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クリエイター姉妹が営む人気雑貨店がコロナ禍に実店舗を開業したワケ

2016年に西村姉妹が立ち上げた雑貨ブランド「空想街雑貨店(くうそうがいざっかてん)」。その名の通り、空想の街をテーマにしたオリジナル雑貨を販売し、SNSでも話題を集める人気店です。

ネットショップ開店後、公益財団法人東京都中小企業振興公社による独立開業支援チャレンジショップ「創の実」にエントリーし、採択。2020年12月4日に念願の実店舗をオープンしました。

しかし、コロナ禍において「実店舗を持つ」というのは難しい選択だったのではないのでしょうか。そこで今回、西村さんがなぜこのタイミングで実店舗オープンを決断したのか、夢だった実店舗を構えるまでの過程について取材しました。

西村典子(にしむら・のりこ)(姉)

空想街雑貨店の店長・画家。東京在住。東京学芸大学教育学部美術科卒。公益財団法人東京都中小企業振興公社による、女性・若者の独立開業支援を目的とした期間限定のチャレンジショップ「創の実」にエントリー。採択された後、2020年12月4日に実店舗をオープン。

趣味は雑貨屋さん巡りと画材収集。小さい頃から空想の街を考えるのが何より大好き。夢は空想の街を全部描くこと。95歳まで現役で描き続けたい。もう一つの夢はテーマパークのような心が弾む空想街美術館を作ること。

西村祐紀(にしむら・ゆき)(妹)

空想街雑貨店のデザイナー・マネージャー。東京学芸大学教育学部美術科卒。小学校に図工の先生として勤めた後、姉の典子さんに誘われ、空想街雑貨店に携わる。

イベントの展示や店舗のディスプレイが得意。空想街雑貨店のアイデアマンで、ワクワクする雑貨や企画をいつも提案している。

姉妹で手を取り合って、好きを本業につなげるまで

西村典子さん(以下、典子):

空想街雑貨店は、姉の私が空想の街を手描きで書いて、妹の祐紀がデザインした雑貨を販売しているお店です。

私自身、東京生まれで、小さな頃から建物に囲まれた環境で過ごしています。そのせいか、自然と幼少期から建物や街の絵を描くことに夢中になっていました。商品にも独自の世界観がある絵が多いですね。

コンセプトは「大人も持てるファンタジー雑貨」。ファンタジーには子供向けの商品が多いなかで、大人でも持てる雑貨を販売しています。

――典子さんは大学卒業後、小学校に特別支援教育の推進員として勤務しながら副業として制作活動を続けてこられましたよね。当時はどんな思いでしたか?

典子(姉):

最初から絵で食べていきたいという強い思いがあったんです。だから、絵が副業というより、むしろ本業という意識で取り組んでいましたね。職場の人にも絵の仕事をしてみたいと思い切って話したら皆さんとても協力的で。打ち明けて良かったなと感じています。

――妹の祐紀さんは典子さんと同じく小学校に勤務され、図工の先生をされていたそうですね。キャリアに共通点がありますが、おふたりの性格は小さい頃から似ていたのでしょうか?

祐紀(妹):

いや、それが全然で。性格も違うし、やりたいことも違うと思っていたので、まさか一緒に仕事をするとは(笑)。

姉は絵を描くのが好きですが、私は工作とか立体的なものを作ることに興味があります。今でも、絵を描くのは姉が担当。雑貨のデザインや店舗の空間設計などは主に私が担当しています。

――店舗運営の面では、どのように役割分担を?

祐紀(妹):

明確に分けていません。一緒にいる時間が長いので、その都度お互いの得意・不得意を理解し合いながら協業しています。例えば、姉は写真を撮るのが苦手だけど私は好き、とかね。

典子(姉):

そうですね。事務作業も書類を記入するのは私、スタッフのお給料の管理は妹、みたいにそれぞれの得意分野で分担しています。私はパソコンなどのデジタル作業が苦手なのですが、祐紀はパソコンが得意。ものを作るのが好きという気持ちは一緒ですが、得意分野が違うのでお互い支えあっています。

「10のうち1つでも当たれば」ネットショップの成功体験を機に独立

店舗全体の様子

――典子さんが小学校に勤務していた時は、絵を仕事にするためにどんな活動をしていたんですか?

