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インボイス制度で何が変わる?事業者のための基礎知識

監修者 : 田中卓也(田中卓也税理士事務所)

2023年からインボイス制度が導入されます。インボイスは、多くの企業、個人事業主やフリーランスにも関係する制度ですが、「具体的に何をすればいいのかよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。

そこで、インボイス制度で何が変わるのか、また、事業者は何をしなければいけないのかをわかりやすく解説していきます。

お知らせ

※2022年(令和4年)度の雇用保険は、2段階更新です。詳細は、「【2022年度の雇用保険は2段階更新!】労働保険とは?制度と年度更新について解説」を参照ください。

2023年から導入されるインボイス制度

インボイス制度は「適格請求書保存方式」といわれ、「適格請求書」というのは「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」なので一定の事項を請求書や納品書に記載することがもとめられます。

したがって、原則「適格請求書」でないと仕入税額控除、つまり、支払った消費税を経費として払った消費税として扱うことができなくなる制度がスタートします。そもそも消費税は、下記のような仕組みで納付されています。

【消費税の納税例】

  1. 小売店は、製造業者から6,000円(税抜)の消費税率10%の商品を購入し、製造業者に商品代6,000円と消費税600円を支払った。
  2. 小売店は消費者に10,000円(税抜)で1.の消費税率10%の商品を販売し、消費者から商品代10,000円と1,000円の消費税を預かった。

上記のケースでは、小売店は、製造業者に600円の消費税を支払い、消費者から1,000円の消費税を預かっています。支払った消費税と預かった消費税の差額は1,000円-600円=400円です。一方、製造業者は600円の消費税を預かり、支払った消費税は便宜上ないものとします。

この場合、消費者が支払った1,000円の消費税は、小売店から400円、製造業者から600円それぞれ納付されます。このように、事業者は原則として、預かった消費税から経費としてかかった消費税を差し引いて納税します。

しかし、2023年10月1日以降は、小売店が支払った消費税を預かった消費税から差し引くためには、仕入先である製造業者に「売手が買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」である適格請求書(インボイス)で請求書を発行してもらう必要があります。

適格請求書とは?

適格請求書とは、下記のすべてを記載した請求書のことです。なお、適格請求書を発行できる事業者は、消費税の課税事業者のうち、事前に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を所轄の税務署に提出して、適格請求書発行事業者として登録された事業者に限られます。

つまり、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を所轄の税務署に提出して、適格請求書発行事業者になるかどうかは、事業者の任意ということになります。

【①従来の請求書に記載が義務づけられている項目】

  • 発行者の氏名または名称
  • 取引年月日
  • 取引内容
  • 取引金額
  • 受領者の氏名または名称

【②2019年10月1日からの区分記載請求書に記載する項目】
①+

  • 軽減税率の対象であることがわかる表記
  • 適用税率ごとに区分した対価の合計額

【③2023年10月1日からの適格請求書に記載される項目】
②+

  • 適格請求書発行事業者の登録番号
  • 対価ごとに合計した対価の額
  • 適用税率ごとの消費税額および消費税額
引用:弥生株式会社「適格請求書への対応」より

元々請求書には、発行者の氏名や取引年月日、取引内容、受領者の氏名または名称といった、「必ず記載しなければならない項目」(従来の請求書に記載が義務づけられている項目)がありました。

これに加えて、軽減税率の対象となる商品を販売・仕入している事業者は、軽減税率の対象であることがわかる表記や適用税率事に区分した対価の合計額を記載した「区分記載請求書」の発行(2019年10月1日から2023年9月30日までの期間の経過措置)や、軽減税率に対応した経理処理が必要です。

2023年10月1日以降、インボイス制度が導入されると、さらに適格請求書発行事業者の登録番号や対価に対する適用税率、適用税率ごとの消費税合計額の記載が求められます。これをすべて満たす請求書が、適格請求書です。

インボイス(適格請求書)への記載が求められる項目は、請求書上にすべてを記載する方法以外に、請求書と納品書に分けて記載しても問題ありません。この場合、請求書と納品書の関係が、請求書に納品書番号を記載するなどで明確にわかるようにする必要があります。

なお、適格請求書発行事業者になって、適格請求書を発行することは義務ではありません。適格請求書発行事業者ではない場合は、登録番号等の記載のないこれまでどおりの形式の請求書を発行します。ただし、適格請求書を発行しない・できないことによる、一定の業務上や取引上のデメリットが予想されます。

消費税の課税事業者とは?

