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青色申告の貸借対照表とは?必要性や見方、書き方などを解説

2024/01/30更新

この記事の監修田中卓也(田中卓也税理士事務所)

青色申告をする場合、確定申告書と一緒に「青色申告決算書」を提出する必要があります。青色申告決算書とは、貸借対照表や損益計算書などで構成される書類のことです。貸借対照表はある特定の時期の財政状態を、損益計算書は1年間の事業の経営成績を示す書類です。

ここでは、青色申告をする際に作成する青色申告決算書の貸借対照表について、書類の内容と書き方について詳しく解説します。

貸借対照表は青色申告で65万円もしくは55万円の控除を受けるのに必要な書類

個人事業主における貸借対照表とは、青色申告をする際に提出する青色申告決算書に含まれる書類です。貸借対照表は、年末などある時点での事業の財政状態を表す書類で、期首(通常は1月1日)と期末(通常は12月31日)時点の「資産」、「負債」、「純資産」を示します。

なお、青色申告決算書を提出する際は、貸借対照表のほかに「損益計算書」の記入も必要です。損益計算書には、年間の売上額や経費額など、1年間の所得の内容を記入します。損益計算書は単式簿記でも作成できますが、貸借対照表は複式簿記での記帳を行わないと作成できません。

青色申告決算書には、「一般用」、「農業所得用」、「不動産所得用」、「現金主義用」の4種類がありますが、現金主義用の青色申告決算書には貸借対照表が含まれません。また、損益計算書も「収支計算書」という名称になっています。

青色申告特別控除のメリットを最大限利用するには貸借対照表が必要

青色申告特別控除とは、青色申告の利用者が受けられる控除のことです。控除の金額は、65万円、55万円、10万円の3種類があり、それぞれ要件が異なります。

詳細な要件は後述しますが、貸借対照表を作成していない場合、控除額は10万円になってしまいます。青色申告特別控除のメリットを最大限利用するためには、貸借対照表を作成しなければいけません。

青色申告特別控除で65万円の控除を受けるためには、以下をすべて満たす必要があります。

青色申告特別控除で65万円の控除を受けるための条件

  • 1.
    事業所得か不動産所得に該当する事業を行っている
  • 2.
    上記について、正規の簿記の原則(通常は複式簿記)に基づいて帳簿をつけている
  • 3.
    帳簿の内容に基づいた青色申告決算書(損益計算書・貸借対照表)を確定申告書に添付して提出する
  • 4.
    確定申告期限を守る(原則として申告する年の翌年の3月15日まで)
  • 5.
    発生主義で記帳を行っている
  • 6.
    e-Taxで確定申告を行う、または電子帳簿保存法の「優良な電子帳簿」の要件を満たす形で帳簿を電子保存する
  • 事業所得と不動産所得の兼業の場合は、不動産所得が事業的規模である必要はありません。

上記のうち、「6」のみ満たさなかった場合は青色申告特別控除額が55万円になります。「6」以外の要件で満たさないものがある場合、控除額は10万円です。

10万円の青色申告特別控除を受ける場合、貸借対照表の作成と提出は任意です。損益計算書のみの作成でも確定申告が可能です。

なお、以前は上記の「6」を満たさなくても65万円の青色申告特別控除が受けられました。しかし、2020年に基礎控除が最大48万円に引き上げられた際、青色申告特別控除額が55万円に引き下げられています。同時に、e-Taxでの申告または電子帳簿保存によって、従来どおり65万円の控除を受けられる措置が追加されました。

事業所得や不動産所得については、以下の記事で詳しく解説しています。

貸借対照表なしでも青色申告特別控除は受けられる?

貸借対照表を作らなかったとしても、10万円の青色申告特別控除を受けることができます。10万円の青色申告特別控除は、現金出納帳などを利用する簡易簿記での帳簿作成と、損益計算書の作成のみで認められます。複式簿記での記帳を行うのが難しい場合は検討してみましょう。

とはいえ、確定申告ソフトなどを使えば、簿記の知識がなくても複式簿記での記帳が可能です。貸借対照表も、日々の取引を記録していくだけで簡単に作成できます。控除額が65万円と10万円では、節税効果が大きく変わるため、ぜひ確定申告ソフトを活用してみましょう。

青色申告特別控除の10万円控除については、以下の記事で詳しく解説しています。

貸借対照表の見方と書き方は?

