09.消費税における会計処理(税込経理方式、税抜経理方式)の違い
消費税の会計処理には、税込経理方式と税抜経理方式があります。免税事業者は税込経理方式を採用し、課税事業者は税抜経理方式と税込経理方式の2種類から選択できます。
どちらの方法を採用するかは事業者の任意となりますが、納付する消費税は同額です。ここでは、税抜経理方式と税込経理方式それぞれの特徴を解説し、仕訳例を使って説明します。
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目次
税込経理方式と税抜経理方式の違いとは?
消費税の会計処理における税込経理と税抜経理の違いは以下のとおりです。
免税事業者の場合は、消費税の納付義務がありませんので税込経理方式を採用することになります。一方、課税事業者は任意で税込経理方式と税抜経理方式を選択できます。
①税込経理方式
税込経理方式は、消費税額と地方消費税額を売上高や仕入高等に含めて経理する方法です。
経理処理上、税込経理方式は簡便的というメリットがありますが(取引の都度、消費税の計算を行う必要がないため)、その反面、消費税の概算納付額の見通しが立てづらく、また都度で税区分を識別していないため、申告時に最長で1年前の取引までさかのぼって切り分けしなければならないというデメリットがあります。
②税抜経理方式
税抜経理方式は、消費税額と地方消費税額を売上高や仕入高等に含めないで区分して経理する方法です。
税抜経理方式の場合は、取引の度にいちいち消費税を計算するという煩わしさがありますが、仮受消費税等、仮払消費税等という消費税専門の勘定科目を用いることで、消費税の概算納付額の見通しが立てやすいというメリットがあります。手書きで消費税を計算しなければならない場合だとかなりの手間ですが、「やよいの青色申告 オンライン」など、消費税申告機能がついている会計ソフトを利用してみると非常に便利です。
以下に、税込経理と税抜経理の比較表を掲載いたします。
区分 | 税込経理方式 | 税抜経理方式 |
---|---|---|
特長 | 売上げまたは仕入れ等にかかる消費税額および地方消費税額は、売上金額、試算の取得価額または経費等の金額に含まれるため、企業の損益は消費税および地方消費税によって影響されるが、税抜計算の手数が省ける。 | 売上げまたは仕入れ等にかかる消費税額および地方消費税額は、仮受消費税等、または仮払消費税等とされ、企業を通り過ぎるだけの税金にすぎないため、企業の損益は消費税および地方消費税によって影響されないが、税抜計算の手数が増える。 |
売上げに係る消費税等 | 売上げに含めて収益として計上する。 | 仮受消費税等とする。 |
仕入れ等に係る消費税等 | 仕入金額、資産の取得価額又は経費等の金額に含めて計上する。 | 仮払消費税等とする。 |
納付税額 | 租税公課として損金(必要経費)に算入する。 | 仮受消費税等から仮払消費税等を控除した金額を支出とし、損益には関係させない。 |
還付税額 | 雑収入として益金(収入金額)に算入する。 | 仮払消費税等から仮受消費税等を控除した金額を入金とし、損益には関係させない。 |
消費税処理の具体的な仕訳例について
消費税の会計処理について具体的な処理方法は以下のとおりです。
税込経理については、期中で税込金額を売上や仕入に含めて計算を行い、決算の際には租税公課として処理します。また、税抜経理については、期中において仮受消費税等(売上時)、仮払消費税等(仕入時等)の勘定科目を用いて、売上や仕入と消費税額を区分して計算します。
最後に決算の際には、仮払消費税等(中間納付をした場合は中間消費税を含む)と仮受消費税等を相殺して、残額を未払消費税等として仕訳計上します。
税込経理の場合
1.期中の仕訳
得意先A社に商品Bを100,000円(税込108,000円)で販売(掛売)した。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 108,000 | 売上高 | 108,000 |
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 108,000 | 売上高 | 100,000 |
仮受消費税等 | 8,000 |
2.中間消費税を支払った場合
中間消費税を100,000円支払った
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
租税公課 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
仮払消費税等 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
3.決算時
確定納付税額の合計が100,000円となった。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
租税公課 | 100,000 | 未払消費税等 | 100,000 |
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
仮受消費税等 | 300,000 | 仮払消費税等 | 200,000 |
未払消費税等 | 100,000 |
【関連記事】
・租税公課とは?所得税や印紙税は経費として計上できる?
知っておきたい基礎知識|消費税|まとめINDEX
- ~はじめに~ 知っておきたい基礎知識:消費税
- 01.消費税の仕組み
- 02.消費税の課税対象となる取引・対象とならない取引
- 03.消費税の申告・納税が課される事業者と、免税される事業者とは?
- 04.消費税の納付額の計算方法と課税形式
- 05.消費税の納付額の計算方法 〜簡易課税の計算〜
- 06.消費税の対象となる取引と「非課税取引」「不課税取引」の違い
- 07.消費税の非課税取引の仕組み
- 08.消費税における輸出免税取引の仕組み
- 09.消費税における会計処理(税込経理方式、税抜経理方式)の違い
- 10.消費税における課税売上割合と課税売上割合に準ずる割合
- 11.消費税計算で仕入税額控除のできる取引・できない取引
- 12.消費税における仕入控除税額の計算方法の決め方
- 13.消費税における仕入控除税額の控除時期と計算方法
- 14.消費税計算での対価の返還と貸倒れの場合の処理
- 15.消費税における個別対応方式の計算方法
- 16.消費税における一括比例配分方式の計算方法
- 17.消費税の簡易課税の仕組みとみなし仕入率
- 18.消費税における各種届出書と提出期限
- 19.消費税の確定申告期間と納付の期限
- 20.消費税の軽減税率制度の仕組みと税額計算の特例
- 21.消費税におけるインボイス制度(適格請求書保存方式)の仕組みと必要な記載事項