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ホーム 確定申告 2020年分と2019年分を一緒に確定申告していい?!新型コロナ関連の給付金や経費、猶予分の申告方法を税理士に聞いてみた

2020年分と2019年分を一緒に確定申告していい?!新型コロナ関連の給付金や経費、猶予分の申告方法を税理士に聞いてみた

2020年分の所得税の確定申告は、新型コロナウイルス感染症関連の経費や計上方法について、これまでとは異なる疑問やお悩みがある方も多いのではないでしょうか? それでも確定申告をきちんと行えば、金銭的な面で恩恵を受ける可能性がありますし、逆に知識がないと損をしてしまう恐れもあるでしょう。

この大変なコロナ禍においても、できる限り余裕を持って確定申告を済ませられるよう、2020年分の確定申告でコロナ期間に関係する経費や税金・申告の疑問を税理士の宮原先生に聞いてみました!

お知らせ

※2022年(令和4年)度の雇用保険は、2段階更新です。詳細は、「【2022年度の雇用保険は2段階更新!】労働保険とは?制度と年度更新について解説」を参照ください。

宮原 裕一

宮原 裕一

1972年生まれ。税理士。弥生認定インストラクター。「宮原裕一税理士事務所
弥生会計を10年以上使い倒し、経理業務を効率化して経営に役立てるノウハウを確立。弥生会計に精通した税理士として、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。
知っておきたい基礎知識 の記事はこちら

コロナ関連の給付金は課税?非課税?

ライター

――2020年は新型コロナウイルス感染症関連の給付金や経費の計上方法について、これまでとは異なる疑問やお悩みがある個人事業主の方も多くいます。最初に給付金の確定申告での処理方法や注意点について教えてくだい。

宮原先生

宮原先生(以下、宮原):まず原則的なところから話を始めましょう。もらうお金というのはすべて収入なんですね。その中で例外的に、特定の収入については税金の対象にならないよう法律で非課税と定める、という流れがあります。ですから、お金をもらったら前提として「これは収入になる」と考えてください。

そして、その収入が事業に関するものか、個人的なプライベートに関するものかというところで線引きをします。さらに、それが非課税になるかどうかで、仕訳の方法を判断しましょう。

まず、代表的なコロナ関連の給付金として挙げられるのは「特別定額給付金」です。これは基準日(令和2年4月27日)において住民基本台帳に記録されているすべての方が一律で10万円を給付されるという内容でしたから、個人の事業とは関係のない収入です。

さらに、特別定額給付金は法律により非課税になりますので、確定申告の必要がない収入です。個人の口座に振り込まれた場合は、帳簿には何も記載しません。

もし、事業用の預金口座に「特別定額給付金」が振り込まれた場合は、事業に関係のない入金ですから、貸方が「事業主借」という形で仕訳をして、収益に影響がないようにします。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 100,000 事業主借 100,000

その一方で、たとえば「持続化給付金」や「家賃支援給付金」など、事業に関連した給付金もさまざまなものがあります。それらは基本的に事業に関する収入、事業所得として申告が必要と認識しておけば間違いありません。場合によっては、雑所得で申告する方もいるでしょう。

ライター

――つまり、事業に関して受け取った給付金は、いずれも課税対象になるということですね。計上方法についてはどう考えればいいですか?

宮原先生

宮原:事業に関連する給付金は売上ではありませんから、雑収入になります。預金に振り込まれたときに、借方が「普通預金」で、貸方が「雑収入」という形で仕訳をすることになりますね。

(例)事業に関連する給付金が10万円預金口座に振り込まれた場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 100,000 雑収入 100,000

もし消費税の課税事業者なら、給付金は仕事で得たお金ではないので、消費税はかかりません。青色申告決算書に毎月の売上を書く欄がありますが、そことは別の雑収入の欄に記載をする形になりますよ。

雑収入の欄

ライター

――「給付金は売上ではない」というところを間違えないよう気をつけたいと思います。また、給付金以外に、コロナ関連の助成金や補助金などもいろいろなものがありますが、確定申告に関しては給付金と同じ考え方でいいでしょうか?

