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個人事業主・フリーランスになると健康保険はどうしたらいい?4つの選択肢をわかりやすく解説

監修者 : 渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

会社員とは異なり、個人事業主・フリーランスになると、自分で健康保険に加入する必要があります。保険料も全額自己負担になるため、選択肢を慎重に検討する必要があるでしょう。

今回は個人事業主・フリーランスが健康保険として選択できる4つの仕組みを解説します。

健康保険とは?

健康保険とは、業務以外で病気やけが、それによる休業、そのほかにも出産、死亡のような事態に備える公的な医療保険制度です。日本では健康保険への加入が義務付けられています。

また、個人事業主が加入する健康保険と会社員が加入する健康保険では種類が異なることも覚えておきましょう。

必ず保険に入らならければいけない

日本では健康保険に必ず入らなければいけません。国民皆保険制度ですべての国民がなんらかの保険に加入することが義務付けられているためです。会社員が、会社を退職をすると保険の加入手続きのタイミングに関わらず、社会保険の脱退日翌日に国民健康保険への加入が強制されるのも、国民皆保険制度で「無保険の状態は認めない」とされているためです。

ちなみに、自身で健康保険に入らずとも配偶者などの親族が企業などで健康保険に加入していれば、その親族の扶養に入ることも可能です。

その場合、年収130万円(60歳以上または一定の障害者については180万円)未満で、かつ原則として扶養に入る人の年収の2分の1未満の場合しか利用できません。

個人事業主などが加入する「国民健康保険」

個人事業主は国民健康保険に加入します。支払うのは国民健康保険料、または国民健康保険税と呼ばれ、国民健康保険では、保険料は全額加入者が負担するという点が、会社員が加入する健康保険との大きな違いです。

また国民健康保険の加入手続きは市役所にて自身で行う必要があります。国民健康保険に加入することで、医療費の自己負担金額は原則3割です。未就学児や70歳以上の人は、公的医療保険制度において自己負担割合が1~2割とさらに少なく設定されています。ただし、70歳以上であっても、現役並みに収入のある人は、3割負担となります。

保険料は前年度の所得に応じて決められます。また、国民健康保険には扶養の概念がなく、住民票上の世帯の収入をもとに保険料が課されます。

民間企業で働く人が加入する「健康保険」

民間企業に務める方は、健康保険組合もしくは全国健康保険協会(協会けんぽ)のいずれかの健康保険に加入します。

これらの健康保険は勤め先の企業が保険料の半分を負担することになっており、国民健康保険よりも自己負担金額の割合が少ないです。また加入手続きは勤め先の企業が代行し、保険料の支払いも給与から天引き(控除)する形で支払われます。

加入している健康保険は企業によって異なるため、退職時に脱退する必要があります。こちらの健康保険も医療費の自己負担は3割です。

個人事業主・フリーランスの健康保険の選択肢は4つ

会社を退職し、個人事業主やフリーランスとして活動する場合、健康保険の選択肢は4つあります。

1.国民健康保険への加入

1つ目は市区町村が運営する国民健康保険に加入するというものです。国民健康保険は他の保険制度に加入していないすべての人が対象です

国民健康保険に加入するには、退職した日から14日以内に、離職票・退職証明書・資格喪失連絡票など会社を退職したことがわかるもの、本人確認書類やマイナンバーカードを持って、住んでいるところの市区町村役場・国民健康保険の窓口に行く必要があります。もし14日以内の届け出が間に合わなかったとしてもペナルティがあるわけではありませんし、国民健康保険に加入できなくなるわけではありませんが、できる限り間に合うように届け出るようにしましょう。

また、前述したように国民健康保険は扶養という概念がありません。家族を扶養に入れることができないため、それぞれが保険に加入する必要があり、保険料も世帯の所得を合算して計算されます。(保険料は世帯主に請求され、全額、社会保険料控除の対象となります。 )

国民健康保険の保険料は前年分の所得で決定します。前年が会社員であった場合、その所得で決定します。開業後に収入が下がっても、会社員時代の給与が高ければ国民健康保険料もそれなりの金額になることもあります。

また、所得によって減免制度があるため、お住まいの地域の役所に問い合わせてみましょう。

2.会社で加入していた健康保険の任意継続

2つ目の選択肢は、退職するまで会社で加入していた健康保険を自身で継続するというものです。会社で加入していた保険は、これまで会社が半分負担してくれていた保険料も含めて、全額自分で支払うことで2年間継続することができます。一定期間保険料が変わらない保険もあるため、加入している健康保険のサイトを確認してみましょう。

会社で加入していた健康保険を継続する場合は、資格喪失の日の前日まで継続して2か月以上の被保険者期間がある方が対象で、資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に手続きが必要です。

保険料は退職時の標準報酬月額に基づいて決められ、保険料は原則2年間変わりません。保険料を全額自己負担で支払うことになるため、国民健康保険の方が、保険料が安くなる可能性もあるので確認してみましょう。