課税事業者とは、消費税を納付する義務がある法人、個人事業主をいいます。

先述のとおり、適格請求書を発行できるのは、適格請求書発行事業者として登録のある消費税の課税事業者のみです。この、消費税の課税事業者とは、取引先や消費者から預かった消費税を国に納税している事業者のことです。課税事業者になるかどうかは、基準期間の売上高や特定期間の売上高や給与などによって決まります(なお、設備投資をするなど諸費税の還付が見込まれる場合にはみずから選択して課税事業者になることも可能です)。

原則的に2年前の課税売上高1,000万円以下の事業者は消費税の納付が免除されている

消費税の課税事業者になるかどうかは、基準期間(個人事業者は前々年、法人は原則前々事業年度)課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定します。ほかには、特定期間(法人の場合は原則前年度の期首から6か月の期間、個人の場合は前年の1月から6月まで)の課税売上高や給与等支払額が1,000万円を超えるか否かによっても判定できます。

基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者は、消費税の納付が免除されます。つまり、開業したての事業者(※資本金1,000万円以上の法人を除く)は、基準期間がないため消費税の納税義務がないのです。この1,000万円とは、利益ではなく課税売上高です。※課税売上高とは、消費税率が課税される売上高のことを指します。

課税売上高が1,000万円を超えると、翌々年の消費税課税事業者となります。例えば、個人事業主の場合、2020年分の課税売上高が1,000万円を超えた場合、2022年分から消費税課税事業者となります。課税売上高が1,000万円を超えると自動的に課税事業者となりますが必要に応じて消費税課税事業者届出書を提出するなどして申告と納付を忘れないようにしましょう。

課税事業者から免税事業者になるケース

課税売上高1,000万円を超えて課税事業者になった事業者が、再び基準期間に1,000万円以下になると、その翌々年分(もしくは翌々年度)から届け出ることで再び免税事業者となります。

【課税売上高の推移と課税事業者区分の例】

年分 課税売上高 事業者区分
2020年 1,100万円 免税事業者
2021年 900万円 免税事業者
2022年 800万円 課税事業者(2020年の課税売上高が1,000万円超のため)
2023年 1,200万円 免税事業者(2021年の会勢売上高が1,000万円以下のため)

課税事業者から免税事業者になる場合には「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」を提出する必要があります。課税売上高が1,000万円前後の事業者は、課税事業者と免税事業者になったりならなかったりを繰り返す可能性があるため、課税事業者に区分されていることに気づかず、うっかり消費税の納付を忘れることのないように注意が必要です。

一方、適格請求書発行事業者は、その基準期間における課税売上高が 1,000 万円以下となった場合でも免税事業者となりません。なお、適格請求書発行事業者の登録を受けていた事業者が登録を取りやめたい場合には

「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出することになります。この場合、原則として、登録取消届出書の提出があった日の属する課税期間の翌課税期間の初日に登録の効力が失われることとなるので届出の提出期限に注意しましょう。

インボイス制度導入による影響

インボイス制度が導入されることで、事業者にはどのような影響があるのでしょうか。変更になるポイントについて理解しておきましょう。

仕入税額控除の要件が変わる

通常、消費税は取引先や消費者から預かった消費税から、仕入をしたときに支払った消費税(仕入税額)を差し引いて納付します。これを「仕入税額控除」と呼びます。インボイス制度が導入されると、この仕入税額控除を利用できるのが、適格請求書を発行している事業者からの仕入れ分だけ適用できます。

【仕入税額の例】

  1. B社はフリーランスのクラフト作家Aから30万円分の製品を仕入れ、3万円の消費税を支払った。
  2. B社は上記の製品を50万円で売り、消費者から5万円の消費税を受け取った。

従来どおりであれば、B社が納付する消費税額は「5万円-3万円=2万円」です。しかし、クラフト作家Aが適格請求書発行事業者でない場合、あるいは適格請求書を発行していなかった場合、B社は3万円の消費税額を差し引くことができず、5万円をそのまま納税しなければいけなくなります。

