【2022年度の雇用保険は2段階更新!】労働保険とは?制度と年度更新について解説

6月に入ると間もなく、緑色の封筒が労働局から送られてきます。年に一度のイベント、労働保険の年度更新の季節ですね。今回は建設業以外の一般企業の「労働保険」と「労働保険の年度更新」について、基本的なところをお話しします。封筒にはマニュアルも入っていますが、それを開く前に是非ここで全体像を掴んでください。書類作成がぐんとラクになると思います。
2022年度(令和4年度)の雇用保険の保険料率は、 法改正により、2段階で引き上げられることになりました。2022年の「労働保険の年度更新」は、例年と異なるので、注意が必要です。こちらについても解説していきます。なお、緑の封筒で事業所に送付されてくる申告書には雇用保険料率の印字はありません。同封の「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」の下部に雇用保険料の計算欄があるので、必ず、確認してください。
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目次
- そもそも労働保険とは「労災保険」と「雇用保険」の総称
- 保険料は前払いし、あとで精算
- 申告書のレイアウトを把握すると簡単
労働保険とは
まず、労働保険ってなんでしょう?それは労災保険と雇用保険の2つを指しています。
従業員を1人でも雇う企業は、労働保険に加入しなければなりません。
労災保険とは
仕事や通勤中のケガや病気をカバーしてくれる保険です。お勤めの方であれば正社員だけでなく、パート、アルバイトも対象です。労災保険は、名称や雇用形態にかかわらず、労働の対価として、賃金を支払っているすべてのものが対象になります。
労災保険料は全額企業が負担することになっているので、給与や賞与からの控除はありません。ですから従業員から見た際には、給与や賞与の明細書に「労災保険料」という項目はありません。
労災保険の保険率は、業種に応じて定められていますが、メリット制の適用がない限り、2022年(令和4年)度は前年と同率に据え置くこととされました。
雇用保険とは
失業中で職を探している方、育児や介護・高齢のために働きづらくなっている方を助けてくれる保険です。
正社員の方はみな加入できますが、パートやアルバイトの方は以下の要件(1)(2)をどちらにも該当していれば雇用保険の加入対象になります。事業主は必ず「雇用保険被保険者資格取得届」(以下「資格取得届」と記載)を事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に、被保険者となった日の属する月の翌月 10 日までに提出します。
また、65歳以上の労働者の雇用保険の適用が拡大され、2022年4月からは複数事業主に雇用される65歳以上の労働者にも雇用保険が適用されます。
(1)31日以上引き続き雇用されることが見込まれている。(「31日」は休日も含んだ歴日数のこと)
(2)1週間の所定労働時間が 20 時間以上ある(例えば1日5時間で、週4日勤務なら対象)
※以下の労働者などは除く
・季節的に雇用されるものであって、4カ月以内の期間を定めて雇用される者、もしくは1週間の所定労働時間が30時間未満である者
・昼間学生である者
労働保険の年度更新とは
労働保険料は、4月1日から翌年3月31日期間の保険年度ごとに計算して納めることになっています。前払い制で、翌年度に過不足を精算するしくみです。毎年度、保険料の前払いと過不足の精算を同時に行います。
これを労働保険の年度更新と言います。実務の中では「年更」とも呼ばれます。
労働局から送られてくる緑色の封筒には、請求書ではなく申告書が入っています。企業が自ら計算して申告するのです。
申告書は、毎年6月1日~7月10日に労働基準監督署などへ提出します。2022年(令和4年)度の労働保険の年度更新期間は、2022年6月1日(水)~7月11日(月)です。
手続が遅れると、政府が労働保険料・一般拠出金の額を決定し、さらに追徴金(納付すべき労働保険料・一般拠出金の10%)を課すことがあります。
緑色の封筒が届いたら、早めに封筒をあけて、申告準備をしましょう。

