飲食業でよく使用する勘定科目とは?経費割合の目安や仕訳例を解説

2023/08/31更新

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

飲食業を営んでいると、材料費や人件費、お店の家賃など、さまざまな経費がかかります。業務で発生した経費は、「いつ、何のために、いくら使ったか」ということを、きちんと帳簿に記録しておかなければなりません。その帳簿付けに必要になるのが、「勘定科目」です。

勘定科目は、取引の内容や性質を表すラベルのようなものです。飲食店などを営んでいる場合は、飲食業でよく使われる勘定科目を知っておくと、帳簿付けをスムースに行えるようになるでしょう。

ここでは、飲食業を営んでいる場合によく使用する勘定科目や経費割合の目安、仕訳例などについて解説します。

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飲食業において納めるべき所得税や法人税とは?

飲食業を営んでいる場合、1年に1度確定申告を行い、所得税や法人税を納める必要があります。納めるべき所得税や法人税の額は、1年間の所得額によって決まります。

ここで気をつけたいのが、所得と売上はイコールではないということです。所得とは売上高から経費を引いた金額のことで、個人事業主は「総収入金額-必要経費」で計算できます。つまり、所得とは、事業によって出た儲けを示すものといえます。

飲食業で利益を上げようと考えたとき、売上アップを目指す方は多いかもしれません。しかし、いくら売上が多くても、経費が増えるとその分利益は減少します。反対に、売上は変わらなくても、経費を少なくすることができれば利益は増加します。飲食業の利益管理を行ううえでは、売上の増減と同じくらい、経費の増減を意識することも重要なのです。

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飲食業における必要経費とは?

経費とは、事業を営むために支出したお金のことで、所得税法上は「必要経費」と呼ばれます。飲食店の場合、料理を作るために必要な材料費、従業員の人件費、店舗の家賃や水道光熱費などが必要経費にあたります。

経費を計上するにあたって気をつけなければいけないのが、「事業にかかわる支出かどうか」ということです。例えば、飲食店で提供する料理の材料費は必要経費です。また、実際にお客様に出す料理ではなくても、新メニューの開発のために費やした材料費も、経費に該当します。

しかし、同じ食材であっても、個人で食べる料理の材料費は、経費とは認められません。特に個人事業主は、事業の支出とプライベートの支出を混同してしまわないように注意が必要です。もし、事業用と個人用の両方で使用しているものがあって費用を分類できないときは、事業とプライベートで使う割合を計算し、事業に使っている分だけを経費として計上します。これを「家事按分(かじあんぶん)」といいます。

飲食業でよく使用する勘定科目

ここからは、飲食業でよく使われる勘定科目について解説していきます。勘定科目とは、会社や個人事業主などの取引で発生するお金の流れについて「何に使ったのか」「なぜ入金があったのか」を表すためのラベルのようなものです。

飲食業では、売上や仕入れ、従業員の給与、家賃の支払いなど、さまざまなお金の出入りが発生します。これらのお金の出入りについては、内容に適した勘定科目を設定して帳簿に記録していく必要があり、個人事業主はその帳簿を元に1年間の収支をまとめて確定申告を行います。

収入にかかわる勘定科目に比べて、経費にかかわる勘定科目は細分化されているため、どの勘定科目を選ぶべきか迷うことがあるかもしれません。飲食業の経費にかかわる主な勘定科目は、下記のとおりです。

仕入高

仕入高とは、販売目的の物品や、商品を作るための材料の仕入れにかかった費用を計上する勘定科目です。飲食業では、飲食物を提供するためにかかった食材やドリンクなどの費用が該当します。

賃金給与

賃金給与は、従業員に支払う給料のことです。社員やアルバイト、パートなどを雇用して労働の対価を支払うための給料は、給与の勘定科目で経費計上します。

地代家賃

店舗を借りて営業している場合は、その店舗の家賃を地代家賃の勘定科目に計上します。店舗の他、駐車場や事務所、倉庫などを借りている場合も、その賃料は地代家賃勘定に計上します。なお、賃貸の自宅に住んでいて、かつ自宅の一部を店舗やオフィスにしているような場合は、使用面積に応じて家事按分を行わなければなりません。

