない

年始回りの直前に、訪問先近くのお店に飛び込み、大急ぎで適当なものを見繕う……という買い方をついしてしまいがちな人もいると思います。しかし、「間に合わせ」では相手への感謝の気持ちなどが伝わりません。マナーとして避けておくべきパターンです。

④喜ばれる手土産例

手土産で喜んでもらうために必要な気配りは、品物を厳選することです。事前のリサーチとして、「先方の好きなものは何か?」「相手の好きなものを売っている評判のお店は?」「流行や話題になっているものは?」という3点を押さえておくといいでしょう。

条件面で問題がないなら、できたてのサンドイッチや鯛焼きなども喜ばれるかもしれません。

ただし、事前のリサーチなどが難しい場合は、万人に喜ばれやすい「クッキー、チョコレート、ラスク、煎餅、饅頭、季節限定のスイーツ、紅茶やコーヒー」などが無難です。

万が一、食品系の会社へ年始回りに行く場合は、先方の競合会社の商品は選ばないように注意しましょう。

⑤のし書きをつける

お年賀ののし紙は、紅白5本、蝶結びの水引が一般的です。先方が、誰からもらったものか判別できるよう、のし紙の中央下部に自分の名前や会社名を小さく入れておきましょう。

表書きは「御年賀」「御年始」「賀正」など。目上の方には「御慶」を使うと、礼儀正しさが伝わります。もし1月7日を過ぎて渡す場合は、「寒中見舞い」と書いてください。

食べ物以外を贈る場合

「実用的に喜ばれるもののほうがいい」と考えて、食べ物以外のものを贈りたいと考えるケースもあるでしょう。その場合は、誰でも使いやすい「タオルや手ぬぐい」、年始の挨拶だからこその「干支グッズ」などが人気です。

ただし、食べ物以外の贈り物は、マナー違反になってしまうものが多い傾向も見られます。例えば靴下などは、「相手を踏みつける」という意味合いに取られてしまう恐れがあります。

1つずつ調べるのが面倒なら、年始回りの手土産に食べ物以外のものを選ぶのは避けておくほうがベターだといえます。

また、昨今ではコンプライアンスが厳しくなっており、「食べ物でも食べ物以外でも、そもそも贈答品を受け取れない決まりになっている」という会社もあります。可能であれば、先方に確認しておくといいポイントかもしれません。

いざ、年始回りへ!年始回りの挨拶例

年始回りは、長居は禁物なので、口頭での挨拶も冗長にならないよう気をつけておきたいところです。基本的には、以下の4種類を押さえておきましょう。

  • 新年を祝う言葉……「明けましておめでとうございます」など。
  • 日頃のお礼や感謝を伝える言葉……「昨年中はお世話になりまして、ありがとうございます」など。
  • 今年の仕事での目標を伝える言葉……「今年は○○を目指します」など。
  • 今後も変わらぬ交誼をお願いする言葉……「今年もよろしくお願いいたします」など。

長らく直接会っていない相手の場合は、相手の無事を喜ぶ言葉や、無沙汰を詫びる言葉を伝え、簡単な近況報告をするのもおすすめです。

また、先方の状況や、周りを取り巻く社会情勢、その年に予定されているイベントの話などを挨拶に取り入れるのもいいでしょう。

手土産の渡し方、渡すタイミング、渡すときに添える言葉は?

手土産をお店の手提げ袋のまま渡してしまうケースを見ますが、これはNGです。「気持ちを包む」という意味で、きちんと風呂敷で包んで持っていきましょう。

手土産は本来、玄関、あるいは部屋に通された時点で渡すものです。簡単なお伺いの挨拶をした後に風呂敷から出し、品物を回転させて、相手に正面を向けて差し出します。

一昔前は手土産を渡すときに、謙遜のニュアンスで「つまらないものですが」という言葉を添えたものですが、最近は適切な表現ではないという考え方が主流になってきています。

それより、相手に喜んでもらいたいという気持ちをストレートに表現するほうが、受け取る側も気分がいいものです。

「お好きと伺いましたので」「お気に召すとうれしいのですが」「お口に合うかどうかわかりませんが」などの一言を添えて、「ぜひみなさんで召し上がってください」と手渡すようにしましょう。

席へ案内された!上座と下座はどっち?手土産の位置

基本的には玄関でおいとましたいところですが、先方に部屋に案内していただくケースもあります。失礼がないよう、上座と下座をしっかり理解しておきましょう。

洋室の場合

基本的に出入り口のドアから一番遠い席が上座で、近い席が下座になります。

ソファの場合は、長椅子のほうに客人が座り、一人席のほうに家人が座るのが一般的です。洋室の場合は、先方に席を勧められるまで、下座に近い場所で立って待ちましょう。

この後は、先方が落ち着いたら、椅子に座る前に言葉を添えて手土産を手渡します。机やテーブル越しではなく、相手と直接向き合ってから両手で渡しましょう。

和室の場合

和室の上座は、掛け軸がかけられている「床の間」や、その脇に設けられた「床脇棚」に近い席です。

床の間がない場合は、出入り口から遠い席が上座、近い席が下座になります。先方から席を勧められるまでは、下座に一番近い場所で、畳の上に正座して待ちましょう。立って待つのはNGなので要注意です。