この図の場合、2020年度は、初年度分の労働保険料を概算(予想額)で計算して、前払いします。
労働保険料の計算
労働保険料は、下図のように労災保険加入者と雇用保険加入者の1年度分の賃金にそれぞれの保険料率をかけて労災保険料と雇用保険料を計算します。
そして2つの保険料を足したものが労働保険料となります。
一般的には労災保険と雇用保険に加入している人で、人数が異なる場合もありますのでご注意ください。
労災保険料の計算
労災保険料は以下の計算式で求めます。
労災保険料は以下の計算式で求めます。
(1)確定保険料
労災保険加入者に前年度実際に支払った賃金額 × 前年度の労災保険率 = 労災保険料
(2)概算保険料
労災保険加入者に今年度支払う賃金見込額 × 今年度の労災保険率 = 労災保険料
賃金見込額は、前年度と比較して2分の1以上2倍以下の場合は、前年度賃金額と同額にしてください。
①労災保険加入者の賃金について
労災保険はお勤めの方であれば正社員だけでなく、パート、アルバイトなど全員が労災保険加入者となります。
②労災保険料率について
労災保険料率は事業の種類によって異なります。例えば、卸売業は3/1,000 印刷業は3.5/1,000です(2022年度)。なお、2021年度と料率の変更はありません。
【参考】厚生労働省:労災保険料率
雇用保険料の計算
雇用保険料は以下の計算式で求めます。
(1)確定保険料
雇用保険加入者に前年度実際に支払った賃金額 × 前年度の雇用保険率 = 雇用保険料
(2)概算保険料
雇用保険加入者に今年度支払う賃金見込額 × 今年度の雇用保険率 = 雇用保険料
賃金見込額は、前年度と比較して2分の1以上2倍以下の場合は、前年度賃金額と同額にしてください。
【令和4年度は2段階引き上げ!】雇用保険料率について
雇用保険料率は事業の種類によって異なります。
2022年度(令和4年度)の雇用保険の保険料率の改正については、例年にも増して注意すべき点があります。2022年度(令和4年度)の雇用保険の保険料率は、 法改正により、2段階で引き上げられることになりました。
ポイントは、以下の3つ
・2022年4月から、事業主負担の保険料率が変更(1000分の 0.5引き上げ)
・2022年10月から、労働者負担・事業主負担の保険料率が変更(各々1000分の2引き上げ)
・年度の途中から保険料率が変更
なお、2022年度(令和4年度)の年度更新における雇用保険分の概算保険料については、2022年(令和4年)4月から同年9月までの概算保険料額と2022年(令和4年)10 月から2023年(令和5年)3月までの概算保険料額をそれぞれ計算し、その合計額を、雇用保険分の概算保険料として申告・納付します。

なお、緑の封筒で事業所に送付されてくる申告書には雇用保険料率の印字はありません。同封の「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」の下部に雇用保険料の計算欄があるので、必ず、確認してください。

令和4年度は、2段階の引き上げになるため、手続きに不安がある場合は、社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。

確定保険料は前年度に実際支払った賃金をもとに計算します。概算保険料は今年度の賃金を見積もって計算しますが、前年度と大幅な変更が無い場合は前年度と同じ賃金額で計算します。
申告書のレイアウト
「年度更新のしくみ」「労働保険料の計算のしかた」がわかったら、あとは申告書のレイアウトをおさえておきましょう。そうすれば書くのは簡単です。
以下は、令和4年度(2022年度)の労働保険料申告書のレイアウトです。

労働保険の年度更新は、電子申請がおすすめ!
電子申請
2020年(令和2年)4月から、資本金等の額が1億円を超える特定の法人などは、電子申請の義務化が始まっています。電子申請の流れは、今後も対象が広がっていくと思われます。
労働保険に関する申請や届出も同様に、書面での手続もできますが、電子申請でインターネットを使用して自宅やオフィス、社労士事務所から、24時間いつでも申請や届出がカンタン・便利にできるのです。
【参考】厚生労働省:労働保険は電子申請
労働保険料の納付方法
労働保険料を納付する際は、保険料の納付の方法としては次のような方法があります。電子納付サービスや口座振替納付がおすすめです。
現金納付
労働基準監督署・労働局又は銀行等(※)のいずれかに出向いて、申告書の提出と保険料(現金)の納付を同時に行う
口座振替納付
口座を開設している金融機関に口座振替納付の申込みをすることで、届出のあった口座から口座の引き落としで納付できます。
手数料無料です。そして、保険料の引き落としは、最大約2か月程度後になるので、資金繰りに余裕が持てます。引落日に口座の残高が不足しないように注意しましょう。
【参考】厚生労働省:労働保険料は口座振替が便利です
電子納付
納付を電子納付(インターネットバンキング又はATM)によって行う方法です。この場合、申告書の提出は、電子申請で行うことが必要です。
ただし延納(分割)が認められる場合の2回目以降は、申告書を電子申請で提出していなくても電子納付を利用することができます。
なお、社会保険労務士の場合は、申告書の作成・提出までを委託することができますが、納付そのものは事業主自らが行うことになります。
【参考】厚生労働省:労働保険は電子申請
まとめ
労働保険の年度更新は、年に1度の大切なイベントです。労災保険・雇用保険の加入者ごとに1年度分の賃金を正確に集計することや、申告書の提出期限を守ることなどに注意しましょう。
なお、今回は一般拠出金や延納についての説明は省略しています。詳しくは労働局から送られてくるマニュアルをご覧ください。
【関連記事】
・知っておきたい基礎知識「労働保険の年度更新とは?手続きと計算方法を解説」
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