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法人設立時に決めておきたい5つの項目

資本金や決算月など、会社設立時には「決めなければいけないこと」が山盛りです。面倒だからといって「適当に決めてしまおう!」なんて思っている方……危険すぎます! 起業前に決めておくべき5つのことを知って、起業後に後悔しない”会社づくり”をしましょう。

お知らせ

2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!

起業前に決めておきたい、5つのこと

起業時に決めておくべきことについて、税務や会計に関係する部分をお話しします。

会社設立前でまだ考える余地があるのであれば、下記の5つについて必ずチェックするようにしましょう。

開業前に考えておくべき5つの要素

資本金の額……なぜその金額に”すべき”なのか?

まずは資本金です。平成18年(2006年)に会社法ができるまで、有限会社で300万円、株式会社で1,000万円ないと会社がつくれませんでした。

今は1円以上であれば会社をつくることができます。いろいろな会社を見ていますが、最近は1,000万円ためてから起業しようとする人のほうが少ないように思います。

資本金を考えるうえで一番大事なのは持ち分構成です。持ち分構成はそのまま支配権に直結します。

しかし、支配権の問題は税務・会計には直接関係ありません。今回は税務面にしぼって説明します。

節税に直結する金額には境目があった!?

最初は節税の話から。

資本金を1,000万円以上にすると、いきなり消費税の納税義務が発生してしまいます。はりきって「資本金は多い方が良いから1,000万円で!」とはじめると、いきなり消費税を納める必要が出てきます。

資本金1,000万円未満であれば、設立1期目と2期目は、納税が免除されます。たまに「999万円」の資本金の会社をみかけるのは、こんな理由があるためです。いきなり消費税の課税事業者にならなければ、預かった消費税をそのまま会社がもらえることになりますので、有利なケースが多いと思います。

では、資本金を1,000万円以上にしなければ、1円でも10円でも良いのかということになりますが、ここで1つ注意したいのが、業種によっては資本金に規制があるということです。

たとえば、職業紹介業は500万円、一般人材派遣業だと2,000万円の資本金が必要です。事前に何業をやりたいのか考えておかないと、会社はつくったものの目的の業種ができなかった、といったことがあるかもしれません。

そして、消費税の課税事業者になった方が得な場合もあります。

消費税は、”預かった消費税”から”支払った消費税”を差し引いた差額を国に納めます(仕入税額控除)。しかし、支払った消費税の方が多ければ、国から還付を受けられます。たとえば、大きな初期投資が必要であれば、逆に消費税の課税事業者になっていると消費税の還付を受けられることがあります。

また、2019年10月1日の消費税率10%への引き上げにともない、2019年10月から「区分記載請求書保存方式」がスタートしました。この方式になると、税率が10%なのか8%なのか、区分して記載することが必要です。

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参考:弥生「消費税改正あんしんガイド」【軽減税率対応チェックリスト 飲食店の方向け】」より転載

さらに4年後、2023年の10月に「適格請求書等保存方式(インボイス方式)」が導入されます。

「適格請求書等保存方式(インボイス方式)」は、「区分記載請求書保存方式」の記載事項に加えて、適格請求書発行事業者の登録番号の記載が必要となります。適格請求書発行事業者の登録番号は、課税事業者でなければ登録を受けられません。

「適格請求書等保存方式(インボイス方式)」導入後は、適格請求書に表示されている消費税により仕入税額控除することになります。

そうなると、しばらくは経過措置(※)があるものの、将来的には免税業者との取引では仕入税額控除ができなくなるので、免税業者との取引をやめようと考える取引先が出てこないとも限りません。

しかし一方で、適格請求書発行事業者となり課税事業者になったとしても、取引先との取引上消費税を転嫁できるとも限りません。事業計画や今後の状況をもとに税理士に相談し、より自社に有利な方を選択しましょう。

(※)適格請求書等保存方式(インボイス方式)の導入後、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等を保存し、帳簿にこの経過措置の規定の適用を受ける旨が記載されている場合には、次の表のとおり、一定の期間は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額として、控除できる経過措置が設けられています。

期間 割合
2023年10月1日から2026年9月30日まで 仕入税額相当額の80%
2026年10月1日から2029年9月30日まで 仕入税額相当額の50%
2029年10月1日から 適格請求書発行事業者以外の者からの仕入れは、仕入税額控除 なし

将来を見据えた株主構成にしよう

起業時だからこそ、将来を見据えた株主構成を考えることは、起業したばかりの方には気の早い話と笑われるかもしれませんが、非常に大切な項目です。

利益が出ると株価は上がります。たとえば、子どもに継がせたいのか、あるいは業種的に将来が見えないから子どもには継がず、自分の代が終わったら会社を売るのか、または閉めるのか。そういったことを考えたうえで最初の株主の構成を決めないと、後が大変なことになります。

基本的には中小企業の株というのは売れません。しかし、会社が大きくなると、2億円とか10億円という価値がついてしまいます。何もなければいいのですが、万が一大株主である代表者で亡くなってしまったとき、売れもしないのに株価が何億にもなり、相続税が1億円、2億円と掛かってしまうことも少なくありません。

