【e-Taxで確定申告】マイナンバーカード方式を実際にやってみた

2019年(平成31年)1月から、個人納税者のe-Tax利用が簡便化され、マイナンバーカード方式かID・パスワード方式の二種類で可能になりました。
実際にマイナンバーカードを申請して取得し、e-Taxのマイナンバーカード方式で確定申告を実際に体験してみた様子をレポートします!
- 【ID・パスワード方式を試してみた記事はこちら】
- 【e-Taxで確定申告】ID・パスワード方式の手順、メリットとデメリットについて調べてみた
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2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!
目次
- POINT
-
- マイナンバーカードの取得手段は、4つ。
- 初めてe-Taxを使用する場合、以前より事前準備が楽になった。
- 設定後、e-Taxへログインするだけで、簡単に確定申告が行える。
e-Taxの準備
フリーランスの編集者・ライターである筆者が個人事業主として確定申告をするのは、今回で5回目になります。
今までは、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」で確定申告書を作り、e-Taxを利用してインターネットで提出するためには、下記の条件を2つとも満たすことが必要でした。
- マイナンバーカードなどの電子証明書が入ったカードと、ICカードリーダライタを持っている
- 税務署に出向いて、e-Tax利用開始のためのIDとパスワードを取得する
正直なところ、2つの条件を満たすのはやや面倒な印象があったため、作成した申告書を税務署の窓口に持っていくか、税務署に郵送するか……という方法しか経験したことがありません。
しかし2019年(平成31年)1月からは、この条件のどちらか1つさえ満たしていれば、e-Taxを利用できるようになりました。
引用:国税庁「e-Tax利用の簡便化の概要について」
混んでいる税務署で長時間待ったり、申告書を印刷していろいろな書類と一緒に送ったりしなくていいのは魅力的。
今回がいい機会だと考えて、e-Taxでの所得税の確定申告にチャレンジしてみることにしました。
マイナンバーカードの取得
e-Taxで申告手続きを行うために、まずはマイナンバーカードを申請することにします。
申請方法は、以下の4種類です。
①郵送による申請
マイナンバーカードの交付申請書に本人の顔写真を貼り、送付用封筒に入れて郵便ポストへ
②スマートフォンによる申請
スマートフォンで顔写真を撮影し、所定のフォームからオンラインで申請
③パソコンによる申請
デジタルカメラで顔写真を撮影し、所定のフォームからオンラインで申請
④まちなかの証明写真機からの申請
申請書を持参して、申請可能な証明写真機で顔写真を撮影して申請
今回は手軽さを重視して、②の「スマートフォンによる申請」を選択しました。
申請用WEBサイトにアクセスして、顔写真登録、申請情報登録……と指示通りに進んでいきます。顔写真はその場でスマートフォンのカメラで撮影すればいいので、とても簡単!
しかも、「顔写真のチェックポイント」(正面を向いていること、無背景であること、など)さえ押さえていれば、自分の写りがいい写真を選ぶことができるのもひそかにうれしいポイントです(笑)。
その後、住民票の住所に「マイナンバーカード(個人番号カード)の交付について」と、「個人番号カード交付・電子証明書発行通知書兼照会書」が届きました。私の場合は到着まで2週間でした。一般的には、2~4週間で届くようです。
ここに書かれている内容に従って、必要な持ち物を確認し、指定の交付場所まで受け取りに行けばOKです。
【必要な持ち物】
- マイナンバーカードについてのご案内
- 個人番号カード交付・電子証明書発行通知書兼照会書
- 通知カード(原本)(※)
- 住民基本台帳カード(持っている場合のみ)
- 本人確認書類(運転免許証など)
気をつけておくといいポイント
・申請した当日や翌日に受け取れるわけではなく、2~4週間ほどの期間が必要なので、早めに申請しておくことをおすすめします。
・マイナンバーカードの交付には「受取期限」も決められているので、記載の期日を過ぎないように気をつけてください。筆者はなかなか役所に行く時間が取れず、案内が届いてから3カ月も放置していたら、督促の通知書が届いてしまいました……。
・交付場所によっては電話予約などが必要なので、届いた書類をよく確認してください。
