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【新型コロナ】中小企業向けの融資・補助金・助成金などの支援メニューを徹底解説!

新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小企業の方に向けて、さまざまな融資や補助金などが発表されています。当面の資金繰りが心配ならスピード優先で「融資」から検討しましょう。融資枠として信用保証協会の「セーフティネット保証制度」「危機関連保証制度」、日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」。従業員の雇用を守るための「雇用調整助成金」、売上がダウンした事業者への「持続化給付金」。こうした支援策についてまとめて解説いたします。
(※この取材は、オンライン会議ツールを使用し、リモートでインタビューしたものです)

※※持続化給付金の申請期限は、2021年1月15日までです。※※(2020年12月8日 スモビバ!編集部追記)

大野修平(公認会計士・税理士)

大野修平

公認会計士・税理士。
大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。
金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。
トーマツ退所後、現在は開業支援、融資支援、税務顧問などの業務を行う。
また、毎週、補助金と融資の勉強会を開催し、中小企業の資金繰り支援にも力を入れている。

資金繰りが不安なら、まずは「融資」から検討する


──新型コロナウイルス感染症の影響で、当面の資金繰りが厳しい……という場合、資金繰り策の優先順位などについて、どのように考えればいいでしょうか?

大野修平先生

大野修平先生(以下・敬称略):まず優先して考えるべきなのは、間違いなく融資ですね。融資について大きく分けると、‟民間金融機関による信用保証付き融資”と、‟政府系金融機関による融資”の2つに分かれています。
新型コロナの影響で危機的な状況になると、本当にお金が足りなくなって、いろいろなところに融資を申し込みたくなると思うんですが、まずはこの2つから検討してみるのがいいでしょう。


──なるほど、コロナ関連の融資制度として大きく分けるとまずその2つなのですね。

大野修平先生

大野:2020年5月1日より、自治体における制度融資の枠組みを利用して、民間金融機関においても、売上の減少割合に応じて、実質無利子・無担保・据置最大5年の融資が始まりました。あわせて、信用保証料を半額またはゼロとすることも可能です。
さらに、民間金融機関の信用保証付き既往債務の実質無利子融資への借換えを可能とし、事業者の金利負担および返済負担を軽減することが可能となりました。


──では、まず民間の信用保証付き融資について、知っておくべきポイントを教えてください。

信用保証協会の保証枠「セーフティネット保証制度」「危機関連保証制度」

大野修平先生

大野:例えば都市銀行や地元の信用金庫など、民間の金融機関から借りるときは、信用保証協会が付くことが多いんですね。信用保証協会では、通常時なら‟一般保証枠”を用意して、そのなかで保証を行っているのですが、危機的状況の際には、‟セーフティネット保証枠(SN保証枠)”というのが、これまでも別枠として設定されていました。

仮に「一般保証額の2.8億円は使い切っちゃっているよ」という方でも、保障限度額に別枠が設定されることで、新たなお金が借りやすくなります。
さらに今回は、それにプラスして‟危機関連保証枠”というのが付け足され、今のところ3階建ての支援になっています。


──セーフティネット保証には、‟4号”と‟5号”という種類もあるそうですね。

大野修平先生

大野:セーフティネット保証4号は、全国47都道府県を対象地域に、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で借入債務の100%を保証する制度です。

原則として、最近1ヵ月の売上高等が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2ヵ月を含む3ヵ月間の売上高等が、前年同期に比して20%以上減少することが見込まれる中小企業が対象になります。

またセーフティネット保証5号は、全国的に業績が悪化している業種の中小企業を対象に、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で80%保証を行う制度です。指定業種に属する事業を行っており、最近3ヵ月間の売上高等が前年同期比で5%以上減少している中小企業が対象になります。

なお、コロナウイルスの影響でセーフティネット5号は、2021年1月15日付で2020年(令和2年)5月1日~2021年(令和3年)6月30日(※)の期間限定で全業種が対象になっています。


──危機関連保証の概要はどんなものですか?

