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ベンチャー型事業承継とは?跡継ぎがデジタル活用など新領域に挑戦するあり方

経営者の高齢化などにより、後継者問題に悩む中小企業の経営者は少なくありません。中小企業庁によれば、中小企業の経営者の高年齢化が進んでいるにもかかわらず、経営者が60歳以上の中小企業のうち後継者が定まっていない企業は全体の48.7%。約半数もの企業において後継者が決まっていないのです。

このままでは、多くの中小企業が後継者不足のために、事業を続けることが難しくなり、技術やノウハウが失われていくことになってしまいます。

そこで期待されているのが「ベンチャー型事業承継」です。廃業や経営危機にあえぐ企業の打開策になり得るベンチャー型事業承継について、一から解説します。

  • ベンチャー型事業承継とは、後継者が家業の経営資源を用いながら、新たなビジネスを展開すること
  • 単なるベンチャー起業とは異なり、流通も確保されており、顧客からの信頼も高く、商品のストーリーを作りやすいといった利点がある
  • 中小企業の後継者不足は深刻で、社会問題となっているため、財務や税務の面で国からのサポートを受けることも可能

ベンチャー型事業承継とは?

ベンチャー型事業承継とは、家業がもともと保有していた経営資源を用いながら、若手の後継者が、新規事業、業態転換、新市場参入など新たな領域に挑戦し、新たなビジネスを展開することをいいます。これは、一般社団法人ベンチャー型事業承継が提唱し始めた概念です。また、その後継者により新しいビジネスを展開した企業を「アトツギベンチャー」と呼びます。

新しく市場を作り出すという点ではベンチャー企業と同じですが、ベンチャー型事業承継の場合は、すでに業界への知見が豊富で、商品の流通も確保されており、顧客からの信頼も高いといったメリットがあります。合わせて、家業を承継することで、商品やサービスのストーリーを作りやすいというのも、大きなメリットの一つといえるでしょう。

ベンチャー型事業承継の事例を紹介

ベンチャー型事業承継は、ゼロから立ち上げる起業とも違えば、家業のビジネスモデルを変えずそのままのかたちで受け継ぐ従来の事業承継とも違います。「ハイブリッド型ベンチャー」とも表現される、新しい事業承継の形です。ベンチャー型事業承継の事例をいくつか挙げます。

石鹸×インターネットで新たな価値を生み出す

木村石鹸工業株式会社は、大正13年(1924年)創業の老舗企業。現在でも職人が手作業で釜焚きによって石鹸の製造を行っています。しかし、高い技術力を誇りながらも、取引先からの値下げ交渉などにより、経営が悪化していた時期がありました。

そんな苦境のなか、事業を承継した木村祥一郎氏は、インターネット関連会社を起業した経験を生かして、ウェブサイトでの情報発信を強化。プロのカメラマンに依頼し、石鹸を釜炊きするシーンなどを撮影、会社のブランディング方針を一新します。さらに、OEM(他社ブランドの製品を製造すること)を中心とした経営環境から一転、新規事業を立ち上げました。そして自社ブランドを発足させ、会社の成長につなげています。

家業を継いで伝統を生かしながらも、新ビジネスを展開することで、社内でも挑戦する雰囲気ができてきたそうです。伝統的な技術を受け継ぎつつ、新たな挑戦もできるのが、ベンチャー型事業承継の強みでしょう。

「突っ張り棒」のブランドイメージを一新

昭和27年(1952年)創業の平安伸銅工業株式会社は、「突っ張り棒」のトップシェアメーカーです。3代目社長の竹内香予子氏は27歳で事業を承継。突っ張り棒の機能面だけではなく、デザイン性にもこだわって、「LABRICO(ラブリコ)」「DRAW A LINE」などを発表し大ヒットを飛ばしました。

家業の平安伸銅に入社後、財務状況を見ているなかで経営の縮小傾向を知ったという竹内氏。「突っ張り棒」市場のシェアは一定程度確保しているものの、このままでは存続が難しいと感じたそうです。そこで、新規プロジェクトを推進しプロダクトデザイナーも採用、商品コンセプトやブランドストーリーの練り直しを行いました。

すでに顧客から信頼されている質の高い商品ならば、デザインを一身することで、新しいファンを獲得できます。ベンチャー型の事業承継によって、事業のポテンシャルを引き出した好例といえるでしょう。

ワイヤーロープ製造から加工食品メーカーへ

既存の業態を拡大させた例だけではありません。ベンチャー型の事業承継によって、大胆に事業を転換した事例もあります。

NSW株式会社で代表を務める西出喜代彦氏は、家業として大阪府泉佐野市でワイヤーロープ製造業を営む日本スチールワイヤロープ株式会社に2012年に入社。ワイヤーロープはエレベーターやゴンドラなどの乗り物や、釣り用のワイヤなど様々な場面で使用されています。取引先がワイヤの受注先を海外に移した影響もあり、日本スチールワイヤロープ株式会社の大幅に受注が減少。そのため、西出氏はもともと新事業を期待されていました。

そこで、地元・泉佐野市の特産品である地場野菜に着目し、新規事業へのチャレンジとして水なすを初めてピクルスにした「水なすピクルス和風mix」を商品化しました。そして入社の翌年である2013年に4代目の代表取締役に就いて事業承継をすると、社名をNSW株式会社に変更し、食品加工業へと大転換を図ります。地の利を生かした新事業にシフトすることで、新たな会社として生まれ変わらせることができたのです。

ベンチャー型事業承継には支援団体もある

ベンチャー型事業承継には、下記のような支援団体もあります。また、事業承継のイベントなども行われていますので、チェックしてみてください。

事業引継ぎ支援センター
独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営しています。承継コーディネーターが承継計画の作成支援や、事業承継時の関係者のニーズを掘り起こすといった支援を行っています。

日経の事業承継イベント・セミナー
日本経済新聞社が主催する事業承継に関するイベント・セミナー。スタートアップやアトツギベンチャーがビジネスモデルをプレゼンするビジネスコンテストも開催されています。

さらに、老舗企業は商品やサービスの長きにわたる愛用者が多いうえに、土地との関連性が強いという特徴があります。そのため、ベンチャー型事業承継はクラウドファンディングと相性がよいとされています。例えば、事業の存続をかけて資金を募れば共感されやすく、また改めて事業への意見を募ることもできるでしょう。

国が後押しする事業承継

中小企業の深刻な後継者不足は社会問題でもあります。そのため、国が事業承継をバックアップしています。中小企業庁が財務サポートを、国税庁が税務上のサポートを行っていますので、最新情報などを随時チェックしましょう。

後継者について悩んでいる事業者は、支援団体やクラウドファンディングの活用や、国のサポートも視野に入れながら、事業承継を諦めずに、あらゆる可能性を模索してみてはいかがでしょうか。思わぬ事業のポテンシャルに気づくことができるかもしれません。

また、家業の跡継ぎを検討されている方はもちろん、まだ考えていない方も、上記のイベントやベンチャー型事業承継の事例等を通じて、アトツギベンチャーのあり方も含めて、事業の継続について理解を深めるところからまずは始めてみましょう。

photo:Getty Images

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