国民年金基金とは?加入条件やメリット・デメリットを徹底解説!
監修者 : 菅田 芳恵(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー)

個人事業主やフリーランスの人は「国民年金基金へ加入をする」という選択肢があるため、加入を検討している人もいるでしょう。
国民年金基金は、国民年金と名称が似ているため混同されがちですが、両者は別物です。厚生年金がない個人事業主やフリーランスは、老後の不安を解消する手段の1つとして国民年金基金を任意に利用できます。
今回は国民年金基金について解説します。
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目次
国民年金基金とは?
国民年金基金とは、加入が義務付けられている国民年金の保険料に加えて、任意に掛け金を拠出することによって将来の年金受給額を増やせる制度です。
会社員の場合は、国民年金に上乗せされる厚生年金に加入することが多いため、老後は国民年金と厚生年金の両方を受給することになります。一方、個人事業主やフリーランスの場合は、厚生年金に加入できないため、会社員と比較すると老後に受給できる公的年金は少なくなってしまいます。
そのため国民年金基金は、将来受給できる年金を増やすための選択肢として有効です。自ら選択して国民年金基金に加入すれば、老後の年金として国民年金からの老齢基礎年金だけでなく、国民年金基金からの年金を上乗せできます。国民年金基金は、自営業者などの個人事業主が将来に対する不安を和らげる強い味方となる制度なのです。
国民年金基金と国民年金の違い
国民年金基金は、国民年金に上乗せできる制度ですが、両者には違いがあります。加入にあたっては、相違点をしっかり把握しておくことが必要です。
国民年金は、20歳以上60歳未満の日本在住者は全員加入します。一方、国民年金基金は加入するかどうかを自ら選択する任意の制度であり、加入対象者も国民年金第1号被保険者に限られていることが特徴です。
また、月々負担する保険料や掛け金についても違いがあります。国民年金の保険料は、免除などの適用を受ける場合を除いて、加入者全員一律になっています。国民年金基金は選択したプランによって掛け金が異なる仕組みです。つまり受給額を増やすと掛け金も増えることになります。
さらに、年金受給形態も異なっています。国民年金の受給形態は、受給開始年齢から死亡するまで受け取ることできる終身年金だけです。一方、国民年金基金は終身年金だけでなく、受給期間があらかじめ決まっている確定年金を加えたプランも選択できます。
国民年金 | 国民年金基金 | |
---|---|---|
加入対象 | 20歳以上60歳未満の日本在住者は全員加入 | ・日本国内に在住している20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、自由業、学生などの国民年金第1号被保険者 ・60歳以上65歳未満の国民年金任意加入被保険者や海外に居住している人 |
保険料 | 免除などの適用を受ける場合を除いて、加入者全員一律 | 選択したプランによって掛け金が異なる |
受給形態 | 終身年金 | 終身年金、確定年金 |
国民年金基金の加入条件
国民年金基金には、加入条件が定められています。加入を検討するにあたっては、まず自分が加入対象かどうかについて確認しておくようにしましょう。
加入対象者は、以下の通り。
・日本国内に在住している20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、自由業、学生などの国民年金第1号被保険者
また、60歳以上65歳未満の国民年金任意加入被保険者や海外に居住している人も加入することができます。
加入できない対象者もいます。
・厚生年金に加入している会社員(国民年金の第2号被保険者)
・その会社員などの被扶養配偶者(国民年金の第3号被保険者)
さらに、国民年金保険料の免除(一部免除・学生納付特例・納付猶予を含む)を受けている人や、国民年金の付加保険料を納めている人も対象外となります。
国民年金基金は、国民年金の保険料を全額支払っていることが前提として、上乗せできる年金制度という位置づけです。そのため、国民年金保険料を支払っていない人は対象外となります。
国民年金基金の加入資格を失うケース
国民年金基金に加入したあとで、加入資格を失うケースについても知っておいたほうがよいでしょう。
