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個人事業主なら知っておきたい! 「自家消費(家事消費)」ってなんだ?

子供の将来なりたい職業に挙げられる「ケーキ屋さん」や「パン屋さん」。なればいつでもケーキやパンを食べられる……子供の発想にはそんな夢が詰まっています。

さて実際に、ケーキ屋さんが自分で作ったケーキを食べること、あるいは八百屋さんが売れ残りの野菜を家族で食べる料理に使うこと、それを「家事消費」または「自家消費」といいます。家事消費した金額は所得税の計算上、収入金額としなければなりませんが、いったいどういうことでしょうか。家事消費について説明していきたいと思います。

  • 家事消費は、サービス(役務)の提供は含まない
  • 家事消費の金額は、仕入金額または定価の70%のいずれか高い方
  • 計上しないと税務調査で論点となる可能性が高い

家事消費になるものとならないものには何があるのか

家事消費とは、所得税法において「棚卸資産を家事のために消費した場合には、その消費した時におけるこれらの資産の価額に相当する金額は、その消費した日の属する年分の事業所得等の金額の計算上、総収入金額に算入する」として定められている行為をいいます。

飲食店が自分の家族に食事を提供する、電気屋さんが店の商品である家電を自宅用に使うなど、個人事業では多かれ少なかれ見られる光景です。商品・製品・材料などの棚卸資産をプライベートで消費するのが典型的な「家事消費」です。その他にも、贈与した時、低額で譲渡した時には家事消費と同じ取り扱いをします。

ここではそれらの場合を併せて家事消費として取り上げたいと思います。具体的にはどのようなケースが家事消費に該当するのでしょうか。

[case.1]商品を友人に定価の30%の値段で販売した。→ ○
贈与(タダであげる)だけでなく、低額で譲渡すると定価との差額が家事消費となります。

[case.2]事業で使わなくなったパソコン(10万円未満)を友人にあげた。→ ○
棚卸資産だけでなく、10万円未満の消耗品も家事消費の対象となります。

[case.3]商品を店頭にサンプルとして展示して消費した。→ △
見本品として使ったり、販促品として配布したりした場合は、プライベートに消費したわけではありませんが、家事消費と同じく収入に計上する扱いとなります。ただし同額が広告宣伝費などの経費となるため、収支には影響しません。

[case.4]大工が自分の家を自分で建てた。→ ×
家事消費の対象となるのは、棚卸資産と一定の消耗品だけで、サービス(役務)の提供は含みません。ただし事業用の材料を使った場合、材料費部分は家事消費としなければなりません。

[case.5]事業で使わなくなった自動車(減価償却資産)を安価で友人に譲った。→ ×
家事消費の対象とはなりません。事業所得とは別に、譲渡所得として計算をすることになります。

家事消費の金額の決め方とは

所得税法の定めでは、家事消費の金額は、原則として通常の販売価額、つまり定価によることとされています。

原則に対して特例があり、仕入金額または定価の70%のいずれか高い方の金額によることができますので、通常は安くなる特例の金額を採用することになります。

また飲食店の「まかない」など、定価がないものはどうなるでしょうか? その場合はおおよその1食分の金額を計算します。家族が3人、従業員が4人の時は例えば次のような計算となります。

①家族分  600円×2食×3人×30日×12ヶ月×70%=907,200円
②従業員分 600円×1食×4人×25日×12ヶ月×70%=504,000円

①+②=1,411,200円

※単価や回数は、客単価や勤務状況の実態に合わせて設定してください。

小売店の場合は仕入金額または実際に販売している定価がわかれば、単価の計算は難しくありません。家事消費をしたら、そのつど売上台帳などの帳簿にキチンと記録を残すようにしましょう。

家事消費の計上の仕方と注意点

家事消費は収入金額に含まれます。商品などを自分に対して売り上げたと考えるのですね。そうしないと、売上がないのに棚卸資産の仕入代だけが必要経費に算入されて、アンバランスになってしまうからです。

家事消費の仕訳は

(借方)事業主貸 (貸方)家事消費等

とします。「事業主貸」は、プライベートに拠出した際に使う勘定科目で、ほかにも事業用の銀行口座からプライベートの引き出しをした時などに使います。

確定申告の時には、白色申告の収支内訳書では、1ページ目の「収入金額」の「家事消費」の欄に記載します。青色申告の決算書では、2ページ目の「月別売上(収入)金額及び仕入金額」の「家事消費等」の欄に記載します。

飲食業、小売業などでこれらの金額が空欄となっている場合、税務調査があれば家事消費の有無は論点となる可能性が高いです。適正に計上していないと、調査官に言われるままの金額により家事消費を認定されてしまうこともあり得ます。逆に、あらかじめ計上しておいた金額の根拠を示すことができれば、税務署といえども根拠を否定することは簡単ではありません。

サービス業などでは無縁のことも多い一方、特定の業種ではウェイトの大きな問題となってくるのが家事消費です。一年分積み重ねれば金額も大きくなりますので、指摘を受ける前に適正に計上して申告することが重要です。

photo:PIXTA

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