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レシート・領収書にまつわる素朴な疑問を税理士が解説!

日々お客様とお話するなかで、話題に挙がることが多いのが、領収書やレシートに関する質問です。とくに今までよく受けたのは、以下のような問い合わせです。

・レシートが出ない(発行されない)場合は?
・レシート紛失した場合は?
・レシートor手書きの領収書、どっちがいいの?
・割り勘の場合は?
・プライベートが混じったレシートの処理方法は?
・クレカの明細だけ保管しておけばいい?
・データで受け取った場合はどうやって保管する?

今回は、領収書やレシートに関する相談事例をもとに、皆さんが悩みやすいポイントを解説していきます。

  • レシートがないときは、「日付」「金額」「支払相手」「支払内容」を何かに記録しておく
  • 領収書よりレシートのほうが証拠能力は高いので、可能な限りレシートを貰う
  • クレジットカード明細は内容が不十分なので、カード支払いでもレシートの保管を必ずする

レシートが出なかった場合は?

自動販売機での購入や冠婚葬祭、お見舞金など、レシートが出ない場合やもらえない場合もあるでしょう。取引先へ在来線など公共交通機関を使って訪問したときの交通費なども「Suica®」や「PASMO®」でピッ!と便利に乗れますが、領収書は出ないですよね。

そういった場合には、
・出金伝票をつけておく 
・Excelで記録する
といった方法で対応します。

要は、日付、金額、支払相手、支払内容を記載しておけばOK。

出金伝票の記載例

注意しておきたいのは、これはあくまで例外的な対応、ということ。何でもかんでもレシートがなくても経費にしていい、というわけではありません。やはり基本はレシートの保管が必要です。

少し極端な例を出すと、
・出金伝票が年間100枚発生
・10万円以上の出金
など、頻繁・高額な場合には、税務署の目も厳しくなるので注意しましょう。

結婚式やお葬式の場合には、出金伝票と一緒に招待状や案内状、メールのやり取りなど、補足できる材料を保管しておくのをおすすめします。交通費の場合であれば、お客様との打ち合わせの議事録や現地でのレシートなどで、「間違いなく現地に行った」「仕事で行った」ことが証明できるでしょう。

レシートを紛失した場合は?

レシートを紛失した場合も同様に、出金伝票やExcelでの記録で対応します。基本的に再発行はできないでしょうから、振込記録、クレジットカード明細、銀行からの引き出し記録などから補足できるといいでしょう。

紛失もやはり、高額、頻繁なのは避けたいものです。年に1~2回くらいなら問題になることはありませんが。レシートを紛失しないように普段、どのように保管していけばよいか、以下の記事もあわせてご覧ください。

レシートと領収書、どっちがいいの?

きちんと領収書を貰うべきか?それともレシートでいいのか?という疑問をお持ちの方も多いようです。結論から言うと、スモールビジネスの税務の現場では「レシートで良い」「むしろレシートが良い」です。

そもそもなぜ領収書やレシートを貰うかというと、「証拠」のためですよね。それを前提に、証拠能力は領収書とレシートのどちらが高いのか、比較してみました。

きちんと情報が記載されているのはどっち?

証拠として認められるためには、最低限、
・日付
・金額
・取引内容
・氏名(屋号、会社名)
この4つの情報が記載されている必要があります。

レシートであれば、これらの情報は基本的に記載されているでしょう。いつ、いくらで、何を、誰から買ったのかが一目瞭然なのです。

それに対して手書きの領収書の場合、不備があることも多いです。たとえば、「品代」とだけ書かれていて何を買ったかわからなかったり、日付が空欄だったりする領収書、よくありますよね。

情報が過不足なく記載されているという意味では、レシートのほうが領収書より優れています。

偽装できないのはどっち?

領収書綴りは、100円ショップやECサイトなどで気軽に購入できます。そして、手書きで作成することが多いでしょう。

やる・やらないは別にして、
・自分で買ってきて、架空の経費領収書を作る
・取引先が知人なら、金額を誤魔化してもらう
といったことも理屈上はできてしまいます。

その点レシートは、レジを通すわけですから、こういったこともできません。偽装の余地がないという点でも、レシートの方が領収書より優れているといえます。

結論:レシートをもらえばいい

記載内容と偽装可能性を考えると、意外にも証拠能力はレシートの方が高いといえます。

  記載内容 偽装できない
領収書 × ×
レシート

「領収書ください」「宛名は株式会社○○~」といったやり取りも面倒くさいですから、レシートで済む場合は、レシートを貰うようにしてくださいね。

割り勘の場合は?

同業者や取引先と飲み会をして、割り勘で払うこともあるでしょう。割り勘の場合には、以下の2点に注意してください。

・自分で払った分だけが経費になる
・できれば、領収書を分けて貰っておく

仮に合計金額の領収書を持っていたとしても、他の人が払った分まで経費にすることはできません。経費になるのはあくまで自分で払った分だけなので、支払金額ごとに領収書を分けて貰っておくのがベストです。

分けることができなかった場合には、先述した出金伝票やExcelで対応しましょう。

プライベートで購入した商品が混じっているものは?