宮原先生

宮原:助成金や補助金は、やはり貸方が「雑収入」の範囲になりますね。

非課税 特別定額給付金
課税
注:消費税は対象外
【事業所得等に区分されるもの】
持続化給付金(事業所得者向け)
家賃支援給付金
農林漁業者への経営継続補助金
文化芸術・スポーツ活動の継続支援
東京都の感染拡大防止協力金
雇用調整助成金
小学校休業等対応助成金
小学校休業等対応支援金
【一時所得に区分されるもの】
持続化給付金(給与所得者向け)
Go Toキャンペーン事業における給付金
【雑所得に区分されるもの】
持続化給付金(雑所得者向け)

(参考)1 新型コロナウイルス感染症等の影響に関連して国等から支給される主な助成金等の課税関係

ライター

――コロナ関連の融資を受けた場合は、どういう仕訳方法になりますか?

宮原先生

宮原:普通にお金を借りた場合と同じで、貸方が「借入金」という形になるでしょう。返さなくていいお金は「雑収入」、返さないといけないお金は「借入金」と覚えておくとわかりやすいと思います。

その他に気をつけておきたいのは、収入計上のタイミングですね。持続化給付金や家賃支援給付金、休業協力金などは、売上の状況や休業実績などを要件に給付が決定されます。

これらは入金日か支給決定日のどちらか早い方が計上日になります。

なお、家賃支援給付金については貸主にも申請者へ給付金を支給する旨の通知がされますが、単に貸主へお知らせがされているだけですので気にしなくて大丈夫です。

一方で、助成金や補助金は、審査を受けて採択されたのち、先に何らかの経費を使ってからそれに対してもらえるお金です。

こちらも支給の決定があってからもらえるものですから基本的には支給決定時の収入になりますが、このうち雇用調整助成金については、休業の事実と紐づける必要があるため、休業時の収入とすることになります。

ライター

――2020年の末に助成金や補助金を申し込んで、実際の決定タイミングが2021年になった場合は、2021年分で計上すればOKということですよね?

宮原先生

宮原:そうです。交付の決定があって初めて収入が決まるものですからね。ただし、先ほどの雇用調整助成金については、具体的な金額が出ていなくても年度内の休業分については助成金額を見積もって2020年の収入にすることが必要です。

コロナ関連の寄附の支出は、経費にできる?要件は?

ライター

――2020年は、初めて医療機関などに寄附をしたという個人事業主の方もいるかもしれません。寄附の支出は、必要経費にできますか? 経費にするための条件などがあれば教えてください。

宮原先生

宮原:これはちょっと判断が難しいところがありますね。そもそも寄附というのは見返りを求めるものじゃないですよね?

つまり、事業の売上につながることを考えていない支出のはずですよね。そのため原則として、寄附金は事業の経費とは認められません。

その代わり要件に該当する内容であれば寄附金控除が受けられるので申告してくださいね、という扱いです。

ただし例外的に、「当社は売上の一部を○○に寄附します」という内容を広く一般に周知したうえで、基準を設けて実際に寄附をおこなった場合は、広告宣伝の一環の必要経費として認められるケースもありますよ。

誰にも知らせず、ただ「手元にお金があるから寄附しました」というだけではNGです。

ライター

――広く一般に周知できているか、事業のPRになっているかどうか……判断基準がちょっと難しそうです。

宮原先生

宮原:国税庁のFAQのページに、必要経費として認められないケースの判断基準が例示されています。具体的には、次の3つが挙げられています。

  • 周知する内容を”売上げの一部を寄附します”としか示していない場合(寄附金額が不明確)
  • 周知する内容を”医療機関に寄附します”としか示していない場合(寄附先が不明確)
  • 周知内容と異なる内容の寄附を行っている場合(事業の遂行上必要かどうか不明確)

単純に、寄附の事実を外に発信しているだけではなく、寄附金額や寄附先も明確にするような発信方法でないとNGということでしょう。

ライター

――なるほど。もしかしたら寄附の内容の宣伝方法に頭を悩ませるより、寄附金控除を申告するほうが、なんとなく身近でわかりやすいイメージかもしれません。寄附金控除は、具体的にはどんな条件を満たせば該当しますか?

宮原先生

宮原:寄附金控除は、たとえば国や地方公共団体、特定公益増進法人など、該当する対象が初めから特定されています。まさにふるさと納税などが代表的ですね。

対象かどうかは、寄附の受け入れ先に明示されているはずですし、寄附金を支出した際の領収書にも記載されています。

一方で、個人的に誰かにお金などを渡すのは、寄附ではなく贈与になります。

ライター

――ええっ! 私はふるさと納税などもしたことがなく、恥ずかしながら寄附金が経費にならないことや、寄附金控除の対象が詳しく決められていることも全然知らなかったです……。

宮原先生

宮原:寄附金をすべて必要経費と認めてしまったら、その分税金が下がりますよね。そうすると国が寄附の一部を負担するような格好になってしまうということもあって、寄附金の扱いにはいろいろ決まりがあるんです。

大前提として、寄附金は見返りを求めないものなので、経費とは違うということです!

