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個人事業主・フリーランスの「節税」のポイント【永久保存版】

個人事業主やフリーランスの方々は「節税対策」は万全でしょうか。確定申告のたびに「今後は節税しよう」と思いながら、つい日々の業務に忙殺されて、後回しにしてしまいがちです。しかし、安定した経営を行うために節税対策をすることは売り上げを伸ばすのと同様に大切なこと。個人事業主やフリーランスのための、効果的な節税について解説していきたいと思います。

いまさら聞けない節税の基本

個人事業主が負担する主な税金は「所得税」「住民税」「個人事業税」「消費税」などです。そのなかで、節税対策を行いやすいのが「所得税」です。「収入」から「必要経費」を引いた「所得金額」から、さらに「所得控除」を引き、税率をかければ、所得税額が出ます。つまり、下記のような式になります。

所得税額=《「所得(収入-必要経費)」-「所得控除」》×税率

引いているのは「必要経費」と「所得控除」ですね。つまり、必要経費を漏れなく計上して、控除をフル活用することが、節税対策の基本ということになります。

計上漏れしがちな経費

もっとも一般的に言われている節税が「経費を増やす」という方法です。しかし、むやみやたらに経費を増やすことは、資金を減らしてしまうことになります。そして、なにより必要経費になるものは、事業に関連している支出に限られています。事業に関連している経費を忘れずに帳簿に記録することが節税においては大切なことです。

経費について個人事業主・フリーランスが押さえておくべきポイントを見ていきましょう。

家事按分

生活費と事業費が混在しており、「合理的な基準」によって分けて計算することを、「家事按分(かじあんぶん)」と言います。

家事案分なら家賃や光熱費も経費にできます。「自宅が事務所を兼ねている」「自宅の一部を事務所にしている」といった場合、家賃や光熱費を必要経費として計上することができます。しかし、もちろんこれには「事業に関する費用」だけを抜き取る必要が出てきます。

家事案分を行うと、事業に関わった費用は経費として計上することができるため、節税にも役立ちます。電話料金、インターネット料金はもちろん、自動車の減価償却費、ガソリン代、火災・損害保険料なども、事業で使用した割合に応じて経費計上が可能です。

重要なのは、「合理的な基準」で計算することです。家賃であれば、全体面積のうち何割を事務所として利用しているかを計算し、経費となる家賃を算出することになります。こういった「事業に利用している割合」のことを「事業割合」と呼びます。事業割合に計算による根拠があれば、合理的な基準として認められるのです。

また、「自家用車を仕事にも使っている」という場合にも、自動車の購入代金や駐車場代、ガソリン代、自動車税、車検代などを家事按分することができます。自動車はランニングコストがかかるものですので、しっかり計算しましょう。なお、事業割合については走行距離数や使用日数で計算するのが一般的な方法です。

それから、「減価償却費」の家事按分も可能です。事業で使用するパソコンや自動車などの購入で10万円以上になった場合には、「減価償却費」で計上します。長期に使うものという前提で、耐久年数(国が計算上定めた『物の寿命』のこと)を考慮した複数の年に分けて経費として計上することです。

10万円未満の資産は「消耗品費」で計上します。消耗品とは、次のようなものを指します。

①帳簿、文房具、用紙、包装紙、ガソリンなどの消耗品購入費
②使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品の購入費

以上のようなものが10万円未満の場合は、消耗品費で計上します。

修繕費」についても、事業割合を算出することで家事按分が可能です。事業で利用している建物や設備などの「固定資産」が故障・破損した場合、その修復に必要な費用は「修繕費」となります。この修復はあくまでも現状維持を目的としたものであり、「改良」などで新たな価値が加わった場合には修繕費には計上できません。「資本的支出」となり、新たに発生した減価償却費として計算することになります。

経費にできる税金

税金の中には、経費として計上できるものがあります。事業に関連していれば経費にできる税金は、次のようなものがあります。


事業税
個人事業税
事業所税
印紙税
固定資産税
都市計画税
不動産取得税
登録免許税
自動車税
自動車取得税
自動車重量税
地価税
利子税

意外と知られていませんが、事業を行うために必要な土地や建物に課される「固定資産税」、それ以外の事業用の器具・備品、建物の附属設備などに対して課される固定資産税の「償却資産税」は、原則として全て経費として処理できます。

経費にできる税金を処理する際の勘定科目は、「租税公課」となります。ちなみに、商工会議所や同業者組合などの会費や組合費のようなものも租税公課として経費にできます。

一方、経費にできない税金は次のようなものです。


所得税
相続税
都道府県民税
市町村民税
住民税
国税の延滞税・加算税
地方税の延滞金・加算金
交通違反での罰金

事業と関係なく支払わなくてはならない住民税や所得税、税務署からのペナルティーである延滞税や無申告加税は、経費にできません。

他に計上漏れしがちな経費として、「交際費」があげられます。交際費は仕事での接待や贈答に関する費用です。取引先や仕事が関係する場合の旅行や食事、冠婚葬祭の費用(お祝儀やお香典)など、幅広く経費にできるのが特徴です。なお、「交際費」のうち、飲食に関わるものは「接待交際費」となります。5000円以下の場合は会議費での計上も可能ですが、5000円以上である場合は接待交際費としましょう。

個人事業主・フリーランスの節税に有効な所得控除

節税対策では、どうしても経費のほうに重点が置かれがちですが、控除を増やすことも大切です。

日本の所得税制度では、大きく分けると「所得控除」と「税額控除」の2種類があります。所得控除は、ある要件に当てはまった人が、一定金額だけ所得から差し引くことができるものです。