大野修平先生

大野:セーフティネット保証制度とはさらに別枠で、全国・全業種を対象に、信用保証協会が借入債務の100%保証を行う制度です。
原則として、最近1ヵ月間の売上高等が前年同月比で15%以上減少しており、かつ、その後2ヵ月間を含む3ヵ月間の売上高等が前年同期比で15%以上減少することが見込まれる中小企業が対象になります。

大野修平先生

大野:なお、前年実績の無い創業者や、前年以降店舗や業容拡大してきた事業者の方についても、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている場合には、セーフティネット保証4号・5号及び危機関連保証が利用できるように認定基準の運用を緩和が行われています。

もう一つの融資の選択肢・政府系金融機関(日本政策金融公庫・商工中金)の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」


──政府系金融機関による融資についても、ポイントを教えてください。

大野修平先生

大野:日本政策金融公庫や商工中金などの政府系金融機関は、保証協会を使わずに融資を行うので、民間の融資とは別に使えます。これまでも危機的状況になると、‟セーフティネット貸付”というものが発足して、比較的柔軟な審査が行われていました。

今はそれにプラスして、”新型コロナウイルス感染症特別貸付”という制度が別枠設定されていて、お金を借りやすくなっています。この特別貸付の対象要件に該当する方は、金利が安くなったり、実質無利子になったりというメリットも受けられます。

融資対象は、最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少した方です。ただし、業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合でも、最近1ヵ月の売上高が「過去3ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高」「2019年12月の売上高」「2019年10~12月の売上高平均額」のいずれかと比較して5%以上減少している方は対象になります。


──新型コロナウイルス感染症特別貸付は、今はもっとも問い合わせが多く、申し込んでも回答までにかなり時間がかかっているという話を聞きます。相談や申し込みにおいて気をつけておきたいことなどはありますか?

大野修平先生

大野:おっしゃるとおり、回答まで時間はめちゃくちゃかかると思います。僕たちもこれまで融資の支援をしてきましたが、通常の日本政策金融公庫の融資より2週間から3週間ほど遅いペースだと感じますね。そういった意味でも、やはり3〜4ヵ月の資金繰りの目安は必要かなと思います。

大野修平先生

大野:また、日本政策金融公庫の場合は土日返上で相談窓口を設置しているんですが、これまで17時まで開いていた窓口を、コロナ対策のため15時で閉めるようになっているところが多いようです。そこは気をつけないといけないかもしれません。


──15時過ぎに問い合わせ窓口に直接行ってもダメかもしれないんですね。

大野修平先生

大野:日本政策金融公庫は、郵送やインターネットなどでの申し込み受付もしていますから、活用されるといいのではないでしょうか。今は窓口にいきなり出向いても感染リスクが高まるだけです。混雑していて「予約をして出直してください」と言われる可能性もあります。
日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付のページに、Q&Aや、申し込み手続きのPDFがあります。
提出書類や記入例などもていねいにわかりやすく書いてあるので、1つずつ見ていけば、内容はそんなに難しくないと思いますよ。


──民間の信用保証付き融資も、政府系金融機関の融資も、どちらもまず3ヵ月の売上が立っていれば、2019年に創業した方でも使える可能性が高いということですね。

大野修平先生

大野:5%なり20%なり、売上が下がっていることが条件にはなるんですけどね。いずれにしても、判断基準としてこれまでの売上高は絶対必要になりますから、売上の集計は直近の3~4月部分まで出しておくほうがいいでしょう。それを持って、お付き合いのある民間の金融機関か日本政策金融公庫に相談に行くと、金融機関の人たちも融資メニューの判断がしやすいんじゃないかな、と。
ここで挙げたもの以外にもたくさんの融資メニューがありますが、今の緊急事態だと調べている時間がもったいないので、相談先の金融機関の人たちと一緒に決めればいいと思います。

従業員の雇用を守るために「雇用調整助成金」の申請を検討すべし


──新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた助成金として、他にはどのようなものがあるのでしょうか?