生活費と経費を同時に払うこともあるでしょう。そんな時は、以下の2点を実施してください。
・経費だけにマーカーを引く
・マーカーを引いた分だけを会計ソフトに入力

プライベートで購入した商品が混じっている場合の領収書例。経費部分にマーカーを引き、マーカーの部分だけ会計ソフトに入力する。

気を付けておきたいのは、会計ソフトにカードを同期している場合や、カード明細データを会計ソフトにインポートする場合。支払った合計金額が同期されますから、プライベート分を除外する処理をしてあげる必要があります。

具体的には、プライベートの金額は「事業主貸」という勘定科目で処理します。「事業主貸」は、生活費の出金など、事業とは関係のない支出をした際に使う勘定科目です。

■例:経費8,000円、生活費2,000円の決済

【同期されたとき】

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 10,000 未払金(クレジットカード) 10,000

【除外する処理】

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 8,000 未払金(クレジットカード) 10,000
事業主貸 2,000    

流れ作業で登録していくと、プライベート分も含めて経費計上してしまいがちです。

私はミスを防ぐために、生活費と経費が混じった支払いは、
・会計ソフトに同期していないカード(プライベート用)で決済
・レシートにマーカーを引く
・会計ソフトに手入力
という手順で処理しています。

クレジットカード明細があれば、レシートはいらないの?

「カード会社から月に一度、明細が届く。これを保管しておくからレシートは破棄で良いよね?」と聞かれることがよくあります。私はいつも「いえ、明細と併せて、レシートも保管しておいてください」と回答しています。

理由としては、
・「何を購入したか」が記載されていないことがある
・消費税の仕入税額控除が認められない
の2つがあります。

「何を購入したか」が記載されていないということは、経費になるものを買った、という証明ができません。これでは証拠としては弱いわけです。

加えて明細は、カード会社が発行したものであって、サービス提供をした事業者が発行したものではありません。この場合、消費税の仕入税額控除が認められないのです。

※補足:仕入税額控除とは?

消費税の申告上、支払った消費税を差し引くこと。サービス提供をした事業者が作成・交付をした請求書や領収証の保管が要件になっています。こうした問題点があるので、クレジットカードで支払った場合にも、必ずレシートを保管するようにしましょう。

ちなみに、2023年10月1日からスタートするインボイス制度も、「要件を満たさないと仕入税額控除ができなくなる」制度です。仕入税額控除ができる or できないでは、納税額が変わってしまいますので、どちらも気を付けたいものですね。

紙ではなくデータでもらった場合は?

領収書を紙ではなく、pdfや電子レシートで受け取ったり、クラウドやメール、Web上でやり取りすることもあるでしょう。データ受け取りの場合、2021年12月31日までとそれ以後で、保管方法が変わるので注意が必要です。

・~2021年12月31日 :紙に出力して保存してOK
・2022年1月1日~  :紙に出力はNG。データでの保管が必要

取引情報(領収書、請求書など)を紙ではなくデータでやり取りすることを、税務上は「電子取引」というのですが、2022年1月1日から、電子取引の取引情報はデータ保存しなければならないのです。

ただし、その取引が正しく記帳されて申告にも反映されていて、保存が必要な取引情報の内容が書面など電子データ以外から確認できるような場合、金銭の支出がなかったものと判断されることは当面ないようです。

また、政府・与党は2022年1月に施行する電子帳簿保存法に2年の猶予期間を設けると報道がありました。電子データで受け取った請求書や領収書を電子保存するよう企業に義務づけるのを延長し、2年間は引き続き紙での保存も容認されるよう22年度与党税制改正大綱に盛り込み、年内に関連の省令を改正するそうです。発表を待ちます。

保存要件

データ保存には、いくつか要件があります。「PCの中にとりあえず入ってればOK」というではなく、「こういう風に保存しておいてくださいね」というルールが決められているのです。

要件は大きく、
・真実性を確保するための要件
・可視性を確保するための要件
の2つに分かれています。

ざっくりいうと、、データを改ざんできないようにしてください、パッと表示できるようにしてください、というわけです。

真実性を確保するための要件

以下の3つのうち、どれか1つをクリアする必要があります。

・タイムスタンプを付す
・データの訂正・削除の記録が残るシステムの利用
・訂正・削除を防止する事務処理規定の備え付け

スモールビジネス的にオススメなのは、3つ目の「訂正・削除を防止する事務処理規定の備え付け」。意味合いとしては、「ウチはデータをこういうやり方で保管しています」というルールを決め、その通りにデータ保管を運用するためのものです。事務処理規定のフォーマットを国税庁が公開しているので、参考にして作成してみましょう。

タイムスタンプはコストや手間的に導入ハードルが高く、スモールビジネス的には現実的ではありません。システム利用は、要件を満たすシステムがそれほど多くないのが現状です。

可視性を確保するための要件

以下の2つの要件をクリアする必要があります。
・検索機能を確保
・見読可能装置の備え付け
※判定期間(2年前)の売上1,000万円以下の場合、検索機能の要件は免除されます。 

見読可能装置とは、PC、ディスプレイ、プリンタetc.のことで、これらを備え付けて表示・出力できる状態にしておけば問題ありません。

面倒なのが、検索機能の確保。「取引年月日」「取引金額」「取引先」の条件で検索できるようにしておかなければならないのです。本来であればもう少し複雑な条件設定が必要なのですが、税務調査の時にデータのダウンロードに応じることを前提に、この3つの条件のみでOKとされています。

国税庁は「ファイル名に情報を入れる方法」「Excelで索引簿を作る方法」の2つを例として挙げていました。個人的なオススメはファイル名に入れる方法です。

※引用元:国税庁 参考資料(各種規程等のサンプル)

なお、スモールビジネスではあまりないと思いますが、自社開発プログラムを使用する場合は、システムの概要を記載した書類の備付けが必要です。

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