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発生主義とは?現金主義・実現主義との違いをわかりやすく解説

監修者 : 齋藤一生(税理士)

事業の会計処理を間違いなく行うためには、費用や収益はいつ計上すればいいのかを理解しておく必要があります。

会計処理の基本である帳簿付けは、青色申告・白色申告に関係なく発生主義によることが原則となっています。ここでは、原則とされる「発生主義」の考え方と「現金主義」との違い、「実現主義」との関係について解説します。

お知らせ

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発生主義とは会計処理の方法の1つ

会計上費用や収益を記録する方法としては、「発生主義」「現金主義」「実現主義」の3つの方法があります。それぞれの会計処理がどのように違うのか、下記で説明しましょう。

発生主義:費用や収益が発生したときに計上する方法

発生主義は、実際にお金が動いたときではなく、その費用や収益が発生したタイミングで会計帳簿に記録する方法です。

例えば、代金は翌月払いの約束で10万円分の仕入れを行ったとします。この場合、発生主義では、仕入れを行った時点で「仕入高」という費用を計上します。支払時には、買掛金を消す仕訳をすることになります。

商品を仕入れた時点

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入高 100,000 買掛金 100,000

代金10万円を支払った時点

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
買掛金 100,000 現金 100,000

日本の会計制度は、一般に公正妥当と認められる「公正なる会計慣行」に従うものとされており、公正なる会計慣行とは、1949年に定められた「企業会計原則」を中心としています。

企業会計原則とは、「一般原則」「損益計算書原則」「貸借対照表原則」の3部構成となっており、損益計算書原則において「すべての費用および収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない」とされています。この一文が、発生主義を表しています。

青色申告は、原則的にこの発生主義で帳簿付けをすることが必要です。

小規模事業者で、その年の前々年分の不動産所得の金額及び事業所得の金額(事業専従者給与(控除)の額を必要経費に算入しないで計算した金額)の合計額が300万円以下である場合は、届け出により現金主義による特例の適用を受けることができます。

現金主義:金銭のやりとりが起こったときに計上する方法

発生主義と反対の考え方が、実際に金銭の動きがあった時点で費用や収益を計上する現金主義です。例えば先程の、代金は翌月払いの約束で10万円分の仕入れを行ったケースを現金主義で記帳すると、次のようになります。

商品を仕入れた時点

仕訳なし

代金10万円を支払った時点

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入高 100,000 現金 100,000

現金主義は、キャッシュの動きがわかりやすいのがメリットですが、支払いが済むまで費用が計上されないため、未払金がいくらあるかは把握できません。また、支払いが年をまたいでしまうと当期分の正しい費用が計上されず、正しい期間損益計算ができないといったデメリットもあります。

実現主義:収益や費用が実現したときに計上する方法

実現主義とは、収益や費用を計上するタイミングは、実際に収益や費用が実現した時点とするものです。 これは、企業会計原則の損益計算書原則がいう「未実現収益は原則として、当期の損益計算に計上してはならない」に相当し、発生主義の考え方に制限をかけるものとなっています。

発生主義・現金主義・実現主義の関係性

3つの主義は、発生主義と現金主義は対立し、実現主義は発生主義の問題点を補う関係にあります。それぞれの特徴やできること、できないことについて見ていきましょう。

現金主義では正確な損益を把握することが難しい

現金主義での記帳は、帳簿付けが簡単で、不正が行われづらいのがメリットです。しかし、売上も仕入れも現金の受け取りまたは支払いをした時点で記帳するので、「売れた分に対して仕入れはいくらかかったのか」を、帳簿上把握できません。また、帳簿上で売掛金や買掛金を把握できない問題があります。そのため、現金主義での記帳は基本的には認められず、例外的に一定条件を満たした個人事業主にのみ認められるものになっています。

発生主義だけでは収益を正しく認識できない

発生主義も完璧ではなく、これだけでは収益を正しく認識できない問題があります。例えば、100万円の商品を販売して10万円の手付金をもらった場合、発生主義なら契約が成立した時点で100万円の売上を計上することになります。しかし、この後手付を放棄して契約解除がなされる可能性もあり、必ずしも100万円の売上になるとは限りません。

このように、収益については発生主義ではうまくいかない場合があるので、売上・収益の記帳に関しては、発生主義をさらに制限した実現主義が採用されています。

費用は発生主義、収益は実現主義が日本の会計基準

まとめると日本の会計ルールは、費用については発生主義、売上・収益については実現主義で計上するのが原則です。例外的に、一定条件を満たした個人事業主にのみ、現金主義での記帳が認められています。

発生主義のメリットとは?

発生主義のメリットとしては、主に次の2つが挙げられます。

財務状況を正確に把握できる

現金主義では、掛け取引での仕入れや販売を記帳できず、買掛金や未払金、売掛金、未収金などがどれだけあるのか把握できません。発生主義では、現金のやりとりがなくても記帳できますし、資産の減価償却も計上でき、費用を均等に配分することができます。このため、発生主義の方が企業の財政状況を正確に把握できます。

納税するべき金額の予測を立てられる

発生主義で記帳すると財政状況を正確に把握できるので、納税すべき金額の予測も立てやすくなります。

発生主義と現金主義の仕訳方法の違い

発生主義と現金主義では、記帳する際の仕訳に違いがあります。

例えば、「5月に掛けで10万円分の商品を仕入れ、6月にその代金を現金で支払うと共に、掛け取引で商品を15万円で売却。7月に代金を振り込みで受け取った」という場合、発生主義・現金主義それぞれの場合の記帳方法は、下記のとおりです。

発生主義での仕訳例

5月

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入高 100,000 買掛金 100,000

6月

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
買掛金 100,000 現金 100,000
売掛金 150,000 売上 150,000

7月

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 150,000 売掛金 150,000

現金主義での仕訳例

6月

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入高 100,000 現金 100,000

7月

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 150,000 売上 150,000

発生主義や現金主義を正しく理解して、適切な帳簿をつけよう

企業でも個人事業主でも、正確な記帳を行うには「費用や収益はいつ計上すればいいのか?」についての知識が不可欠です。日本の会計ルールは、費用については発生主義、売上・収益については実現主義での計上が原則なので、間違えないようにしましょう。

帳簿付けは一見難しそうですが、会計ソフトを利用すれば手間をかけずに行えます。個人事業主なら「やよいの白色申告 オンライン」や「やよいの青色申告 オンライン」、法人なら「弥生会計 オンライン」を利用すれば、帳簿付けに専門的な簿記の知識は不要。日々の取引を入力するだけで、期末の貸借対照表や損益計算書の作成も、手間をかけずに完了できます。ぜひ、活用してください。

photo:PIXTA

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