税理士に「青色申告決算書の見方」を教えてもらった

2021/03/31更新

この記事の執筆者安田博勇

筆者は、青色申告事業者です。「やよいの青色申告 オンライン」のユーザーなので、おかげさまで確定申告もスムーズに終了しました。あとは申告書の控えを帳簿と一緒にファイリング。これでもう安心です……。

「ちょっと待って!」———。そんな筆者のもとに届いたのは、税理士・宮原裕一先生の“神の声”。今回は、作成した書類の読み方を理解にするために「青色申告決算書」の見方について宮原先生に聞いてみました。

POINT

  • 決算書で見るべきは「損益計算書」と「貸借対照表」
  • 複式簿記では5項目の「お金の動き」を記帳する
  • 会計ソフトで「損益計算書」「貸借対照表」を日常的にチェックすることが大事

複式簿記では5項目のうち複数で「+」「−」が発生する

せっかく確定申告書を作成したので決算書の見方くらいは理解しておきたいものなんですが、なんかややこしそうで毎年おざなりになってしまうんですよね……。確定申告では「青色申告決算書」(計4ページ)が作成されますよね。すごい基本的な質問なんですが、これって何なんでしょう?

ふだん、安田さんがパソコンソフトに任せている簿記の世界には、次の5つの項目があるんです。

  1. 1.
    資産
  2. 2.
    負債
  3. 3.
    純資産(資本)
  4. 4.
    収益
  5. 5.
    費用
  • 青色申告決算書に登場する「資本」という言葉は、簿記の世界では「純資産」と呼びます。

日々の事業のなかでは、仕事の報酬が入金されたり、事業に必要な資材を購入したりと、お金が動いていますよね。これらのお金が動くたび、さきほどの5項目がプラスになったりマイナスになったりしています。そのプラス・マイナスが必ず2項目以上で発生するので、”複式”簿記といっています。

で、これらの1年分の動きを総まとめにしたものが、青色申告決算書の「損益計算書」(1ページ目)、そして「貸借対照表」(4ページ目)なんです。「損益計算書」は「その期間中にどれだけ儲けたか」を計算するもの。5項目のうち「収益」「費用」の動きを計算しています。「貸借対照表」は「資産」「負債」「資本」の3項目。期末時点で「これらがいくらずつあるか」を計算しています。

損益計算書は「収益−費用=利益」、貸借対照表は「資本+負債=資産」

「損益計算書」はどんなものなんでしょう?

基本的な計算式は「収益−費用=利益(所得金額)」です。
「1年間で稼いだお金」(=収益)から「経費」(費用)が差し引かれ、「青色申告特別控除前の所得金額」がはじき出されます。「所得金額」は単純にいえば、1年間の「利益」にあたるものです。

「損益計算書」はどんなものなんでしょう?

では「貸借対照表」は?「資産の部」と「負債・資本の部」に分かれていてややこしいのですが。

これは「資本+負債=資産」ということ。
青色申告の「貸借対照表」では、左側を「資産の部」、右側を「負債・資本の部」としていますが、複式簿記の世界では、必ず「左側(借方)」と「右側(貸方)」の両方の数字を同じ金額で動かす記帳をします。もし左右の金額が違ってしまったときは、記帳そのものに漏れがあるとか、集計間違いをしていることになります。

で、まず右側の「負債・資本の部」ですが、事業者にはその年の儲けである「所得金額」のほか、前年までの自分が出したお金の残りである「元入金」がありますよね。これは「資本」そのものです。これに加え、事業者にはその時点での「負債」がある。簡単にいえば「借金」ですね。決算書でいうと、右列の上のほうにある「買掛金」「未払金」とかがそれです。これら各項目の合計が、事業者がこの先に他人へ払うべき負債となります。

「事業主借」もここで出てくるんですね。

はい。生活用の口座から「借りた(立て替えた)」お金のことですね。これも資本の一部として加算されます。

左側にある「資産の部」は?

ここには、現金・預金・売掛金、そして固定資産等の金額が記入されているはずです。これらを合計したお金が「資産」となります。「事業主貸」は事業用口座から生活資金に「貸した(充てた)」お金のことで、これもここで加算されます。

こうして、右側(資本+負債)と左側(資産)の「合計」が同じ金額になるのは、複式簿記と同じです。

「レポート・帳簿」機能で、日常的にチェックができる

なるほど、複式簿記の世界のことがちょっとわかったような気がします。でも「損益計算書」「貸借対照表」から、事業の「何」がわかるんでしょう?