青色申告決算書の貸借対照表は、左側の資産と、右側の負債、純資産に分かれていて、左右の合計額は必ず一致します。左右の金額が釣り合うことから「バランスシート」と呼ばれています。資産から負債を引くことで、純資産を算出できます。

実際の貸借対照表における、資産、負債、純資産の記載位置は以下のとおりです。

貸借対照表における資産、負債、純資産の記載位置

以下の貸借対照表の例参考に、それぞれの部に何が書かれているのかを見ていきましょう。

青色申告決算書 貸借対照表の例

資産

左側の資産の部は、事業の保有している資産状況をまとめたものです。ここには、現金や預金などのほか「現金や預金を使って手に入れたもの」も含まれます。例えば、現金で購入した「商品」、商品に利益を乗せて販売したもののまだ代金を回収していない「売掛金」、店舗の内装などの「建物附属設備」などがあげられます。

負債

右側のうち負債の部には、いずれ支払わなければならないお金を記入します。銀行などから借りたお金である「借入金」や、原材料などの購入を行ったもののまだ支払いを行っていない「買掛金」などが該当します。

純資産

右側のうち純資産には、事業用の財産を記入します。「元入金」とは、期首(通常は1月1日)にあった企業の資産である元入金に、その年の利益を足した金額が該当します。上記の表からもわかるように資産から負債を引いた額が純資産額と一致します。

元入金や事業主貸(借)とは?

「元入金」や「事業主貸」「事業主借」という科目は、通常の経費や仕入にかかる科目とは意味合いが異なります。

事業主貸と事業主借は、プライベートのために使用した事業のお金や、プライベートの財産から事業に使用したお金の動きを記録するための科目で、個人事業主特有のものです。

個人事業主は法人とは異なり、事業の利益の中から決まった給料をもらうわけではありません。事業の利益を適宜生活費などに使用することになります。しかし、記帳は事業に関するものについてのみ行うものです。そこで、事業のお金とプライベートのお金を区別するために、「事業主貸」と「事業主借」という専用の科目を設けているのです。

事業主貸と事業主借の使い分け

  • 事業主貸:事業のお金をプライベートに利用した場合の勘定科目
  • 事業主借:プライベートの財産を事業に利用した場合の勘定科目

一方の元入金は、企業でいう資本金のようなものです。ただし資本金と異なる点は、事業を行う元手となった資金と、その後利益が出て増えたお金が該当するため、毎期帳簿を繰り越すごとに金額が変動します。元入金は、以下の計算で求められます。

元入金の計算式

翌期首の元入金=当期末の元入金+当期の所得+当期末の事業主借-当期末の事業主貸

元入金や事業主貸、事業主借については、以下の記事で詳しく解説しています。

貸借対照表の数字が合わないときの対処法

貸借対照表は、必ず右側(資産)の合計と左側(負債、純資産)の合計が一致します。一致しない場合は、以下のいずれかのミスが生じていると考えられます。

貸借対照表の数字が合わない原因

  • 勘定科目の一部が記載もれになっている
  • 勘定科目の左右の振り分けが間違っている
  • 勘定科目の集計ミスをしている

貸借対照表は、科目ごとに記録した仕訳帳を基に作成します。勘定科目の一部を転記し忘れていたり、記入する科目を間違えたりすると、貸借が一致しない原因になるでしょう。また、勘定科目を合計する際に計算間違いをしている可能性もあります。

手作業で集計や転記を行っていくのは非常に時間がかかりますし、ミスの元です。間違いがあった場合も、原因を探すのに時間がかかります。自動集計が可能な確定申告ソフトを利用するのが効率的です。

貸借対照表の現金の残高と手元の残高が一致しない原因と対処法

貸借対照表を作成するうえで、貸借対照表上の現金残高と、実際の手元の残高が一致しないということがよくあります。

預金や売掛金などは、通帳や請求書の控えなどを基に記入していきます。そのため、例えば預金の金額と通帳の残高が一致しなくても、仕訳帳の預金の欄と通帳の残高の動きを月ごとに、あるいは日ごとに照らし合わせていけば、何が原因かを突き止めやすいでしょう。

しかし、現金で細かい支払いなどを繰り返していると、帳簿の数字と手元にある事業用財布や金庫の中身が一致せず、原因がわからないといったことが起こります。このような場合の原因と対処法は以下のとおりです。

現金残高が多すぎる場合の対処法

貸借対照表上の現金残高が、実際に手元に残っている事業用の財布や金庫などの中身よりも多い場合、考えられる原因は「事業のお金をプライベートで使用し、記録し忘れている」というケースです。

例えば事業用とプライベート用の財布をそれぞれ持っている事業者が、「プライベート用の財布にお金が入っていなかったので事業用の財布から1,000円を使い、その後返しておくのを忘れた」といった場合です。このようなときは、差額をプライベートで使用した「事業主貸」で仕訳します。また、「事業用のお金を引き出したが、その一部または全部をプライベートに使った」という場合も同様の処理となります。

