確定申告パーティーしちゃう?超インテリお笑いコンビ「Gパンパンダ」なら確定申告をどう乗り切る?

公認会計士兼税理士の星野光樹さんと、MENSA会員の一平さんという組み合わせの超インテリお笑いコンビ・Gパンパンダのおふたりと一緒に、確定申告についていろいろ話してみる今回の企画。
前編では、確定申告の重要性や提出方法による注意点など、3月15日までの確定申告にくじけそうな方に役立つアドバイスを教わることができました。
前編はこちら
確定申告がまだなら読め!超インテリお笑いコンビ「Gパンパンダ」が締切直前の不安を解消!
後編でも、確定申告のモチベーションを上げるための工夫や、経費に関する疑問などについて、たくさん伺ってきました!
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目次
経費のこまめな記録と「確定申告パーティー」で楽しさアップ?
――前編では、一平さんと一緒に、確定申告の重要性などを星野さんに教わりました。後編でも確定申告を頑張って乗り切るためのアドバイスをガンガン聞いていきたいのですが……ズバリ、しんどい確定申告が楽しくなったり、ラクになったりするようなおすすめの工夫ってありますか?
星野:確定申告で一番大変なことって、だいたいの人は経費の集計だと思うんです。
一平:一年分の領収書やレシートを取っておいて、仕訳をして集計するのがとにかく嫌。面倒。やりたくない。
星野:その気持ちはわかるよ。しかも、この時期に2018年1月の領収書を見ても、内容を忘れていがちっていうのが「確定申告あるある」なので。おすすめは、日ごとや週ごとに、領収書にまつわる内容を簡単にメモなどでまとめておくっていう方法がいいんじゃないかと。
一平:……もう手遅れじゃん!2018年、とっくに終わってるから!!
星野:そうですよ(平然)。
一平:なんなら2019年も3ヵ月過ぎようとしているから、その間の思い出せないことはメモできないよ。まさか、2020年1月からの心がけの話をしてるってこと?来年の話?……気持ち悪っっっ!!
星野:そうです。2020年分の確定申告を楽しく、ラクにする方法はそれです。2021年2~3月の確定申告を穏やかに行うための……。
一平:さっきからずっと何言ってんの???(笑)
星野:……確定申告を楽しくする方法なんかないんだよ!楽しくなくても毎年やるものなの!(笑)
一平:苦し紛れでキモい方法を考えてくれたんだな……ありがとう。あっ!僕の場合は「経費=ビジネスへの投資」と考えると、金額を見て「これだけ頑張ったんだな~」と思えて、集計作業のモチベーションがちょっと上がるっていうのはありますね。星野もそういうことあるんじゃない?
星野:なるほどね。その経費を「今後はこうしていこう」という分析に充てられると、もっとモチベーションが上がるよね。その分析のサイクルは短いほうが効率的なわけだから、そうなるとやっぱり日ごととか、週ごとに経費をまとめたほうが……。
一平:おい!さっきと全く同じこと言ってる!これ読んでる人がみんな、「自分はもう2020年まで領収書の整理は手遅れなんだ……」と思っちゃってかわいそうだろ(笑)。
星野:過去は変えられないので、未来を変えるため、今日からこまめに領収書の仕訳や管理をするようにしてください(笑)。
あとは「みんなで集まって、パーティー感覚で確定申告してみよう!」っていうのも、もしかしたら楽しいかもしれないですね。
一平:本当に夏休みの宿題みたいだね。
星野:部活の合宿とかすると、みんないつもより練習するじゃないですか。そんな感じで、ぜひ周りの個人事業主たちと一緒に申告合宿や座談会を!(笑)
税法も毎年変わりますから、「今年これ変わったんだよね?」「これ経費にしてるよ」とか自分が知らなかった情報も誰かが知っていたりして、みんなで集まればそういう情報交換もできますし。
一平:確定申告パーティー、楽しそう~。みんなで持ち寄ったお菓子も経費で落ちる?
星野:2019年分の経費に入れておいてください。科目は会議費かな~?(笑)
――星野さんは実際に、芸人さんを集めてみなさんと一緒に確定申告のお話をされたりしているんですよね!
星野:2018年は「芸人のための確定申告セミナー」というものをやりました。普段はお笑いライブをやってる劇場の舞台に僕一人が立って、お客さんは全員芸人という、僕個人の単独ライブです(笑)。
一平:「この入場料も経費で落ちます!」ってところから始まって、おもしろかったよね。確かに、そういうふうに集まる機会があったから、みんな「確定申告やっちゃお!」ってやる気が出たみたいです。
クラウドサービスの活用で、確定申告リア充になろう!
――次の確定申告の時期に慌てないためにも、領収書の保存や仕訳などについて、他に意識しておくといいことはありますか?
