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ホーム 法律・法務 これをしたらブラック企業です! 定期券の現物支給は? 〜賃金・給与編〜

これをしたらブラック企業です! 定期券の現物支給は? 〜賃金・給与編〜

近年「ブラック企業」という言葉がマスコミなどの間でよく取り上げられていますが、賃金・給与の扱いについては、どんなことをしたらブラック企業と呼ばれてしまうのでしょうか。「要注意!ブラック企業にならないために」でも代表的な事項を挙げていましたが、今回は賃金・給与を支払う時の原則や、労働協約と労使協定の違いなどについてお話します。

POINT
  • 通勤手当を定期券で現物支給したいときは、通貨支払いの例外にあたる
  • 労働協約と労使協定の違いを理解しておく
  • 旅行積立金を給与から天引きしたいときは、労使協定が必要

通勤手当を定期券で支給したい

A社では通勤手当として従業員の定期券をまとめて購入し、配布しています。つまり通勤手当を現物支給しています。通勤手当の現物支給にあたり、気を付けなければいけないことは何でしょうか。

まずは労働基準法で定められている賃金支払い5原則を見てみましょう。

賃金支払い5原則

  1. 通貨で支払う
  2. 直接労働者に支払う
  3. 全額を支払う
  4. 毎月1回以上支払う
  5. 一定の期日を定めて支払う

【参考】
・厚生労働省:確かめよう労働条件

通貨払いの例外

上記の5原則はあくまでも原則であり、例外もあります。例えば「通貨で支払う」の例外が該当するのは、①または②の場合です。

  • ① 労働協約に現物支給をする旨の定めがある場合
  • ② 労働者本人の同意を得て、直接、通貨を手渡しするのではなく、労働者の指定する口座に給与を振り込む場合

A社のケースでは①に当てはまります。

労働協約とは

では、労働協約とは何でしょう。労働協約とは、労働組合と会社側との間で交わす文書による取り決めのことです。つまり、その会社に労働組合が無いと成立しません。サブロク協定のような労使協定とは違いますのでご注意ください。労使協定は①労働組合と会社側、または②労働者の過半数代表者と会社側、という2パターンがありますので、その会社に労働組合が無い場合でも成り立ちます。

労働協約と労使協定は名前が似ていますが、違うものですので注意しましょう。以下の表にまとめました。

労働協約 労働組合 と 会社側
労使協定 ① 労働組合 と 会社側
② 労働者の過半数代表者 と会社側

A社に労働組合が無いのであれば、そもそも通勤手当を定期券で現物支給することができません。もしも労働組合が無いにもかかわらず現物支給している場合は通貨での支払いに変更しましょう。

旅行積立金を給与から天引きしたい

B社では秋に社内旅行に行くことになり、毎月の給与から旅行積立金として3,000円ずつ天引きしたいと考えています。さて何に注意したら良いでしょうか。

全額払いの例外

賃金支払い5原則のうち「全額を支払う」の例外として以下のものがあります。①または②の場合は給与を全額支払わなくても良い、つまり給与から天引きしてもOKということです。

  • ① 法令に別段の定めがある場合
  • ② 労使協定がある場合

①は、税金や社会保険料を天引きすることを指しています。B社のケースは②に当てはまります。つまり旅行積立金を天引きするには労使協定が必要です。労使協定は前述したとおり、労働組合が無い会社でも成立します。ただし、過半数代表者を選ぶときの注意点については記事「これをしたらブラック企業です!サブロク協定とは?〜労働時間編〜」をご参照ください。なお、この場合の労使協定はサブロク協定とは違って労働基準監督署への届け出は必要ありません。しかし周知はしておきましょう。

様式はこちらのサンプルをご参照ください。また、ダウンロードすることもできます。

【参考】
・東京労働局:「様式集」より「賃金控除に関する協定書」

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(※賃金控除に関する協定書・見本)

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。労働組合が無い会社が従業員に通勤定期券を支給しているケースや、労使協定を締結せずに旅行積立金を従業員の給与から天引きしているケースは意外に多く見受けられます。知らず知らずのうちに法律違反を犯し、ブラック企業と呼ばれてしまうことのないよう、賃金・給与に関するルールを基本としておさえておきましょう。

photo:Getty Images

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