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労働者とのトラブルを未然に防ぐための就業規則作成の基礎知識

就業規則は、労働時間や賃金等の基本的な労働条件などを定めた、使用者と労働者のルールブック。労働者との間で発生しやすいトラブルを未然に防止するにあたり有用です。なので、事業が拡大した時点で慌てて作る……というのは避けたいところ。就業規則とは何なのか、どのような定めを置けば良いのか。早い段階で基本を理解しておきましょう。

就業規則とは何なのか

本来、どのような条件で働くかは、個々の社員と会社間の契約によって決定すべき事項です。しかし、個々の社員ごとに労働条件がバラバラというのも困りもの。そこで会社における統一的なルールを定めたルールブックを作成し、全社員をこれに従わせる……というのが「就業規則」です。

就業規則は、労働者が10人以上になると作成・届出の義務が生じるものです。ここでいう「労働者」には、正社員だけでなくパートアルバイトや契約社員、派遣社員なども含まれます。

就業規則で定めるべき事項とは?

就業規則の各条項に書く内容は、法律上、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項の三つに大別できます。

絶対的
必要記載事項
労働基準法で定められた、必ず記載しなければならない事項。
相対的
必要記載事項
当該項目に該当する制度がある場合には記載しなければならない事項。就業規則で定めない限り、当該項目に該当する制度を用いることはできません。
任意的
記載事項
書いても書かなくてもいい事項。就業規則以外で定めても問題ありません。

就業規則に必ず記載しなければならない事項

必ず記載しなければならない絶対的必要記載事項は、大きく分けると3種類です。これらは必ず記載が必要な事項なので、ネット上などで公開されているテンプレートにも、間違いなく書いてあるはずです。基本的には、テンプレートを埋めていくだけでOKです。

就業ルール 始業、就業の時刻、休憩時間、休日、休暇、労働者を2回以上に分けて交替で就業させる場合の就業時転換に関する事項など。
ちなみに、時間外労働や休日労働について、男女で異なる定めをするのは、男女雇用機会均等法違反なのでNGです。
給与に関する事項 賃金の計算、支払いの方法や賃金の締切日、支払日、昇給に関する事項など。
退職に関する事項 解雇の具体的事由、解雇時の手続き方法、定年退職の年齢、退職金についての定めなど。
定年退職の定めをする場合は、60歳以上の定めをしなければなりません。また、労働者を解雇する場合には、少なくても30日以上前の予告が必要です。「いきなり解雇を言い渡せる」というような規則は無効です。

就業規則に記載すべき事項

以下の制度を採用する場合に、記載しなければならないのが相対的記載事項です。
例えば、以下に記載する通り、「労働者に作業用品を負担させる定め」は「相対的記載事項」です。……というのはどういう意味かというと、

  • 就業規則でその旨の定めを置いておけば、労働者に作業用品を負担させることは可能
  • 就業規則でその旨の定めを置いておかないと、たとえ他の箇所に定めを置いたとしても、労働者に作業用品を負担させることは不可能

 

ということです。以下の制度を採用する場合には、必ず職務規程に定めを置いておく必要があるわけです。

  • 退職金制度
    適用される労働者の範囲、退職金の決定、計算、支払の方法、支払の時期に関する事項について記載が必要です。
  • 臨時の賃金等(退職金を除く)及び最低賃金額
  • 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定め
  • 安全衛生に関する定めをする場合
  • 職業訓練に関する定めをする場合
  • 損害補償及び業務外の疾病扶助に関する定め
  • 表彰及び制裁に関する定め
  • 当該事業場の労働者の全てに適用する定め
    例えば、休職に関する事項、旅費に関する規定等です。

 

任意的記載事項

労働基準法に定めはなく、就業規則に掲載してもしなくても良い事項なので、内容は自由です。例えば、

  • 就業規則の目的
  • 社是、社訓、経営理念
  • 採用の手続や試用に関する事項
  • 出張等の旅費に関する事項
  • 配置、異動、昇進、休職、解雇など社員の人事に関する事項

 

などを記載することが考えられます。
なお、任意的記載事項は、記載するかしないかは自由ですが、記載した以上は使用者と被用者共に、これに拘束されます。

就業規則と他の契約等との優先関係

労働者と企業間を規律するものの効力の優先順位は、強い方から

  1. 労働基準法
  2. 労働協約
  3. 就業規則
  4. 労働契約

 

という順になります。
まず、労働者の基本的な権利を保護する労働基準法には、労働協約も就業規則も労働契約も違反することはできません。

次に、使用者が一方的に作成・変更できる就業規則や、使用者と個々の弱い立場での労働者が結ぶ労働契約よりも、労働者の団体である労働組合が使用者と結んだ労働協約が優先します。そして、個々の労働契約よりも使用者が労働者代表の意見を聞いて制定する就業規則が優先することになります。

ただし、労働協約については、たとえ労働契約の定めた内容の方が労働者に有利であっても労働協約の効力が優先しますが、就業規則の場合は、就業規則より労働者に不利な労働契約を無効にするのみで、労働者に有利な労働契約は有効です。

例えば、仕事が優秀な社員に対して、就業規則に定めたほかの社員よりも多い給与形態を契約することはOKですが、特定の社員だけ低い給与体系の契約をしても無効です。

就業規則の作成は、法令を押さえた上で、いかに会社の実態に合わせてアレンジするかが重要です。

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