小規模法人が銀行口座を開く際の注意点

会社設立の手続きが終わったら、次にしなければならないのは、法人の銀行口座の開設手続きです。法人口座の開設は、会社設立後の第一関門ともいえます。というのも、個人の銀行口座を作るよりも、揃えなければならない書類が多く、審査のハードルもやや高めだからです。大事な時期に、ここで手間取って余計な時間を掛けないためにも、万全の準備をしておきましょう。ポイントや注意点を解説していきます。
[おすすめ]法人の会計業務をかんたんに!無料で使える「弥生会計 オンライン」
2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!
目次
- POINT
-
- 今後の事業の方向性や融資の必要性などを踏まえて、取引銀行を選ぶ
- 信用されるためにも、できる限りの説得材料を準備して口座開設を申し込む
- 本店がバーチャルオフィス、少ない資本金などは、審査で落ちる原因にもなる
まずは取引銀行を決めよう
具体的な手続きをご説明する前に、まずは金融機関の選び方についてみていきましょう。選択肢としては主に5つあります。都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合、ネット専業銀行です。それぞれには表のような特徴があります。それぞれの特徴を踏まえつつ、どの種類の金融機関で口座開設を申し込むのか検討しましょう。
なお、会社の銀行口座は1つだけでなく複数をもってもなんら問題はありません。
金融機関の種類と特徴
金融機関の種類 | 特徴 |
---|---|
都市銀行 | 大都市に本店を構え全国展開。なかでも特に規模の大きいものをメガバンクという。大企業から個人まで幅広く取引し、国際業務まで行う。取引銀行として自社ホームページ等に掲載した場合の信用度は高い |
地方銀行 | 各都道府県に本店を構え、地方を中心に展開。小口取引が中心で地元の中小企業や個人がメイン。中小企業にも細やかな対応をする |
信用金庫 | 会員同士の出資による協同組織の地域金融機関。営業エリアは一定の地域に限定されている。地域の中小企業や個人のための専門金融機関。今後の融資などを考えるとつきあいを始めておくのも良い |
信用組合 | 組合員の出資による協同組織の法人で相互扶助を目的とする非営利の金融機関。組合員になれるのは営業地域の在住者、在勤者、事業所所有者 |
ネット専業銀行 | 実店舗を持たずネット上だけで営業する銀行。格安手数料が特長で、コスト削減が可能となる。ただし、社会保険料や日本政策金融公庫の融資返済などの口座振替ができないこともあり、実店舗を持つ金融機関の口座との使い分けが必要 |
取引銀行選びの注意点
都市銀行は取引銀行としての世間の信用度が高く、海外取引など幅広い業務に対応できるという強みがある反面、審査のハードルが高く、審査にも時間がかかるという特徴があります。一方、信用金庫は地域密着のきめ細かい対応を期待することができ、創業者向けの小口融資にも積極的に取り組んでもらえることが特徴です。この先の展開を考えつつ、取引銀行を決めましょう。
ネット専業銀行は、手数料が格安でコスト削減が可能な一方、社会保険料や日本政策金融公庫の融資返済などの口座振替ができません。実店舗を持つ金融機関の口座との使い分けが基本となります。
口座開設手続きの仕方
銀行口座の開設手続きには、必ず会社の代表者が出向きます。スーツなどきちんとした服装で出向きましょう。口座開設時に必要となる主な書類は表のとおりです。金融機関によって違いがあるため、事前に電話で確認するようにしてください。
振り込め詐欺などの影響で、年々、審査は厳しくなっています。きちんとした事業を行う会社と信用されるように、説得材料となるものをできる限り持参します。可能であれば、税理士など、紹介者を経由して申し込む方がスムーズです。
書類の提出を経て数日から2週間ほどの審査があり、口座開設の可否の返答があります。場合によっては、追加書類の提出依頼や、担当者の現地確認もあります。スムーズに口座開設できるかどうかは銀行や支店により差があります。口座開設を急ぐ場合、ダメそうなら早めに見切って他を当たることをオススメします。
なお、ネット専業銀行の場合は、ネットからの申し込みと必要書類の郵送のみで手続きが完了するため、簡単です。
<口座開設時に必ず必要なもの> ※金融機関によって違いがあります。
- 履歴事項全部証明書(発行後3ヵ月以内のもの)
- 会社の銀行印
- 免許証など身分の証明できるもの
- 最初に入金するお金(いくらでもいい。例:10,000円など)
<追加で提出を求められる可能性があるもの>
どのような事業を行うか証明できるもの
- 事業計画書
- 取引先との契約書
- パンフレット、ホームページのキャプチャーデータなど
本店所在地での事業実態が確認できるもの
- 水道光熱費などの会社名義の明細
- オフィスの賃貸借契約書
- ……など
口座開設手続きの注意点
口座開設時には、以下のようなことがあると審査で問題になりやすいため、注意してください。
1. 事業実態が確認できない
例えば、本店所在地として登記したのがバーチャルオフィスで、事業の実態が確認できないというケースです。バーチャルオフィスが本店の会社に対して、口座開設がOKの金融機関は少数派であるため、税理士などから、事前の情報収集を欠かさないようにしましょう。
2. 本店所在地と口座開設を希望する金融機関の支店営業エリアが離れている
法人の本店所在地と口座開設を希望する金融機関の支店の営業エリアが離れていることについて、何の説得力もない場合、審査で問題となる可能性があります。できれば、本店所在地に近い金融機関の支店で口座開設を申し込むようにしましょう。
3. 代表者の個人信用情報に事故情報がある
代表者個人の信用が低い場合、法人の銀行口座開設の審査に影響を与える可能性があります。心配な場合は、あらかじめCICなどの個人信用情報機関で、自身の信用情報を取り寄せて確認してみましょう。
4. 業種
これから展開しようとしている事業が、取引先としてふさわしくないと判断された場合、審査で厳しい対応をされる可能性があります。例えば、情報商材の販売などです。
5. 資本金
資本金があまりにも低い場合、審査を突破できない可能性があります。それもそのはず、金融機関は口座を維持するだけでもコストがかかっています。コスト以上の売上が期待できないのであれば、断る必要もあるのです。資本金1円で会社設立をするべきではない理由はここにもあります。
法人成りの場合
最後に、個人事業を法人化する場合の法人の銀行口座開設についても解説しておきます。基本的には、新たに起業して会社設立をする場合と変わりません。個人事業主時代につきあいのあった金融機関で口座開設をすると、スムーズに運ぶでしょう。
【関連記事】
・銀行口座開設に必要なもの
・バーチャルオフィスで銀行口座は開設できるのか?
photo:Getty Images