また、手土産は下座により近い位置に置くのがマナーです。席を勧められたら、座布団に上がる前に、正座のまま相手の真正面以外で風呂敷を開き、手土産を取り出してから畳みます。そして相手に品物の正面を向けて、言葉を添えてから手渡します。

このとき、畳の上を滑らせて渡したり、机や座卓越しに渡したりするのも厳禁です。品物を両手で胸の前あたりに持ち上げてから渡しましょう。

担当者が不在!そんなときは、「賀詞」を朱印した名刺を

たとえアポイントを取っていても、年始は何かと忙しいものです。

会社訪問で相手と会えなかったときのために、賀詞の朱印を押した名刺を準備しておきましょう。訪問した事実と、訪問の意図だけでもわかるようにしておくのが丁寧です。

社員の方などにお願いして、担当者の机に名刺を置いてもらったり、帰社後に直接渡してもらったりしましょう。

どうしても話したい相手の場合は、再び訪問するか、電話やメールなどでフォローをしておくのがお勧めです。

1文字の賀詞、2文字の賀詞、4文字の賀詞

  • 1文字の賀詞……「寿」「福」「賀」「春」「禧」「吉」「安」「慶」「和」
  • 2文字の賀詞……「賀正」「賀春」「頌春」「迎春」「慶春」「寿春」「慶賀」「賀寿」「初春」
  • 4文字の賀詞……「謹賀新年」「恭賀新年」「謹賀新春」「恭賀新春」「恭頌新禧」「敬頌新禧」「敬寿歳旦」

使う賀詞はどうすれば失敗しないの?

賀詞はいろいろな種類がありますが、1文字・2文字の賀詞は表現がシンプルで、実は相手への敬意を表す文字が入っていません。めでたい言葉なのですが、丁寧さにはやや欠ける印象があるため、目上の方が相手であれば使用は避けるほうが無難だといわれています。

一方、4文字の賀詞には、「謹」「恭」「頌」「敬」などの敬意を表す文字が入っているため、目上の方や取引先などへの使用に適しています。失敗を防ぐには、名刺には4文字の賀詞の朱印を押すのがいいでしょう。

アポなし訪問の場合のマナーとは?

基本的には、短時間の年始回りでもアポイントを取ってから伺うことをお勧めしますが、訪問先の社風や、相手との関係性などによっては、アポなし訪問をする場合もあるでしょう。

その際は、始業直後や終業直前、昼食時、相手が忙しそうな時間帯などの時間は避けるのがマナーです。

もし対応してもらえたら、突然の訪問にもかかわらず、先方が多忙な中で時間を割いてくれたことに感謝とお詫びを述べましょう。そして、簡単な挨拶だけで済ませるようにして、5~15分程度を目安に切り上げてください。

年賀状で年始の挨拶をする場合

年賀状の文例

遠方だったり、スケジュールが厳しかったりして、どうしても直接は年始回りに伺えない相手もいるでしょう。その場合は、年賀状での挨拶をお勧めします。直筆の文字には、電話やメールにはない独特のぬくもりがあり、印象に残ります。

たとえ印刷した年賀状でも、自筆の添え書きは忘れないようにしてください。

今回は、ビジネスでのおつき合い上手になるための、年賀状の文例を紹介します。

  • 謹んで新春のご挨拶を申し上げます
  • 皆々様にはお健やかに新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。
  • 旧年中は格別のお引き立てにあずかり、まことにありがたく厚く御礼申し上げます。
  • 本年も倍旧のご愛顧を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
  • ○○プロジェクトの節は本当にお世話になりました。これからも微力ながらお役に立てるよう頑張ります。

賀詞は1つの文書に1つだけ使うのがマナーです。また、「元旦」は1月1日の朝を指す言葉。日付と一緒に使うのは重複になってしまうのでNGです。

送る相手によって、内容がふさわしいかどうか考える必要はありますが、自分を印象づけたり、相手との心の距離を縮めたりするために、添え書きで自分の周辺の出来事などを簡潔に入れておくのもいいでしょう。

また、仕事に関すること以外に、相手が個人的に話していた話題(家族のこと、趣味のことなど)があれば、それについて一歩踏み込んだ言葉を書いてください。その言葉が自分だけに贈られたと感じると、受け取った先方はきっと好感を抱くでしょう。

まとめ

新年の訪れとともに、日頃の気持ちを直接伝える「年始回り」という行為は、ビジネスパーソンとしての美しいコミュニケーションです。マナーを押さえておけば、きっと仕事相手との関係が、よりいっそう素晴らしいものになるでしょう。

【参考書籍】
『大人なら知っておくべきお作法の教科書』(枻出版社)
『気配り王の人間関係大事典』(青春出版社)
『心が伝わる短い手紙・はがき・一筆箋』(主婦の友社)
『おつきあい上手になるための手紙の書き方と贈り物のマナー』(毎日コミュニケーションズ)

photo:Getty Images

この記事の著者

矢郷真裕子

編集者・ライター。出版社勤務を経てフリーランスに。手がけてきた分野はエンターテインメント(お笑い・音楽)、グルメ、衣料(ファッション)、児童、占い、街ブラ、ライトノベルなど。

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