「損益計算書」は、文字通り1年間の儲けを計算するものですが、各項目をみるとざっくりとした傾向が見えてきます。例えば「家賃などの固定費が年間いくらくらいあるから、自分がほしい儲けを出すためには売上がいくらくらい必要だ」なんてことですね。

「貸借対照表」では「事業につぎ込んだお金がどのような状態になっているか」を見ることができます。在庫としてモノに変わっているお金、掛代金としてまだ手元に戻ってきていないお金、あるいは賃貸保証金などで預けっぱなしのお金などなど。「そのお金が自分で出したものか」「借りていて、後で返さないといけないものか」ということもわかりますね。

やよいの青色申告 オンライン」の「レポート・帳簿」機能を使えば、月単位で貸借対照表と損益計算書が確認できますね。実はあまり使っていなかったけど……。ほかに確定申告した後にチェックすべき点ってありますか?

「確定申告書」は税金の話になるので、見るときには「控除」のところを確認してほしいですね。税金の対象となる儲けから差し引かれる控除って結構な種類があるんです。その控除を知らないと、受けないままで申告してしまうケースがよくあります。

例えば、国民年金の控除(社会保険料控除)や生命保険料の控除などについては、お手元に控除証明書が届くので控除の受け漏れは少ないかと思いますが、国保の支払いも控除できるとか、大学生くらいのお子さんだと扶養控除の金額が増えるとか、いろいろあるんですよ。また、最終的な納税額を計算するところで、源泉徴収は精算しているけど予定納税(所得税の前払い)を精算し忘れている、ということもよく見かけます。

“確定申告のため”の会計ソフト活用から脱却しよう!

私のようにパソコンソフトに簿記を任せている事業者はたくさんいると思うんです。そして得てして「事業のお金をチェックする」ということに「おそろか」になりがち!

会計ソフトでラクだからと、確定申告シーズンになってからデータをまとめるという方も多いかと思いますが、”確定申告のため”の帳簿づけというのはとてももったいないことだと思うんです。

例えば、売上の入金をとってみても、何となく毎回お金が入ってきているから大丈夫だと思っていたら、ずっと入金されていない代金があった、なんて話も少なくありません。時間が経ってしまうとお金の催促もしづらくなるものです。集計機能を使って回収漏れをチェックすることは容易ですから、定期的にソフトを触ることは大事ですね。

また、細かい経費だって1年間積もり積もれば結構な金額になるものです。売上だけに気を取られていると、ボディブローのようにじわじわと効いてくるんですよ、経費は。

簿記のことを少しでも知っていれば、会計ソフトで日頃からお金の流れをチェックすることも楽しくなりそうですね。

自分が思い描いた事業の地図で、自分がどこにいるのか、順路は間違っていないかを確認する。そのためにも会計ソフトを活用してほしいですね。

出典
「大きな図ですぐわかる はじめての青色申告」 監修:宮原裕一(税理士) (C)2014 ASCII MEDIA WORKS

青色申告ソフトなら簿記や会計の知識がなくても青色申告できる

青色申告ソフトを使うことで、簿記や会計の知識がなくても青色申告することができます。

今すぐに始められて、初心者でもかんたんに使えるクラウド青色申告ソフト「やよいの青色申告 オンライン」から主な機能をご紹介します。

やよいの青色申告 オンライン」は初年度無料で使い始められ、無料期間中もすべての機能が使用できますので、気軽にお試しいただけます。

初心者にもわかりやすいシンプルで迷わず使えるデザイン

初心者にもわかりやすいシンプルなデザインで迷わず使うことができます。日付や金額などを入力するだけで、青色申告に必要な複式簿記の帳簿と貸借対照表などの書類が作成できます。

取引データの自動取込・自動仕訳で入力の手間を大幅に削減

銀行明細やクレジットカードなどの取引データ、レシートや領収書のスキャンデータやスマホで撮影したデータを取り込めば、AIが自動で仕訳を行います。これにより入力の手間と時間が大幅に削減できます。

確定申告書類を自動作成。e-Taxに対応で最大65万円の青色申告特別控除もスムースに

画面の案内に沿って入力していくだけで、確定申告書等の提出用書類が自動作成されます。青色申告特別控除の最大65万円/55万円の要件を満たした資料の用意もかんたんです。またインターネットを使って直接申告するe-Tax(電子申告)にも対応し、最大65万円の青色申告特別控除もスムースに受けられます。

自動集計されるレポートで経営状態がリアルタイムに把握できる

日々の取引データを入力しておくだけで、レポートが自動で集計されます。確定申告の時期にならなくても、事業に儲けが出ているのかリアルタイムで確認できますので、経営状況を把握して早めの判断を下すことができるようになります。

この記事の執筆者安田博勇

1977年生まれ。大学卒業後に就職した建設系企業で施工管理&建物管理に従事するも5年間勤めてから退職。出版・編集系の専門学校に通った後、2006年に都内の編集プロダクションに転職。以降いくつかのプロダクションに在籍しながら、企業系広報誌、雑誌、書籍等で、編集や執筆を担当する。現在、フリーランスとして活動中。

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