店舗総合保険とは?盗難や火災のリスクに備える保険の選び方

2024/02/14更新

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

飲食店や小売店、サロンなどの店舗を開業する際、心配なのが営業中に発生するリスクではないでしょうか。店舗を運営するうえでは、火災や盗難、賠償など、さまざまなリスクが想定されます。
このようなリスクに備えられるのが、「店舗総合保険」と呼ばれる損害保険です。

ここでは、店舗総合保険の補償内容や対策できるリスクの他、店舗総合保険の選び方のポイントについて解説します。

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店舗総合保険とは複数の保険がひとまとめになった店舗向けの損害保険

店舗総合保険とは、火災保険や施設賠償責任保険、PL保険(生産物賠償責任保険)など、複数の保険がひとまとめになった、店舗向けの損害保険です。保険対象には店舗だけではなく、事務所や併用住宅の建物、建物に収容される動産も含まれます。

店舗を運営していると、火災や水漏れ、盗難をはじめ、お客様に損害を与えて賠償責任が生じたり、災害被害により休業せざるを得なくなったりと、さまざまなリスクが発生します。このようなリスクに備えるために複数の損害保険に個別で加入しようとすると、手続きが煩雑になって手間がかかってしまうでしょう。

店舗総合保険は店舗経営に関する補償を総合的にカバーできるため、さまざまなリスクに備えて個別の保険を契約する必要がありません。飲食店の開業を考える方は、店舗総合保険への加入を検討してみてください。

店舗総合保険はさまざまな補償を個別契約するより割安

基本的には、店舗総合保険の保険料は、さまざまな補償を個別に契約することに比べれば割安になるため、小規模な店舗でも加入しやすい点が店舗総合保険の特徴といえます。
ただ、保険料は、保険会社や補償内容によって変わります。例えば、補償内容がシンプルで保険金の上限を低く設定すれば、保険料を安くすることが可能です。反対に、特約を付帯するなどして補償を充実させれば、その分保険料も上がります。

また、店舗総合保険の他に店舗が加入できる保険には、企業総合保険もあります。企業総合保険は店舗総合保険よりも補償範囲が広く、補償内容が充実していますが、保険料も高めに設定されています。同じ店舗であっても、企業総合保険は大規模な店舗向けの保険といえるでしょう。
店舗総合付型保険と企業総合保険のどちらの保険を契約するほうがいいのか、自社の特徴を考慮して決めるようにしてください。

なお、個人事業主にとっては、保険料が高額な企業総合保険よりも、店舗総合保険の方が加入しやすいでしょう。個人事業主の場合、店舗は小規模から中規模であることがほとんどです。万が一トラブルが起こったとしても、店舗総合保険で十分にカバーできると考えるため、個人事業主の方は店舗総合保険を検討してみてください。

店舗総合保険の補償対象となる費用は、保険会社や保険商品によって異なる

店舗総合保険で補償対象となる費用は、保険会社や保険商品によって補償内容が異なります。保険会社によって多少の違いはありますが、主な補償内容としては下記のとおりです。何が対象に含まれているか、必ず契約前に確認しておきましょう。

店舗総合保険の補償対象となる費用

  • 火災・水害などの自然災害による損害
  • ガス漏れなどによる爆発や水漏れによる損害
  • 外部からの衝突・飛来による損壊や破壊行為による損害
  • 盗難による損害
  • 臨時・修理費用
  • 失火見舞費用
  • 残存物取片づけ費用
  • 持ち出し家財の損害

火災・水害などの自然災害による損害

店舗総合保険の補償対象となる費用には、火災・水害などの自然災害による損害があります。
自然災害には、火災や落雷、風災、水災、雪災、雹(ひょう)災によって生じた損害が補償されます。なお、地震や噴火、またはこれらによる津波を原因とする火災については、補償対象にはならないため注意が必要です。

ガス漏れなどによる爆発や水漏れによる損害

店舗総合保険の補償対象となる費用には、ガス漏れなどによる爆発や水漏れによる損害もあります。
ガス漏れなどによって爆発や破裂が生じ、店舗の設備や備品に損害が生じた場合に補償が受けられます。また、給排水設備の事故などによって水漏れが起こり、商品や機材が損傷した場合なども、補償対象となります。