2029年9月30日までの経過措置が設けられている

インボイス制度が導入されると、適格請求書発行事業者以外からの仕入れ時に、支払った消費税が仕入税額控除の対象外となります。

ただし、2029年9月30日までは、「区分記載請求書等と同等の内容の請求書と経過措置の適用を受けることを記載した帳簿を保存する場合に限り、一定割合を仕入税額として差し引ける」という猶予期間が設けられています。差し引ける税額と期間は下記のとおりです。

【仕入税額控除割合の経過措置期間】

  • 2023年10月1日~2026年9月30日:仕入税額相当額の80%
  • 2026年10月1日~2029年9月30日:仕入税額相当額の50%

適格請求書の交付義務が免除されるケース

通常、適格請求書発行事業者の登録申請書を提出した適格請求書発行事業者は、適格請求書の要件を満たす形式で請求書を発行しなければいけません。しかし、下記の業務については、適格請求書の発行が困難であると認められているため、適格請求書の交付義務が免除されます。

【適格請求書の交付義務が免除される条件】

  • 公共交通機関の運送料(3万円未満のもの)
  • 卸売市場における一部の生鮮食料品等の販売
  • 農業協同組合や漁業協同組合、森林組合に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定しないものに限る)
  • 自動販売機(3万円未満のもの)
  • 郵便サービスの一部

免税事業者はどうすればいい?

免税事業者は、適格請求書を発行することができません。インボイス制度の導入にあたって、免税事業者が選択できる2つの対応方法について解説します。

課税事業者になり、適格請求書発行事業者の登録をして適格請求書を発行する

免税事業者の対応としてまず考えられるのが、課税事業者になって適格請求書発行事業者の登録をして適格請求書を発行することです。適格請求書を発行するメリットとデメリットは、下記のとおりです。

【課税事業者になるメリット】

  • 取引先に負担をかけることがない
  • 従来より消費税を付加した事業者は、同様に消費税を付加して請求できる
  • 取引先から「適格請求書発行事業者外」ということで排除される可能性が少なくなる

【課税事業者になるデメリット】

  • 消費税の申告が必要になり、記帳や請求書の発行で消費税額の仕訳といった経理処理が煩雑になる
  • 消費税を納税しなければいけない
  • 課税事業者との取引かどうかを確認できるようにする必要がある

こうして比較すると、消費税を付加して請求できるという権利はインボイス導入に伴い、消費税の申告・納付の義務と密接に関連してくることになります。

しかし、適格請求書を発行しない場合、取引先は仕入税額控除を利用することができなくなってしまいます。これは、取引先にとって大きなデメリットといえるでしょう。それにより、取引先は免税事業者との取引を見直したり、消費税額分の値引きを交渉してきたりする可能性があります。課税事業者になって適格請求書を発行するという選択は、取引先との円滑な関係を継続していくことにつながると推測されます。

一方、取引先が個人客中心といったように「仕入税額控除を利用することができなくなってしまう」デメリットが少ないと判断されるのであれば、あえて、「適格請求書発行事業者の登録申請をしない」という選択肢もあると考えます。

なお、納税しなければいけない消費税額は、前述したとおり、売上の消費税から仕入時の支払い消費税を引いた金額です。ただし、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業主は、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに届け出ることで「簡易課税制度」の適用を受けられます。

簡易課税制度を利用すると、売上や仕入れにかかるそれぞれの消費税額を管理しなくても、業種に応じて売上にかかる消費税額から「みなし仕入率」を差し引いた金額を納税することができます。

簡易課税制度の適用例を出すと、小売業(みなし仕入率は80%)の売上消費税額(顧客から預かった消費税額)が300万円だった場合、300万円×80%=240万円を仕入にかかった消費税とみなすことができます。この場合の納税額は、差額の60万円となります。

免税事業者のまま事業を継続する

課税事業者にならず、適格請求書を発行しないまま事業を継続することも違法ではありません。しかし、取引先にとっては、適格請求書を発行しない事業者との取引はデメリットが大きくなるでしょう。取引の見直しや課税事業者への変更を提案されたり、消費税分の値引き交渉といった対処をとる可能性もあります。