大野修平先生

大野:経済産業省のパンフレットにも厚生労働省系の助成金のことが掲載されています。今、中小企業の経営者の方が知っておくといいのは、‟雇用調整助成金の特例措置”でしょうか。雇用調整助成金自体は、コロナの影響にかかわらず、以前からあった制度です。

経済的な理由で事業活動を縮小せざるを得ないときに、経営者の取る方法は大きく分けて2つあると思います。1つは、従業員を解雇するという方法。でも、これはできれば避けたいでしょうし、事業活動を再開するときに新しく人を採用・教育するのも大変です。なので、もう1つの選択肢として、今の従業員にお休みをしてもらうという方法があります。

今回の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく対応として、営業を自粛するよう協力依頼や要請などを受けた場合のように、不可抗力による休業である場合には、休業手当を払わなくても良いとされていますので、休ませている間に支払い義務は発生しません。ただし、休む方の従業員だってノーワーク・ノーペイなので、普通なら「お給料がもらえないんだったら辞めます」と言われちゃいますよね。そうならないよう、休業手当の一部を助成しますよ、という目的の助成金です。


──特例措置によって変更になったのは、どんな点ですか?

大野修平先生

大野:厚生労働省系の助成金ですので、詳細な内容は社労士さんにお尋ねいただくのが良いと思います。概要としては、これまでは助成率が2/3だったのが、中小企業であれば4/5に助成額が引き上げになり、さらに解雇をまったく行わなければ、助成率が9/10まで引き上げられます。

現在は助成額の上限が1日あたり8,300円/人に設定されていますが、この上限を撤廃したり、助成率のさらなる引き上げも検討されているようです。最新の正しい情報を得るためにも、社労士さんにお問い合わせいただくことをおすすめします。


──休業手当の9割なら、休業中の事業者もかなり助かりますね。

大野修平先生

大野:ただ、休業手当を支払った事業者に対して後払いで助成されるものですから、支給されるのはまだ先になってしまいます。そのため、当座の資金繰りは楽にはなりません。


──従業員の方たちのお給料のことで悩まれている経営者さんは多いと聞きます。休業手当をいったん支払ってから、助成金が本当にもらえるのか不安になったり、もらえるまで待てない……という方も多いようです。

大野修平先生

大野:この助成金が本当に払われるかどうかというのは、心配しなくていいと思います。


──それを聞いて安心する事業者さんも多いと思います。

大野修平先生

大野:ただ、入金まで待てないという、資金繰りの心配はあると思います。資金繰りとは、「お金の入りと出のタイミングを調整する」ということです。その入りと出のタイミングを埋めるのが、融資の本質的なところなんですね。

「休業手当で18万円を払えば、助成金として16万円入ってくる。でも今、手元に18万円がない……」というのであれば、今のうちに支払いに必要な資金をどこかから借りておくべきです。補助金や助成金が待てないときは、やはり先に融資を受けるしかないと思います。


──資金繰りについて悩む場合は、補助金や助成金をあてにするだけでなく、専門家に相談するのが賢明なように思います。

大野修平先生

大野:補助金や助成金、それから融資制度について誤解があったりするのは、専門家じゃないから仕方がないことです。だからこそ、資金繰りの制度については専門家に聞かないとダメなんです。相談先は、資金繰りについては民間の金融機関か政府系の金融機関(日本政策金融公庫と商工中金)の2つです。
税金については税理士。補助金を受けたいなら、税理士でも中小企業診断士でもいいですし、弊所のような認定支援機関に相談するという期間もあります。また、雇用調整助成金のような労務に関する制度については、社労士に聞くのがいいと思います。そして、やむを得ず会社をたたむという判断をする場合は、一刻も早く弁護士に相談しましょう。

返済しなくてもいい支援制度「持続化給付金」、東京都の「感染拡大防止協力金」


──先日、給付条件が発表になった‟持続化給付金”についても、押さえておくべきポイントをうかがいたいです。

大野修平先生

大野:これは持続化給付金事務局のホームページに給付対象者と、給付額の計算式が載っています。給付対象者は、コロナの影響によって売上が前年同月比で50%以上減少している方。給付額の計算式は以下です。

前年の総売上(事業収入)–(前年同月比▲50%月の売上×12ヶ月)

例えば、「2020年3月の売上が、2019年3月に比べて50%以上減少しています」という中小企業であれば、2020年3月の売り上げを12倍し、2019年の総売上から差し引いて、その差額が給付されますよという仕組みです。個人事業主なら100万円、法人なら200万円が上限額です。


──持続化給付金は、2019年や2020年に創業したばかりの方も対象になるのでしょうか。

大野修平先生

大野:2020年に入ってから創業した方は2019年の売上がないので、残念ながら対象外になってしまいますね。ただし、個人事業主から2020年に法人成り(会社設立)した場合には、特例があります。ほかにも、例えば2019年内に創業した事業者には「創業特例」が、またある時期に売上が集中する業種など、売上に季節性がある事業者には「季節性収入特例」があるなど、給付条件にもさまざまな配慮がなされています。


──他に、返済しなくてもいい支援制度などはありますか?

