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地元・福島の生産農家の可能性を掘り起こしたい―GNS 廣田拓也氏 インタビュー

福島県二本松市に拠点を置く食品事業社・株式会社GNS。同社の常務取締役・廣田拓也さんは、2017年2月12日、東北大学百周年記念会館(川内萩ホール)で行われた起業家によるプレゼンイベント「SENDAI for Startups! 2017」に福島県代表として出場。弥生賞、グロービス賞、そして会場から投票を募って決めるプラチナ共感賞(最優秀賞)のトリプル受賞を果たしました。福島県の生産農家をサポートするため、廣田さんは事業家以外にもさまざまな顔を持ち合わせます。そんな廣田さんに今の思いをうかがいました。

廣田拓也さん

「0→1」「1→∞」を実現するための伴走者として

――新ブランド展開と併行し、2011年には特定非営利活動法人Leaf(リーフ)という団体を設立されています。こちらはどのような活動なのでしょうか?

GNSは営利法人ですから、どうしても売上や利益を上げることに注力しなければなりません。そこで特定非営利活動法人Leafのほうでは、プロボノ(専門家が持つ特性を活かしたボランティア活動)精神で生産者のところへ出向き、どういう発想でものづくりをしていくべきか、生産者の伴走支援を行いたいと考えています。

――例えば、どんな活動があるのでしょうか?

最近はLeafが企画した「福島農業生産者デザイン支援プロジェクト」が「東日本大震災復興支援 JT NPO応援プロジェクト」に採択されています。これは生産者同士のネットワーク化により市場開拓を目指すプロジェクトです。生産者の方が持つ農業にまつわる資源・技術をブラッシュアップするために、人材育成とデザインの支援を行う予定です。ここでいう「デザイン」とは、ロゴやパッケージのデザインのことではなく、事業全体を構築するという意味での「デザイン」のこと。今回、弥生賞でいただいた賞金10万円はその事務局費に全額寄付したいと考えています。

――Leaf以外にも一般社団法人COOL AGRIという団体で、廣田さんは事務局長を務めています。

こちらは2015年3月11日設立された団体です。参加農家には「糖度のギネス認定を狙っている桃の農家」「伊勢志摩サミットのお土産品に選ばれたリンゴジュース」など、すでに成功している方が多い。私たちはそうした”とがった生産者”の可能性をよりいっそう追求する組織として、農園イベントの企画・実施や販路開拓支援を行っています。

ゆくゆくはCOOL AGRIを株式会社化し、福島県内の農業のなかのベンチマークにできれば、と思っていて、イメージとしては、Leafのほうが「0→1」の伴走支援、COOL AGRIのほうは「1→∞」の伴走支援といった感じでしょうか。いずれにせよ、生産者自身に理念をもたせ、彼ら自身で達成してもらう。GNSとして自社製品を展開していくとともに、県内生産者の可能性の掘り起こしや伴走支援を行うのが、今の私の活動となっています。

福島に生まれたプラットフォーム「Fukushimart」

――今後、廣田さん個人として地元で成し遂げたいことは?

県内で農業のプラットフォームを成長させたいですね。実は今年3月25日、郡山駅から車で10分ほど走らせたところにある「三春ハーブ花ガーデン」内に、「Fukushimart」(フクシマート)というスペースをプレオープンしているんです。

物販スペースでは県内の農作物や加工商品を生産者自らが選んで陳列し、店番も生産者自身で行います。さらに店の裏手はシェアオフィスとして開放され、生産者、バイヤー、さらには農業とはまったく関係ない業種の人などがこの場所に集まります。

自由な交流のなかから新しいビジネスやプロジェクトがスタートすることを期待していて、すでにFukushimartをきっかけにスタートしている商談もあるほどなんです。

廣田拓也さん

――事業者としての顔とともに、一種のプロボノ的な伴走支援者としての顔をお持ちですが、活動の源泉になっているのはどんなことなのでしょうか?

震災以降、私は「ふるさと」というものについて本気で考えるようになりました。それまではこの土地が自分のふるさとだと考えたことはあまりなかったのですが、生産者やお客様ひとりひとりの声を聴くにつれ、自分が地域社会でどうあるべきか考えるようになりました。特にマルシェ(青空市場)での体験を通じ、共感者と一緒につくって、一緒に売ることが大切だと思った。それが今の活動につながっています。

GNSの役員、リーフの理事長、COOL AGRIの事務局長、そしてFukushimartの支配人と複数の立場がありますが、今後も福島の農業の可能性をいっそう掘り起こす活動に寄与していきたいです。

――本日はどうもありがとうございました。

廣田拓也ひろた・たくや

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1981年福島県二本松市生まれ。大学を卒業後、一部上場のシステムメーカーに勤務。地元福島県二本松市で兄が平成17年に株式会社GNSを設立したことに伴いUターン。順調に売上が伸びてきたところで東日本大震災が発生。既存の事業モデルが崩れ、一部事業の方向転換を図る中で前理事長と共にNPO法人Leafを設立。「生産者の再生産を支援する」という事業理念のもと、現在は農産加工品に付加価値を付け、販路を拡大することを目標に、生産者と共に日々奔走している。 

株式会社GNS

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