国民年金基金は、保険会社が取り扱う民間の年金制度とは異なる公的な年金制度です。そのため、加入後の脱退については自由というわけではなく原則として脱退できません。ただし、一定の場合については加入資格を失うことになるため注意が必要です。
加入資格を失うケースとしては、まず「60歳になったとき」「国民年金の任意加入者が65歳になったとき」があげられます。いずれも、これ以上掛け金を拠出することができなくなるため加入資格を失うということです。
また、「会社員になったとき」も加入資格を失います。なぜなら、会社員になると厚生年金に加入することになり、第2号被保険者となってしまい加入要件を満たさなくなるからです。そのほかにも、加入条件を満たさない状況になった場合は、加入資格を失います。
国民年金基金のメリット
国民年金基金の加入は義務ではなく任意のため、加入検討にあたってはメリットがあるかどうかを把握してから加入することが大切です。ここでは、国民年金基金のメリットについて紹介します。
節税効果がある
1つ目のメリットは、国民年金基金へ加入して掛け金を負担することによって節税効果が得られることです。国民年金基金の掛け金は、全額所得控除の対象となります。
所得控除とは、所得税や住民税の計算をするもととなる、課税所得から差し引くことができることです。所得控除ができると所得を圧縮することができるため、結果的に税負担が減少することになります。毎月満額の6万8000円の掛け金を支払う場合、所得控除の年間金額は81万6000円です。この金額に適用税率を乗じた額が節税効果です。
所得控除の適用を受けるためには、毎月11月に郵送されてくる「社会保険料控除証明書」を確定申告するとき提出する確定申告書に添付する必要があります。書類には、控除対象金額が記載されているため、確定申告書を作成する場合はその金額を転記するだけで作業は完了です。
年金額が確定している
2つ目のメリットとして、あらかじめ年金額が確定していることが挙げられます。個人事業主やフリーランスが老後に備えるための制度としては、国民年金基金だけでなく老後の貯蓄制度として知られている個人型確定拠出年金「iDeCo」を利用するという選択肢もあります。「iDeCo」は、掛け金を自ら運用先を選定したうえで運用し、運用結果によって将来の年金額が決まる仕組みです。そのため、掛け金の累計額よりも年金受給額が少なくなるリスクもあります。
一方、国民年金基金は掛け金の運用状況や経済情勢などによって将来受け取る年金額が変動するリスクはありません。老後になって受け取ることできる年金額が確定していれば、ライフプランや資産計画も立てやすくなるでしょう。
国民年金基金の年金額があらかじめ確定しているという特徴は、年金額が変動することを望まない人にとっては大きなメリットです。
終身年金を選択できる
国民年金基金に加入する場合、少なくとも最初の1口目は、終身年金を選択することが必要です。さらに、年金額を増やしたい場合は、確定年金か終身年金を選択することになります。そのため、国民年金と異なり将来もらえる年金給付の型を自らの希望や経済状況、老後の資産計画に合わせて柔軟に設計することが可能になることがメリットです。
また、個人型確定給付年金「iDeCo」は、受給形態として終身年金を選択することができません。終身年金は、生存している限り年金支給が続きます。そのため、老後に長生きすることによる資金不足を回避できるということが特徴です。「iDeCo」ではなく国民年金基金を選択することによって、長生きリスクに備えられる点は、大きなメリットだといえるでしょう。
国民年金基金のデメリット
国民年金基金には、デメリットもあります。加入に際しては、デメリットについてもよく確認をしておくことが重要です。そこで、ここでは国民年金基金のデメリットについて説明します。
物価上昇に対応できない
国民年金基金の年金受給額は、加入時点における将来の物価上昇や金利水準の予想に基づいて確定する仕組みになっています。
加入時点の予想よりも年金受給時の物価が上昇してしまっている場合であっても、年金額は予想以上の物価上昇分について増額されることはありません。そのため、予想以上の物価上昇が生じてお金の価値が相対的に下がってしまった場合、物価上昇を考慮した年金額は、実質的には目減りしてしまうことになるのです。