星野:特に接待交際費については、税務調査が入った際に内容を説明できるように、「誰と会ったか」「何の目的で会ったのか」をレシートや領収書にメモ書きしておくようにしましょう。
一平:打ち上げや飲み会で今後に関わるビジネスの話をしたり、新しいアイデアが生まれたりすることは多いよね。そう考えると接待交際費の目的は全部「今後のため」じゃダメ?
星野:それだとすべての経費の目的が「今後のため」になっちゃうからなあ(笑)。後で第三者に「どうしてこのメンバーだったか」「ビジネスに関するどんなことを話し合ったのか」を明確に説明できないと、税務署からつつかれたときに自分が困ることになるかもよ。
一平:誰と、何のために会ったか、というところまでワンセットでしっかり記録しておかないといけないのか~。
星野:そういう内容は時間が経つと思い出しづらいので、やっぱりこまめにメモしておくに越したことないですね。
一平:飲み会に行くたびにみんなで写真を撮っておけば、誰がいたかすぐわかるからよくない?毎回思い出もできて楽しいし!
星野:ああ……うん。でも、「リア充のほうが恋や仕事だけでなく確定申告も楽しくスムーズ!」みたいになると、なんか嫌だな……。
一平:毎日充実してるほうがいいに決まってるよ。スマホで撮れば日付も記録されるし。
星野:スマホが爆発して、壊れてほしいですね。
一平:今は全部クラウドにデータがアップされるから、スマホが壊れても大丈夫!
星野:……クソが(ボソッ)。でも確かに、簿記などの数字を使う業務が苦手だったり、よくわからなかったりする人は多いと思うんですが、最近だとクラウドなどのサービスを使うと、指示に従って記入していくだけで、ちゃんと青色申告に必要な複式簿記の形でデータが保存されるようになってきているんです。紙に書くよりも、そういうサービスを使うほうが、遊び感覚で気楽に経費の管理ができる人もいるかもしれませんね。
一平:本当にそう思うよ。便利なサービスはどんどん使わないとね。
星野:弥生さんのアプリで、スマホでレシートを撮影すると、自動で経費として入力してくれるものもありますし、モバイル版の交通系ICカードや通帳の入出金明細を連動させられるものなどもあります。そういうものを使うと、確定申告もちょっとラクになるかもなので、興味のある方は調べてみてください。
一平:どの科目に当てはまる経費なのかわからないものも多くて困るから、自動で仕訳してもらえるとラクそうだな~。
星野:経費の科目って、自分で作ってもいいんだよ。
一平:……ぴょえ~???
星野:驚きすぎて変な声出たな(笑)。内容や使ってる目的が自分でわかるように勘定科目を作るのはOKなんだよ。無理やり科目のどれかに入れ込まなきゃいけないってルールではないから。
一平:じゃあ僕たちの場合、「ネタ合わせ代」って科目を作れば分類がラクになるってことか!これは知っておくとお得な情報!
星野:ネタ合わせ代……?うん、まあ、聞き慣れない言葉だけど間違いではないのか……?(笑)
どんなものが経費になる? 判断基準の目安とは
――個人事業主だと、「意外とこんなものも経費になるよ!」ということもありそうですが、具体的にはどんな事例があるのか気になります。
星野:たとえばお笑い芸人の場合だと、「○○大好き芸人」のくくりなどで番組に出たりすることがありますよね。そういうふうに、個人事業主の趣味や得意分野が仕事につながると、それに関わるものが経費として認められる……という例はあります。「カブトムシ大好き芸人」の場合、カブトムシの飼育費用などですね。
一平:経費にできるかどうかの目安って、どう考えたらいいの?
星野:税務署の職員さんという第三者の目から見て、そのお金がちゃんと仕事に使われているのがわかることが重要なんですよ。だから、仕事の実績がわかるように記録を残しておくことが大切だと思います。芸人だと、「その趣味でテレビ番組に出ました」というのは、本人の収入につながっていることがわかりやすいですよね。それ以外でも「カブトムシ大好き芸人トークライブ」などを自分で主催していたなら、「この人はこの趣味をビジネスにしようとしてるんだな」と明らかになるのでOKです。
一平:ふむふむ。たとえトークライブの集客が数人でも、開催してれば記録は残るもんね(笑)。じゃあ、SNSで趣味や特技の話をしてるのは仕事の実績になる?
