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個人事業主や法人がアルバイトやパートを雇った場合の税務手続き

一人で開業した場合でも、事業が軌道に乗ってくると、どうしてもスタッフが必要になってくるものです。とはいえ、最初から正社員を雇うのは大変なのでパート・アルバイトから、という方が多いのではないでしょうか。今回は、パート・アルバイトを雇ったときの税務のうち、毎月の給与について解説します。

POINT
  • パートやアルバイトに給与を支払ったら原則として源泉徴収の対象になる
  • 源泉徴収税額は社会保険を引いてから計算する
  • ボーナスやダブルワークなどでそれぞれ税額が違ってくる

パート・アルバイトを雇ったら

法人や個人事業主が給与を支払う場合は、役員・正社員・パート・アルバイトなどの形態に関係なく、必ず「源泉徴収(げんせんちょうしゅう)」の対象になってきます。源泉徴収とは、雇い主が給与から所得税の見込額として源泉所得税を預かり、本人に代わって税務署に納めるという制度のことです。本来なら所得税は給与を受けた方が確定申告をするものですが、この制度によってほとんどの方は年末調整を受けることで税務署に申告しなくて済むことになります。

雇い主の手続きとして、初めて人を雇ったら、まず税務署へ「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を提出します。従業員は必要に応じて「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を雇い主に提出します。

毎月の給与から源泉所得税を計算して預かり、その税額を翌月10日までに納めます。常時10人未満であれば、半年に1回まとめて納める特例もあります。

12月になると、年末調整を行い、従業員の年間の所得税を精算します。年明け1月には従業員の市区町村へ給与支払報告書を提出します。市区町村はこれをもとに従業員の住民税を計算することになります。

また、今回は税務のお話しですので詳しくはふれませんが、雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金なども関係してきますので、ぜひ確認しておいてくださいね。

源泉徴収税額の計算のしかた

では、実際に給与から税額をいくら預かったらいいのか、その手順を見ていきましょう。

設例:パート代100,000円、交通費3,000円、雇用保険加入、扶養親族なし

①まず所得税の対象になる金額を集計します。支給額のうち交通費(定期代や実費)については非課税となりますので、パート代100,000円が対象です。
②つぎに、控除する社会保険料を集計します。今回は雇用保険料のみなので、412円(103,000円×0.004%)となります。
③社会保険料控除後の給与等の金額を計算します。①100,000円-②412円=99,588円となります。
④源泉徴収税額表で給与等の金額と、扶養親族等の数がクロスするところを見ます。この場合、99,000円以上101,000円未満の行で扶養親族ゼロのところ、720円が源泉徴収税額となります。
(※編集部注:給与所得の源泉徴収税額表は、毎年のように変更されます。利用する際は、対象年をご確認のうえ、ご利用ください)

給与所得の源泉徴収税額表

この計算をもとに、給与明細書を作成します。

給与明細書

注意したいのは、税額表で行を探すときは健康保険や厚生年金、雇用保険の本人負担分を引いた後の金額を使用するということです。

気をつけたい、源泉徴収税額の求め方の違い

さて、先ほどは「甲欄」で税額を計算しましたが、じつは雇われている人の状況や給与の種類によって、預かる税額が違ってくるんです。
まずは計算で使う税額表の違いです。

計算で使う税額表の違い

  • 月ごとや半月ごとなどの定期で支払う給与→「月額表」を使います。半月ごとや10日ごと、3カ月ごと、半年ごとなど、1カ月単位での給与支払いでないときは給与を月換算して計算します。
  • 日払いや週払いなどで支払う給与→「日額表」を使います。週払いなど日払いでないときは給与を1日換算して計算します。
  • 給与のほか臨時的に支払うボーナスなど→「賞与に対する算出率の表」を使います。
    ボーナスの場合は前月の給与がいくらだったかで税率が決まります。

次に、使用する欄の違いです。

税額表で使用する欄の違い

  • 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している方→「甲欄」を使います。
  • ダブルワークなどで「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出がない方→「乙欄」を使います。
    給与所得者の扶養控除等(異動)申告書がなければ年末調整もできません。
  • その日その日で雇われる日雇いの方→「丙欄」を使います。
    (編集部注:丙欄適用者とは、以下の要件にあてはまる場合を指します。 ① 雇用契約の期間があらかじめ定められている場合には、2カ月以内であること ②日々雇い入れられる場合には、継続して2カ月を超えて支払いをしないこと)

また、外国人を雇う場合には注意が必要です。その方が原則として1年以上日本に住んでいるときなど「居住者」にあたるときは上記の扱いでよいです。

しかし、短期就労などの「非居住者」となるときは、一律20.42%の税率となり、その方の居住国によっては租税条約によりその源泉徴収の軽減や免除を受けることもできます。国によって扱いが違いますので、税務署等で確認してみましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
人を雇うときは教育や社会保険の負担など時間やお金のコストがかかるほか、税金・社会保険などの様々な事務作業を伴うことになります。

また、平成28年からはマイナンバーの取り扱いも始まっていますので、給与ソフトなどを利用して作業をラクにするとともに情報漏えいの対策も考えたいところですね。

photo:PIXTA

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