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【主に法人向け】押印義務の廃止、所得拡大促進税制の期限延長などを解説【令和3年度税制改正】

毎年行われる税制改正。令和3年についても様々な改正が行われます。特に税務関連における押印の見直しや人材確保等促進税制など、新型コロナウィルスを契機とした改正が行われました。具体的にどのような改正が行われたのか、一つ一つ見ていきます。

なお、令和3年度の個人向け税制改正についてはこちらをご確認ください。

  • 2021年(令和3年)4月1日以降、ほぼすべての税務関係書類について、押印義務が廃止
  • 2021年(令和3年)4月1日より、中小企業向けの所得拡大促進税制の適用要件が緩和され、適用期限が2年間延長
  • 新規雇用を増やす企業向けの人材確保等促進税制が新設

押印義務の廃止【法人・個人】

新型コロナウイルスを契機に押印の必要性について議論が行われました。その流れで、各種税務関係書類について2021年(令和3年)4月1日以降、押印義務が廃止されました。これまでは法律で各種書類への押印が義務付けられていましたが、令和3年度税制改正により下記の書類に押印が不要となります。

実務上は2020年から、押印がない書類であっても受付を行う取扱いとなっていましたが、今回の改正で、晴れて押印がない書類も法的に問題ないということになりました。法律が実態に追いついたということです。

  • 法人税などの各種申告書や確定申告書
  • 扶養控除等申告書などの源泉徴収に関する申告書
  • 法人設立届出書などの届出書(※例外的に実印の押印が必要な書類は除かれています)
  • 地方税に関する税務書類

この改正により、特に紙で各種書類を提出していた人にとっては、プリントアウトした書類をそのまま提出すればよいだけになりますので、申告書の提出について大きく負担が減ることになります。税務署に提出しようとしたけれど、ハンコが押していなかったため受付してもらえなかったというケースもなくなるということです。

源泉徴収関係書類の電磁的方法による提供の要件緩和

毎年多くの書類がやり取りされる年末調整。その年末調整で使われる書類をまとめて、「源泉徴収に関する申告書」と呼んでいます。具体的には、扶養控除等申告書、保険料控除申告書、配偶者控除等申告書などが該当します。

これまでも、これらの書類を電磁的方法、いわゆるクラウドの労務・給与ソフト上で保存する方法はありましたが、事前に「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」という書類を税務署に提出して、承認を受けておく必要がありました。承認を受けていなければ、紙ベースでのやり取りが必要ということになります。

しかし、2021年(令和3年)4月1日以降に提出するものについては、承認がなくても電磁的方法による提出が認められることになります。

特に、扶養控除等申告書は毎年最初に給与の支払いを受ける日の前日までに従業員から会社に提出が必要です。多くの申告書は年末調整の時に提出しますが、扶養控除等申告書については、いち早く適用されることになります。

この改正により、書類のやり取りをオンライン上でできるようになるため、リモートワークにおいてもスムーズに雇用の手続きや年末調整手続きが可能になるほか、年末調整に関する書類の保管もデータで行えるため、保管スペースの削減も可能となります。

デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設

インターネットやニュース、書籍などで目にすることが多くなったデジタルトランスフォーメーション(DX)。DXの定義はやや難しいのですが、「データや技術を活用して、より効率的に会社が成長していくように新商品などの開発や、業務プロセスや内部組織などを変革していくこと」といえます。

税制上も、DXに関する投資を行った企業に対しての優遇が行われます。具体的には、青色申告を行っている法人が、2023年(令和5年)3月31日までの間に、認定を受けた事業適応計画(仮称)に沿って事業適応(仮称)の用に供するためのソフトウエアを新設・増設した場合(もしくはソフトウエアの利用のための費用(繰延資産になるもののみ))に、次の特別償却または税額控除を選択適用できます。

・事業適応設備の取得価額(もしくは繰延資産の額)の30%の特別償却
・事業適応設備の取得価額(もしくは繰延資産の額)の3%の税額控除(他社とのデータ連携の場合は5%)

※事業適応設備とは、新設または増設するソフトウエアや、これらとともに事業適応の用に供する機械装置・器具備品をいいます。

子会社などの企業グループ内のデータ連携、他社からのデータ取得、他社のデータ利用などが念頭に置かれています。

また、事業適応計画に記載する最も重要なポイントは、その投資が生産性の向上や新たな顧客層の開拓、新商品や新サービス開発に役立つのかということです。

給与等の引上げ・設備投資を行なった場合の税額控除制度の見直し

TAXと書かれたノートの写真

コロナ下では給与アップよりも、雇用の受け皿を増やすことが重要です。特にある程度の雇用数を持つ規模の企業ほど、新規の雇用を行わないと失業の増加など社会への影響も大きくなります。そこで、給与のアップに焦点を当てていた従来の所得拡大促進税制から、新規採用に重点を置いた制度に見直しが行われました。そして新たに新設されたのが人材確保促進税制です。