・交付時に「英数字6文字以上16文字以下(英字は大文字、英字と数字を組み合わせる)」と「数字4文字」の2種類の暗証番号の設定が必要なので、あらかじめ考えておくと、手続きがスムーズになっていいと思います。
- 【参考】
- マイナンバーカード総合サイト
(※)2020年5月25日をもって「マイナンバー通知カード」は廃止されました。以後「通知カード」の住所・氏名の変更や再交付が行えなくなりました。
引き続き「通知カード」をマイナンバーの証明の書類として使用する場合は、住民票との記載が一致している必要がありますのでご注意ください。
なお、新たに出生や入国をして新たに住民登録された人は、「個人番号通知書」にてマイナンバーが通知されますが、こちらは証明書類としてのご利用はできません。(2020年7月2日 スモビバ!編集部 追記)
ICカードリーダライタの購入と設定
ICカードリーダライタは、カードに記録された情報を読むための機械です。3000円程度で買えるものが一般的ですが、マイナンバーカードに対応しているICカードリーダライタかどうか、念のため購入前に確認しておくと安心なはず。
今回は、SONYの「PaSoRi(パソリ)」という機種を近くの家電量販店で購入しました。
まずは自宅のパソコンに接続し、セットアップをします。説明書の内容に従って、ソフトウエアをインストール。完了後にマイナンバーカードをセットして、自己診断を行い、ICカードリーダライタが無事に使えるようになったことを確認しました。
公的個人認証サービス利用者クライアントソフトの設定
マイナンバーカードとICカードリーダライタがそろい、「これでe-Taxができるぞー!」と思ったのですが……どうやらあと1つ、「公的個人認証サービス利用者クライアントソフトの設定」という準備が必要だそうです。
これは、インターネットを通じて行政手続きなどを行うときに、マイナンバーカードに記録された電子証明書を利用するためのソフトウエアです。公的個人認証サービスを利用することによって、他人によるなりすまし申請や、電子データが通信途中で改ざんされていないことを確認し、安全・確実な手続きが可能になるとのこと。
公的個人認証サービスポータルサイトにアクセスし、パソコン環境に合ったクライアントソフトをダウンロード&インストールします。
その後、ソフト上でICカードリーダライタの設定を行いました。
- 【参考】
- 公的個人認証サービスポータルサイト
e-Taxの準備と手続き
「さあ!いよいよe-Taxだ!」とはやる気持ちを抑え、e-Taxのホームページで手順を調べることに。
すると、利用にあたっては、「ルート証明書・中間証明書のダウンロードおよびインストール」が必要だとあります。
ルート証明書とは、証明書の発行元(認証局)の正当性を証明する証明書のことらしいです。
面倒くさがりの筆者は「ええ……まだダウンロードとインストールしないといけないものがあるの……」と少しぐったりしてしまいましたが、どうにか気持ちを奮い立たせて設定を進めていきました。
その他にも、「信頼済みサイトおよびポップアップブロックの許可サイトへの登録」が必要です。
そうしてようやく、e-Taxソフトのセットアップやインストールに取りかかれるタイミングがやってきました。
ところが……筆者のパソコンだとバージョンが古いと表示され、「e-Taxソフト(WEB版)」しか使えないとのこと!ここまで頑張ってきたのに、何だか地味にショックです。
e-Taxソフト(WEB版)は、e-Taxソフトとは、以下のような違いがあるそうです。
①作成可能な手続きの種類
②インターネットに接続している環境が必要
③法定調書のデータ作成方法
④納税証明書の交付請求方法
⑤税理士等による代理送信を行う際の流れ
とはいえ、e-Taxソフト(WEB版)は、e-Taxソフトの基本的な機能をWebブラウザ上で使用できるように提供しているシステム。e-Tax自体は可能ですから、落ち込む必要なんてありません。
また、e-Taxソフト、e-Taxソフト(WEB版)は、利用可能時間が決まっています。「えっ!早朝とか夜間だと使えないの!?」と一瞬ドキッとしましたが、確定申告期間の2019年1月4日(金)~3月15日(金)は、メンテナンス時間をのぞき、全日24時間利用可能なので安心しました。
毎週月曜日0時~8時30分がメンテナンス時間なので、注意してくださいね。
- 【参考】
- e-Taxの運転状況・利用可能時間
事前準備セットアップを指示に従って進めていき、e-Taxソフト(WEB版)が使えるようになりました。
次は、「利用者情報の登録・確認・変更」を行います。これを完了させると、申告・申請・納税ができるようになります。
マイナンバーカード方式での申告
ようやくe-Taxでの申告ができる環境が整いました!