特に、同業の別の免税事業者の多くが適格請求書登録業者になった場合、競争力が大幅に低下してしまうかもしれません。免税事業者のままでいるかどうか、取引先との関係性をどのように継続していくのか、得意先が課税事業者か?一般消費者か?などを総合的にそして、慎重に検討することをおすすめします。必要次第で税理士などの専門家に相談しましょう。

適格請求書発行事業者の登録申請方法

適格請求書発行事業者になるためには、そのための登録申請を行わなければいけません。手続きの期限や方法について知っておきましょう。

適格請求書発行事業者になるための申請期限

インボイス制度が導入される2023年10月1日から適格請求書発行事業者になる場合は、2023年3月31日までに管轄の税務署に適格請求書発行事業者の登録申請書を提出して、登録申請を行わなければいけません。この期限に間に合わなかった場合は、翌事業年度からの適用となります。ただし、登録ができない事情がある場合は、2023年9月30日までの登録申請延長が認められています。

適格請求書発行事業者の登録申請書の記載方法

ここでは、個人事業主向けに適格請求書発行事業者の登録申請書の書き方を解説します。

適格請求書発行事業者の登録申請書は、全2ページで構成されています。

なお、適格請求書発行事業者になった場合、氏名と登録番号が公表されます。登録をするということは、公表にも同意したということになりますから、留意しておきましょう。また、「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」を提出すれば、屋号や住所なども併せて公表できます。

1枚目

国税庁:[手続名]適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)

適格請求書発行事業者の登録申請書の1枚目には、氏名や住所、納税地(住所と同様であれば同じ住所)を記載します。また、書類の中ほどよりもやや下あたりに、申請時点での「事業者区分」を記載する欄があります。この欄にも、忘れずにチェックを入れましょう。これまで免税事業者で新たに課税事業者になる場合は、「免税事業者」にチェックを入れます。

2枚目(次葉)

国税庁:[手続名]適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)

適格請求書発行事業者の登録申請書の2枚目の右上に氏名を記載し、該当する箇所にチェックを入れます。

2023年10月1日から登録を受ける人のうち、消費税課税事業者選択届出書を提出していない人は、最初の「免税事業者の確認」欄の一番上「令和5年10月1日の属する課税期間中に~」というチェックボックスにチェックを入れてください。その後、個人番号、生年月日、事業内容を書き入れます。

消費税課税事業者選択届出書を提出している場合は、同じく「免税事業者の確認」欄の下にある「消費税課税事業者(選択)届出書を提出し~」のチェックボックスにチェックを入れて、課税期間の初日がいつなのかを記入します。

「登録要件の確認」欄の「課税事業者です。」というチェックボックスは、今後登録をする人すべてが「はい」にチェックを入れる欄です。その下の消費税法違反に関する質問は、事実に即して「はい」または「いいえ」を選択してください。この質問が「はい」であれば、次の質問に答える必要はありません。

課税事業者(選択)届出書の提出方法

課税事業者(選択)届出書は、e-Taxまたは管轄のインボイス登録センターに郵送することで提出できます。管轄の税務署窓口や時間外収受箱に提出することも可能ですが、国税庁からはインボイス登録センターへの郵送への協力依頼が出されていますから、書面で提出するのであればなるべく郵送しましょう。

なお、インボイス登録センターに持ち込みをすることはできません。インボイス登録センターは国税庁のウェブサイトに記載されている「郵送による提出先のご案内」から確認できます。

インボイス制度を正しく知り、対応を検討しよう

インボイス制度は、これまで免税事業者として事業を行ってきた中小企業や個人事業主やフリーランスにとって、大きな問題です。インボイス制度がどのようなものなのかを正しく理解し、対応方法を決めることが大切です。

課税事業者となり、適格請求書発行事業者になることを選択した場合は、各種届け出を早めに提出するとともに、インボイスに対応した請求書を発行できるシステムの導入や、仕入税額控除の管理ができる会計ソフトの導入についても検討を始めましょう。

photo:PIXTA

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