外部からの衝突・飛来による損壊や破壊行為による損害

店舗総合保険の補償対象となる費用には、建物の外部から物が衝突したり飛来してきたりした場合の損害もあります。例えば、店舗に車が突っ込んできた場合や、飛来物によって店のガラスが割れた場合などが挙げられるでしょう。
また、集団行動などに伴う暴力行為や破壊行為による損害も、店舗総合保険の補償対象となります。

盗難による損害

店舗総合保険の補償対象となる費用には、盗難によって店舗の設備や備品に生じる損失も挙げられます。盗難被害に伴い、店舗の設備や備品が損傷・汚染した場合にも、その損害分は補償の対象です。
なお、商品や製品等については、基本的に対象外となります。

臨時・修理費用

店舗総合保険の補償対象となる費用には、臨時・修理費用も挙げられます。
被災時には、思いがけない出費があるものです。損害の度合いによっては、店舗の修理などを行うのに、保険金だけでは足りないこともあるでしょう。上に挙げた自然災害などによって損害が発生したとき、保険金とは別に臨時・修理費用を受け取ることができます。

失火見舞費用

店舗総合保険の補償対象となる費用の中には、失火見舞費用も挙げられます。
自分の店舗に起こった火災や爆発・破裂により、他人の所有物に損害を与えた場合の見舞金の費用が補償されます。ただし、火災によって発生した煙や臭気による損害は補償対象外です。

残存物取片づけ費用

店舗総合保険の補償対象となる費用には、残存物片づけ費用もあります。
火災や自然災害、爆発、水漏れなどが起こった場合、店舗を再開するためには片づけ作業が必要になります。がれきの撤去費用など、残存物を片づけるためにかかった費用は、店舗総合保険の補償対象です。

持ち出し家財の損害

店舗総合保険の補償対象となる費用には、持ち出し家財の損害も挙げられます。付帯している特約などの内容によっては、店舗外に持ち出した家財に対する損害についても補償される場合があります。

店舗総合保険は、店舗が受ける全ての損害が補償されるわけではない

店舗型総合保険は、店舗が受ける全ての損害が補償されるわけではありません
中でも注意したいのが、地震による損害です。地震や噴火、津波によって店舗が倒壊するなどの損害を受けたとしても、店舗総合保険では補償が受けられません。地震による損害に備えるには、別途、地震保険への加入が必要です。

その他にも、店舗総合保険では対象外の費用があるため、加入時には確認しておきましょう。補償対象外となる主な費用は、下記のとおりです。

店舗総合保険で補償対象外となる主な費用

  • 保険金の不正受給を目的とした故意または重大な過失などによる損害
  • 地震、噴火、津波の被害による損害
  • 労働争議による暴力行為や破壊行為による損害
  • 保険対象物が野外にあり、盗難された場合の損害
  • 自身が所有する車両の衝突などの事故による損害
  • 戦争や内乱などの武力行為による損害
  • 自転車や原動機付自転車の盗難
  • 核燃料物質が関連する損害
  • 保険の補償開始日前に起こった損害

店舗総合保険で対策できるリスク

店舗総合保険に加入すると、店舗に損害が生じた際の修繕費用や、来店客などに対する賠償責任、災害などによって休業したときの損害などのリスクへの対応が可能です。
ただし、店舗で備えるべきリスクは、業種や業態によって異なります。中には、その業種特有のリスクが発生する場合もあります。店舗総合保険に加入する際には、自分の店舗に起こり得るリスクを想定し、必要に応じて特約を検討するといいでしょう。

飲食店で想定されるリスク事例

飲食店でリスクとなりやすいのが、食中毒の発生です。店舗で食中毒が発生してしまうと、営業停止による休業補償やお客様に対する損害賠償といった、さまざまな損害が生じてしまいます。
その他にも飲食店の場合には、下記のようなリスクが考えられます。

飲食店で想定されるリスク事例

  • 店内で熱い料理を運んでいるときに転んでしまい、お客様にやけどを負わせてしまった
  • 調理中の火が周りに燃え移って火事になった
  • 厨房のガス漏れによって爆発が起こり、店内の設備や備品が使えなくなってしまった

中でも食中毒のような死に至るリスクには、営業を停止し迅速に対応しなければなりません。店舗総合保険に加入することで、こういった補償にも保険金といった形ですぐに対応することが可能になるでしょう。

理容店・サロン店で想定されるリスク事例

理容店や美容室、サロンなどの場合には、ヘアカット中にハサミでお客様の耳を切ってしまったり、ネイルの施術中に爪や指を傷付けてしまったりするといった、お客様への賠償責任を負うリスクが高くなります。
その他、次のようなリスクにも備える必要があります。