ということで早速、「国税庁 確定申告書等作成コーナー」のホームページで、申告書データの作成に取りかかります。
この作業自体は例年と同じですが、作成コーナーに入る前に、「マイナンバーカード方式により提出する」か、「ID・パスワード方式により提出する」のどちらかを選ぶ画面が挿入されていました。
進めていくと、なんと確定申告書等作成コーナーにおいても、「平成30年分事前準備セットアップ」が必要という記載が!
この工程は毎年あるのかもしれません。
セットアップを終えたら、マイナンバーカードによる認証を行います。
申告書の作成を始める前にも、e-Taxによる申告であることにチェックを入れます。
申告書の作成を終えたら、マイナンバーカードをICカードリーダライタで読み取り、ついに送信して申告完了です。
事前準備は時間がかかりましたが、申告書を作成してから送信まではすべて自宅で済むので楽でした!
マイナンバーカード方式のメリット・デメリットなどの所感
マイナンバーカード方式でe-Taxの確定申告を行うか検討して、次のような所感を抱きました。
<メリット>
- e-Taxへログインするだけで、簡単に利用を開始し、申告データの送信などが行える。
- e-Taxのメッセージボックス機能が利用できる。
- ID・パスワード方式と比較して、e-Taxの開始届出書の提出や、ID・パスワードの取得が不要。
- 今後e-Taxを利用する場合に、医療費情報を活用できるようにするなど、手続きの簡便化に向けた取り組みが進められているらしい。
<デメリット>
- マイナンバーカードの取得に多少の時間と手間がかかる。
- 自腹でICカードリーダライタを購入しなければならない。
- マイナンバーカードの取り扱いに注意する必要がある。
マイナンバーカードと同時に申請した場合、20歳以上のマイナンバーカードの有効期限は、発行日の誕生日までとなり、電子証明書の有効期限は、発行後、申請者の5回目の誕生日までと異なるので注意が必要です。
マイナンバーカード方式にするか、ID・パスワード方式にするか迷うところだと思います。
今回、両方試してみたのですが、マイナンバーカード方式ですと役所に、ID・パスワード方式の場合は税務署に行かないといけません。
結局、事前準備の手間などは個人的にはあまり大差はないように感じました。
ただ、e-Tax自体の、自宅から24時間いつでも申告できる簡単さ、気軽さというのは大きなメリットだと思います。また、e-Taxだと還付金を早く受け取ることもできるのだとか。
「マイナンバーカードやICカードリーダライタはほとんど使わないから、いらないな~」という人は、とりあえずID・パスワード方式を選んでもいいのではないでしょうか。そのうちにマイナンバーカード対応のスマートフォンなどが普及して、ICカードリーダライタを購入しなくてもよくなるかもしれませんし。
とはいえ、国税庁が推奨しているのはあくまでもマイナンバーカード方式。
ID・パスワード方式は、おおむね3年間の暫定措置だそうなので、早めにマイナンバーカード方式を取り入れておくのもいいと思います!
そして、個人事業主としてとても気になる部分ですが、税制改正で2020年分から青色申告の特別控除額が変わります。
つまり、2020年分以降の個人事業主の所得税の確定申告では、e-Taxで確定申告をするか電磁的記録の保存等をしないで、紙ベースで確定申告をすると青色申告特別控除の上限額が55万円になってしまいます。
青色申告で65万円控除を受けるには、今からe-Taxにしておけば安心ですね。
まとめ
初めてe-Taxでの確定申告を体験してみて、いろいろ勉強になりました。
「事前準備が多い……!」と感じましたが、それは初めてだったからこそ。
また、いろいろなシステムによって、個人情報が守られる可能性も高まっているということでしょう。
次回からはもっと楽になるはずです。
e-Taxを初めて導入してみたいと思っている方は、マイナンバーカードの取得からはじめると何だかんだで準備に時間がかかってしまうと思うので、ぜひ時間に余裕をもって取り組んでみてくださいね!
ID・パスワード方式を確認してみた記事は、近日公開予定です。
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