そのため、株主構成を決められる起業時だからこそ、配偶者や子どもを株主に入れておくかどうかなどを考えておく必要があるのです。

3月が当たり前じゃない!? 決算月を戦略的に決めるべき理由

次に、決算月の決め方です。これも自由に決められるがゆえに、意外と適当に決めたり、ややもすると会計事務所と相談して、会計事務所が暇な月ということでお願いされたりして、そのままになってしまうということもあったりします。

経理的にはすごく大切です。会社には事業年度というものがあり、1年に一度決算をしなければなりません。会社が利益を上げるタイミングを考えると、事業年度の後のほうに利益が出る月を持ってきてしまうと、当期が黒字になるのか赤字になるのか、その事業年度の着地点の判断ができなくなってしまいます。

ルールを知って経営の本質に集中

黒字になるのか赤字になるのかが分からないと、当期投資をして良いのか、翌期に回すべきなのかの判断ができません。また、どれぐらい納税するかもみえません。

最終月まで利益が全然確定しないというような決算期の持っていき方が、一番もったいないわけです。

たとえば、「工事完成基準」を例にすると、公共事業を中心とした建設業を営む場合、工事完成の多い3月に大きな利益が上がるので、3月を事業年度末にするとブレが大きくなります。

去年は2,000万円ぐらい利益が出たけれども、今年はもしかしたら100万円かもしれない、むしろマイナスかもしれない。そうとなると、当期、設備投資していいのか、いろいろなものを買ってもいいのかといった経営判断がしづらくなります。

つまり、大きな利益が出る月は、なるべく事業年度のはじめのほうに持ってこないと、経営のハンドリングができないということになります。

多くの業種が2月、8月が閑散期です。その辺りを事業年度末に持ってくるというようなイメージです。

本店所在地=”バーチャルオフィス”にする際の注意点

本店所在地をどこに置こうが自由です。

しかし、自由につくれるが故に、秘書代行がいて、電話だけ取ってくれたり、郵便だけ届くバーチャルオフィスに本店を置く人が増えてきています。

名目上の本店だったらいいのですが、登記上の本店にしてしまうと、銀行が法人口座をつくってくれないこともあります。理由はマネーロンダリングの関係です。

法人が銀行口座をもてないことは、融資の際に不利益になったり、取引先によっては法人名と振込先の名前が一致せず取引ができなかったりなど、致命傷になりえる可能性があります。

銀行口座を開いてから本店を移すということだったら問題ありません。確かに本店が東京の銀座にあるのはかっこよいかもしれません。しかし、見た目は良くても、後々痛い目を見ることがあるかもしれないのです。

取締役は、いったい何人必要なの?

役員は1人でも問題ありません。監査役も置く必要はありません。ただ、起業したばかりの人には、知り合いや友達に役員になってもらおうという方がたまにいます。

しかし気を付けてください。銀行は融資の際、役員の経歴を皆調べます。もし、そのご友人の過去の経歴に何か傷があったりすると、銀行の融資がおりないこともあり得るのです。

家族を役員にすることも、役員報酬を出すことも可能です。もちろん役員としての実体が必要ですが、個人事業の青色事業専従者のように事業に専従している必要はありません。

こうすることで所得が分散され、代表者が全部給料を取るよりも税率が低くなるという効果も望めるのです。

定款の事業目的以外は「売上高」に入れられない!

最後は定款の”事業目的”です。ここに書かれたものの収入が決算書の「売上高」になります。

逆を言えば、事業目的に定義していない「事業」は、主たる売上ではないということから、一般的には損益計算書(P/L)上は、売上に入れることができず、『営業外収益』に計上されることになります。

また許認可事業の場合には該当の目的を入れておかないと、そもそも許認可がおりません。ここは事前に確認をしておく必要があります。

並び順番も適当でよいわけではなく、1行目が主たる目的と判断されますので、この並び順も気を付けておいたほうが良いでしょう。

※※2019年10月1日の消費税率10%への引き上げと軽減税率導入により、執筆者:松波 竜太先生監修の上、消費税部分の大幅に加筆修正を行いました。(2019年10月15日 スモビバ!編集部追記)

知っておきたい基礎知識|お金と経理 虎の巻(法人編)|まとめINDEX

  1. 法人設立に必要な2つの知識
  2. 事業継続のための「売上」と「利益」
  3. 法人設立時に決めておきたい5つの項目
  4. 法人設立後に届け出が必要な6つの書類
  5. 請求・支払の期日 決め方の原則
  6. 給与・勤怠管理で困らないためのルール決め
  7. 請求書・領収書…… 支払・仕入の管理方法
  8. 会社にとって無理のない給与の決め方
  9. 運転資金に困らない金融機関の選び方
  10. 「起業に必要な資金」の考え方
  11. 創業融資、3年目まで影響する”受け損ね”
  12. 知っておきたい、運転資金の重要性
  13. 決算月にやっておくべき5つの作業
  14. 税務署への法人税申告前にやるべきこと
  15. 会計事務所はこう使え! お願いしたい4つのこと
  16. 期ズレ、賞与、寄付… 気をつけたい経理処理のルール
  17. 創業1年目から気をつけたい! 最低限度の会計処理
  18. 税務署に指摘されない現金と預金の管理法
  19. 習うより慣れろ! 賢い会計ソフトの入力方法
  20. 資金繰りであわてないための経理カレンダー
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