ライター

――確かに「寄附金で節税し放題!」みたいになるのは、本来の趣旨と違いますもんね(苦笑)。ちなみに、コロナ禍でお金に困っている人を助けたいと、個人に多額のお金を渡した場合は、相手に贈与税がかかってしまうのでしょうか?

宮原先生

宮原:それはケース・バイ・ケースで、そもそも年間で贈与を受けた金額が110万円までなら贈与税はかかりませんし、相手の財産などがないときに借金を免除した場合には、非課税になることもあります。

個別の判断になるので、コロナ禍で誰かから金銭的な援助を受けたけど、それが課税対象になるのか心配という人は、税理士や税務署に相談するといいでしょう。

マスクや消毒液など、自身の感染症対策のために支出したものは経費にできる?

ライター

――コロナ関連の支出が増えた一年ですが、マスクや消毒液など、自身やお客さま、取引先の感染症対策のために支出したものは経費にできますか?例えば、取引先に行くのにマスクをしないと訪問できないとか。それは、医療費控除の対象になりますか?

宮原先生

宮原:事業に必要かどうかという点で見ると、このコロナ禍は感染症対策をしないと仕事にならない状況といえますから、マスクや消毒液の購入費は経費として計上できると思います。

一方で医療費控除の面で見てみると、感染症対策グッズの購入費は治療ではなく予防のための支出ですから、医療費控除の対象にはなりません。

ライター

――感染症対策グッズは、セルフメディケーション税制の対象にもなりませんか?

宮原先生

宮原:セルフメディケーション税制の対象になるのは、以前は処方箋がないともらえなかったけれど、範囲が緩和されてドラッグストアなどでも買えるようになった医薬品です。

ですから、マスクや消毒液は残念ながらその対象には当てはまらないですね。

ライター

――では、自分用以外に、従業員や来客用に設置するマスクや除菌グッズなどの場合も経費にはなるでしょうか。例えば、お店で来店客のために消毒薬を設置したり、従業員のためにマスクやビニール手袋を用意するなどです。

宮原先生

宮原:お店を経営されている方などは、安全な運営のために感染症対策グッズや仕切り用のアクリル板などを常備しておかなければならないでしょうから、もちろん必要経費といえるでしょう。

ライター

――ちなみに、感染症対策グッズの仕訳の際の費目は何にしたらいいでしょう?

宮原先生

宮原:私はだいたい「消耗品費」にしていますよ。たとえばお店や事務所の一斉消毒などで、特別に大きな支出が発生する際は別立てしてもいいかもしれませんが、その費目で悩んで時間をかけるくらいなら、「消耗品費」でまとめちゃっていいと思います。費目が何であっても、経費であることには変わりないので。

ライター

――その他に、オンライン診療の受診費用や、PCR検査や抗体検査などの費用は、必要経費か医療費控除の対象になりますか? 仕事上の安全性を証明するという面では、事業に関わる支出といえるんじゃないかな?というイメージもありますが……。

宮原先生

宮原:以前から、「インフルエンザの予防接種の料金は経費と認められるのか?」という質問などもありました。「明らかに事業に必要と断言できるのか?」「個人の予防のためという側面もあるし……」ということで、経費かどうかの判断はなかなか難しい部分があるんです。でも、必要経費として計上している方も多い印象ですね。

ライター

――うーん。経費にするのがOKかNGか、一概には言いきれないんですね。

宮原先生

宮原:お店の運営などをしていくうえで不安要素を取り除くためにも、PCR検査などが求められるシーンはあるでしょう。安全性の確保やPRのため、従業員に一律に検査を受けさせるなどの場合は、必要経費に計上して構わないと思いますよ。

とはいえ、同じ検査料金という内容の支出でも、業種が違えば経費性も異なりますから、これも迷う場合は税理士や税務署の判断を仰ぐのがいいと思います。希望者だけに受けさせるような場合は、従業員の給与としての扱いになるでしょう。

また、医療費控除の対象かどうかという点では、検査自体は予防と同様の扱いになるので、原則としては対象になりません。ただし、その検査の結果として感染が発覚し、そのまま入院という形になった場合は、検査料金も含めて医療費控除の対象として申告が可能です。

在宅勤務やリモートワークが増えた個人事業主の経費はどのように取り扱う?