事業用のお金をプライベートで使用した場合の仕訳例
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
事業主貸 1,000 現金 1,000

また、単に帳簿の記載漏れという可能性もあります。実際には使っていたのに記帳を行っていない支出に気付いた場合は、その旨を帳簿に記載して貸借対照表に反映させましょう。

現金残高がマイナスになる場合

貸借対照表上の現金残高が、実際の現金残高よりも少ない場合、プライベートのお金で事業経費の支払いをしたにもかかわらず、事業用のお金から支出したように記帳を行ってしまっている可能性が高いでしょう。現金残高がプラスになる場合の反対の現象が起こっているということです。このような場合は、差額を「事業主借」で仕訳をし、正しい現金残高に合わせます。

プライベートのお金で事業経費の支払いをした場合の仕訳例
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 1,000 事業主借 1,000

貸借対照表からわかることは?

確定申告のために作成した貸借対照表は、確定申告後も経営状況の確認などに活用できます。チェックポイントを紹介しましょう。

自己資本比率

自己資本比率とは、総資産のうち自分が出資したお金がどのくらいあるかを示すものです。

自己資本比率の計算式

自己資本比率=自己資本(純資産)÷{他人資本(負債)+自己資本(純資産)}×100(%)

自己資本比率が高いほど、経営状況が悪くなっても耐えられる状況にあるといわれます。ただし、個人事業主はプライベートのお金を事業に回すことも多いため、自己資本比率は変動しやすいものです。あまり厳密に考える必要はないでしょう。

流動比率

流動比率とは、流動資産の流動負債に対する割合を示すものです。

流動資産とは、保有する資産のうち、1年以内に現金化できる資産のこと(現金、預金、売掛金、商品など)で、流動負債とは、1年以内に支払う必要のある債務のこと(買掛金、支払手形、短期借入金など)を指します。

流動比率の求め方は以下のとおりです。

流動比率の計算式

流動比率=流動資産÷流動負債×100(%)

流動比率は、高いほど短期的な支払能力が高いと考えられます。ただし、流動資産のうち、過剰在庫や不良在庫は1年以内の現金化ができない可能性があります。それらを省く場合は、現預金や売掛金のみを示す「当座資産」を使った「当座比率」を確認します。

当座比率の求め方は以下のとおりです。

当座比率の計算式

当座比率=当座資産÷流動負債×100(%)

貸借対照表を作成して青色申告をしよう

複式簿記での記帳を行い、貸借対照表を作成すれば、最大65万円の青色申告特別控除を利用できます。節税のためにも、経営状況を把握するためにも、ぜひ貸借対照表の作成を行いましょう。

やよいの青色申告 オンライン」などの会計ソフトを利用すれば、複式簿記での記帳、貸借対照表、損益計算書、確定申告書の作成などをスムースに進められます。事業の合間に無理なく記帳を行えるうえ、画面の案内に従って操作するだけで提出書類の作成が可能です。確定申告業務の効率化と正確性の向上に、ぜひお役立てください。

青色申告ソフトなら簿記や会計の知識がなくても青色申告できる

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初心者にもわかりやすいシンプルで迷わず使えるデザイン

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取引データの自動取込・自動仕訳で入力の手間を大幅に削減

銀行明細やクレジットカードなどの取引データ、レシートや領収書のスキャンデータやスマホで撮影したデータを取り込めば、AIが自動で仕訳を行います。これにより入力の手間と時間が大幅に削減できます。

確定申告書類を自動作成。e-Taxに対応で最大65万円の青色申告特別控除もスムースに

画面の案内に沿って入力していくだけで、確定申告書等の提出用書類が自動作成されます。青色申告特別控除の最大65万円/55万円の要件を満たした資料の用意もかんたんです。またインターネットを使って直接申告するe-Tax(電子申告)にも対応し、最大65万円の青色申告特別控除もスムースに受けられます。

自動集計されるレポートで経営状態がリアルタイムに把握できる

日々の取引データを入力しておくだけで、レポートが自動で集計されます。確定申告の時期にならなくても、事業に儲けが出ているのかリアルタイムで確認できますので、経営状況を把握して早めの判断を下すことができるようになります。

この記事の監修田中卓也(田中卓也税理士事務所)

税理士、CFP®
1964年東京都生まれ。中央大学商学部卒。
東京都内の税理士事務所にて13年半の勤務を経て独立・開業。
従来の記帳代行・税務相談・税務申告といった分野のみならず、事業計画の作成・サポートなどの経営相談、よくわかるキャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・次号継承対策など、多岐に渡って経営者や個人事業主のサポートに努める。一生活者の視点にたった講演活動や講師、執筆活動にも携わる。

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