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資格取得の費用は経費にできる?課税対象になる可能性も

「仕事に関係ある資格だから、かかった費用は経費にできるよね?」

実は、必ずしもそうとは言い切れません。

資格取得の費用は、個人事業主や従業員の仕事の内容によっては経費にできない場合もあります。また、税理士などの独立開業が可能な国家資格の取得費用も、経費にできません。

資格取得の費用が経費にできるかの判断のポイントや、経理処理について解説します。

  • 業務に直接関係のある資格取得費用は原則経費にできる
  • 国家資格など個人に帰属する資格の場合は経費にできない
  • 国家資格などの取得費用を会社が負担したら給与あつかい
  • 資格取得費用の勘定科目は研修費や福利厚生費が一般的

資格取得費用は経費にできる?

資格取得のためにかかった、教材費やセミナー代、受験料などは経費にできるのか。判断ポイントは次の3点です。

  • 【原則】業務に関係ある資格なら経費にできる
  • 国家資格など個人に帰属する資格の取得費用は経費にできない
  • 会社が従業員の資格取得費用を払ったら給与あつかいになることも

ひとつずつ解説していきます。

【原則】業務に関係ある資格なら経費にできる

業務を営む者又はその使用人(業務を営む者の親族でその業務に従事しているものを含む。)が当該業務の遂行に直接必要な技能又は知識の習得又は研修等を受けるために要する費用の額は、当該習得又は研修等のために通常必要とされるものに限り、必要経費に算入する。


国税庁法令解釈「その他の共通費用 37-24技能の習得又は研修等のために支出した費用

上記の法令解釈から、次の2つを満たした資格の費用は経費にできます。

  • 業務に直接関係のある資格の取得にかかった費用である
  • 研修等の費用が高額すぎない

資格取得費用を負担したのが個人事業主か会社かを問わず、上記の考え方が原則となります。

さらに国税庁は、資格取得費用を経費にする場合、条件を以下の3つとしています。

資格取得費用を経費にできる条件

  1. 仕事に直接必要な技術や知識を役員や従業員に習得させるための費用であること
  2. 仕事に直接必要な免許や資格を役員や従業員に取得させるための研修会や講習会などの出席費用であること
  3. 仕事に直接必要な分野の講義を役員や従業員に大学などで受けさせるための費用であること

例えば、工場で働く人が業務を行うために必要な「危険物取扱者」「フォークリフト免許」といった資格の取得費用を会社が負担した場合は、経費にしてOKです。

なお、研修やセミナーについては次のような費用も事業に関係があれば経費にできます。

  • 海外とやりとりするために英会話教室に通う費用
  • ホームページ作成のためにパソコン教室に通う費用
  • 経理の社員が簿記の研修を受ける費用

個人事業主が新しく事業をはじめるためのセミナー代は経費にできますが、参加してから数年たっても事業化されていなければ、プライベートな支出とみなされて経費にできません。会社の従業員が受ける「自己啓発セミナー」なども、直接業務に関係があるとは言えないので、経費にはできません。

個人に帰属する資格の取得費用は経費にできない

業務に直接必要な資格の取得であるように思えても、経費にできないことがあります。

経費にできない資格の費用

  • 独占業務を行える国家資格の取得費用
  • 独立開業が可能な資格の取得費用
  • 国家資格の取得のためにかかった大学などの学費

医師や弁護士、税理士といった国家資格は、資格を持った人だけが行える独占業務があり、就職・転職・開業に役立ちます。したがって、取得した個人のメリットが大きいといえるため、個人事業主か会社かを問わず基本的に取得費を経費にできません。

たとえば、開業医が医師免許を取得するために払った学費を経費にすることは認められません。これまでに資格費用で経費として認められなかった事例を見てみましょう。

【資格取得費用が経費と認められなかった事例1】

接骨院を営む事業者が、柔道整復師の資格を取得のために専門学校に支払った学費は経費にできない。業務に間接的に有効だが、主たる目的が新しい地位や職業を獲得するための教育費なので家事費に該当する。
(平29.12. 5 大裁(所)平29-36)

【資格取得費用が経費と認められなかった事例2】

宅建業の開業にあたってかかった宅地建物取引主任者資格の取得の費用は経費にできない。宅建業者が特定の職業に従事できるので、資格取得費は新しい地位や職業を獲得するための教育費であり、所得税法第45条《家事関連費等の必要経費不算入等》第1項第1号に規定する家事費に該当する。
(平27. 4.14 東裁(所)平26-95)