大野修平先生

大野:東京都の場合、‟東京都感染拡大防止協力金”というものがあります。都の休業要請や営業時間の短縮要請に応じている飲食店や施設の方々に対し、要請に応じることに対する損失を補填するお金ですね。支給額は50万円、2事業所以上で休業などに取り組む事業者は100万円です。
東京都以外の各自治体でも、いろいろな給付金や協力金を出しているので、チェックしてみるといいでしょう。

採択されるなら活用したい「生産性革命推進事業」の3種の補助金


──補助金や助成金、給付金など、「返さなくていいお金」の制度には他に何がありますか。

大野修平先生

大野:もちろん、使えるものは使うほうがいいですね。まず、コロナの影響を乗り越えるための補助金に関する事業として、‟生産性革命推進事業”というのが挙げられます。‟ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金”‟小規模事業者持続化補助金”‟IT導入補助金”という3つの補助事業があり、今はそれぞれにおいて特別枠が設けられ、補助上限や補助率が通常時より引き上げられています。

中小企業の場合、ものづくり・商業・サービス補助は補助率が1/2から2/3のに、小規模事業者持続化補助金は上限額が50万円から100万円に、IT導入補助も補助率が1/2から2/3に引き上げられました。


──そもそも補助金とは、どういう仕組みなんでしょうか?

大野修平先生

大野:例えばものづくり補助金なら、新製品・サービスの開発や・生産プロセスの改善に必要な設備投資などにお金を使ったときに、その金額の2/3が補助されます。各補助金が想定する補助対象経費にお金を使った後に、その一部が補助される……という流れです。
入金のタイミングは助成金と同様に、経費を支払った後ですので、結果として持っている資金は減りますよ。残りの1/3のお金は補助されないわけですから。


──持続化補助やIT導入補助も、大なり小なり手元のお金は減ってしまうんですね。

大野修平先生

大野:そうです。だから、「補助金をもらったら資金繰りが楽になる」というイメージがあるかもしれませんが、補助金をもらっただけでは決して楽にはなりません。
IT導入補助金だったら、「これまで紙や手作業でやっていたものをIT化しましょう」ということが目的なので、紙作業がなくなることで会社の効率性が上がり、結果として利益が増え、資金繰りが良くなるということです。でも、その場合も資金繰りが改善するのは儲かった後なので、かなり先になるでしょう。


──「念のため、ありとあらゆる融資を申し込んでいる」という方の話も聞きますが、融資や補助金などを同時に申し込んだり併用したりすることは可能なのでしょうか?

大野修平先生

大野:融資の場合、先ほどお話ししたとおり、基本的に優先すべきは保証協会と政府系金融機関(日本政策金融公庫と商工中金)の2つです。保証協会付き融資について、いくつかの民間金融機関経由で申し込んだとしても、結局行き着く先はどちらも保証協会なので。保証協会つきの融資については、日々付き合いのあるメインバンクの担当者に相談して、どの制度を使うか決めるといいでしょう。

一方、政府系金融機関のほうは、保証協会とは別に申し込めます。もちろん、融資制度と補助金や助成金などを併用することも可能です。


──専門家の力を借りながら、さまざまな支援策を使って、コロナ不況を乗り越えたいですね。

大野修平先生

大野:そうですね。総括すると、中小企業向けの資金繰りとしては、まず早めに直近の売上を算出し、まずは融資から検討するべきです。まだまだ先行き不透明な部分が多いですが、企業活動を継続させていくと決めたなら、冷静に取り組んでいきましょう。

本文写真撮影(トップ画像をのぞく):塙薫子

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