在宅勤務やリモートワークが増えた個人事業主の経費はどのように取り扱う?

ライター

――コロナ禍で増えた家事按分の割合は、2019年分の申告内容から変更してもOKですか?

宮原先生

宮原:家事按分の割合は、実際の仕事の状況と照らし合わせて合理的に按分するというものなので、コロナ禍で在宅勤務が多くなり、家事按分の割合も増えるというのはもちろん構いません。

ライター

――コロナ禍の影響で、夜だけ営業していたお店が昼もオープンするようになったりしましたよね。また、オンライン予約を始めたお店も急増したりと、事業に関する電気代や通信費の割合が、たとえ一定期間でも2019年とは大きく変わった方も多いと思います。その場合でも、「事業に関してこういう変更があったので」と説明できれば大丈夫でしょうか?

宮原先生

宮原:そうですね。実態に則していればまったく問題ないと思いますよ。あとは飲食店だと、テイクアウト用に容器を仕入れるようになったお店などもあるでしょう。

その場合、棚卸は気をつけたほうがいいと思います。それまでのお店に出していた食器は消耗品費だったけれど、テイクアウト用に仕入れて使わなかった分の容器は棚卸しないといけませんから。

そんなに大きな金額でなければ問題ないとは思いますが、万が一それなりの在庫になる場合は、棚卸するべきものとして数えておくほうがいいですね。

ライター

――なるほど、お店をされている方は棚卸というものがあるんですね。では、使用時間か使用量か……などといった家事按分の計算方法が月ごとにコロコロ変わるのはOKですか?

宮原先生

宮原:月ごとに計算方法自体が変わるというのは、一般的に考えて「なぜ?」とツッコまれやすいですよね。あからさまに経費を増やそうとしているんじゃないかと見られるので、計算方法をコロコロ変えるのは好ましくないかな、と。

ライター

――たとえば、2019年分は使用量で計算していたものを、2020年分は使用時間で計算する……というように、一年ごとに計算方法を変えるのはどうでしょう?

宮原先生

宮原:基本的に税務というのは、何かを変更したら相当期間はそれを継続するのが慣例なので、もし計算方法自体を変えるのであれば、しばらくはその方法を採用し続けるということが必要になります。

そのため、2020年分から違う計算方法に統一するのは構いませんが、2021年分はまた違う計算方法に……と、一年ごとにコロコロ変えるのも避けたほうがいいですね。

ライター

――在宅時間が長くなったり、外出を控えたりしたことによって、飲食店ではなく自宅で顧客と打ち合わせをした方などもいると思いますが、そこで提供した飲食費は経費にできますか?

宮原先生

宮原:はい。仕事に伴っての飲食であれば、会議費や交際接待費などの必要経費になりますね。

あくまでも事業上必要だったことが明らかにできる何か、たとえば商談内容のメモなどを残していることが望ましいです。

場所が飲食店であろうと自宅であろうと、「事業上、この飲食が必要だった」ということが証明できればいいので。

ライター

――コロナ禍で急増したリモート打ち合わせや会議などの場合はどうですか? リモートで相手と話しながら、飲み物を飲んだりすることなども多いですよね。

宮原先生

宮原:それも経費として認められると思いますよ。あとは取引先とのオンライン飲み会の飲食費なども、経費のひとつといえるでしょう。

判断基準として重要なのは、「飲食をしたかどうか」ということではなく、その飲食が「いつ、誰と、事業上のどんな目的や内容でおこなわれたものなのか」というところです。

個人事業主の方の中には、「自分が飲食をともにする相手は全員顧客だから、ほとんどの飲食費が必要経費だ!」と主張する人もいますが(笑)。

2020年分の確定申告の注意点や、2019年分の期限延長について

2020年分の確定申告の注意点や、2019年分の期限延長について

ライター

――2020年分の確定申告ですが、なんと基礎控除額が10万円増えると聞きました。そもそも青色申告&e-Taxだった人は、青色申告特別控除の65万円という額は変わらないので、トータルで控除額は10万円アップ!……という認識でいいのでしょうか?