具体的には、青色申告を行うすべての企業について、2021年(令和3年)4月1日から2023年(令和5年)3月31日までの間に開始する各事業年度において、国内で新たに雇用した従業員(雇用保険の一般被保険者に限る)に、雇用日から1年以内に支給する給与(新規雇用者給与等支給額)に関し、前期の新規雇用者給与等支給額に対する増加割合が2%以上である場合に適用が受けられます。

適用が受けられる場合、以下のいずれか少ない金額を税額控除できます。

  1. 新たに雇用した全従業員について雇用した日から1年以内に支給する給与(控除対象新規雇用者給与等支給額)の15%相当額
  2. 法人税額の20%

さらに、従業員に教育訓練を行っている企業については、前期から教育訓練費を20%以上アップさせた場合には上記の税額控除に5%上乗せして、控除対象新規雇用者給与等支給額の20%まで税額控除が受けられることになります。

対象はすべての事業者となっていますが、新規雇用をした従業員に対する給与が税額控除の計算のベースになるので、新たな採用を増やす企業向けの制度です。給与総額が増えていなくて、以下の所得拡大促進税制の適用が受けられない中小企業者等でも、新規雇用をした従業員だけで見れば、要件に当てはまるというケースもあり得ます。その場合は、人材確保促進税制の適用を検討することになります。

所得拡大促進税制は、2021年(令和3年)3月31日までは大企業と中小企業で制度運営が異なっていました。しかし今回の改正で、従来は大企業に対して適用されていた部分が中小企業にも適用されることとなりました。中小企業にとっては、より税額控除を受けやすくなったということです。

所得拡大促進税制の見直し(期限延長)

中小企業者等(原則として資本金1億円以下の法人)について、給与総額をアップさせた場合に適用が受けられる所得拡大促進税制については、適用期限が2年間延長され、2023年(令和5年)3月31日までに開始する事業年度について適用を受けられます。

また、所得拡大促進税制については、給与の総額が前年度比で1.5%アップしていれば適用が受けられることになりました。改正前は、事業年度を通じて雇用している従業員(継続雇用者)の給与総額が1.5%以上増加していることが適用要件となっていました。

しかし、コロナ下での雇用環境の悪化により、中途入社を通じて雇用の確保や新規雇用の促進に努める企業にとって、より所得拡大促進税制を活用しやすいように、年間を通じて雇用している必要がある継続雇用者の要件が外されました。

この改正により、極端な例では全員が中途入社であっても給与総額が全事業年度に比べて増えていれば、所得拡大促進税制が受けられる可能性もあります。

  1. 適用が受けられる場合、以下のいずれか少ない金額を税額控除できます。
  2. 全雇用者について、前期からの給与等支給増加額×15%
  3. 法人税額×20%

また、以下の1と2の要件をいずれも満たす場合には、上記の税額控除からさらに10%上乗せして、25%まで税額控除を受けることができます。

  1. 給与総額が2.5%以上アップしていること
  2. 教育訓練費の金額が10%以上アップしている、または中小企業経営強化法に基づく経営力強化計画の認定を受けていること

クラウド等を利用した支払調書等の法定調書、提出方法の整備

毎年、すべての事業者は1月末日までに、前年中に支払った給与や家賃などについて集計した表を管轄の税務署に提出する必要があります。これを法定調書合計表といいます。

また、個別の支払額によっては、その支払額(源泉徴収をしている場合は、源泉徴収の金額も含む)を法定調書(源泉徴収票または支払調書)の形で提出しなければいけません。

現状ではe-Taxにしても紙にしても、法定調書を提出する者が、積極的に税務署に提出する必要があります。

しかし、2022年(令和4年)1月1日以後に提出する法定調書については、あらかじめ税務署長に届け出た場合には、認定を受けたクラウド事業者によるデータベースに備え付けられたファイルに法定調書のデータを記録し、かつ税務署に法定調書のデータ閲覧権限等を付与することで、法定調書の提出を行えるようになります。

2021年(令和3年)からは、法定調書が100枚以上ある場合、CDRなどの電子データ形式での提出が義務付けられましたが、それに続いて電子化に向けた改正となります。

どのようなクラウド事業者が対象になるのかなど、詳細はこれから公表されていくことになりますが、法定調書をめぐる業務も大きく変わっていくことが予想されます。

カーボンニュートラル投資促進税制の創設

新たな税制としてカーボンニュートラル投資促進税制も始まります。カーボンニュートラルとは、二酸化炭素の排出量を実質ゼロ(企業や家庭からの排出量=森林等の吸収量)にすることです。工場などで再生エネルギーへの切り替えなど脱二酸化炭素のための設備投資を行ったことに対して特別償却や税額控除といった税制上の優遇が受けられます。

ある程度の規模がある製造業が主な対象になると考えられますが、改正の一つとして頭に入れておいてもよいでしょう。

とはいえ、カーボンニュートラルは国際的、政治的にも大きなテーマの一つです。今後は適用のための裾野が広がるかもしれません。小規模な企業にとっても無関係な税制ではなくなるかもしれませんので、これからの改正には注意が必要かもしれませんね。

photo:Getty Images

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