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副業の確定申告で収支内訳書が必要になった!

副業をしている多くの人は、確定申告を「雑所得」で行います。これまでは所得税の確定申告のときに収入や費用の合計額を確定申告書に記載することで申告することができました。

しかし、税制改正により、2022年分からは雑所得でも一定の収入がある人は「収支内訳書」という書類の添付が必要となります。具体的にどのような人が、雑所得の確定申告で収支内訳書の添付の対象になるのか説明します。

  • 副業の雑所得で収支内訳書が必要なのは、前々年の収入が1,000万円超の人
  • 副業の雑所得で前々年の収入が300万円超の人は領収書などの保存義務
  • 収支内訳書の作成には申告ソフトの利用がおすすめ

副業の所得の多くは「雑所得」

まずは、そもそも雑所得とはどのような所得を指すのかということを整理しましょう。

所得とは収入から必要経費などを差し引いた金額をいいます。

所得税法上、所得は10種類(利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得)あります。

そして、雑所得は、所得税法上の定義としては、それ以外の9種類の所得のいずれにも当たらない所得をいいます。

このような定義で考えると、まずはほかの所得がどのようなものなのかということを把握する必要があり、税理士のような専門家でなければ理解は難しいでしょう。一口に雑所得といっても、その内容はさまざまです。ほかの所得に該当しないものはすべて雑所得となるので、該当するものが多岐に渡るのは、当然といえるかもしれません。

そのため、主には以下のような収入が雑所得に該当すると思っておけば十分です。

  • 副業に関する収入
  • 公的年金等に関する収入
  • FXや先物取引などの差金決済による収入
  • 仮想通貨(暗号資産)による収入

このうち、公的年金等に関する収入については、400万円以下の人は基本的に所得税の確定申告が不要となります。また、差金決済や仮想通貨のような投資関係の雑所得も限られた人のみが行っています。

そのため、雑所得で所得税の確定申告をするケースで最も多いのが、副業に関する収入です。

副業に関する収入は、例えば会社員などの給与所得者が何らかの業務の対価として受け取る給与以外の収入をいいます。

主なものとして、会社員がインターネットなどを介して単発で行った仕事(いわゆるギグワーク)や、空いている時間を活用してECサイトなどでモノを販売して得た収益、カーシェアなどのシェアリングエコノミーの収益などが該当します。今では、副業を公に認めている会社も多くなりましたので、今後も副業に関する確定申告を行う人は増加していると考えられます。

ただし同じ副業でも、本業以外の時間にアルバイトで給与を受け取っているケースでは、給与所得として確定申告を行いますし、不動産賃貸によって家賃収入を得ているようなケースは不動産所得として課税が行われます。今回の記事で説明する改正は、これらのように雑所得に該当しない副業については適用されない話です。混同しないように注意しましょう。

また、多くの人が迷うポイントとして、事業所得と雑所得の区別があります。特に副業に関する雑所得は売上と経費の差額から所得を計算する点で、事業所得と共通点が多いため、事業所得なのか雑所得なのか迷ってしまうかもしれません。今のところは金額などでの判定基準はないため、申告する側で判断することになります。

判断基準としては、「その仕事だけで生活していくことができる、または生活していくつもりなのか」「自ら値付けしたり、自らの責任で行っていったりする業務なのか」といった点があります。個人事業の開業届出書(開業届)を税務署に提出すれば事業所得になるわけではなく、実態で判断することになります。

副業を事業所得で申告した場合、青色申告を行う際に赤字が出たら給与所得と相殺して所得税の還付を受けることができたり、青色申告特別控除を受けることができたりと、どちらの所得にするかで所得税の負担が大きく変わります。実態は雑所得なのに事業所得で申告するといったことがないように注意しましょう。

収支内訳書の判断基準は2年前の売上

前述の通り雑所得の範囲は幅広いですが、その中で、2022年分からの改正の対象になるのは、副業に関する雑所得です。所得税の確定申告書の上では「業務に係る雑所得」と表現されています。

業務に係る雑所得では、売上のほかに経費も発生します。このような雑所得では、規模や金額はさておき、売上から経費を引いて雑所得の金額を計算します。このため、所得の金額を計算する流れとしては事業所得の場合と変わりありません。

事業所得の場合、白色申告であれば収支内訳書、青色申告であれば決算書(損益計算書や貸借対照表)を確定申告書に添付することが必要です。そのため、所得の金額を計算する流れが事業所得の場合と変わりない、業務に係る雑所得についても、白色申告の事業所得と同様に収支内訳書を添付することが、課税の観点からも公平といえます。

そこで、税制改正により、2022年分の所得税の確定申告(2023年3月15日提出期限のもの)から、要件に当てはまる場合は、雑所得にも「収支内訳書」の作成が義務付けられることになりました。雑所得の場合は青色申告や白色申告といった区分はありませんので、決算書ではなく収支内訳書が、確定申告書の添付書類となります。