メリットとして、国民健康保険とは違って扶養を利用することができるので、会社員時代と同様に扶養者の保険料はかからないで継続できます。

任意継続の期間は最長2年間と定められており、2年を経過すると資格喪失します。また、1日でも保険料を滞納したり、就職して別の社会保険に加入したりすると脱退になります。傷病手当金および出産手当金を除き、在職中に受けられる保険給付と同様の給付を原則受けることができることもメリットと言えるでしょう。

3.国民健康保険組合への加入

3つ目の選択肢は、同業の組合員で組織されている国民健康保険組合に加入するというものです。

国民健康保険組合とは、国保組合とも呼ばれ、同業者の組合員で構成されている団体です。一方で、市区町村で運営されているものは地域の健康保険です。国民健康保険組合は、業種が合えば、個人事業主やフリーランスの方は加入を検討してみることをおすすめします。

なぜなら、原則的に保険料は前年の所得にかかわらず、一定金額だからです。被扶養者の保険料は負担しなければいけませんが、一定金額の負担で済むのは魅力に感じる方も多いでしょう。

  個人事業主 会社員
国民健康保険(地域の国民健康保険) 国民健康保険組合 健康保険
健康保険料 前年の所得に応じて決定 所得にかかわらず一定金額

【例】
Webデザイナー、ライターなどが加入:「文芸美術国民健康保険組合」→月額21,100円

税理士などが加入:「関東信越税理士国民健康保険組合」→月額31,200円

美容師などが加入:「東京美容国民健康保険組合」→月額19,000円※2022年4月現在の40歳未満の場合

給与所得に比例
事業主の負担 なし(全額自己負担) なし(全額自己負担) あり(事業主と折半)
被扶養者分の負担 必要 必要 不要
傷病手当金・出産手当金 なし なし あり
育児休業時の社会保険料免除 なし 組合の規約による あり
退職後の任意継続 なし なし あり

職業別のおすすめ国民健康保険組合

職業別のおすすめ健康保険は以下のとおりです。前述したものもありますが、ぜひ参考にしてください。

職業別のおすすめ健康保険組合
職業 組合の名称 保険料(月額)
美容師 東京美容国民健康保険組合 19,000円
ライター・デザイナーなど 文芸美術国民健康保険組合 21,000円
建築業 京都府建設業職別連合国民健康保険組合 13,000円〜
(年齢に応じて変動)
税理士 関東信越税理士国民健康保険組合 31,200円

※2022年4月現在の40歳未満の場合。満40歳以上64歳未満は、介護保険料の支払いが別途必要です。

国民健康保険組合がある業種は、土木・建築、医師、税理士、文芸・美術関連の職種に多いです。

ユニークな組合もあり、大阪で浴場の業務に携わる人が加入できる「大阪府浴場国民健康保険組合」、東京近郊だと芸能関係者が加入できる「東京芸能人国民健康保険組合」などがあります。

また、浴場国民健康保険組合は大阪だけでなく東京にも存在します。同じ業種でも地方ごとに組合が設立されていることもあるため、調べてみましょう。

4.健康保険に加入している家族の扶養家族になる

4つ目の選択肢は健康保険加入中の家族の扶養家族になることです。健康保険では要件を満たせば、健康保険加入中の家族の扶養家族になれます。扶養に入っても被保険者の保険料は増加しません。

ただし、扶養家族に入るには収入などの要件もあるので、退職をする前にあらかじめ家族に健康保険の扶養に入れるかどうかの確認などをしておきましょう。

健康保険料の軽減と節税

個人事業主は、青色申告にすると青色申告特別控除分を課税所得から差し引くことができるので、国民健康保険料も軽減できる可能性があります。また、国民健康保険料は経費にはできませんが、社会保険料控除として所得控除ができます。(毎年1月1日から12月31日までの間に納付した金額を控除)

国民健康保険料は納付証明書から計算して、所得税の確定申告書に納付額を記載しましょう。扶養している家族分も納税者が負担している場合は、その分の国民健康保険料も社会保険料控除ができます。

確定申告ソフトを使えば、所得控除の申請もスムーズ

個人事業主として独立すると、会社員時代とは異なり自分でやるべきことも多くなります。健康保険への加入とともに、所得税の確定申告も必要です。医療費控除などの所得控除を活用するためには、確定申告をしなければいけません。しかし、手書きの帳簿だと、日々の経費や売上をまとめるのは非常に手間がかかります。そんな時に利用したいのが、確定申告ソフトです。

やよいの白色申告 オンライン」や「やよいの青色申告 オンライン」では、個人事業主の取引の記帳や申告書の作成ができます。さらに所得控除のひとつである医療費控除で必要な医療費の明細書を作ることも可能です。ぜひご活用ください。

photo:PIXTA

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