税理士が解説!税金に無関心な個人事業主が辿る悲惨な末路とは…?

税金について「面倒臭い」「よくわからない」と感じている個人事業主・フリーランスの方は少なくありません。会社員時代は、会社が全部やってくれたり、給料から天引き(源泉徴収)してくれるので、自分自身で税金について考えたり、手続きをする必要はありませんでした。
それが独立すると、自分で申告、納税しなくてはいけません。しかし学校は、税制や簿記について教えてくれませんでしたし、国税庁のホームページやネットで調べても専門用語だらけ……。これでは「面倒臭い!」「よくわからない!」と感じるのはある意味当然で、仕方ないと言えるでしょう。
ですが、できないまま、知らないままで放置してしまうのはオススメしません。それは、なぜか?独立後は税金に無関心だと「自分自身が損をする」からです。
今回は、個人事業主でありがちな「損をしてしまう3つのこと」について、解説していきます。
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目次
【その①】白色申告のままの個人事業主は、今すぐ青色申告に!
税金には、「知っている人だけが得する制度」が数多く存在します。
まず、「白色申告のまま」の個人事業主の方は、今すぐ青色申告にしましょう。そして、青色申告の「最大65万円の特別控除」を必ず受けてください。
さて、最大65万円の特別控除とは、青色申告をしている方にだけ認められている優遇制度のこと。所得から最大65万円を差し引くことができる、つまり、その分だけ税金が安くなる制度です。税率が最も低い方でも、約15万円、税率の高い方であれば30万円くらい安くなります。これは1年あたりの金額ですから、何十年も積み重なれば、数百万円になります。やらないと損です!
ただし、この控除を受けるためにはいくつか要件があって、
- 税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を出す
- 複式簿記で帳簿付けをする(最大65万円もしくは最大55万円控除の場合)
- e-Tax(所得税の確定申告書をネット提出)をする(最大65万円控除の場合)
- 期限内に申告する(最大65万円もしくは最大55万円控除の場合)
などです。最初は少しだけ覚えることがあって大変かもしれませんが、思い込みで無駄な税金を払ってしまっているとしたら、すごくもったいないです。
「複式簿記=難しい、無理」と思い込んでいる方も多いと思いますが、最近は申告ソフトも初心者の方向けにとても使いやすくなってきています。e-Taxも決して難しくはありません。これで、毎年何十万円という節税になるわけですから、やらないと損です!
・・・とは、言っても、実は青色申告は今日からやります!といって、できるものではありません。「税務署に青色申告承認申請書を出す」と説明をしましたが、提出期限があります。
青色申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に事業を開始した場合には、その事業開始等の日から2か月以内)に「青色申告承認申請書」を管轄する税務署に提出します。
開業したての人は、今すぐ「青色申告承認申請書」を税務署に提出しましょう!それ以外の今、白色申告の人は、来年分から青色申告にできるように準備をしてください。
ちなみに、令和2年税制調査会資料によれば、個人事業主のうち40%が白色申告、60%が青色申告。その青色申告のうち、正規簿記の複式簿記での記帳(最大65万円控除の要件)がさらに約半分というデータがあります。 つまり、知らずに損&ちょっとした手間を惜しんで損をしている人がそれだけ多くいるということです。数十万円税金を安くする、節税のためだと思って、がんばってみてはどうでしょうか。
【その②】突然、税務調査の連絡が!間違った確定申告で追徴に…
税理士をしていると、個人事業主の方から「自分で確定申告をしているのですが、税務調査の連絡が来てしまいました」という相談を受けることがあります。
そして、帳簿や申告書を見てみると、税理士の私がパッと見て「これはまずいな」「100万円単位で追徴されそうだな」とわかってしまうことが多いです。ということは、税務署もわかっているということです。
あくまで私の個人的な感覚ですが、個人事業主に対しての税務調査は「明らかに怪しい」「明らかな間違いがある」ところに、確信を持って税務調査に来ている、という印象があります。個人事業主に調査が入る確率は一般的に1~2%程度と言われてはいますが、確率にあまり意味はありません。怪しいところ、いい加減な申告をしているところを狙って来ているからです。
逆に言うと、きちんとした帳簿付けができていて、心象の良い確定申告書を作っていれば、税務調査がくる確率は非常に低いですし、万が一来たとしても、怖くありません。
では、もしも間違った申告をしてしまっていて、それが調査で指摘されるとどうなるか? 本来払うべきだった税金を納めなおさなければなりません。
これは当然です。ただ、それだけで済まないのが、税務調査の怖いところ。納める税金が少なかったり、還付される税金が多すぎていたりする場合、ペナルティとして追加の税金も払わなければならなくなってしまいます。
例えば、どのような税金があるかというと
- 過少申告加算税…追加の税金の10%
- 延滞税…年2.5%
過少申告加算税の金額は、新たに納めることになった税金の10%相当の金額です。ただし、新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円でいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%になります。
これだけではありません。一番怖いのは、重加算税という一番重い税金です。申告内容に仮装、隠蔽があったと判断されてしまうと、
- 重加算税…過少申告加算税の基礎となる税額の35%
(※税率は原則的な取り扱いの場合)
を支払わなければなりません。
最初からきちんと申告をしていれば払う必要がなかったのに、こうしたペナルティを払うことになるわけですから、非常にもったいないと言えます。
また、調査では1年分だけを調べるわけではありません。一般的には3~5年分の期間をまとめて調べることが多いので、追徴が100万円単位になることは決して珍しくないです。 国税庁の資料によると、調査による1件当たりの追徴税額は、個人で245万円、法人で331万円とされています。
しかも、この245万円というのは、所得税だけの話です。所得税額が変わるとなると、他にも、住民税や個人事業税、国民健康保険料(税)が変わってきます。市役所など自治体から住民税の納付書が届いたりします。
すべての税金を追加で、5年分など払うこととなった結果、トータルで1千万近く払うことになってしまったというケースもあります。そのため、普段からきちんと帳簿付けをして、正しく申告することは非常に重要なのです。
【その③】税金を滞納すると、融資や助成金が受けられなくなることも?
無申告や税金滞納については、他のさまざまなリスクについても意識しておきましょう。仕事でもプライベートでも必ず悪影響が出てしまいます。
仕事で言うと、例えば、以下のようなことがあり得ます。
- 事業の銀行融資が受けられない
- 取引先の新規開拓ができない
- 補助金・助成金の申請が受け付けてもらえない
最近でいうと、持続化給付金の要件に「確定申告書の提出」がありました。いざという時の支援も無申告、滞納があると受けられない可能性があるということ。申告と納税は、事業成長、事業を継続していくうえでの最低限のコストと考える必要があります。
プライベートでの悪影響としては、例えば、住宅ローンや自動車ローンなどが組めない、クレジットカードが作れない、といったことが出てきたりします。
社会的に「信用がない」ということになってしまうので、いろんな場面で不利益、不具合、が出てしまいます。
「自分を守るため」に会計・税制の基礎を理解しよう
税金は面倒臭いものですが、面倒臭がってばかりいると、自分自身が損をしてしまいます。著名な実業家の人たちの中で、税制や会計への理解が深い方が多いのは、彼らは知識でお金や信用を守っているからです。ただ、一般的なフリーランス、オーナー社長であれば、そこまで徹底する必要はありません。
どれくらい勉強すればいいのかの目安は、何かトラブルがあった際に、自分自身でネットで検索したり、税理士に質問したりすれば、すぐに解決できる状態にしておくこと。「自分を守るため」「お金と信用を守るため」と考え、会計・税制の基本的な仕組みを少しずつ知識を身に着けていきましょう。
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