減価償却費

使用することや時間が経過することで価値が減少する固定資産のことを減価償却資産といい、この資産の減価償却にかかる費用のことを減価償却費といいます。法定耐用年数が1年以上、または取得価額が10万円以上の減価償却資産は、購入した年に費用を一括計上するのではなく、耐用年数に応じて減価償却を行う必要があります。飲食店なら、厨房機器や店内の家具、POSレジなどは、減価償却の対象になる可能性が高いでしょう。

減価償却資産の耐用年数は、税法上、品目別に細かく定められています。例えば、取得価額が40万円で法定耐用年数が8年の減価償却資産であれば、購入した年から毎年5万円ずつ、8年にわたって費用計上することになります。

荷造運賃

荷造運賃とは、商品を客先に届けるためにかかる費用のことで、具体的には配送費や梱包費、宅配便代などが該当します。配送そのものの料金だけではなく、商品の梱包にかかる段ボールや緩衝材、ガムテープなどの費用も荷造運賃に含まれます。一般的な飲食店にはあまり馴染みのない勘定科目かもしれませんが、インターネット通販などに対応している場合は使用する機会が増えるでしょう。

水道光熱費

水道光熱費とは、その名のとおり店舗や事務所などの使用に伴う電気代、ガス代、水道代、灯油代などです。地代家賃と同様に、経費として計上できるのはあくまで事業に使った部分のみです。自宅を店舗やオフィスと兼用にしている場合などは、適切に家事按分を行いましょう。

通信費

通信費には、固定電話や携帯電話の料金、インターネット料金の他、切手代やはがき代などが該当します。なお、宣伝を目的としたダイレクトメールの送料は、後述する広告宣伝費に含まれます。

旅費交通費

業務に必要な移動のための電車代やバス代、タクシー代、出張先での宿泊費などは、旅費交通費に該当します。また、車で移動した場合の高速代や、コインパーキングの駐車場代も、旅費交通費にあたります。

広告宣伝費

広告宣伝費とは、お店の宣伝のためにかかった費用全般です。例えば、下記のような費用が広告宣伝費に該当します。

広告宣伝費の一例

  • チラシや名刺、ショップカードなどの印刷費
  • グルメサイトなどへの掲載費
  • ウェブサイトやSNSの運営費
  • 求人サイトへの広告掲載費
  • ダイレクトメールなど宣伝素材の作成費、送料

接待交際費

接待交際費とは、事業に関係のある人に対して使う費用に用いる勘定科目のことです。飲食業の場合、取引先などの業務に関係する相手を接待するための飲食代や、お中元やお歳暮といった贈答品、慶弔金、お車代などが該当します。

損害保険料勘定

損害保険料勘定とは、商品や事務所などの事業用資産への損害保険料を計上するための勘定科目です。具体的には、事業用の車の自動車保険料、店舗やオフィスの火災保険料などが該当します。

消耗品費

消耗品費は、備品などの購入費のうち、法定耐用年数1年未満または金額が10万円未満のものを計上する勘定科目です。食器や調理器具、事務用品、電球、トイレットペーパーなど、飲食店の運営に必要な備品で取得価額が10万円未満のものは、消耗品費として計上します。消耗品にあたらない固定資産は、前述した減価償却費として耐用年数に応じて経費計上していくことになります。

外注工賃

業務の一部を外部の事業者に発注したときに発生した費用は、外注工賃の勘定科目で処理します。飲食店の場合は、店舗の清掃費用や、ごみ処理にかかる費用などが該当します。

修繕費

修繕費とは、店舗や機械、器具、備品、自動車などの修理にかかった費用のことです。例えば、店舗で使用している冷蔵庫が壊れて修理をしたら、その費用は修繕費として処理します。

福利厚生費

福利厚生費は、給与とは別に従業員のために支出した費用のことです。例えば、従業員の健康診断の費用、見舞金、慶弔費などが該当します。なお、事業主本人とその家族にかかった費用については、福利厚生費と認められません。従業員が家族である場合は、福利厚生費を経費として計上することはできないため、注意しましょう。

雑費

事業の経費のうち、どの勘定科目にも当てはまらない少額の支出は雑費で処理します。例えば、ごみの処分費用や書籍代、クリーニング代などが雑費にあたります。ただし、その支出が何度も発生するようなら、ごみの処分費用は清掃費や衛生費、書籍代は新聞図書費など、新たに勘定科目を設定した方がいいでしょう。