宮原先生

宮原:先に、大多数のサラリーマンの方についてお話しすると、税制改正によって、2020年分から基礎控除が10万円上がる代わりに、給与所得控除が10万円下がるんです。そのためトータルは変わりません。

それが個人事業主の方についても、基礎控除が10万円上がる代わりに、青色申告特別控除の最大65万円が10万円下がって最大55万円になっちゃいます。

そこにe-Taxや電子帳簿保存などの要件を付け加えることで、再び最大65万円にすることができるので、人によっては控除がトータルで10万円上がるという形ですね。

ライター

――やっぱり、もともと青色申告&e-Taxをセットでおこなっていた人はお得になるということなんですね! すでに青色申告もe-Taxも取り入れている人が、2020年分の申告で気をつけるべきことがあれば教えてください。

宮原先生

宮原:特に追加の注意点などはありませんが、もともとの条件である「期限内申告」は忘れないように気をつけたいところですね。

ライター

――現時点では、新型コロナウイルス感染症の影響による2020年分の確定申告の期限延長などは発表されていないということですよね?

宮原先生

宮原:そうです。そのため例年通り、2021年(令和3年)2月16日(火)から3月15日(月)までの期限内に確定申告を済ませる必要があります。

ライター

――2019年分の確定申告は、期限が延長されています。申告書をまだ出していない場合、2019年分の申告と一緒に青色申告承認申請書を出したら、2020年分を青色申告にできますか?

宮原先生

宮原:まず2019年分の延長について時系列に沿ってお話ししましょう。もともとの2019年分の確定申告の期限は、2020年3月16日(月)でした。それがコロナ禍でさまざまな混乱が起こってしまったため、国税庁の告示で、取り急ぎ4月17日(金)まで期限が1ヵ月延長されたんです。

しかし、その後もコロナ禍の影響が続いたことで、個別の指定という形で4月17日(金)以降であっても柔軟に対応することが発表されました。このような取り扱いが、2019年分の確定申告の状況です。

じゃあ個別の指定とは何かというと、たとえば納税者自身がコロナウイルス感染症にかかってしまった、感染症の患者と接触した、行政からの外出自粛要請を受けた、感染拡大防止のために自主的に外出を控えた……などの理由で確定申告の会場に行けなかったり、確定申告書を作成するのが困難になったりしているという事情がある方については個別に延長を認めますよ、という取り扱いになっています。

この個別指定の申告については、申告書の余白にその旨を記載するという決まりになっています。その記載を忘れると、単純な「期限後申告」の扱いになってしまうので注意してください。

個別の指定が認められる方については、2019年分の申告書の提出日が申告期限という扱いになります。2019年分の申告書とあわせて青色申告承認申請書を出したら、2020年分は青色申告で認められると思います。

ただし、誰でも何でも一緒に出しちゃえばOKというわけではなく、個別の指定に合うかどうかというところが重要です。「柔軟に対応する」と告示されてはいますが、「ただ面倒でサボってました」というのはNGですよ。

ライター

――人によっては、2020年分の申告期限である2021年3月15日(月)まで、2019年分の提出も認められることになりそうですね。

宮原先生

宮原:はい、国税庁の情報によりますと、2019年分の申告は2020年分の申告書と同時に提出して差し支えないとのことです。ただし、2020年分を先に提出し、後日2019年分を提出した場合は期限後扱いになりますので、順番を間違えないように注意しましょう。

コロナで事業が赤字に……確定申告での救済措置、納税猶予や軽減を受けている場合の処理の仕方

コロナで事業が赤字に......確定申告での救済措置、納税猶予や軽減を受けている場合の処理の仕方

ライター

――つらい話ではありますが、コロナ禍の影響で赤字が出てしまった個人事業主の方もいると思います。赤字の処理の仕方には、どのようなものがありますか?

宮原先生

宮原:赤字が出てしまった、というところをスタートとして考えたとき、まずは「損益通算」という方法があります。雑所得や給与所得など、事業所得とは別の所得がある方の場合、事業の赤字をそれらの所得の黒字から差し引くことができるというものです。

次に、損益通算をしてもまだ赤字が残る場合、その赤字を「純損失」といいます。純損失をどうするか……ということについては、青色申告と白色申告で違いが出てくるんですよ。

青色申告には「繰戻し還付」という特例があります。これは、その年の赤字を前年の黒字に合算し、税金の差額を返してもらうという方法です。

その他に、青色申告の場合は「純損失の繰越控除」という方法もありますね。翌年以降3年間、赤字を繰り越していって、黒字が出たときに相殺できます。黒字が減るので、翌年分以降の申告で税額も減るという手続きを取ることが可能です。