国税不服審判所より概要まとめ

家事費とはプライベートな趣味などにかかったお金のことで、経費にはできないものです。上記2つの事例からわかるのは、その資格によって得られる地位や職業がある場合には、資格取得費用は家事費になるということ。

資格取得費用は高額になることも多く、経費にできれば節税効果が大きい場合もあります。判断が難しい場合には税理士に相談してみてください。

会社が従業員の資格取得費用を払ったら給与扱いになることも

会社が以下のような資格取得の費用を負担した場合、原則は従業員への給与となります。

  • 業務に直接関係がない資格
  • 税理士など一身専属の資格

資格取得費用は、国税庁が「No.2508 給与所得となるもの」に記載している「個人的債務を免除又は負担したことによる経済的利益」にあたると考えられるからです。

例えば、会社の経理担当者が税理士資格を取得し、その費用を会社が負担した場合、経費ではなく給与として扱われます。経理の業務は税理士の資格が必須ではありませんし、資格を取得することによる個人へのメリットが大きいと考えられるからです。

資格取得費用が給与として扱われると、会社にとっては給与として経費にできますが、従業員の側からみるとその分だけ所得税や社会保険料などの負担が増えるのでありがたくない話です。

資格取得による報奨金は経費にできる?

資格取得による報奨金は、原則は給与です。従業員本人が所得税などを負担します。ただし、以下を満たしていれば資格取得の報奨金であっても経費として認められ、給与課税も不要になります。

  • 業務に直接必要な資格である
  • 報奨金の社内規定が定められている
  • 報奨金がもらえる対象は全従業員である

たとえば、会社の役員にのみ報奨金が払われているなど対象者が限られていれば、給与扱いになります。報奨金がもらえる基準を就業規則や給与規定などで明らかにしておくことで、税務調査対策になるでしょう。

直接必要な資格となるかどうかは会社の事業内容や従業員それぞれの職務によって異なるため、判断が難しいといえます。社内規定を定める際には、顧問税理士や社会保険労務士などの専門家に相談して決めてください。

資格取得費用を経費にするときの勘定科目・仕訳

資格取得費用を経費に計上するときの経理処理についてみていきましょう。

勘定科目は「研修費」などのわかりやすいものを

資格取得費用の勘定科目の候補は次のようなものがあります。

資格取得費用の勘定科目

  • 研修費:資格取得にかかったセミナー代等
  • 福利厚生費:従業員が業務に必要な資格を取得する場合
  • 新聞図書費:資格取得のための書籍購入代
  • 旅費交通費:試験会場までの交通費(研修費などに含めてもよい)

書籍代や交通費も、研修費や福利厚生費に含めて計上してもかまいません。社内で管理しやすい勘定科目を使えばOKです。担当者によって使用する勘定科目が違う、とならないようにルールを作っておきましょう。

資格取得費用の仕訳

仕訳を事例で紹介します。

例1:資格取得のためのセミナー代5,000円を支払った。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
研修費現金現金5,000

借方に研修費など費用の勘定科目、貸方には現金や預金が基本の仕訳になります。

セミナー等の中には長期間にわたって行われるものもあります。このような場合は「前払費用」で処理しましょう。

例2:セミナー代1年分、120,000円を支払った。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
研修費120,000現金120,000

決算のため、来期分のセミナー代60,000円を前払費用に振替えた。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
前払費用60,000研修費60,000

期首に前払費用から研修費に振り替えた。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
研修費60,000前払費用60,000

資格取得費用の証憑を保管しておく

資格取得の費用を経費にする場合には、領収書だけではなく以下のような資格の内容がわかるものも一緒に保管しておくと良いでしょう。

  • セミナーのパンフレット
  • 資格の合格証明書

業務に直接必要な資格であることを、税務調査の際にはっきり説明できる準備をしておくと安心です。

資格取得費用は経費にできる?まとめ

  • 業務に直接関係のある資格取得費用は原則経費にできる
  • 国家資格など個人に帰属する資格の場合は経費にできない
  • 国家資格などの取得費用を会社が負担したら給与あつかい

資格取得の費用が経費にできるかどうかは、個人事業主や従業員の仕事の内容によるため、個別の判断が必要です。判断に迷う場合には税理士や会計士に相談したり、税務署に聞いてみたりして確認してください。

photo:Getty Images

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