星野:思いついたときに何となく書いているだけじゃなくて、趣味や特技に関する知識や情報を毎日きちんと発信していたら、「この人はこれを売り出そうと活動している」と第三者が見てもわかるよね。
一平:誰が見ても納得できる活動をしていればいいんだ。……そうなると、節税のために趣味を始めて必死にアピールする人とかも出てきそうだけど。
星野:それがちゃんと仕事や収入につながれば、経費としては問題ないから(笑)。趣味や特技に関する収入がある人は、経費にできるものがないか確認してみるといいかもしれません。
一平:あとは家賃や光熱費、通信費の一部なんかも経費になるんだよね。
星野:そのあたりは個人事業主の世界ではわりとスタンダードな経費だけど、知らなくて話したときにびっくりする人もいるね~。個人事業主だと、自宅兼事務所として、仕事に使った部分の家賃などは経費になります。
一平:部屋中に商売道具があふれてる人は、これ知らないと損ですよ(笑)。
星野:他には、スポーツ選手のトレーニング費用とかも経費として認められるので、気になるものは調べたり、税理士に相談したりしてみてください。
――経費とは異なる話になりますが、知っておくと役に立つ税制などはありますか?
星野:「セルフメディケーション税制」も、意外に知らない人が多いかもしれません。ドラッグストアで薬を買ったとき、レシートに☆などの記号がついていて、「☆印はセルフメディケーション税制対象商品です」などと書いてあるものがあります。これは医療費控除の特例であるセルフメディケーション税制の対象になる商品で、まとめて12,000円を超えると控除が受けられるんです。
一平:市販の風邪薬とかもそれなりの値段がするから、控除の対象になると助かるね~。レシート取っておかなきゃ。
星野:この時期は花粉症の薬なども対象になりますよ。医療費控除との併用はできないので、「医療費は10万円を超えないけど、医薬品の集計は12,000円を超える」という状況なら、セルフメディケーション税制を使うと節税につながります。ただ、確定申告書に健康診断や予防接種を受けた証明書を添付する必要がありますから、ちゃんと保管しておいてください。
一平:健康に気を配って、つらい確定申告を乗り越えましょう!
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確定申告完了!でも、帳簿や領収書は捨てちゃダメ!
――この記事を読んできたみなさんなら、きっとどうにか2019年の確定申告を乗り切れるはずです!さて、苦しかった確定申告が終わったら、帳簿や領収書はもう破棄してしまっていいですか?
星野:これは絶対にダメですね~。破棄してはいけません。
一平:断捨離とかも流行ってるけど?
星野:……何を断捨っちゃうつもりですか(笑)。何年後かの税務調査で、今回の確定申告までさかのぼってチェックされる可能性もあるんですよ!そのときに「○○で使ったお金です」ということが証明できないとアウトなんです。現行法上でいきますと、白色申告なら法定帳簿は7年間、それ以外の帳簿や領収書などは5年間保管する義務があります。
一平:嫌です!
星野:なんでだよ!
一平:かさばって場所を取るじゃん。どうすりゃいいの?
星野:頑張って、帳簿類のかさばりが気にならないほど広い家に住むモチベーションにしましょう。あるいは、帳簿類の保管スペースを事業スペースと定めて、家賃を経費にしてください(キリッ)。
一平:今日一日で、何でも経費にするたくましさが身につきそう(笑)。「確定申告終わった!やったー!!」ってパーッと資料を処分しないよう気をつけるよ。
星野:それから、青色申告は、帳簿・決算書類・現金預金取引等の関係書類を7年間保存しないといけません。帳簿や領収書類はとりあえず7年間保存ということで、安易に捨てないように。さらに、感熱紙のレシートの文字が消えちゃうと意味がないので、なるべく文字面を内側に折って保管するのがおすすめです。
一平:出た!細かすぎるアドバイス!(笑)でも確かに感熱紙タイプの領収書もあるし、日の当たるところに置いておくと、結構すぐ文字が消えちゃう。これも「あるある」だね。
星野:領収書類は、なるべく暗くて乾燥した場所に保管しておいてください(笑)。あと、ソフトやクラウドで作成したデータがあるから、提出だけして、帳簿の保存を忘れちゃうというケースもありますね~。基本的には、しっかり印刷して紙で保存しておきましょう。
一平:帳簿や領収書は、確定申告書に添付する必要はないんだよね?くっつけなきゃいけないって思ってた人も意外といるみたいだけど。
星野:それは添付しなくて大丈夫。申告納税ということで、申告の内容を基本的には信じてくれるから。
一平:国は僕たちを信用してくれてるのか……。だったら、こっちもその気持ちに誠実に応えるため、期限内に確定申告しなきゃいけないよな……!
星野:一平くん……最後、急に改心した!?(笑)
――星野さんと国税庁や税務署の熱い想いが伝わり、一平さんの気持ちも動かされるという素敵な結末でよかったです(笑)。みなさんも3月15日までに確定申告を完了させて、一緒にハッピーエンドを迎えましょう!
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Photo:沼田学