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買い物弱者問題の解決は、地域を活性化させる―シェアショーファー・桃坂氏インタビュー

起業家・桃坂利彦さんはこのたび「株式会社シェアショーファー」を創業。「国内に700万人もいるという“買い物弱者”の下支えになる」という、同名の“おかかえ運転手”シェアリングサービスを考案されました。

さらに桃坂さんはそのビジネスプランを携え、2017年2月、シニア起業を支援する銀座セカンドライフ株式会社主催の「ビジネスプランコンテスト」に出場。50歳以上の個人事業主あるいは法人代表者が応募条件のこのコンテストは「新規性・革新性」「成長性・将来性」「経営者の資質」「社会的な貢献度」「収益性」「実現可能性」を選考基準として競われるもので、本年度は桃坂さんが「弥生会計賞」を受賞されています。

シェアリングエコノミーがにわかに注目を集める昨今、桃坂さんが考案された「シェアショーファー」とはいったいどんなサービスなのか——桃坂さんご本人にお話をうかがいました。

おかかえ運転手を会員同士でシェアする

――高齢者による「自動車免許証の返納」の話題は、最近特に耳にする社会問題ですよね。桃坂さんが考案された「ShareChauffeur」(シェアショーファー)はそうした社会問題を解決するものだとうかがっています。

はい。経済産業省の推計では、日常的な買い物が困難な状況に置かれている「買い物弱者」が国内に700万人ほどいると言われ、その数は増加傾向にあります。そもそも”Chauffeur”というのは「おかかえ運転手」のこと。「ShareChauffeur」は、そんな買い物弱者の皆さんを助けるための”新しい移動手段”なんです。

――具体的には、どんなサービスなのでしょう?

同じ地域に住む複数のShareChauffeur会員—-主に高齢者が対象—-が、おかかえ運転手付きの車両をシェア(共有)し、「自宅からまちの中心地まで」「病院から自宅まで」といった具合に、ドアtoドアで移動できるようになります。

当社は、IT活用型の配車システムを使い、会員の皆さんにこれらの「運転手」「車両」を提供していこうと考えています。

――想定している利用者数や費用感は?

10名乗りの車をエリア内で複数回往復させ、平日の日中の時間帯で、1日あたり約70名ほどの利用者を想定します。だいたい月1万円程度の定額制です。

――そもそも「買い物弱者」という社会問題に着目されたのはなぜなのでしょうか?

主に2つの要因が重なりました。

まず、福岡の田舎町に住んでいる私の両親が、70歳を過ぎた頃に免許証を返納しました。それができたのも、両親の自宅から10分くらい歩いたところに小さなスーパーマーケットがあったから。しかしそのスーパーが、たまたま5年ほど前になくなってしまったんです。

次に買い物ができるところは、家から3kmほど離れたところにしかない……。少し歩いたところにバス停があるので、本数は少ないながらも今はなんとかなっていますが、今後もそこで生活していくには不安が残ります。そうして自分の両親が買い物弱者になったことが、この問題に着目するようになったひとつの大きな要因です。

――なるほど。かなり自分ゴトともいえる問題があったのですね。もうひとつの要因は?

これまでの仕事のことです。私は大学で土木学科を専攻し、大学卒業後はゼネコンに就職しています。トンネル、橋梁、下水道といった社会インフラの施工管理に従事し、交通インフラや都市工学という領域にも接点がありました。

先の”買い物弱者”の問題をなんとか解決する方法はないかと思いふけっていたときに、自分の専門領域を役立てられるのではないか—-そう思いました。

実現に向けて障壁となったのは法的問題

実現に向けて障壁となったのは法的問題

――ビジネスプランを実現に向けて動かしていくうえで、特にどんな課題がありましたか?

資金や人材が潤沢であれば他のアプローチもあったのでしょうが、なにぶん1人で立ち上げた事業です。具体的にプランを考えたこの1年を振り返ると、やはり道路運送法などの法律の問題をクリアするために行動したことが、もっとも大きな障壁だったと思います。

――具体的にはどんな問題が?

最初は、旅行業を検討していたんですよ。いわゆる「募集型企画旅行」(旅行会社が目的地や日程、宿泊施設、交通機関などのサービスや料金を設定し、参加者を募る旅行のこと)のような形態です。毎日のように観光バスのようなものを走らせて、商店や病院などをまわれないかと考えていました。しかし国土交通省から「乗合バス類似行為に当たるかもしれない」と指摘を受けました。

――許認可のない乗合行為は違法となりますね。

はい。そこで旅行業としてやっていくことは諦め、道路運送法に該当していない、他社の既存サービスなども比較・検討しました。そうしたなかで「タクシーのような乗り物を、地域の人が割り勘で使えるサービス」という着想が生まれ、結果的に「車両リース、運転代行を行う既存事業と契約を結び、当社はシステムや会員サービスを管理する」という今のスタイルに落ち着いていったんです。

自家用車でタクシー営業する、いわゆる「白タク」は違法となりますし、振り返れば、このビジネスを合法なものにするために、県庁、市役所、経済産業省などの公的機関に事業プランの相談をしてきました。特に経産省にはグレーゾーン解消制度(新規事業に対する規制の適用の有無を事業者に照会する制度)が整備されていますから、かなり親身になって話を聞いてもらえましたよ。

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