専従者給与

専従者給与とは、青色申告をしている個人事業主が、家族従業員への給与を経費計上するときに使用する勘定科目です。青色申告をしていて、家族が従業員として働いている場合、所定の要件を満たせば、その家族に支払った給与を全額経費にすることができます。これを、青色事業専従者給与といいます。

なお、家族への給与を経費にするには、あらかじめ「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄の税務署に提出しなければなりません。

租税公課

事業税や固定資産税、自動車税、印紙税(収入印紙代)など、事業に関連して納めた税金は、租税公課の勘定科目で処理します。なお、所得税や住民税は経費にはなりません。また、課税事業者の場合は、消費税を納める必要があります。会計処理を税込形式で行っている場合は、消費税も、租税公課として計上します。

一方、税抜形式の場合は、仕入れにかかる消費税を仮払消費税、売上にかかる消費税を仮受消費税の勘定科目で処理するため、租税公課は使用しません。

利子割引料

利子割引料とは、事業用の借り入れをした際に発生する利息と、報酬として受け取った手形を現金化するときに発生する割引料をまとめる勘定科目です。具体的には、金融機関から借り入れをした事業用資金の支払利息や、手形の割引料などが該当します。

飲食業における経費割合の目安

経費を適切な勘定科目に振り分けて記帳すると、事業のために何にどれだけお金を使っているのかが見えてきます。飲食業界では、コスト管理を行ううえでの重要な指標の1つに「FLR比率」というものがあり、FLRはそれぞれ材料費(Food)、人件費(Labor)、家賃(Rent)を指しています。

理想的なFLR比率は、売上に対して材料費が30%以内、人件費が30%以内、家賃が10%以内といわれています。経費の割合を計算して、この数値以下に抑えることができていれば、利益が出やすい状態にあるといえるでしょう。

反対に、FLR比率が70%を超えている場合は、コストの見直しが必要かもしれません。例えば、食品ロスを減らす、業務の効率化を図るなど、コストカットのための対策が必要です。

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「弥生会計 オンライン」は、簿記や会計の知識がなくても使える機能と画面設計で、初めて会計ソフトを使う方でも安心です。取引の日付や金額などを入力するだけで、小規模法人に必要な複式簿記帳簿が自動作成できます。

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「弥生会計 オンライン」を使えば、銀行明細やクレジットカードなどの取引データのほか、レシートや領収書のスキャンデータ、スマートフォンアプリで撮影したデータを自動で取り込み、自動で仕訳することができます。金融機関からダウンロードした取引明細や帳簿、ご自身で作成いただいたCSV形式のファイルを取り込むこともできるため、入力と仕訳の手間を省くことが可能です。また、スマートフォンから直接入力もでき、出先や移動中の時間を効率良く使えます。

日々の取引を自動で集計でき、見やすいレポートで管理できる

「弥生会計 オンライン」を使えば、入力したデータをもとに日々の取引を自動で集計し、さまざまなレポートを自動で作成することができます。わかりやすいグラフレポートをいつでも確認可能なため、経営状態がひと目で把握できます。

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  • カスタマーセンターによるサポートは、「サポート付きプラン(ベーシックプラン)」が対象です。

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飲食業で使用する勘定科目を把握してスムースな帳簿付けを目指そう

事業で発生するさまざまな経費は、適切な勘定科目に振り分けて帳簿に記録していく必要があります。飲食業でよく使われる勘定科目を理解しておくと、何のためにどれくらいの経費を使っているかを把握しやすくなり、コスト管理や経営分析にも役立ちます。

帳簿付けをスムースにするには、会計ソフトや確定申告ソフトの利用がおすすめです。例えば、法人向けの「弥生会計 オンライン」や個人事業主向けの「やよいの青色申告 オンライン」には、日々の取引データを自動で取り込み、取引の内容から類推される勘定科目を割り当てる自動仕訳機能があります。便利なソフトを活用して、経費管理の効率化を目指しましょう。

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この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
「知りたい!」を最優先に、一緒に問題点を紐解き未来に向けた会計をご提案。

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