行政書士に聞くフリーランスが補助金・助成金を活用する方法【資金調達】
スモールビジネス経営者はどのように資金調達をすればいいのでしょうか。その選択肢の1つになりえるのが、国の各省庁・官庁、あるいは財団が公募している、公的な補助金・助成金の制度。今回は、行政書士法人GOALに所属する行政書士でありながら、プロミュージシャンとしても補助金を活用されている武田信幸さんに、おすすめの補助金・助成金について伺いました。
なかには、フリーランスや商店・飲食店などの小規模事業者が十分に活用できる意外な補助金制度もありました。
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東京都内での創業を支援する助成金
──ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金以外に、小規模事業者でも活用できる、何かオススメの補助金・助成金はありますか?
私は行政書士として「創業融資支援」を専門としますが、「東京都」の創業希望者にたびたびオススメしているのが「創業助成事業」です。2018年は「平成30年度 第1回助成事業」として申請が始まったばかりで、申請受付期間が4月13日〜23日です。今回の受付期間が終わった後も、例年の傾向では、おそらく年度内にもう1回、10〜11月くらいに申請受付が開始するのではないでしょうか。
──どんな助成事業なのでしょう?
東京都内の開業率を上げることを目的とした助成金です。募集要項では「都内の産業活力向上に寄与する「創業者等(創業予定者、創業して間もない中小企業者 等)の事業計画」に対して、より効果的な事業実施が可能となるよう、創業期に必要な経費(従業員人件費、賃借料、広告費等)の一部」に助成を行うとされています。上限額は300万円(下限100万円)、助成率3分の2です。あくまで経験則による「感覚値」ですが、採択率は30%ほどだと思います。
──こちらも比較的、ハードルは低いのでしょうか?
対象になるのは「都内での創業」に限定されますが、「申請要件」としていくつかの要件を満たしていることが条件となります。詳しくは募集要項を読んでいただきたいのですが、かいつまんで言うと「申請書を受理する時点」以前において通算5年以上の事業を実施しており、①〜⑯の16項目いずれかをクリアしていなければいけません。
──募集要項を見てみましたが、一見すると、結構きびしい要件が並んでいる印象を受けます。
実施母体である「公益財団法人東京都中小企業振興公社」が実施する創業プログラム等での実績だったり、同じく公社が設置する創業支援施設への入居だったりしますね。たしかにいずれもなかなかハードルが高いです。
しかしなかには「東京都の融資制度を利用していること」(募集要項(2)の⑩⑪)、あるいは「認定特定創業支援事業の支援を受けていること」(募集要項(2)の⑮)など、比較的ハードルが低い要件もあります。ご自身の事業を鑑みながら、もっとも選択しやすい要件を見つけていくとよいでしょう。
専門家によるサポートで採択を万全に
──こうした補助金・助成金の申請というのは、私のような個人事業主が1人でもやりきれるものなのですか?
例えば、ものづくり補助金のような補助金は専門性がかなり高いので、1人でやりきるにはかなりハードルが高いでしょう。一方、小規模事業者持続化補助金はもとより「小規模事業者」を対象にしているところもあり、1人でもやりきれないこともありません。東京都の創業助成事業についても同様です。
しかしいずれの補助金・助成金も、大量の事業計画書や申請書を揃えなければいけないことが多く、専門家のサポートを得たほうが確実に「採択される可能性は高くなる」と考えていただければよいと思います。
──その場合の「専門家」というのは、どういう人を指すのでしょうか?
補助金・助成金はいわゆる「業際(※2)」の世界にあり、どの士業が専門というわけではありません。雇用や人材育成に関わるもの、事業、産業振興に関係するものなど補助金・助成金を管轄する省庁によって、弁理士や社労士の方が専門になることもありますし、私のような行政書士がサポートするケースもあります。
(※2)異なる事業分野にまたがること
──インターネットとかを見ると、格安の「申請代行サービス」みたいなものもありますよね。あれってどうなんでしょう?
しっかりとした申請書類をつくるのは、かなり骨の折れる作業です。私の場合は着手金と成功報酬をいただくビジネスモデルになりますが、依頼者からヒアリングを行い、何度かディスカッションを重ねながらそれを申請書類に落とし込み、申請が通って採択されるまでをサポートしています。あまりにも安価な申請代行サービスだと「言われたことをただ書類にまとめるだけ」というケースもありますから、それだと採択されにくい場合もあるので、代行してくれる方の実績などは十分にチェックしたほうがよいと思いますよ。
事業計画を立ててから資金調達の選択肢を考える
──最後に、補助金・助成金を活用する際、事業者が注意すべきポイントはありますか?
補助金は「後から入ってくるお金」です。小規模事業者持続化補助金ならば、補助対象50万円を含む「75万円」を先に自らの懐から出さなければならない。75万円を使った後に50万円が補填されるわけです。なので、あまり補助金や助成金をあてにしすぎてしまうと、資金繰りに苦慮することに……。「補助金は先出し」であることを念頭に置き、場合によっては融資なども絡めながら、総合的な資金計画を立てる必要があります。
──無計画にやるべきものでは断じてない、というわけですね。
そのとおりです。どんな補助金・助成金を活用するにしても、必ず事業計画があるはずで、それがあって始めて補助金・助成金、あるいは融資といった資金調達の選択肢が生まれます。事業計画があれば申請書類に落とし込みやすいですし、実際に申請を受ける段階になれば、いずれにせよ事業計画を立てる必要性が必ず生じるのですから。
あまり補助金・助成金をあてにしすぎるのは厳禁ですが、とはいいながらも、採択率を考えれば宝くじよりははるかに当たりやすい(笑)。事業計画を踏まえたうえで自らの事業に適した補助金・助成金を見つけていただきたいです。
- 武田 信幸 たけだ・のぶゆき
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1981年生まれ。行政書士。スタートアップ期の資金調達を専門分野とする。
年間にして2億円超の融資を支援し、その融資成功率は90%を確立。
バンド「LITE」のギタリストとしても国内外で活動し、海外公演では補助金を活用するなど行政書士と音楽業界を行き来する「ミュージシャン×行政書士」のパラレルワーカー。
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