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持続化給付金は課税対象?!新型コロナ関連施策の確定申告での取り扱い

2020年、2021年、世界は新型コロナウイルス感染症の猛威に晒されました。日本でも感染症拡大防止のため人々の行動は変容し、人やモノの動きが急激に鈍っていきました。事業活動は未曾有の大ダメージを受け、ことに事業規模の小さな個人事業主が受けた影響は計り知れません。個人事業主が各種給付金等を受給した場合や損失が出た場合の税務上の取り扱いについてお話いたします。

(※この記事は個人事業主の方向けです。法人の方は「新型コロナウイルス関連施策の税務上の取り扱い(法人編)」をご覧ください。)

POINT
  • 持続化給付金は所得税の課税対象?!
  • 持続化給付金の取扱いは主たる所得による
  • 所得に損失が生じたら?

持続化給付金等の税務上の取り扱い

2020年、2021年は、感染症の拡大により営業自粛が要請されるなど、事業活動が物理的に制限され、多くの事業者はどうすることもできない苦境に立たされました。

そこで、事業や雇用の継続を支えるために持続化給付金(個人事業主は最大100万円)や雇用調整助成金(雇用を維持した会社等に休業手当を助成)、各自治体が支給する休業要請への協力金など様々な給付金・助成金が創設され、すでに受給した方も多いかと思います。

所得税法上、事業に関連して支給される助成金は事業所得等に区分されます。具体的には、収支内訳書上の「その他の収入」に計上して収益として計上されます。
仕訳で示すと次の通りです。

(例:持続化給付金100万円を受給し、普通預金口座に振り込まれた)

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 1,000,000 雑収入 1,000,000

ただし、受け取った金額に対して所得税を支払わなければいけない、というわけではなく、受け取った金額は「売上などと同様に総収入金額に入れる」ということです。

ここから通常通り、必要経費を差し引いて課税所得を計算していくことになりますので、各給付金等を受け取っても結果的に赤字の場合は、所得は発生しないため、課税されないことになります。

家賃支援給付金、文化芸術・スポーツ活動の継続支援、感染拡大防止協力金(東京都)、雇用調整助成金、小学校休業等対応助成金などの助成金等も持続化給付金と同様に、収支内訳書上の「その他の収入」に計上して収益として計上することとなりますが、助成金等を受け取っても最終的に赤字となれば、所得は発生せず課税されません。

また、持続化給付金などの給付金・助成金等は、資産の譲渡又は役務の提供を行うことの反対給付として事業者が受けるものではないことから、消費税の課税対象となりません。

主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した方の持続化給付金

2020年の第二次補正予算で持続化給付金の受給対象が拡大され、委託契約だけど給与の形で報酬が支払われているフリーランスの方や、税務署の指導で所得を雑所得として申告している個人事業主の方なども、事業性が認められれば持続化給付金が受けられるようになりました。

このような方が持続化給付金を受けた場合、その給付金は一時所得や雑所得として計上することとなります。

受給した給付金等は次のような所得区分で確定申告することになります。

  • <事業所得等に区分されるものの例>
  • 持続化給付金(事業所得者向け)
  • 家賃支援給付金
  • 文化芸術・スポーツ活動の継続支援
  • 東京都の感染拡大防止協力金
  • 雇用調整助成金
  • 小学校休業等対応助成金
  • <一時所得に区分されるものの例>
  • 持続化給付金(給与所得者向け)
  • <雑所得に区分されるものの例>
  • 持続化給付金(雑所得者向け)

なお、持続化給付金を一時所得に区分した場合、一時所得の金額の計算方法は
総収入金額(持続化給付金+他の一時所得)-収入を得るために支出した金額-特別控除額50万円
となります。

持続化給付金以外の一時所得がなく、収入を得るために支出した金額もない場合、持続化給付金の受給額が50万円以下ならば一時所得はゼロとなり、所得税は課税されません。

事業所得などに赤字金額がある方-青色申告の場合

事業所得などに赤字金額がある場合、青色申告者とそれ以外の者(いわゆる白色申告者)では、その損失の取り扱いが異なります。

青色申告者の場合、その年の事業所得などに赤字(損失)の金額がある場合で、他の所得と通算(損益通算)しても、なお控除しきれない金額(純損失の金額)が生じたときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除することができます。
これを「純損失の繰越」といいます。

また、純損失の金額が生じた年の前年も青色申告をしている場合には、損失が生じた年の損失を前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受けることができます。これを「純損失の繰戻し」といいます。

繰り戻さなかった損失は、翌年以後3年間にわたって繰り越すことができます。

純損失の繰戻しの適用を受けるためには、原則として、繰戻しを行う純損失が生じた年分の確定申告書とともに「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を確定申告期限内に所轄の税務署長に提出することが必要となります。

申告に関連しますので、適用を検討する場合は顧問税理士等ともご相談ください。

事業所得などに赤字金額がある方-白色申告の場合

純損失を3年間繰り越せる「純損失の繰越」や、前年度の所得税を還付する「純損失の繰戻し」は青色申告者だけの特例になります。

ただし、いわゆる白色申告者であっても、純損失のうち「事業用資産に生じた災害による損失等」については、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除することができます。

「事業用資産に生じた災害による損失等」とは、棚卸資産や固定資産に生じた直接の被害(廃棄損など)に加え、その被害の拡大・発生を防止するために緊急に必要な措置を講ずるための費用(消毒液や配備マスクの費用等)も該当します。

翌年以後に繰り越される損失等(災害による損失等)の例は次の通りです。

  • 〔災害により生じた損失等の例〕
  • 飲食業者等の食材(棚卸資産)の廃棄損
  • 感染者が確認されたことにより廃棄処分した器具備品等の除却損
  • 施設や備品などを消毒するために支出した費用
  • 感染発生の防止のため、配備するマスク、消毒液、空気洗浄機等の購入費用
  • イベント等の中止により、廃棄せざるを得なくなった商品等の廃棄損
  • 〔災害により生じた損失等に該当しない例〕
  • 客足が減少したことによる売上げ減少額
  • 休業期間中に支払う人件費
  • イベント等の中止により支払うキャンセル料、会場借上料、備品レンタル料

「事業用資産に生じた災害による損失等」は申告にもかかるものです。具体的な損失の範囲などは、税務署や顧問税理士までご相談ください。

持続化給付金をはじめとする様々な給付金や助成金は、個人事業主として活躍される皆さんが今後も事業を継続できるように、今の厳しい状況を乗り切るための措置です。

また、青色申告事業者の純損失の繰戻し還付や純損失の繰越制度、白色申告でもつかえる事業用資産に生じた災害による損失等、不測の事態の中で納税者に有利な既存の制度もあります。どのような制度があるのかを理解して、賢く利用したいですね。

photo:Getty Images

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