日本は、長らく物価が下がるデフレの状態が続いていましたが、年金受給までには長い時間が経過して物価が上がる可能性はあります。30年前の商品の価格と今の価格を比較すれば、物価上昇のイメージはつかめるのではないでしょうか。「物価上昇には弱い」という点が国民年金基金のデメリットです。
付加保険料を納めることができない
2つ目のデメリットは、国民年金基金に加入すると付加保険料を納めることができなくなることです。
公的年金制度では、付加保険料を納めると国民年金に一定の上乗せ年金である付加年金が受給できるようになっています。付加保険料を納めることができる対象者は、国民年金第1号被保険者であるため、国民年金基金に加入できる人のほとんどは、付加保険料を納めるという選択も可能です。付加保険料は毎月国民年金の保険料に400円を上乗せして納めることになり、将来受給できる「200円×納付月数分」の付加年金が老齢基礎年金に上乗せされます。
付加年金は、保険料と年金受給額の関係をみると2年間付加年金を受給すれば支払った付加保険料を回収できる設計です。そのため、公的年金制度のなかでは相当割のよいお得な年金制度だといわれています。
ただし、付加保険料と国民年金基金への加入はどちらかを選択する必要があるため、国民年金基金に加入する前に「付加年金のほうがよいかどうか」を一度検討しておいたほうがよいでしょう。
解約できない
国民年金基金への加入後は原則として解約できません。国民年金基金は、加入については任意となっていますが、老後の資金を自ら用意することを公的に支援することが目的の年金制度であるため、一度加入すると基本的には自己の都合で任意に解約することができません。
例えば、加入当初は負担できると試算していた掛け金について、家計の状況が変わって負担が大きくなったとしても、任意に脱退して掛け金の支払いを回避することができないのです。
ただし、どうしても掛け金の負担が難しい場合は、申請を行うことで例外として2年間支払いを猶予することができます。支払猶予を行った場合でも、あとで家計に余裕ができたときに未納分を支払えば老後に満額受給することは可能です。
また、掛け金の減額もできますので、支払負担が大きくなって掛け金の支払いが難しくなった場合は、変更や猶予制度の利用を検討してみましょう。
国民年金基金の加入方法
国民年金基金に加入する場合は、年金受給形態について選択する必要があります。受給形態である給付の型は、終身年金である終身型はAとB、確定年金である確定型は1~5の合計7種類です。加入に際しては、これらの給付の型とそれぞれの口数を選択することになります。
給付の型を選択するときに注意すべき点は、1口目として必ず終身型であるAかBのどちらかを選択する必要があることです。つまり、終身年金を必ず1つ含めるということになります。そのうえで、2口目以降は終身型と確定型の合計7種類から自由に選択可能です。将来どのような形で年金を受け取りたいかを考慮して決めることになります。
また、同じ給付の型に複数加入することも可能です。給付の型と口数を決めると、それに応じて自動的に掛け金が決まりますが、掛け金の合計は月額6万8000円が上限のため、この金額を上回る加入は認められません。
国民年金基金の掛け金と受給額
国民年金基金は、給付の型を選びそれぞれの口数を決定することになります。口数が多ければ、掛け金もそれ応じて増える仕組みです。また、「口数を増やせば比例して将来受け取る年金額も増える」という関係になっています。掛け金と受給金額、受給期間は、給付の型によって異なっています。また、給付の型だけではなく性別や年齢によっても異なる点は国民年金とは違うということも知っておきましょう。
例えば、35歳の男性が終身型Bに1口加入する場合、毎月の掛け金は約9000円です。終身型Bは、終身年金であり年金受給開始後は毎月約1万5000円を終身受け取ることになります。加入前に、掛け金の負担がいくらになり、将来いくらの年金を受け取れるのかをしっかり確認したうえで給付の型や口数を決めることが重要です。
国民年金基金のWebサイトは、毎月の掛け金と将来受け取る年金額を試算できるようになっているため、加入前に利用して試算してみましょう。
将来への不安解消に国民年金基金を役立てよう!
厚生年金に加入できない自営業者などにとって、国民年金基金は老後の不安を和らげてくれる心強い味方となります。しかし、一度加入すると自己都合で解約できないなどの制約があることをしっかり認識しておきましょう。
また、制度の特徴やメリット・デメリットをよく理解することも重要です。自分の状況に踏まえて加入を検討してみましょう。