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会社経営者必見!自社株の相続対策

個人事業主及び会社経営者の相続対策は、会社員などの相続より断然複雑です。個人事業主と会社経営者の相続対策の違いは、個人事業主は個人の財産が、会社経営者は個人の財産の他に会社の財産が相続対策の対象になります。会社の財産には金額で評価されるものの他に、人的経営資源としての従業員及びその家族、取引先、金融機関それに営業や経営自体に関する経営ノウハウや経営権が含まれます。しっかりとした対策を打たなければ、後々大変なことになってしまいます。

POINT
  • 経営権を確保し、企業を永続させる
  • 自社株の株価を効果的に下げる
  • 後継者に上手に株式を引き継ぐ

自社株の評価方法の区分とその仕組みを理解することが大切

会社経営者の相続が発生した場合、株価の対策をしていないと高額な相続税がかかり、その結果、会社を存続することが出来なくなることがあります。未上場の場合、上場株式と違って売りたくても売れないのに、株価が数億円になるなんてこともよくあるのです。

特に含み資産が多く利益のある会社は株価が高くなるため、相続税の負担をどうするか、事前に検討しておきましょう。

自社株の相続対策の基本は次の5つです。

  1. 人的経営資源を確保した上で、会社を永続させる
  2. 自社株と事業資産の承継者を生前に決める
  3. 自社株自体の評価額を下げる
  4. オーナーの持株数を早くから、後継者等へ贈与して減少させておく
  5. 自社株を売却し現預金を増やして納税資金を用意する

自社株の価格には、会社が所有する土地や建物の価値が影響します。これらの資産を売却することも1つの方法ではありますが、経営基盤を失い会社の存続が危うくなります。会社の価値を下げるため、経営者が退職し「退職金」を払い資産を圧縮することで株価を下げることもできます。ただし、生前に退職した方がいいのか、それとも相続まで在任して死亡退職した方がいいのかなど、状況に応じて様々な検討が必要です。

事前に検討を行うためにも、会社経営者は、自社株の評価方法の区分とその仕組みを理解することが不可欠なのです。

大会社になれば、節税効果の高い計算方法(類似業種比準価額方式)で株価を算定することができます。この方式を使うと、業種や従業員数、純資産価額、売上高によって変わってくるため、専門家に相談し、どうやって会社の区分を大会社に近づけるのか、どうやって株価を下げるのかの検討が必要になってきます。

株価の計算方法は以下のとおりです。

株価の計算方法

類似業種比準価額方式

類似業種比準法とは、評価する会社と業種の類似した上場会社の平均株価を基に株価を計算する方式です。複雑な計算式を用います。この計算では、「配当金額」「利益金額」「純資産価額」を用いて計算するため、これらの金額が低ければ低いほど、自社株の株価を減少させ、相続税を減らすことができます。なお、このうち人為的に減らすことができるものは、「配当金額」「純資産価額」の2つだけです。

この計算式を用いて計算できるのは、大会社だけですが、中会社や小会社でも類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用で株価を計算することができます。ただし、類似業種比準価額方式の割合が、制限されているため、株価を低くするためには出来る限り大会社に近づける必要があるのです。

大会社の場合

大会社の場合

A:類似業種の平均株価
B:類似業種の1株あたりの配当金額
C:類似業種の1株あたりの利益金額
D:類似業種の1株あたりの純資産価額
Ⓑ:評価会社の直前期末2年間の平均による1株あたりの配当金額
Ⓒ:評価会社の直前期末以前1年間における1株あたりの利益金額
Ⓓ:評価会社の直前期末における1株あたりの純資産価額
※分母の「5」は、Ⓒゼロの場合には、「3」、調整割合の大会社は「0.7」、中会社は「0.6」、小会社は「0.5」

中会社・小会社の場合

類似業種比準価額方式と純資産価額方式との併用ができます。

類似業種比準価額 × L + 純資産価額 × (1-L)

中会社で大会社に近い場合はLに0.90を、中位的なものは0.75、小会社に近い場合は0.60をそれぞれ代入して計算します。また、小会社の場合は純資産価額により評価することが原則ですが、選択により類似業種比準価額方式との併用方式によって評価することができることとされており、併用する場合はLに0.50を代入します。

自社株の評価額を減らす

株式評価の仕組みを知った上で、自社の株式評価を行い、株価が高くなっている原因を調べましょう。そして、株価の上昇を抑制する対策を行うのです。

たとえば、自社の会社規模が小会社であれば、より節税効果の高い中会社へ、中会社ならば大会社にするにはどうすればよいかを考えます。

また、類似業種比準価額の評価計算のもとになる「配当金額」「利益金額」「純資産価額」の価額を引下げられないかを検討しましょう。

「配当金額」を減らす場合は、「特別配当」か「記念配当」を行いましょう。これらの「配当金額」は、毎期予想できない「配当金額」として計算から除かれます。

「純資産金額」を減らすためには、試験研究費を増やす、将来のための投資になる経費を増やす、また、不要な機械設備などの処分損を計上するなどがあります。

そもそもの会社規模を大きくする方法としては、合併を使う方法もあります。合併により、人数や純資産価額、売上高を増やし、中会社でも大会社に近い会社や、大会社にしていけば、通常、純資産価額で計算するよりも株価は低くなります。そのためには、従業員数、売上高、純資産価額を一定数及び一定額以上に増やしましょう。

株式の譲渡や株式の売却を検討する

企業を永続させるためにも、毎期、株価対策を講じながら、株価が下がったタイミングで、後継者に自社株を贈与するのも一つの方法です。贈与税がどの程度になるか検討が必要ですが、贈与することで、後継者の意識改善にもつながり、従業員や取引先の信頼を獲得することができるでしょう。贈与だけでは限界があるため、売却も検討しましょう。

後継者に51%以上の株を持たせるのか、持たせるならどのタイミングかなどの判断も必要になります。支配権を維持するには、2/3以上必要になります。経営権を譲る(代表権を譲ってしまう)のか、支配権を譲る(持株比率をどこまで渡すか)なども検討しておく必要があります。

また、従業員に株式を一部売却することもよい方法です。同族株主でない従業員がオーナー一族から株式を購入する場合には、割安な配当還元方式という方法で株式を評価します。売却により、自社株が減少し現預金は売却金額だけ増えますが、全体的に財産が圧縮されるため、有効な節税対策といえます。ただし、数多くの自社株を従業員に持たせると、経営が立ち行かなくなることもあるため、注意が必要です。

さらに、利益の出ている部門があれば、営業譲渡で分社化をしてしまい、今後の株価上昇を抑制させる方法もあります。

自社株の相続対策は、それ相応の労力と時間が必要です。思い立ったが吉日。ぜひ、将来の株価対策を、専門家と共に行ってみてください。

photo:Thinkstock / Getty Images

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