典子(姉):

本当に様々なことを経験しました。絵をギャラリーに置いてもらったり、サイズによって値段が決まるような絵の量り売りサイトで販売してみたり。あとは、年賀状のデザインを請負うイラストレーター活動、イベント販売も活動初期の頃から参加していました。

10のうち1つでも当たればという思いで、何でも挑戦していましたね。

活動のひとつにネットショップで雑貨を販売する取り組みがありました。いくつかの雑貨の中でスマホケースの売れ行きが好調だったんです。それで独立できるまでになりました。

スマートフォンのケース
様々な”街”が描かれている

――その後、空想街雑貨店として独立されたんですよね。

典子(姉):

ネット販売に可能性を注目し、複数のハンドメイドサイトに登録して販路を拡大。それを1年ほど続けた後、勤め先のお給料を超えた段階で個人事業主として独立しました。2016年のことです。その後3年ほど経って、妹を誘いました。

祐紀(妹):

私は教員だったので、副業はできませんでした。姉と一緒になる前も、お手伝いとしてイベント販売に参加する程度。しかし、姉が働く姿を横目で見ていて、楽しそうだと感じていましたね。その後、ネットショップが軌道に乗ったタイミングで姉から声を掛けられ、退職して一緒に働き始めました。

――典子さんの念願が叶って、ついに姉妹が一緒にお店をやることに。典子さんは起業して空想街雑貨店を始める時点で、目指していたブランドやビジネスの方向性はありましたか?

典子(姉):

いえ、はっきりと決めていませんでしたね。副業から徐々に拡げてきたので、「起業した」という実感がなかったんです。当時は、事業計画や資金調達もやってませんでした。

それよりも、いかに魅力的な商品を作るか、ファンづくり、売り方などに意識を向けていましたね。イベント販売でも「どうやったらワクワクする世界観を伝えられるか」など、お客さんを楽しませることを常に考えていました。

祐紀(妹):

それ以外にも、名前をどうしようか悩んでいたよね。

典子(姉):

そうそう。独立以前は別の活動名でした。でも仕事を辞めてブランディングを意識し始めたとき、コンセプトは絞った方が良いと本で読んで。それで、自分がワクワクできる「空想の街」を核にしようと思い、「空想街雑貨店」と名付けました。

夢のお店を持てるチャンス到来!申込締切まで1週間……それでも応募した理由

店舗中央テーブルにて

――空想街雑貨店の誕生から4年経った2020年12月、おふたりは東京・吉祥寺に実店舗をオープンしました。開業にあたっては東京都中小企業振興公社による「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」を活用しています。コロナ禍中ということもあり、実店舗開業には逆風が吹くタイミングだったかと思いますが、どのような経緯だったのでしょうか。

典子(姉):

以前から、実店舗を持つのが夢でした。ただお店を開くのはリスクも伴うので、事務所を兼ねた店舗を探すことに。そんなときにコロナ禍になり、実店舗の計画はいったん白紙になりました。

でも、その1ヵ月後にチャンスが巡ってきました。妹が東京都チャレンジショップ「創の実 ※1」の募集を見つけてきてくれて。これを活用すればお店を持てるのでは、と思いました。

テナントの場所は、吉祥寺の井の頭公園のそばで好立地。さらに、チャレンジショップなので敷金・礼金もなく、値段も安い。本当はその頃、空想街雑貨店を法人化する予定で、税理士にも相談していたんです。しかし、チャレンジショップには個人事業者しか参加できないという条件があり、法人化を取り止め、勢いのまま応募しました。

※1…「創の実」は、公益財団法人東京都中小企業振興公社による「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」の一環。店舗運営や販売の機会を与え、将来の開業をサポートするための期間限定のチャレンジショップ。

祐紀(妹):

「創の実」の募集は、ハンドメイドサイトに情報が載っていたので知りました。姉に募集を伝えたらすぐにやる気になっていたのですが、事務所を構えたばかりだったので半信半疑でしたね(笑)

振り返ると、自分たちがネットショップ展開していたからこそ、次につながる情報を知れたんだなと実感しています。

典子(姉):

そうそう。でもやりたいと思ったら突き進む性格で。それに、チャレンジショップはリスクも少ないですし、当時は自粛でイベント開催もなく、お客様と直接会う機会が欲しいなと思っていたので、すぐに応募を決めましたね。締切まで残り1週間程だったので、一気に準備しました。

――急な展開ですね。どんな準備をしたんですか?