とはいえ、小規模に業務を行っている人にまで収支内訳書の作成を義務付けるのは確定申告する人にとっても大変ですし、税務署の事務的にも非常に煩雑になります。

そのため、一定の規模で業務を行っている人だけが収支内訳書の作成を義務付けられます。規模の判定には業務に係る雑所得の売上を用います。詳しくは次の項目で説明します。

副業の雑所得で収支内訳書が必要な人と不要な人

具体的には、「その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える人」に収支内訳書の作成が義務付けられます。例えば2022年分の確定申告であれば2020年の雑所得の収入金額で判断します。「収入」とは、いわば売上のことです。副業での収入が1,000万円ということは、副業での売上が1,000万円ということになります。

雑所得は売上から経費を引いた金額です。雑所得の金額が1,000万円を超えた場合ではなく、雑所得に係る収入金額(売上)が1,000万円を超えた場合に収支内訳書の作成が必要ということです。所得ではなく売上で判断するということを間違わないようにしましょう。

年間売上で1,000万円というとそれなりの規模になります。雑所得で収支内訳書の作成をするのは、モノを仕入れて販売するような、売上が嵩みがちなビジネスが中心になるでしょう。所得金額ではなく収入金額(売上)を判断基準にしているのは、収入金額(売上)が多いほどに経費も掛かる傾向にあるため、その内容を収支内訳書で明確にする意義があるためです。

話はそれますが、「前々年の収入が1,000万円を超える」ということは、所得税以外にも重要な意味を持ちます。それが消費税です。個人の場合、消費税は前々年の課税売上が1,000万円を超えた場合に納税義務が発生します。このことは事業所得だけではなく雑所得でも同じ基準で考えます。

つまり、雑所得について収支内訳書の提出が義務付けられるということは、基本的には消費税の納税義務を持つ可能税が高いということになります。

消費税の納税額を計算する上では、いずれにしてもどのような経費に消費税がかかっているのか、また軽減税率が適用されているのかといったことを一つ一つの領収書などについて判断する必要があります。その過程で記帳も行うでしょう。

2022年分からの改正については、雑所得の場合は、帳簿付けは義務つけられていません。しかし、前々年の収入が1,000万円を超えるような雑所得については、いずれにしても実質的には、収支内訳書が作成できるレベルでの記帳が必要ということです。

また、収支内訳書の提出が義務付けられる1,000万円のラインのほかに、領収書などの保存が義務付けられるラインがあります。それが300万円の基準です。もともと雑所得の場合は領収書などの保存は義務付けられていませんでした。

図の赤枠の金額が、1000万円超か300万円超か確認

しかし、収支内訳書の作成義務と同様に、2022年分以降は業務に係る雑所得について、前々年の収入金額が300万円を超えた場合は領収書などの保存が義務付けられることになりました。

領収書などは、厳密には「現金預金取引等関係書類」といいます。「現金預金取引等関係書類」とは、現金や預貯金の動きと直接関係する書類をいいます。具体的には、通帳や売上金を受領するための請求書や受領した際の領収書、お金を支払うための請求書、経費の領収書などです。見積書などは現金の動きと直接関係ありませんので、保存義務はありません。

領収書等の保存は、紙であればファイリングしておけばよいでしょう。ただし、PDFなどの電子媒体で受領した場合は、電子帳簿保存法という法律の適用を受けますので、副業とはいえ、書類の保存方法についての法律を理解しておく必要があります。

まとめると以下のようになります。

前々年の業務に係る雑所得の収入金額 領収書等の保存義務 収支内訳書の作成義務 帳簿の作成義務
300万円以下 なし なし なし
300万円超1,000万円以下 あり なし なし
1,000万円超 あり あり なし

収支内訳書の作り方と確定申告方法

雑所得の収支内訳書については、2022年3月時点では正式な様式が発表されていませんが、おそらくは白色申告の事業所得の収支内訳書と同様の様式になると思われます。

雑所得で確定申告をする人は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」というサイトを利用している方が多くいます。しかし、収支内訳書を作成するとなると、その手前で領収書などの書類を費目別に集計するなどの作業が必要です。この場合は、会計ソフトなどを活用して集計したほうが間違いないでしょう。自動で収支内訳書を作成してくれるので便利かもしれません。

一方、確定申告書等作成コーナーの場合、収支内訳書の作成機能はついていても、集計するといった機能はありません。あくまで自分で費目別に集計した合計額を入力しなければいけないため、転記ミスも起こりやすいです。

雑所得で収支内訳書が必要な場合は、会計ソフトの活用も検討しましょう。収支内訳書の作成だけであれば、会計ソフトを使うといっても、簿記の難しい知識などもほぼ必要ありませんので、領収書などの整理さえしっかりしておけば、それほど抵抗なく使うことができるでしょう。

会計ソフトにしても確定申告書等作成コーナーにしても、収支内訳書は作成できます。しかし、「収支内訳書」のデータを所得税の確定申告書に引き継ぐ場合、自動で事業所得のみに引き継がれます。雑所得用の収支内訳書として作成する場合は、「収支内訳書」と「所得税の確定申告書」を別々に作成する必要がある点に留意しましょう。

いずれにしても、前述の通り収支内訳書の作成が必要な雑所得については、消費税の確定申告書の作成も必要になるケースが多いでしょうから、消費税の確定申告書の作成機能もついた会計ソフトを導入することをおすすめします。

photo:PIXTA

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