個人事業主が法人化(法人成り)すべきタイミングは?目安やポイントを解説

2022/06/01更新

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

個人事業主として、一定以上の売上を継続して上げられるようになると、法人化(法人成り)を検討した方がいい場合があります。法人化すると、節税できるだけでなく、取引先への信頼性の向上といったさまざまなメリットがある一方、赤字でも税金を納付しなくてはいけないといったデメリットもあります。そのため、法人化のメリットを最大限に活かすには、最適なタイミングを見極めることが大切です。
ここでは、個人事業主が法人化する最適なタイミングの目安や法人化する際に知っておくべきポイントを解説します。

個人事業主が法人化する最適なタイミング

個人事業主が株式会社や合同会社などの法人を設立し、それまで個人で行っていた事業を引き継ぐことを、法人化(法人成り)と呼びます。法人化を考える主なタイミングとして、「取引先から法人口座を作ってほしいと言われたとき」と「節税のメリットが大きくなるとき」があります。それぞれのタイミングについて、詳しく見ていきましょう。

取引先から法人口座を作ってほしいと言われたとき

取引先から法人口座を作ってほしいと言われたら、今後の取引数が増え、事業拡大につながる可能性があります。取引先によっては、法人でなければ契約を結ばない企業もありますし、個人事業主とは規模の大きな取引を行わない企業もあります。取引先からの要望があり、その優先度が高い場合は、法人化を考えるタイミングといえるでしょう。
また、株式会社を設立すれば、株式の増資による資金調達も可能です。その他、法人を対象とした助成金や補助金も申請でき、事業拡大しやすくなります。

節税のメリットが大きくなるとき

法人化を検討するタイミングとして、節税のメリットが大きくなるときも挙げられます。具体的には、下記3つのタイミングを目安にするといいでしょう。

節税のメリットが大きくなるとき ・2年前の売上が1,000万円を超えたとき ・前年の前半6か月の売上が1,000万円を超えたとき ・課税所得が500万円を超えたとき

2年前の売上が1,000万円を超えたとき

個人事業主も法人も、2年前の年間売上が1,000万円を超えると、消費税の納税義務が生じます。しかし、個人事業主が法人化した場合、課税事業者になるタイミングを2年間遅らせることができます。法人を設立した1期目と2期目は2年前の売上が存在しないため、原則として消費税の納税義務が免除されるからです。
ただし、消費税の納税義務が免除されるためには、資本金1,000万円以下で法人化する必要があります。なお、設立1期目の前半6か月の売上が1,000万円を超え、かつ人件費(役員報酬含む)が1,000万円を超えた場合は、2期目から消費税を納めなければならなくなるので注意しましょう。

前年の前半6か月の売上が1,000万円を超えたとき

2年前の売上が1,000万円以下であっても、前年の前半6か月(個人事業主の場合1月1日~6月30日)の売上が1,000万円を超え、かつ人件費(役員報酬含む)が1,000万円を超えた場合は、その年から課税事業者となり、消費税の納税義務が発生します。この場合は法人化する際に、3月決算の会社を9月1日に設立して1期目を7か月間にすることで、消費税の納付が2期免除されます。
なお、前年の前半6か月の売上が1,000万円を超えていても、人件費(役員報酬含む)が1,000万円を超えていない場合は、消費税は免税されます。

課税所得が500万円を超えたとき

個人事業主の課税所得が500万円を超えたら、法人化した方が節税できる可能性が高いため、一度税理士に相談することをおすすめします。個人の所得にかかる所得税と法人の所得にかかる法人税は、税金の仕組みが異なりますので、税理士に相談して、どれくらいの差になるかシミュレーションしてもらうのもいいでしょう。

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法人化する際に知っておくべきポイント

法人化にあたっては、知っておくべきポイントがあります。ここでは、4つのポイントを見ていきましょう。

役員報酬の決め方で法人税の額が変わる

法人の場合、役員報酬の決め方は、会社設立後の税金に大きく関わってきます。会社設立時に税やお金の仕組みの知識がないまま、役員報酬を決めてしまうと、思ったよりも法人税の負担が大きくなるかもしれません。税理士に相談すれば、適正な役員報酬のアドバイスをもらえるでしょう。
また、税理士に相談することで、友人同士など2人で会社を立ち上げた場合の株式保有率や役員構成などの大切なポイントも教えてもらえます。

資本金の額で消費税の納税義務や融資の額が変わる

資本金の額によって消費税の納税義務や融資額が変わることも、法人化する際に知っておくべきポイントです。資本金1円でも起業できますが、事業開始後の資金繰りにも影響しますので、法人化する際には資本金の適正な額を税理士に相談するといいでしょう。

社会保険に加入する必要がある

法人化すると、健康保険や厚生年金保険といった社会保険への加入が義務付けられます。それによって、会社は健康保険料と厚生年金保険料、介護保険料の半分を負担し、雇用保険料の一部と労災保険料の全額も負担しなければなりません。社長1人だけの会社の場合、個人の保険料と会社負担の保険料を両方納付することになり、個人事業主よりも負担額が増えます。

法人は赤字でも税金がかかる

個人事業主は、決算で赤字になると、所得税や住民税はかかりません。しかし、法人は、赤字であっても法人住民税の均等割を必ず納付する必要があります。法人住民税は地方自治体に納める税金で、法人税割と均等割の2つに分かれています。法人税割は法人税額をもとに算出するため、赤字であれば税額は0円です。一方、均等割は資本金や従業員数によって金額が定められており、赤字であっても納付しなければなりません。

法人化のタイミングを相談できる税理士を探すには?

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できるだけ節税したい方

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日々の取引を記帳するには手間や労力がかかります。売上が増えるとともに経理作業量も増え、負担が大きくなってしまうでしょう。記帳業務を税理士に丸投げできれば、その分しっかり本業に集中できるようになります。

法人化のベストタイミングを見極めよう

法人化(法人成り)のタイミングは、取引先の状況や売上、課税所得など、さまざまな面から判断する必要があります。個人事業主と法人では税金の仕組みが異なるため、どのタイミングで法人化すれば節税メリットが高いのか、しっかりと見極めることが大切です。税金にはさまざまなルールがあり、すべてを自分で調べて的確に判断するのは困難ですから、まずは税理士に相談してアドバイスをもらうといいでしょう。税理士をお探しの際は、ぜひ弥生の「税理士紹介ナビ 新規タブで開く」をご利用ください。

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。
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