白色申告については、純損失の繰越はできません。赤字だったらその年の税金はかかりませんが、その年だけで赤字の処理は打ち切りです。

ただし例外的に「災害損失の繰越」というのがありまして、事業用のものについて災害で出た赤字は、3年間繰り越すことが認められます。

今回のコロナ禍での赤字のうち一定のものは災害損失に認められることになりました。

たとえば飲食店でクラスターが発生して、在庫品をすべて廃棄しなければならなくなったとか、お店全体の消毒費用がかかった……というように、コロナ関連で特別な支出が発生してしまったことによる赤字が該当します。

一言で赤字といっても、単純な売上減による赤字は認められないのですが、事業用の設備などに対する赤字は災害損失として認められるはずです。

ライター

――残念ですが、休業要請や時短要請などによって下がってしまった売上の赤字は、災害損失には認められないということですね(泣)。今教えていただいた繰戻し還付などをおこないたいときは、別途申請などが必要になりますか?

宮原先生

宮原:記帳そのものは普段と変わりませんが、たとえば繰戻し還付の特例を受ける際には、通常の申告書の他に「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を提出する必要があります。純損失の繰越控除であれば、確定申告書の第四表に記載をして提出しましょう。

ライター

――それらの決められた用紙を税務署に取りに行き、記載をして提出すればいいんですね。

宮原先生

宮原:還付請求書や申告書の第四表は、2020年からオンラインで様式をダウンロードして印刷できるようになりました。コロナ禍でリスクを冒して税務署に行かなくても大丈夫ですよ。

ライター

――混んでいる税務署に行くのは不安な人も多いでしょうから、オンライン対応はありがたいですね。でも必要書類の提出を忘れると、特例が適用されないから注意しないと……!

宮原先生

宮原:申告をして初めて繰越の手続きになるので、忘れないでくださいね。

ライター

――たとえば2019年は白色申告で、2020年分から青色申告をする人でも、繰戻し還付などの特例は使えますか?

宮原先生

宮原:「赤字が出た年もその前年分も青色申告である」ということが条件なので、残念ながら繰戻し還付は使えません。ただし、繰越控除は可能ですからそちらを検討してください。

ライター

――収入減などで、コロナ禍の影響で納税猶予や軽減を受けている場合、処理の仕方はどうなるのでしょう?

宮原先生

宮原:記帳上の注意点としては、猶予というのは「期限が来ているけれど、納めるのを待ってもらっている」という状態なので、事業税や消費税など必要経費になるものは、本来の期日に合わせて、未払金として計上をしてください。特に青色申告で65万円控除(もしくは55万円控除)を受ける場合は、そういった負債を残高にしっかり乗せておくことが好ましいですね。

所得税や住民税など必要経費にならないものは、猶予を受けていたとしても特に処理は必要ありません。

イベントなどのキャンセル料や、打ち合わせでポイント支払した場合の処理方法は?

ライター

――今回はいろいろお話を聞かせていただいてありがとうございます! ここまでの質問の他に、宮原先生がクライアントの方からコロナ禍の確定申告について相談されたことなどがあれば教えてください。

宮原先生

宮原:自粛要請中だと、イベントなどのキャンセル料関連の質問や相談は多かったかもしれません。

キャンセル料も会場やお店側にとっては事業収入になるのですが、実際の仕事をしていないけれど受け取る違約金のようなものですよね。

そういった違約金のような意味合いでのキャンセル料というのは、基本的には消費税がかからない事業収入という扱いになります。

逆に、キャンセル料を支払う側にとっても、実際の仕事は発生していないけれど、補償のような意味合いで支払うお金なので、消費税はかかりません。

そのため、消費税の申告の際に誤って「課税仕入れ」で引いてしまったりすると、実際の税額と異なってしまうので要注意です。

ライター

――消費税の課税事業者の方でも、キャンセル料の扱いについて知らないと間違ってしまいそうですね。

宮原先生

宮原:そうですね。また、その他には「仕事の打ち合わせや接待でGoToイートを利用して飲食をしたけれど、もらったポイントの処理はどうしたらいい?」という質問もありましたね。

ポイントは使わなかったら効果がないので、ポイントをもらった時点での処理は必要ありません。次の飲食時にそのポイントを使ったら、飲食費からポイント分を引いて実際に支払った金額で処理をするのが簡単ではありますが、厳密に言うと、支払った総額が必要経費になって、使ったポイントは「雑収入」という扱いになります。

キャッシュレス還元と同じ考え方ですね。

コロナ関連の確定申告については、国税庁のホームページなどにいろいろな情報が載っているので、ぜひチェックしてみてください。

photo:沼田学、Getty Images

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