確定申告をする多くの人が関係する次の控除については、できるだけ頭に入れておきましょう。

控除の種類 控除の概要と所得税計算での控除額
基礎控除 納税者すべてが対象となる控除(2020年分より48万円。所得制限あり)
配偶者控除 控除対象となる配偶者の年収が103万円以下の場合、13~48万円
配偶者特別控除 控除対象となる配偶者の年収が103万円以上の場合、1~38万円
扶養控除 控除対象となる扶養家族がいる場合、38万円

今回は、ほかにもまだある意外と知られていない所得控除の種類をご紹介します。次の控除に該当しないか、確認しておきましょう。

家族と所得控除の関係

ここでは、家族が関係する所得控除についてご説明します。

病院や薬局で支払う医療費は、「医療費控除」の対象となります。医療費控除は、年間の医療費が家庭内(納税者、生計を一にする配偶者やその他親族)で10万円以上、あるいは、所得金額の5%以上のどちらかに当てはまる場合に受けることができます。

家族に給与を支払う場合は「専従者控除」の対象となり、その給与を経費として扱うことができます。上限額は白色申告と青色申告では違うのでご注意ください。

健康と所得控除

国民健康保険、介護保険、国民年金保険などは「社会保険料控除」の対象となります。

また、個人で加入している保険(保険会社の生命保険、介護医療保険、個人年金保険など)の保険料は、「生命保険料控除」の対象となります。

意外と見落としがちな所得控除

所得控除には、「意外と見落としがち」なものもあります。大きな節税に繋がる可能性もあるため、改めて自分は対象かどうか、確認してみてください。

地震保険に加入しているなら「地震保険料控除」の対象になります。民間の保険会社に地震保険料を支払った場合、最高5万円までが控除額となります。

自然災害や火災、盗難などによる損失があった場合は「雑損控除」という控除が適用されます。震災、風水害、冷害、雪害、落雷といった災害や盗難、横領などにより損害を受けた場合、『差額損失-所得金額×10%』が雑損控除額となります。

住宅ローンを利用し、マイホームの新築や取得、増改築などをした場合には、「税額控除」の対象となります。また、企業からの剰余金の配当、利益の配当といった「配当所得」が発生した場合にも、税額控除を受けることができます。

不動産の貸付などで所得を得た場合(かつ、事業所得など他の所得に該当しない場合)、「総収入金額-必要経費」が不動産所得の金額となり、青色申告をした場合に最大で65万円の控除となります。もし、赤字の場合でも、確定申告をすることで、他の所得と相殺されて、結果的に所得税が安くなることもあります。

もしも、納税者本人が学生なら「勤労学生控除」が適用されます。学校に通いながら働いている学生は、27万円が控除額となります。中学・高校以上のほとんどの学校が対象となりますが、専修学校や各種学校については確認が必要です。

個人事業主におすすめの所得控除

個人事業主が利用できる所得控除には、次のようなものがあり、大きな節税効果があります。

個人事業主ならではの控除「小規模企業共済等掛金控除」は、小規模企業共済への掛金に対する控除です。その年に支払った掛金の全額が控除されます。

また、青色申告を行うことにより、最大で65万円控除が控除されます。

国や地方公共団体、公益法人などに寄付金を支払ったら「寄附金控除」が適用されます。国や地方公共団体、特定公益増進法人などに寄付を行うと、「その年に支出した特定寄附金の額の合計額」あるいは「その年の総所得金額等の40%相当額」の、いずれか低い方の金額から2,000円を引いた金額が控除されます。

それから、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度「経営セーフティ共済」や、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度「iDeCo」は所得控除の対象になります。

節税で困ったときは税理士へ相談

節税で困ったときには、税理士へ相談してみるのもおすすめです。税理士が顧問としてサポートにつけば、法的にも正しく、効率的に節税をすることができます。

冒頭でもお伝えしたように、節税にはある程度の知識が必要です。税について知識に自信がないままに確定申告を行うと、「節税とはいえ、一歩間違えれば『脱税』になってしまうのではないか…」という心配を持つ人も多いと思います。だからといって積極的な節税を行わず、節税効果が薄くなってしまうのも心配です。

しかし、税理士であればこの点も安心して任せることが可能です。税理士だからこその「節税テクニック」や、新しい制度についてのわかりやすい説明を受けることもできます。自分では節税が難しい方や、事業規模がある程度大きくなった方は、ぜひ税理士に相談してみてください。税理士への報酬は必要ですが、それ以上に節税や「時間」で得をするケースがあり得ます。

会計ソフトの活用で効率的に節税を

確定申告には、ぜひ会計ソフトを活用しましょう。最近流行のクラウド会計アプリは、クレジットカードの明細や銀行の取引明細を読み込み、自動的に帳簿を作成してくるものがほとんどで便利です。

とはいえ、会計ソフトを使うだけでは「確定申告が効率的にできる」だけであり、節税には関係ありません。あくまでも節税の知識を持った上でこのようなソフトを利用すると、各数値が比較しやすくまとめられており、「どういった部分で節税できるかということの分析がしやすい」という点で有利なのです。もちろん、節税だけでなく、事業を進める上でのヒントも手に入ります。

まとめ:ちょっとした節税のコツ、教えます

以上、節税について述べてきましたが、年末などに駆け込みで節税対策をしたい場合は、しっかりと経理処理をして、必要経費を忘れることなく計上すること。そして、帳簿を把握したうえで、設備投資や所得控除による節税なども検討するとよいかもしれません。

節税の知識を得ることで、自分の事業に適した節税対策を行うことができます。面倒くさがることなく、日々、小まめに適切かつ正確な経理処理を行っていくこと。そうすれば、慌てて大量の作業をギリギリにやらずに済むので、結果的に記帳が楽になり、空いた時間を売上増加するために使うことができるでしょう。

photo:Thinkstock / Getty Images

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