典子(姉):

申込書に事業計画を書く欄があったんですが、1〜3年後はこれくらいの収入があって、経費として出ていって……という細かいところまで、今後のことを具体的に考えました。あとは面接対策。当日は1〜2時間くらいの面接があり、これまでの経緯や人柄、今後の事業のことを聞かれました。

――チャレンジショップでは、金額が安かったり、リスクが少ない以外にサポートなどもあるのですか?

典子(姉):

まず、タブレットレジなどお店を始めるための基本的な設備が揃っています。経営に関しては、コンサルタントのアドバイスを受けることができます。月に2回ほど事業について相談できたり、チャレンジ期間終了後の物件を探しのサポートなども受けることができるのです。

あとは、創の実に入居している他の事業者と話せることも大きいですね。隣に紅茶の販売を計画している店舗があるんですが、紅茶のパッケージに私の絵を描くといったコラボ商品を販売しています。

――チャレンジショップに参加したからこその展開ですね!実際に店舗を持つ前と現在を比較して、どのような変化がありましたか。実店舗を運営で大変だったことなども教えてください。

典子(姉):

以前までは、どちらかというとクリエイターとしての活動に専念していました。しかし現在は、事務手続きも含め、経営をしている実感が湧いてきましたね。今まで以上にプロ意識・経営者としての認識が求められるなと感じています。

とにかく最初は分からないことだらけ。自分で調べたり、税理士に相談しました。ある手続きのために労働基準監督署に行ったら、実はハローワークが管轄だったとか。はじめての経験の連続です。

祐紀(妹):

姉の話は、採用の時におきたエピソードです。「創の実」を活用する上で、家族以外の人を雇う必要があり、アルバイトの方を雇用しています。自分たち以外の人と一緒に働くことも未知数でしたね。加えて、雇用保険などの手続きも必要で、これまで以上に経営についての理解が深まりました。

――ここまでの経験を振り返って、実店舗運営の上ではどのような注意が必要か教えていただけますか。

典子(姉):

まだまだチャレンジショップの最中なので分からないこともありますが、ご近所の店舗さんとの付き合いは大切だと感じています。

それから、お店を開く立地もよく調べたほうがいいですね。今のお店は商店街のメイン通りから一本横に入ったところにあるので、看板をメイン通りに置かないと気づかれません。そのため、通りかかりのお客さんがあまり入らないんです。

祐紀(妹):

看板ひとつでこんなにお客さんの入りが違うんだ、というのを実感しましたね。だからこそ、実店舗を持つときは、立地はとても重要です。駅から近いだけでなく「人通りはあるか」「見つけやすいか」が鍵だと身を持って知りました。

「とりあえず売ってみては」西村姉妹からのアドバイス

店舗内レジ前にて

――チャレンジショップ期間が終わったあとは店舗を移転することになるかと思いますが、その後はどのような事業展開を考えていますか?

典子(姉):

吉祥寺の井の頭公園の近くに、店舗と事務所とアトリエがある、絵を描いている様子が見えるテナントを構えたいなと考えています。

隠れ家のようなお店も魅力的ですが、今回の経験から「人通りのあるところ」「お店に気づいたり、通りかかりのお客さんが来てくれるところ」にお店を出したいという思いもあって。「体が動くうちに精一杯働いて、年を重ねたら穴場のような場所に出店にしてみても良いかもね」と姉妹で話しています。

祐紀(妹):

それに、実店舗を持つことだけが夢じゃないですね。様々な方向に活動範囲を伸ばしたいと思っています。

――法人化もあるでしょうし、夢の実現にむけたおふたりのご活躍がさらに楽しみですね。最後に、「お店を持ちたい」「開業したい」という夢をもっている方々に対して、メッセージをお願いします。

典子(姉):

一般的に、日本人は手先が器用で、品質の高い商品を作る職人のようなイメージがあります。しかし、商品が完璧な状態になるまで販売しないケースも多い印象もあるので、チャンスを逃している可能性も。まず売ってみて、お客さんの反応を見てもいいかもしれません。

私はお客さんの反応を見ながら試行錯誤し、「作ること」「売ること」両方のスキルが向上したと感じています。特に、今の時代はネットのおかげでリスクを負わずに販売できます。とにかくやってみること、が大事だと思いますね。

祐紀(妹):

私はタイミングを逃さないようにするのが大事だと思います。チャレンジショップも、急でしたがあのとき応募してよかったなと感じています。なにか声がかかったり、チャンスだと思ったら、とにかく乗っかってみる。それが大切なことだと思います。

写真提供:空想街雑貨店

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