スモールビジネス(個人事業主、中小企業、起業家)の
業務や経営にまつわる疑問や課題をみんなで解決していく場
検索
メニュー
閉じる
ホーム 経営 棚卸資産(在庫)とは?棚卸評価方法の種類

棚卸資産(在庫)とは?棚卸評価方法の種類

日常業務では「在庫」と呼ばれる「棚卸資産」。その金額を計算して利益額を確定したうえで、税務署への確定申告・決算申告を行います。
税務調査では、「在庫」は、必ずチェックされる項目の一つです。
棚卸資産の金額の算出には、いくつか種類があります。資産の内容に応じて、正しい算出方法を選ばなければ、実際の利益と齟齬が出る可能性があります。どんな棚卸評価方法があるのか。解説したいと思います。

お知らせ

2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!

POINT
  • 棚卸の評価方法には大きく分けて、原価法と低価法の2つがある
  • 原価法には、6つの種類があり、事業の種類に適応したものを選択すること
  • 棚卸の評価方法は、変更が認められることもある

棚卸資産って何?

棚卸資産とは、営業目的で保有する資産、または資産になる過程のもののことで、いわゆる「在庫」と呼ばれるものです。

具体的には、事業にかかわる商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、その他の資産のことです。「その他の資産」からは、原則的には有価証券や山林を除きますが、トレーディング目的で保有する有価証券や不動産販売業者にとっての販売用の土地や建物は、棚卸資産に含まれます。

原価法(6種類)とは

評価方法は、大きく分けて「原価法」と「低価法」の2つがあり、棚卸資産原価をベースに評価する方法を「原価法」と呼びます。原価法には、6つの方法があるので、ひとつずつ、説明していきたいと思います。

1.個別法

「個別法」は、仕入時の価額で評価する方法です。この方法のメリットは、商品ごとの実際にかかった金額で在庫管理ができることです。デメリットは、実際の仕入・払出をそのとおりに計算する方法のため、手間がかかる点です。

個別法は、個別性が高い商品に向いている評価法です。例えば、不動産や書画・骨董・美術品などは、同じ商品がなく個別性が高いので、個別法が適しています。逆に、同規格の品物を大量に扱う場合は不向きです。

2.先入先出法

「先入先出法」は「商品や資産は仕入れた順に販売、使用されていく」という考え方にもとづく計算法です。具体的な例を挙げて、説明しましょう。

仕入 数量 単価 合計
4月1日 10個 100円 1,000円
4月14日 15個 200円 3,000円
4月20日 25個 300円 7,500円

上記のように仕入れて、4月末に10個が売れた場合、「先入先出法」では、「先に仕入れた4月1日の分が10個売れた」と考えて、1,000円分が売れたと考えます。

先入先出法のメリットは、計算上の仮定が、実際のモノの流れと一致しやすいということ。その一方で、物価に変動があった場合に、影響を受けやすいのがデメリットです。つまり、インフレ時には、利益が多く計上され、デフレ時には利益が小さく計上されてしまう傾向があるということです。

ちなみに、先入先出法とは逆に、後に仕入れたものを先に払い出すという考え方に基づいた「後入先出法」もかつてはありましたが、原則として2009年から廃止されています。

3.総平均法

「総平均法」は、棚卸資産を種類別に区別したうえで、期首の棚卸資産の取得価額の総額と、期中に新たに得た資産の取得価額の総額を合算。その金額を、棚卸資産の個数で割って得た金額を取得価額とする方法です。簡単に言えば、期末や年度末に平均単価を求めて、それを単価にする方法です。年単位のほか、月単位(月別総平均法)や法人の場合、6ケ月ごと(6月ごと総平均法等)なども認められています。

「総平均法」は計算がシンプルになることがメリットですが、一定の期間を経過するまでは計算ができないというデメリットがあります。

4.移動平均法

「移動平均法」は、仕入れるたびに平均単価を計算し直すという方法です。総平均法とは異なり、毎回計算していくことになります。先の例で挙げると、下記のようになります。

仕入 数量 単価 合計 在庫
数量
在庫
残高
平均
単価
4月1日 10個 100円 1,000円 10個 1,000円 100円
4月14日 15個 200円 3,000円 25個 4,000円 160円
4月20日 25個 300円 7,500円 50個 11,500円 230円

仮に、4月末に在庫が10個出た場合、4月20時点の平均単価が230円なので、原価は10個で2,300円ということになります。

頻繁に単価計算をしていくことになるため、計算が複雑になる点がデメリットです。しかし、払出資産の単価を随時把握できるため、販売業績を常に管理できるというメリットがあります。

5.最終仕入原価法

「最終仕入原価法」は、期末に最も近い日に取得した仕入れ単価を、期末棚卸資産の単価として計算する方法です。メリットは、とにかく計算が楽だということ。一方のデメリットは、価格変動が大きい場合、実際の取得価額との誤差も大きくなることと、期末まで評価ができないことです。

もし、評価方法を選択しなかった場合、最終仕入原価法で棚卸資産が評価されることになります。

6.売価還元法

「売価還元法」は、異なる品目の資産を値入率の類似性によってグループに区分し、そのうえで期末棚卸を商品の売価で行い、これに原価率を乗じて期末在庫高を算出するという方法です。下記のような計算式で行います。

期末在庫棚卸高(売価) × 原価率 = 期末在庫高

売価還元法では、受払記録を簡略化して管理できます。在庫管理の負担を軽減できるというメリットがあります。スーパーや百貨店のように取扱商品が多い小売業の場合、商品ごとの原価を調べるのが困難なので、売価還元法がよく用いられています。

デメリットは、原価率を厳密に求められないということ。原価を把握することが困難な場合に売価還元法を適用するわけですから、当然といえば当然ですね。

低価法とは

低価法は、上記の「原価法による評価額」と「期末時価」のいずれかのうち、低いほうの金額をもって評価するという方法です。

低価法では、商品価値が仕入れ時よりも下がっている場合、貸借対照表の簿価を時価に直し、その差分を損益計算書のほうで、損失計上しなければなりません。期末棚卸資産の大部分が最終の仕入価格で取得されている場合や、期末棚卸資産に重要性が乏しい場合においてのみ、適用が容認されています。

評価方法の選択

棚卸しについて、どの評価方法をとるかを選択したら、届出を行いますが、原則的には、確定申告提出期限が提出期限となります。前述しましたが、期日までに届出がなければ、最終仕入原価法による原価法が選択されることになります。

もし、事業開始以後に、評価方法の変更をする場合は、変更したい事業年度の開始の日までに「棚卸資産の評価方法の変更承認申請書」を所轄税務署に提出します。

【参考】
国税庁:[手続名]所得税の棚卸資産の評価方法の届出手続
国税庁:法人税 > [手続名]棚卸資産の評価方法の届出
国税庁:[手続名]棚卸資産の評価方法・短期売買商品の一単位当たりの帳簿価額の算出方法・有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の変更の承認の申請

ただし、基本的には継続適用なので、それなりの理由がなければ変更はできません。評価方法を採用してから相当期間を経過していなければ、合併など特別な理由がある場合を除いて、申請は却下されてしまいます。

在庫を適切に管理することは重要です。在庫がわからなければ、利益が確定できません。どの棚卸評価方法が、自分の事業に最も適しているのか、よく検討して選択しましょう。

photo:Getty Images

c_bnr_fltaccount_online-2
閉じる
ページの先頭へ