損益計算書(P/L)とは?見方や作り方、貸借対照表との違いも解説
監修者 : 齋藤一生(税理士)

損益計算書(そんえきけいさんしょ)は、会社の財務状況を表す財務諸表のひとつです。経営者が会社の状況を把握したり、経営状態を外部に示したりするものとして重要な書類です。
ここでは、損益計算書に記載された情報の読み解き方や貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)との違い、損益計算書の作り方などについて解説します。
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2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!
目次
損益計算書とは?
損益計算書とは、特定期間の収益と費用の損益計算をまとめたものです。英語ではProfit and Loss Statement(プロフィット・アンド・ロス・ステートメント)と表記され、略して「P/L(ピーエル)」とも呼ばれます。
特定の期間内に会社がどれだけの収益を上げ、費用をいくら使い、どれだけ儲かったのか、損をしたのかが書かれています。
損益計算書は、財務諸表のひとつで、決算書に必要な書類です。財務諸表に該当する書類はたくさんありますが、その中でも特に重要なのが「財務三表」と呼ばれるもの。損益計算書は、特定の時点での会社の財政状態を示す「貸借対照表」、資金の流れを示す「キャッシュ・フロー計算書」と共に、財務三表のひとつになっています。
財務諸表は、一般的に決算書とも呼ばれています。このうち、損益計算書と貸借対照表(※)は、青色申告をしている個人事業主とすべての法人が決算時には決算書として作成しなければいけない書類です。一方、キャッシュ・フロー計算書は、大企業の決算書で作成が義務付けられています。
(※)貸借対照表の提出は、個人事業主が青色申告の最大65万円もしくは最大55万円の青色申告特別控除を受ける場合の要件です。最大10万円の青色申告特別控除の場合は不要です。
損益計算書の種類と見方
損益計算書の表示形式には、「報告式」と「勘定式」の2つがあります。報告式は、上から下へ収益・費用・利益を種類ごとに並べていく書き方です。一方の勘定式は、表を左右2つに分けて、右側に収益、左側に費用と利益を記載する書き方になります。
なお、企業の決算報告書など、外部向けの資料ではほとんどの場合、報告式が使われます。
【報告式の損益計算書の例】
損益計算書は、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「税引後当期純利益」という5つの利益を分けて記載することで、「会社が本業でどれだけ稼いでいるのか」「本来の営業活動以外の収益としてどれだけ稼いでいるのか」「トータルでどれだけ稼いでいるか」などを俯瞰できる資料です。
各利益は、その項目より上部に書かれている収益から費用を差し引くことで算出できます。
経常損益の部

経常損益の部は、会社の経常的な事業活動で発生した損益を表しています。下記の3つの利益について記載されています。
売上総利益
売上総利益とは、自社の核となる商品やサービスなど、いわゆる本業で得ている利益(粗利)のことです。「売上高-売上原価」で計算されます。
営業利益
営業利益とは、売上総利益から販売活動費などの売上原価以外の費用を差し引いたもので、本業で稼いだ利益のことです。
「売上総利益-販売費及び一般管理費」で計算されます。
経常利益
経常利益とは、本業で得た利益に本業以外で稼いだ利益(営業外損益)を合わせたものです。
「営業利益+営業外収益-営業外費用」で計算されます。
特別損益の部
特別損益の部は、臨時に発生する損益について記載した部分です。不動産の売却や長期間保有している株式の売却、自然災害による損失など、企業の営業活動とは関係なく発生した利益・損失を、「特別利益」「特別損失」として表します。
特別損益は経常利益と合わせて、税引前当期純利益と税引後当期純利益を計算するために使われます。
税引前取引純利益
税引前取引純利益と、経常利益に特別損益を合算したもので、会社がトータルで稼いだ利益を表します。
「経常利益+特別利益-特別損失」で計算されます。
法人税、住民税および事業税等
法人税、住民税および事業税等とは、会社が支払う法人税、事業税等の総額です。
税引後当期純利益
税引後当期純利益とは、最終的に得られた利益です。「税引前当期純利益-法人税、住民税および事業税等」で計算されます。
損益計算書から経営状態を読み解くポイント
損益計算書では、会社の稼ぐ力、つまり「収益性」がわかります。分析できる内容は、次のようなポイントです。
利益は上がっているのか
損益計算書を見る際にまずチェックしたいのは、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、税引後当期純利益がプラスになっているかどうかです。
これら5つの利益がマイナスであれば、各々の段階で損失が出ていることを表します。
どこで利益・損失が出ているのか
損益計算書に書かれている売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、税引後当期純利益を見比べることで、利益や損失が出た原因がわかります。
まず、売上総利益は、売上から原価を引いた利益のことで、粗利(あらり)、粗利益(あらりえき)とも呼ばれています。
最終的に得られた利益である税引後当期純利益がプラスでも、経常利益がマイナスであれば、本業の収支は赤字を意味しています。本業の赤字を補填するために、不動産や株式を売却するなどし、特別利益を生み出していると状態です。
経常利益はプラスで売上総利益がマイナスなら、本業は赤字が出ており、それを本業以外の利益が支えている状態です。どちらの場合も、事業戦略や資金計画の見直しが必要になるでしょう。
損益分岐点の計算方法と判断基準
損益分岐点とは、売上高と費用がちょうど釣り合い、利益が0になるポイントです。売上高が損益分岐点を超えていれば利益が出ている黒字状態、損益分岐点まで届いていなければ、利益が出ず赤字状態にあることを意味します。

