04.消費税の納付額の計算方法と課税形式
消費税の税額の計算方法は、売上の際にお客様から預かった消費税から仕入や経費支払の際に支払った消費税を控除することで求めることができます。しかし、課税方式や仕入控除税額の計算方法の違いにより、計算方法が異なってきます。今回は、消費税の課税方式や仕入控除税額の計算方法について説明します。
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目次
一般課税と簡易課税について
消費税の税額計算方法については、預かった消費税から、支払った消費税を控除する形で求めます。
消費税の課税方式には、「一般課税」と「簡易課税」があります。このうち「簡易課税」は、事業者の事務処理負担を考慮した簡便的な計算方法です。
それぞれの概要をまとめると、下記のような流れとなります。
<一般課税>
消費税の納付税額=課税売上げにかかる消費税額-課税仕入れ等にかかる消費税額(実額)
<簡易課税>
消費税の納付税額=課税売上げにかかる消費税額-(課税売上げにかかる消費税額×みなし仕入率)
【参考記事】
・消費税の納付はどうすればいいか?簡易課税の方法
みなし仕入率とは、売上から控除できる税額を求めるための割合で、事業者の業種ごとに指定されています。(業種により第一種事業から第六種事業まで分かれています)。
また、事業者が複数の事業を行っている場合は、その取引の都度、どの事業に該当するかを帳簿に記載し、その事業の種類に応じたみなし仕入率を使って売上から控除できる税額を計算します。
以下で事業区分別のみなし仕入れ率をご紹介します。
事業区分 | 該当する事業 | みなし仕入率 |
---|---|---|
第一種事業 | 卸売業 | 90% |
第二種事業 | 小売業 | 80% |
第三種事業 | 製造業、建設業、農業、林業、漁業など(※※) | 70% |
第四種事業 | 飲食業などとその他の事業(※) | 60% |
第五種事業 | サービス業など(運輸通信業、金融業、保険業) | 50% |
第六種事業 | 不動産業(賃貸・管理・仲介) | 40% |
※ 第一種事業、第二種事業、第三種事業、第五種事業、第六種事業のいずれにも該当しない事業は第四種事業です。
※※2019年10月1日の消費税率10%導入後は第三種にある農業、林業、漁業のうち軽減税率適用分について第二種に引き上げられ、みなし仕入率80%になります
(平成30年度税制改正により、消費税の簡易課税制度について見直しがされました。なお、同日前における食用の農林水産物を生産する事業については、従来の第三種事業でみなし仕入れ率70%のままとなります。
2019年7月30日 執筆者:大野修平(公認会計士・税理士)先生確認のうえ、スモビバ!編集部追記)
なお、簡易課税制度を選択できる事業者は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者です(基準期間の課税売上高が5,000万超の事業者は一般課税となります)。
簡易課税制度の詳細な計算方法および選択方法は「17.消費税の簡易課税の仕組みとみなし仕入率」をご参照ください。
仕入控除税額の計算方法について
仕入控除税額とは、売上の際にお客様から預かった消費税から控除できる仕入や経費支払の際に支払った消費税のことを指します。
通常、支払った消費税は預かった消費税から控除することができますが、仕入控除税額の計算方法の違いにより控除できる消費税の額が異なります。
仕入控除税額の計算方法には、以下の3つの方法があります。
1.全額控除方式
課税期間中の課税売上げにかかる消費税額から、課税仕入れ等にかかる消費税額の全額が控除できます。
全額控除方式を選択できる事業者は、課税期間中の課税売上高が5億円以下、かつ、課税売上割合が95%以上の事業者です(課税売上割合については後述します)。課税売上割合が95%以上であれば、仕入税額を全額控除し、95%未満であれば個別対応方式か一括比例配分方式のいずれかの按分方式で計算された仕入税額を控除することができます。このことを「95%ルール」と言います。
2.その他(全額控除できない方式)
A.個別対応方式
個別対応方式は、課税仕入れ等にかかる消費税を
1.課税売上げにのみ対応するもの
2.非課税売上げにのみ対応するもの
3.課税と非課税の両方に共通するもの
の3種類に分け、その内1.に対応する消費税と、2.に対応する消費税を課税売上割合で按分した額を控除する仕組みです。
個別対応方式は、課税期間中の課税売上高が5億円超または課税売上割合が95%未満の場合に適用される計算方法であり、次で説明する一括比例配分方式との選択制となっています。
B.一括比例配分方式
課税仕入れ等にかかる消費税額に課税売上割合を乗ずることで控除できる税額を計算します。一括比例配分方式は、個別対応方式との選択制となります。
一括比例配分方式では、個別対応方式における区分経理の煩雑さを避けることができますが、一括比例配分方式を選択した後2年間は継続する必要があります(個別対応方式から一括比例配分方式への変更は特に制限がありません)。
課税売上割合とは
課税売上割合とは、その事業者の全体の売上に対する課税売上高の割合のことを指します。
前述のとおり、課税売上割合によって、仕入控除税額の計算方法が異なりますので課税売上割合の計算は非常に大事です。
課税売上割合は、以下の式により求めることができます。
課税売上高(税抜)+輸出免税売上高
課税売上割合= ————————————————
課税売上高(税抜)+輸出免税売上高+非課税売上高
また、簡易課税の計算方法については「05.消費税の納付額の計算方法 〜簡易課税の計算〜」でご説明いたします。
知っておきたい基礎知識|消費税|まとめINDEX
- ~はじめに~ 知っておきたい基礎知識:消費税
- 01.消費税の仕組み
- 02.消費税の課税対象となる取引・対象とならない取引
- 03.消費税の申告・納税が課される事業者と、免税される事業者とは?
- 04.消費税の納付額の計算方法と課税形式
- 05.消費税の納付額の計算方法 〜簡易課税の計算〜
- 06.消費税の対象となる取引と「非課税取引」「不課税取引」の違い
- 07.消費税の非課税取引の仕組み
- 08.消費税における輸出免税取引の仕組み
- 09.消費税における会計処理(税込経理方式、税抜経理方式)の違い
- 10.消費税における課税売上割合と課税売上割合に準ずる割合
- 11.消費税計算で仕入税額控除のできる取引・できない取引
- 12.消費税における仕入控除税額の計算方法の決め方
- 13.消費税における仕入控除税額の控除時期と計算方法
- 14.消費税計算での対価の返還と貸倒れの場合の処理
- 15.消費税における個別対応方式の計算方法
- 16.消費税における一括比例配分方式の計算方法
- 17.消費税の簡易課税の仕組みとみなし仕入率
- 18.消費税における各種届出書と提出期限
- 19.消費税の確定申告期間と納付の期限
- 20.消費税の軽減税率制度の仕組みと税額計算の特例
- 21.消費税におけるインボイス制度(適格請求書保存方式)の仕組みと必要な記載事項