理容店・サロン店で想定されるリスク事例

  • ヘアカラー剤をお客様の服やバッグに付着させて汚してしまった
  • トリミングサロンでの施術中に、ハサミでペットにケガをさせてしまった
  • フェイシャルケアやボディートリートメントでお客様の肌が腫れ、治療費を請求された

お客様へのケガや所有物の損壊に対する損害賠償責任に対する補償については特約などでカバーできる場合が多いので、業種ならではのリスクにも備えるようにしておきましょう。

店舗総合保険は補償の範囲や上限額、自店舗のリスクを踏まえて選ぶ

店舗総合保険は補償の範囲や上限額、自店舗のリスクを考えてから選ぶのがポイントです。店舗を借りる場合、貸主が指定する火災保険への加入を求められるケースも少なくありません。
しかし、店舗で加入する保険は、自分で選ぶことも可能です。特に、指定された火災保険だけでは補償が足りないと感じるような場合は、店舗総合保険を検討してみるといいでしょう。

店舗総合保険を選ぶ際のポイント

  • 補償の範囲
  • 補償の上限額
  • 自店舗のリスク

補償の範囲

店舗総合保険を選ぶポイントには、補償される範囲が挙げられます。
店舗総合保険の補償範囲は、保険会社や保険商品によって異なるため、ある保険会社では基本のセットに含まれている補償が、別の保険会社では有料オプションということもあります。

万が一のときに補償が受けられないということにならないように、必要な補償が網羅されているかどうかを確認しておきましょう。

補償の上限額

店舗総合保険を選ぶポイントには、補償の上限額もあります。
補償の上限額とは、「保険金がいくらまで支払われるのか」という支払限度額のことです。店舗総合保険では、補償ごとに支払限度額が定められており、支払限度額が高いほど月々の保険料も高くなります。

補償の上限額が適切に設定されていないと、損害が発生したときに必要な金額が不足したり、反対に保険料を余分に支払うことになったりする可能性があります。保険料と支払限度額のバランスを考慮し、適切な金額を見極めましょう。

自店舗のリスク

店舗総合保険を選ぶポイントには、自店舗のリスクも挙げられます。
店舗総合保険に加入するときに重要なのは、自分に必要な補償内容を選ぶことです。店舗が備えるべきリスクは、業種や業態、立地、店舗規模などによって異なります。

例えば、沿岸部近くで水上バイクといったマリンスポーツのレンタルショップを運営する場合は、台風や洪水、津波などのリスクが高くなることはずです。起こり得るリスクと、それによって発生する損害の規模を想定し、自店舗に合った補償を選ぶようにしましょう。

開業届や確定申告を手軽に行う方法

個人事業主が店舗を開業するには、税務署に開業届を提出する必要があります。個人事業主が事業を始めるときには、開業から1か月以内に、開業届を納税地の税務署に提出する必要があります。また、確定申告で最大65万円の青色申告特別控除を受けられる青色申告を行うには、開業届を提出したうえで、事業開始から2か月以内に「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。
個人事業主として開業する場合は、「弥生のかんたん開業届」を使えば、画面の案内に従って操作するだけで開業届などの必要書類の作成ができます。

また、クラウド確定申告ソフト「やよいの青色申告 オンライン」を使えば、簿記や会計の知識がなくても、最大65万円の青色申告特別控除の要件を満たした青色申告の必要書類がかんたんに作成できます。
起業・開業後はお店の運営の他に、会計業務などお金の管理を自分で行うことが必要になるため、起業・開業のタイミングで会計ソフトや確定申告ソフトなどを導入しておくといいでしょう。

店舗総合保険は店舗のリスクに幅広く備えられる保険

店舗総合保険は、店舗に必要な補償がひとまとめになった保険です。店舗運営には、自然災害や盗難、お客様への損害賠償など、さまざまなリスクがあります。
店舗総合保険に加入すると、店舗に想定されるリスクに幅広く備えることができます。安心して営業するためにも、店舗を開業するときには、開業準備と併せて保険についても検討しておきましょう。

また、個人事業主が開業する際には、「弥生のかんたん開業届」を利用すると開業届などの必要書類の作成が手軽にできますので、ぜひご活用ください。

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。

URL:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_mori/新規タブで開く

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