損益分岐点の計算式は、下記のとおりです。
損益分岐点売上高=固定費÷(限界利益÷売上高)
固定費とは、従業員の給与や店舗の家賃、光熱費など、たとえ売上が0でも発生する費用を指しています。中小企業の場合、ほぼ「販売費および一般管理費」と同じと考えてかまいません。
限界利益とは、売上高から素材の仕入れ費用などの売上高に比例して増える費用(変動費)を引いたものです。中小企業の場合、変動費はほぼ「売上原価」となり、限界利益はほぼ「売上総利益」と考えてかまいません。
計算式に、損益計算書上の金額を当てはめ、「販売費および一般管理費÷(売上総利益÷売上高)」を計算することで、損益分岐点売上高がわかるのです。
会社のどの部分に収益性があるか
損益計算書に書かれている3つの指標で、会社の収益性をチェックすることができます。
売上高総利益率
売上高総利益率(粗利率)は、売上総利益を売上高で割って算出します。つまり、売上高総利益率とは、売上高に占める売上総利益の割合から、売上高に対しての利幅を示します。この比率は、企業に稼ぐ力(収益性)があるかを判断するための基本的な指標のひとつです。この比率が高いほど、収益性が高い商品やサービスを提供していることを表します。
なお、売上高総利益率の目安は業種によって異なります。例えば、中小企業庁が、2018年7月に発表した「中小企業実態基本調査報告書」によれば、売上高総利益率の平均は、中小企業全体だと25.6%、製造業は22.0%ですが、サービス業では38.2%でした。
計算式は、下記のとおりです。
売上高総利益率=売上総利益÷売上高×100
売上高営業利益率
売上高営業利益率は、売上高に占める営業利益の割合で、本業でどれだけ稼いでいるかを見る指標です。高いほど本業で稼ぐ力のある収益力が高い企業であることを表します。
目安となる数字は業種によって異なりますが、計算式は、下記のとおりです。
売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100
売上高経常利益率
売上高経常利益率は、売上高に占める経常利益の割合で、資産運用などまで含めた企業の収益性をチェックする指標です。
売上高経常利益率が売上高営業利益率より低い企業は、借入金の利息の負担が大きく、営業外損益がマイナスになっていると考えらえます。
計算式は、下記のとおりです。
売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100
損益計算書の作成方法
損益計算書は決算書類のひとつです。個人事業主や法人は、確定申告の際に提出を求められるため、必ず作成しなくてはいけません。個人事業主の場合は、青色申告なら、「青色申告決算書」の1~3ページ目までに記載して提出します。
白色申告の場合は、「収支内訳書」の1~2ページ目に記載して提出します。法人の場合、特に決まった雛形はありません。会計ソフトを利用するか、自身で作成して提出します。法人の場合は、申告が複雑なので、税理士などの専門家に申告を依頼することが多いでしょう。
なお、個人事業主で白色申告を行っている人は、損益計算書の代わりに簡易版の「収支内訳書」の提出が必要です。
損益計算書は、日々つけている帳簿をもとに作成するものです。自力で作成するのは大変ですが、会計ソフトを使えば、自動で集計をして簡単に作成できます。
損益計算書の保管について
損益計算書は決済関係書類にあたるので、税法の規定では、対象期間は保存しておかなくてはなりません。
- 法人:その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(※)
- 個人事業主の青色申告:7年間
- 個人事業主の白色申告:5年間
(※)青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失欠損金額が生じた事業年度においては、10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)
ただし、損益計算書は電子帳簿保存法の対象で、以下の条件を満たす場合は印刷物で保管する必要はなく、電子データのまま保存が認められます。
電子帳簿等保存(電帳法 第4条1項・2項)
最初からPC等で作成した帳簿や書類(決算関係書類、取引関係書類)を、一定の保存要件のもとに電子データのまま保存すること
なお、本条項は「容認規程」(=取り組みたい事業者が任意で行うもの)です。
真実性の確保
決算書の作成に用いるシステムが、内容の訂正・削除を行った場合は履歴が残る仕組みであること、帳簿などの関係書類の関連が確認できること、システムの仕様書やマニュアルを備え付け、誰でも閲覧できる状態にしておくことが求められます。
可視性の確保
パソコンやディスプレイ、プリンタを備え付け、すぐに閲覧できる体制を整えておくこと、日付や金額などで電子データを検索できるようにしておくことが求められます。
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貸借対照表との違い
損益計算書は、一定期間内において会社にいくら収益があり、いくら費用がかかったか、そしていくらの利益や損失が生じたのかを表したものです。
一方、貸借対照表は、ある時点での会社や事業の資産・負債・純資産を表したもので、その時点でどれだけの資産があり、それらをどのように調達したのかが書かれています。英語ではBalance Sheet(バランス・シート)と表記され、略して「B/S(ビーエス)」と呼ばれることもあります。
なお、損益計算書上の「当期純利益」は、一定期間内の事業活動で得られた最終的な純利益を意味していますが、この数字の過去からの蓄積を決算時点で捉えた数字が貸借対照表上の「利益剰余金」です。損益計算書も貸借対照表も決算書として重要な書類であり、両方を併せて見ることで、事業の経営状態がより正確に把握できます。
損益計算書の作成は会計ソフトを活用しよう
自力で損益計算書を作るには簿記の知識が必要ですが、会計ソフトを利用すれば特別な知識がなくても、データを正しく入力するだけで作成することができます。
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